廃墟からCDショップまで歩くこと10分、僕は店内で少女二人を探していた。
しかし店内をいくら練り歩いても彼女たちの姿はなかった。
あのピンク色の目立つ髪色だ。探して見つからない方が不思議だ。
しかし見つからないものは仕方がない。ここは日を改めて接触を試みるとするか、とあきらめたその時、視界の隅にお目当てのピンク色の髪を見つけた。
何かに導かれるように、いや何かに誘われるかのように彼女は店の駐車場の方面へ姿を消した。
「あのまま声をかけてもよかったが…あの少女の様子…。」
妙なものを感じた僕は彼女に声をかけず、あえて追跡することにした。
…はずだったのだが見失ってしまった。
どうやらこの世界の年頃の少女はかくれんぼが得意らしい。
しかもいつの間にか周りは画用紙を切って張ったようなサイケデリックな景色になっていた。
しかも床には綿のような物に髭がついた奇妙な生物のようなモノすらいる。
いやなものを感じ元いた方向に引き返したが出口はなく、どこまでも人を不快にさせる不思議空間が延々と続いているだけであった。
「サーカスに迷い込んでしまったというわけか。」
誰に向けたわけでもない皮肉がつい口からこぼれてしまった。
何が起きたかはわからない。
だが本能的に僕は皮のバッグの中を探り武器を探した。
そしてその武器はこの世界には本来存在し得ないオーバーテクノロジー。
バッグからソレを取り出すと指向性音声の無機質な声が僕の耳に木霊した
『携帯型心理診断鎮圧執行システム、ドミネーター起動しました。ユーザー認証、槙島聖護。使用許諾確認。適正ユーザーです。現在の執行モードはノンリーサル・パラライザー。落ち着いて照準を定め対象を無力化してください。』
「化け物には化け物を…不思議には不思議を…ってね。」
普通の拳銃と同じように謎の生物に銃口を向けてみる。
『犯罪係数・オーバー120・執行対象ですセーフティーを解除します。』
「無事に起動したくれたか…。」
ドミネーターが無事に起動したことに安堵したが僕は3つの疑問に眉をしかめた。
それはなぜドミネーターが起動したのか、どうやって犯罪係数が測定されたのか、そしてなぜパラライザーなのかだ。
ドミネーターは調べた限りこの世界には存在していない。使えるとしても一部の人間だけ、僕の世界で例を挙げれば監視官や執行官といったところだ。デコンポーザーまで使えるこの銃は兵器そのものだ。こんなものを一個人に持たせるのは治安の悪化につながるだろうがその兆候はこの世界にはない。
そもそもこの世界にシビュラシステムは存在しないはずなのだ。ドミネーターで裁く人間と、裁かれる人間を選別することで仮初の平和を保ってきたあの世界とは違う。
だとすればこの犯罪係数はどこで何が算出をしているのだろうか。
そしてこの生物に何故パラライザーが適用されたのか…それが一番の謎だ。
今のところこちらに危害を加える様子がない以上、デコンポーザーになることはないと思ったが知力がない生物に対してドミネーターは完全な無力だ。よほど危険な動物が牙をむいたときのみドミネーターの姿も変わるのだろうが牙をむく前の動物に対してパラライザーが選択されるということはなかったはずだ。
「奇なる事実に比べれば人間の想像など鎧袖一触の貧弱さ…か。
疑問があっても目の前で起こる事象に驚くばかり疑問があっても答えが出るはずもない…か。」
今しがた自分の横を通り過ぎた生物を横目に彼は歩を進めた。
そうこうしているうちに開けた場所に出れたようだ。
そこには自分が後を追っていた件の少女二人組と抱きかかえられている白い猫のような生物と奇天烈な格好をした金髪の少女が立っていた。
僕は少しひきつった笑みを浮かべて呟いた。
「なんだ、やっぱりサーカスだったんじゃないか。」
次からは会話が多くなるので文字数が多くなるかもしれません、
読んでくれている方ありがとうございます。