艦CORE「青い空母と蒼木蓮」   作:タニシ・トニオ
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最近更新ペースが遅くなってしまっている割に文字数が少なくてションボリ気味ですが、物語は佳境に入ります。


第四十五話「MISSION07_本営奪還-01」

 毎日変わらず0300と1500に大本営からの定時連絡が各鎮守府へと通達される。内容は当たり障りの無い程度の戦況や各鎮守府の状況、緊急性の乏しい任務etc.……といったものだ。

 

 深夜三時の報告を確認するために起きていた大淀は眠気覚ましにブラックコーヒーを一口飲む。濃い目に淹れたそれの香りと苦みで頭の覚醒をうながすと、「さて」と言って通信室のメインPCの操作を開始した。

 大本営や他の鎮守府との連絡は彼女の主な業務である。そして定時連絡を確認し必要があれば報告、展開するのもその仕事の一つだ。「なんでこんな時間に報告があるのかしら……」と心の中でいつもの愚痴を溢しつつ、大淀は画面を覗いた。

 

「あれ?」

 

 いつもは嫌に正確に届く定期連絡がまだ届いていない。送受信をクリックしても、受信件数はゼロのままである。

 

(おかしい……。こんなこと今まで無かったのに)

 

 鎮守府が再編成されて以降、途切れなく続いていた定期連絡が前触れもなく届いていないことに大淀は不安を抱く。もしかしたら大本営との接続に何か問題があるのかもしれないと思い至り、通信装置にあるAMSコネクタを自らの首筋に取り付けた。

 

 何故だかは判明していないが 大淀という艦娘はこの国の地下遺跡から発掘された鎮守府の中核をなす装置にアクセスできる権限を持っていた。もしかしたらオリジナルの人物が装置の関係者なのでは?と推測されていたりするが、真相は定かではない。

 

 ともかくAMSコネクタにより装置と自身を接続した大淀はキーボード操作ではおよそ不可能な速度で原因を調べてゆく。

 

(ネットワーク接続を確認……大本営のサーバーにアクセスできない?)

 

 大淀の額から冷や汗が吹き出る。大本営や各鎮守府間とのデータのやり取りはこのサーバーを介して行われている。それによって本営が各鎮守府の状況を確認しつつ全体の指揮、防衛網の形成を行うのだ。それゆえサーバーにアクセスできないとは本営や他の鎮守府と連携が取れない孤立状態であること同義であった。大淀は原因究明のために脳をフル回転させる。

 

(自己診断プログラム起動、システムチェック開始。全ケーブルチェック開始、あとは……)

 

 様々なチェックシステムの起動と平行してある箇所への回線を繋ぐ。

 

(今日の夜勤は確かマギーさんだったはず)

 

 彼女なら話が早く済む。大淀は不幸中のささやかな幸いに感謝しながら宿直室へコールを入れた。

 

「こちら通信室、応答願います」

 

「どうしたの大淀?定期連絡に面白い話でもあった?」

 

「その定期連絡が届かないんです。現在、鎮守府は本営のサーバーとの接続が切れている状態にあります」

 

 大淀の報を聞いて事態の深刻さを理解したマギーは、眠気で薄ぼんやりしていた頭を一瞬にして切り替える。

 

「原因は?」

 

「システムチェックをしていますが今だ不明です。ですがもし判明しなかった場合、それ以上は私の権限では……」

 

「分かったわ。提督を叩き起こしてくる。あと、やない整備長にも施設のチェックをさせておいて。どうせコウショウで仮暮らししてるだろうから」

 

「分かりました。宜しくお願いします」

 

 大淀との通信を終えるとマギーは椅子の音を立てて立ち上がり急ぎ提督の部屋へと向かって行った。

 

◇ ◇ ◇

 

「で、原因は判明したか?」

 

 欠伸を噛み殺した初老の声が通信室で発せられる。深夜に文字通り叩き起こされたせいかその声には若干苛立ちも含まれていた。しかしそんな提督のご機嫌を伺う余裕は無いとでもいうように大淀は早口で状況の報告を開始する。

 

「すみません、いまだにサーバーへの接続はならず原因も不明です。当鎮守府のシステムおよび施設には異常はありませんでした」

 

「つまり問題は鎮守府の外ってわけか……」

 

