西方妖々花   作:縁々

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 遅くなってすみません。
 今回ハリポタのハの字も出ません。


妖花と妖忌の武者修行

この世界で新しい生命を得て、私には新しい家族ができた。

 父の魂魄妖忌と母の花波、そして姉の忌波の三人だ。

 

 父は見た目年齢二十代後半の、鋭い刃のような雰囲気を持つ美丈夫だが、老人のような口調で話す変わった人だ。超一流の剣士で、嘘か本当か、空間でさえも切ることができるらしい。キャラがたっているとは、この様な人を指すのだろう。

 母は儚げな印象の美人だ。だが、その見た目が与える、触れば折れてしまうような印象に反して、軽々と薙刀を振り回す武人であるらしい。

 この夫婦は互いの技に惚れて交際を始めたそうだ。驚くべき体育会系夫婦である。

 そんな二人の間に生まれた姉も、当然体育会系だ。自身の体長の二倍はあろうかと言う刀を毎日の鍛練で振り回している。

 そしてつい最近生まれたばかりの私、妖花を合わせた四人が魂魄一家の構成になる。

 

 私達は人間ではない。転生条件のくじ引きの通り、半人半霊、つまりは妖怪である。

 半人半霊は妖怪としての力こそ高くはないが、寿命は途方もなく長く、また、本能や欲望に忠実な妖怪でありながら、とても理性的であるらしい。

 

 そんな魂魄家はあるお方に父の代より仕えている。

 そのお方は名を西行寺幽々子様と言い、私達が住まわせていただいている白玉楼の主である。

 妖怪一家を従える彼女もやはり人間ではない。

 何百年という年月を生きている⎯⎯正確には死んでいる⎯⎯亡霊である。

 

 ここまで現状を把握する中で疑問に思ったことがある。

 どうも、西行寺幽々子や魂魄妖忌などの単語に聞き覚えがある気がするのだ。

 恐らく、前世で知ったんだろう。そう見当を付け、記憶を掘り起こす。そして合点がいった。どうやら彼らは創作物のキャラクターであるらしい。ならばこの世界も創作物の世界ということになる。そういえば転生先を決めるくじのうちの一枚、『東方project』は二人が登場するゲームシリーズの総称だった。

 一度思い出せば東方projectに関する様々なことを思い出せた。前世の私は相当この作品を気に入っていたのだろう、その知識はどれもが鮮明なものだった。

 

 まずは力を付けることを目標にする。実力主義の幻想郷では強くなることが平和に暮らすためのもっとも手っ取り早い方法だからだ。

 幻想郷では人間は人里にいる限り安全が保証されるが、妖怪はそうではない。偶然遭遇した妖怪に殺されても、己の力不足を嘆いて運命を受け入れるしかないのだ。白玉楼にいる限りそのような事態になるとは思えないが、無能では幽々子様も自分の庇護下に置いては下さらないだろう。

 

 これで今後の指針は決まった。強くならなくては話にならない。この世界を楽しむのは力を付けてからだ。

 

 

■□■□■□

 

 

 肌を刺すような寒さを感じて目が覚めた。

 私は数日前にようやく座った首を回して当たりを探る。まず目にはいったのは頭上でゆっくり旋回する半霊だ。

 撫でるとひんやりとしていて心地よい。

 そのまま抱き寄せて上によじ登る。そして、半霊を浮遊させれば、まだハイハイもできない私でも自由に移動できるようになる。

 寝室には私以外誰もいなかった。

 乳幼児を一人にしておくのは感心しないが、仕方ないだろう。朝は毎日忙しい。私を除く家族全員が朝食作りに駆り出されるのだ。

 幽々子様は非常によく食べる方だ。己の体積以上の食事でもペロリと平らげる。

 亡霊にまともな物理法則を求めるだけ無駄のようだ。どうか、彼女が物理学者に出会わないことを祈っておく。きっと発狂してしまうだろう。

 

