艦CORE「青い空母と蒼木蓮」   作:タニシ・トニオ
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第七話「MISSION02_ガダルカナル島近海攻略-01」

 鎮守府会議室。

 そこに今作戦に参加する艦娘たちが集まっていた。その雰囲気にはいつもの姦しさは無く、各員真剣な面持ちをしている。

 

「それではこれより作戦内容を伝える」

 

 映写機により投影されている作戦海域の横にたたずみながら、提督は作戦会議を始めた。

 

「本作戦の目標はガダルカナル島周辺海域の敵主力艦隊の殲滅だ。ガダルカナル島は資源豊富な周辺諸島とのシーレーンの確保、及び近海制海権を確保するための前線基地としてなんとしても押えなきゃならん。今回はそのための露払いだ。こちらの第一艦隊は『加賀』『金剛』『霧島』『北上』『摩耶』『夕立』で出撃。『比叡』『榛名』『愛宕』『千歳』『叢雲』『綾波』の第二艦隊は支援部隊として出撃してもらう。他の鎮守府のやつらが夜間に奇襲を仕掛けてくれている間に目標海域へと進撃し、敵主力艦隊を撃滅する。主力艦隊とぶつかるときには夜が明けてるだろう…、持てる火力を持って敵を叩きのめせ!……本当はもう少し準備を整えたかったが、偵察部隊から連絡があってな。やつら“巣作り”を始めてるらしい、時間がない……」

 

「巣作りって?」

 

 話を聞いていたマギーは、横にいる加賀に小声で聞いた。加賀は視線こそ前から逸らさなかったが、同じように小声で答える。

 

「深海棲艦は資源が採れる場所に基地のようなものを造って数を増やすのよ。中には主格のようなものが居て、それを倒さない限り数が増え続けるわ」

 

「まるで蟻みたいね」

 

「そう捉えてもらっても構わないわ。…多分、私たちを模倣しているのでしょうね、滅ぼすために…」

 

「…なるほどね」

 

 回答を得られたマギーは再び視線を前に向け、提督の話に集中した。

 

「今回俺たちの目標とする海域はこのこの辺りだ」

 

 提督は海域が投影されているホワイトボードに赤丸をつける。そこはガダルカナル島東部近海の海域だった。

 

「偵察部隊の情報により予想される敵勢力は、南方棲戦鬼と名づけられた敵の新型を有する前衛主力艦隊…そして“戦艦棲姫”だ……」

 

 その名を口にした途端、先ほどまで沈黙を守ってきた艦娘たちがざわつきだす。

 

(戦艦棲姫……)

 

 マギーは事前に深海棲艦の種類については学ばされていた。深海棲艦はこちらと同じように各艦種に分かれており、個体差はあるものの分類されている艦船と同程度のサイズ、戦闘能力を有している。しかし、稀にその規格から外れた化け物が存在する。さきほど名が挙がった南方棲戦鬼もそれに類するのだろう。そして戦艦棲姫もその化け物の一種だったはずだ。

 記憶が正しければ、もらった資料に『鎮守府の再編成を余儀なくされた大戦にて敵侵攻艦隊に姿を現し、こちらの戦力を数多く屠った要注意敵勢力』と示されていた。

 

 隣に居る加賀を見ると、眉間にしわを寄せ肩が震えている。手も爪が食い込み血が出てしまうのではないかと思うほど強く握り締めていた。それは恐怖によるものか、あるいは――

 ともかく、きっとなにか因縁めいたものがあるのだろう。それは加賀に限らず、他の艦娘もきっと…。ざわつきがそれを証明していた。

 

「落ち着け、お前ら」

 

 提督は艦娘たちをなだめるように話を続けた。

 

「お前らの気持ちはわかるつもりだ…。先の大戦で戦艦棲姫には散々辛酸を舐めさせられたからな。だが、ヤツを倒さなきゃ先には進めん。それに俺は、お前らなら勝てると踏んでいるよ」

 

 提督のその言葉により、会議室に再び沈黙が訪れる。

 

「確かにやつは驚異的な火力と装甲を持つ上、高い速力まで兼ね備えている異形のバケモンだ……だが、今俺たちの中には同じようなやつがいるよな?」

 

 一同の視線が一箇所に集まる。

 

「お前だよ、マギー。お前さんがいるから、俺はこの海域攻略を引き受けたんだ。ACの火力と機動力なら戦艦棲姫を相手にしても渡り合うことが出来るだろう。そして演習のときに見せてくれた艦隊との連携でこれを撃破してほしい。実戦初っ端から負担をかけるが、今の俺たちで勝つにはこの方法しかない……やれるか?」

 

「最初に言ったはずよ。私は何にも、誰にも、負けるつもりは無い」

 

「そうか…頼もしい限りだ」

 

 マギーの意思を確認した提督は、その隣に居る秘書艦へと視線を移す。

 

「加賀、今回は艦載機操作とACのオペレーションを並列して行うことになる。当然負担も増すことになるが、やれるよな?」

 

「当然です、五航戦とは違いますから。次は…次こそはやってみせます…ッ」

 

 加賀の目には強い意志が感じられた。絶対に打倒するという、強い強い意思…。皆には言わなかったが、これが提督がこの海域の担当したもう一つの理由だった。

 戦艦棲姫は前の鎮守府の仲間たちの仇だったのだ。

 

――復讐という感情は無い、そんなことを思っていたらキリがない…

 

 提督自身はそう思っていた。しかし、加賀や前の大戦に参加していた艦娘たちの中には拭いきれない思いを持っている者がいることも知っていた。だからこそ“彼女たち自身が前に進む”ためにも、この海域の攻略は必須だった。

 

「…あまり気を負いすぎるなよ、加賀。お前らも一緒だ。確かに重要な作戦だが、死んだら元も子もない。生きて帰って来い、それが最低条件だ!」

 

「「「「「「ハイッ!」」」」」」

 

艦娘たちの返事が会議室に響く。

 

「よし…、作戦開始は明日のヒトサンマルマル。それまでに各員準備を済ませておけッ。作戦は夜通しだ…ふんばれよ」

 

 各員は思い思いに会議室を後にしていった。






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