「なんだ、やっぱりサーカスだったんじゃないか」
僕は目の前に広がっている光景を見てそう呟いた。
ベレー帽にブラウス、コルセット、下半身は黄色の艶やかなショートスカートに立派なブーツ。おまけに武器はマスケット銃ときている。現代の人間が奇異な目で見るであろう出で立ちをした金髪の少女が、謎の生物を蹂躙している様を見れば、誰だって自分の頭がイカレてしまったんじゃないかと考えるだろう。
もしかするとこの不思議な空間に入ってまた200年ぐらい時を遡ったのかもしれないな。などという現実逃避をしかけていると周りのサイケデリックな景色はいつの間にやら無機質なコンクリートの壁に変わっていた。
さて、どうするか。今の現象を彼女に話を聞いてみるのが一番だがこういうのはタイミングが大事だ。もしかするとあのマスケット銃の銃口は僕に向くかもしれない。
「魔女は逃げたわ。仕留めたいならすぐに追いなさい。今回は貴女に譲ってあげる」
やれやれ…魔女とやらは何かわからないがどうやら僕の存在は感づかれていたらしい。
ここで出ないと僕の眉間に風穴があいてしまうしな…と姿を現そうとした。
―――が向かいの薄闇から暁美ほむらが姿を現した。
不思議な、今度はなんというか…コスプレみたいな服装でだ。
「私が用があるのは―――」
「飲み込みが悪いわね。見逃してあげるって言ってるの」
有無を言わせない彼女の言葉にほむらは悔しげな視線を向けた。
「お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいとは思わない?」
「君たちのような無垢な子供はトラブルや障害を避けない方がいい。」
「だれ⁉」
「槙島先生…?」
「子供であるうちにトラブルを経験しなければ人は強くなれない。」
目の前で警戒をする少女二人に諭すように僕は続けた。
「僕の名前は槙島聖護。見滝原中学校で教師をやっていてね。たまたまさっきの空間に迷い込んで気づいたらここにいた。それで君たちの話を聞いていたらあの空間とか君が抱えているその生物とか…。」
と傷ついた生物を指さした。
「キュウべぇが見えるの⁉」
「おかしなことを言う。見えるも何もそこにいるだろう…?」
「どういうことなの…?」
僕は何かおかしなことを言っただろうか…?
目の前の少女は何かを考える仕草をしながら口を開いた。
「いいわ。マキシマ…さん?いえ、槙島先生にも知る権利がおありですし私の家でよければお話しします。」
「あなたはどうするのかしら?」
少女はほむらに向き直りそう問おうとするも彼女の姿はそこにはなかった。
「彼女なら僕がそこの生物を指さした辺りで視界から消えたよ。目を離した隙とかじゃない。文字通り一瞬でね。ところで君の名前を教えてくれるかな…?」
「その前にこの子の治療をさせてもらってもいいですか?」
「ああ…。好きにするといい。だがそのケガなら動物病院にでも連れて行かないと…。」
そもそも動物なのかも怪しい。少なくとも僕が読んだどの図鑑にもあんな生物は載っていなかったはずだ。
「いえ、大丈夫です。私にはコレがありますから。」
と彼女がその生物に手をかざすと不思議なことに生物の傷は少しずつではあるが塞がっていった。
「驚いた…。今日はサプライズばかりだな。」
と興味深げに傷が治る様を観察していると彼女は信じられないことを口にした。
「槙島先生は『魔法』って信じますか?」