 こいつはまいったな……とでもいうように提督は顎を手で擦りながら唸り、大淀に再度確認をとる。

 

「メイン装置のネットワーク以外は試したか?」 

 

「いえ。ですが他の連絡手段だとセキュリティの脆弱性が……」

 

「構わん、繋がるか確認するだけだ」

 

 大淀は「了解しました」と告げ他の回線で本営に連絡を繋げようとする。しかし一向に本営に繋がる気配は無く、提督に向けて大淀は首を横に振った。

 

「大淀、一応聞くが本営からこちらに連絡は?」

 

「ありません……」

 

「……こいつはマジで何かあったか?」

 

 深夜とはいえネットワークの未接続が判明してから一時間近く経っている。本来なら本営からも何かしら連絡がきてもおかしくはないにも関わらず、それすら未だにない。提督の中に芽生えた不安が膨らんでゆく。横で話を聞いていたマギーは眉間に眉を寄せた。

 

「提督、本営のサーバートラブルの可能性は?」

 

「無いな。あちらのサーバーは三つに分離されていて、お互いに補完・監視し合うシステムになっていたはずだ。システム的なエラーはありえん。少なくとも遺跡から発掘、運用されてから一度もこんなことは無かった」

 

「じゃあ物理的に何かあったとか?」

 

「物理的にってのは?」

 

「本営が何者かに占拠されたとか……」

 

 マギーの突拍子もない発言に大淀が「あり得ません!」と割り込む。

 

「本営には強固な防衛網が敷かれてします。それに銀爺大将のレイヴンズだっているんですよ!?連絡の暇も与えずそれらを突破して本営を押さえるなんて、それこそ不可能です!」

 

「なら実践してあげましょうか?」

 

 マギーが冗談気味の声で、しかし本気の眼で答えた。その威圧感に大淀は思わず唾を飲み込む。

 

「大淀。レイヴンズのACは確かに強力だけど、腕前はハッキリ言ってUNAC以下よ。吹雪に五対一でも負ける程度、大したことはない」

 

「それは吹雪さんやマギーさんが例外だから……、ッ!?」

 

「そうかもね。そして私たちは同じ例外を知っている」

 

「その辺にしておけ」

 

 提督が二人の会話を打ち切る。まだなにも分かっていない状況でこれ以上語るべきではないというように。

 

「何が原因であれ放置しておくわけにもいかん。本営にこちらの状況を直接伝えるしかないな」

 

「直接って、車でも出すの?」

 

「いや、加賀と一緒にマギーが行ってくれないか。装甲ヘリ(ファットマン)でな」

 

「加賀もってことは……」

 

「ああ、お前はACでだ。何があっても対応できるようにな。何もなけりゃそれでいい、大袈裟だって俺が笑われるだけで済む話だ」

 

 そうであれば何よりだが――と提督は軽口を叩くが、その表情に笑顔は無い。なにかある。マギーの言った推測を意識しているのか、長年の勘が告げているのか、提督も何かを感じているようだった。

 

「了解、ドックに発信準備の連絡を入れておいて。私は加賀を起こしてそのままドックに向かうわ」

 

 マギーが命を受けて踵を返し、通信室から出ようとした時だった。

 

「待ってください!」

 

 大淀がマギーを止める。マギーが振り向くと、大淀が通信機の操作をしながらスピーカーに注意を向けるように促していた。そのスピーカーからノイズ交じりの声が聞こえ始める。

 

「…ワレ……バ……オウト…………マス。こち…レイヴ…ズ……アオ…………」

 

「……ッ!!大淀、あっちに通信を繋げられる!?」

 

「今やってますッ」

 

 大淀が急ぎ回線チャンネルを調整し聞こえてくる音声がクリアになっていく。そして通信してきた相手に繋がったのか大淀が「こちら白鳥提督鎮守府、応答願います」と答えると、すぐさま返信が返ってきた。

 

「よかった!やっと繋がりましたぁ~。こちら陸軍特殊機甲部隊レイヴンズ、アオバです。もうすぐそちらに到着します、緊急事態なんですよぉ!」

 

「緊急事態って?」

 

 マギーが大淀からマイクを奪い取って尋ねた。そしてある意味予想通りの、最悪の内容がアオバから伝えられる。

 

「倉井元帥の謀反により大本営は壊滅状態、そのうえ主要施設を占拠されました」

 



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