 厨房にいるであろう家族に向けて出発進行。宙をすいすい泳いでいく。

 なんとなく空を見上げると、雲ひとつ無い空が広がっていた。

 ここは常に薄暗い。子供を育てる環境ではないと思うが、妖怪では勝手が違うのだろうか。

 

 厨房に着いて中を覗くとそこは修羅場だった。

 母様は両手と半霊も使って三刀流の鍋を巧みに操っている。父様は己の技術の全てを総動員し、芸術の域にまで高められた動作で食材を捌いている。技術の無駄遣いのような気がしないでもない。姉様も塔のような皿を慎重に運んでいた。

 割って入れるような空気ではない。仕方ないので幽々子様を探すことにする。

 

 幽々子様はすぐに見つかった。眠気と空腹に耐えながら、居間で朝食の時を待っていた。

 私は幽々子様に挨拶すべく飛んで行く。

 

「おあうーうー!」

 

 私はまだ母音でしか話せない。それでも幽々子様に意味は伝わったらしい。眠たげながら、私に挨拶を返してくれた。

 

「あら、妖花じゃない。お早う、挨拶できて偉いわね」

 

 幽々子様が頭を撫でてくれる。前世の記憶がないと、恥ずかしくなったりもしないので有り難い。むしろ、積極的に甘えにいく。

 

「ふふっ妖花は本当にかわいいわねぇ。食べちゃいたいくらいよ」

 

 微笑んだ幽々子様は、少し考えるように目をつぶってから言った。

 

「美味しいかしら?」

 

 その目は捕食者のソレだった。

 反射的に逃げようと暴れるが、幽々子様にがっしりとホールドされていて抜け出せない。

 

⎯⎯⎯まずい。

 

 そう思ったときにはもう遅かった。

 ペロリと、ひんやりしたものが頬を撫でた。幽々子様の舌だ。亡霊の舌は驚くほど冷たい。

 背筋を冷たいものが伝った。

 

「うふふふふっ」

 

⎯⎯⎯?!っ誰か助けてッ

 

 

■□■□■□

 

 

 なんとか、私は幽々子様の鉄の胃袋に収まらずにすんだ。一歩手前で料理を運んできた両親に救い出されたのだ。

 父様、母様大好きです。

 姉様からは同情するような、仲間を見つけたような視線をいただいた。姉様にも同じような経験があるらしい。

 

 突発的な命の危機から脱し、朝食がすんだ私は安心して母様の腕の中でうとうととしている。

 その隣では父様が犯人に娘を食べないように注意している。いや、どちらかというと懇願に近い。魂魄家に彼女の食欲の恐ろしさを知らないものはいない。

 この亡霊を放っていると、屋敷まで食べ尽くしてしまいそうだ。

 恐ろしい想像から逃げるように目を閉じ、そのまま睡魔に身を任せる。

 完全に意識か落ちる寸前で祈った。

 

⎯⎯⎯幽々子様が夢に出ませんように。

 

本当にお願いします。切実に。

 

 

■□■□■□

 

 

 あの命の危機から、月日が過ぎ、二十歳に成った私は父様に剣を習っていた。

 二十歳とはいっても人間と妖怪では成長速度が違うらしく、私の見た目はせいぜいが五歳児に見えるかどうかと言った所だ。当然、体が軽く、刀の重みに振り回されてしまう。

 どうにかバランスを取り、私は正面を見据えた。

 眼前には父様が背筋をピンと伸ばして構えている。

 元々父様は斬る、と言う事に特化した剣士である。敵に斬られる前に斬る。防御されても、もろとも斬る。攻撃されても武器ごと斬る。斬れないものでも、無理矢理斬る。

 滅茶苦茶だとは思うが、その戯れ言を体現してしまったのが、この剣士なのだ。

 そんな父様の指導方針は単純明快。斬って覚えろだ。ひたすら父様に斬りかかり、体の動きをより良くしていく。

 

 私は身を前に倒して、一気に踏み込む。急激な加速を受けた私の体は容易に五メートルほどの距離を詰めて、父様の足元にたどり着いた。

 この体は特別優秀な様で、既に成人男性程の力を発揮できる。

 すれ違い様に、相手の足に一閃入れようとするが、容易に剣で受け流されてしまう。

 勢いをそのままに跳び、三角跳びの要領で自身の半霊を蹴って再び父様に斬りかかる。

 が、やはり受け止められる。しまったと思った時には既に遅く、刀を絡め取られ、奪われた。

 父様の手加減した手刀が私の体を強かに打つ。

 五メートルほど吹き飛ばされた私は受け身を取り、再び父様に向けて駆ける。

 刀を失っただけで訓練は終わらない。父様の本気の手刀ならば、人体程度は容易に引き裂けるからだ。私もいずれは、そう成らなければならない。

 父様に届くまで後一歩ほどの所で、全身に妖力を回し、身体能力を強化する。

 全力の踏み込みで、地面にヒビが入った。すべての力を手のひらに集約し、全力の掌底を放つ。

 だが、その一撃が父様に届くことはなかった。

 私の掌底を刀が受け止めると、とたんに私の腕は今までの勢いを失い、刀に受け止められた。

 何か起こったのか。父様を見上げると、彼は言った。

 

「衝撃を斬った」

 

呆然とする私の首元に父様が刀を当てる。勝負ついた。

 

「出鱈目すぎます┄」

 

 恨みがましく言う私に、父様が少し誇るように言った。

 

「この魂魄妖忌に斬れないものなどほとんど無い」

 

 壁はあまりにも高すぎるようだ。

 

 

■□■□■□

 

 

 一方的な勝負が終われば、何時ものように縁側でお茶を飲みながら反省会をする。型に囚われることを父様はあまり好まないので、素振りなどをしたことはあまり無い。柔軟→試合→反省会がいつもの流れだ。

 お茶を一口啜る。

 うまい。

 

「妖花も順調に力を付けてきておるな。父としても、師としても鼻が高いわい」

 

「父様はそう言いますが、只の一度も父様に攻撃を当てられていません。本当に私は強くなっているのでしょうか?」

 

 膝の上で落ち込む私の頭を父様は優しく撫でる。心地よくて無自覚に、頭を父様の大きな手のひらに擦り付ける。

 

「早々に一撃入れられては、たまったもんじゃないわい。・・・妖花はわしと違って妖力を扱う才能も高い。刀で負けるつもりはないが、強さではすぐに追い抜かれてしまうじゃろうのぅ」

 

「父様なら、妖力でも簡単に斬ってしまうでしょう?」

 

「無論じゃ。弾幕などは特に斬りやすい。しかし、身体強化で接近戦を挑まれては些か分が悪いじゃろう」

 

「父様は身体強化は使えないのですか?」

 

 私が訪ねると、父様は暫し思案する。そして、逆に私に訪ねた。

 

「わしが元々人間だったことは知っておるか?」

 

「?はい。幽々子様がおっしゃっていました。『試しに生き返らせたら、妖怪になっちゃたのよ』って」

 

「左様。本来、人間だったわしは霊力を持っておった。生前は霊力の量こそ少ないが問題なく使えておったのじゃ。じゃが、妖怪に転じ、妖力を得てからはどうにも使えない。霊力と妖力とでは、使用する感覚が違いすぎるのが原因だと考えておる」

 

「なるほど。では霊力を使えた生前の方が父様は強かったのですか?」

 

 私は例外として、半人半霊は力の強い妖怪ではない。人間とあまり変わらない。なので父様の力は霊力が使える分、生前の方が強かったということになる。

 そう思い、私が聴くと、父様はそんなことはないと笑った。

 

「身体能力でこそ劣るが、技の冴えは今が圧倒的に上じゃ。生前のわしが十人でかかってこようと負けはせんよ」

 

「私と当時の父様ならどちらが強いですか?」

 

「どうじゃろうか。あの頃は滝を少し割るのが精一杯だったしのぅ、わしが負けたかもしれんな」

 

 私は、貴方の生前は本当に人間ですか?と言いそうになるのを必死でこらえた。

 

「さて、そろそろ幽々子様の腹がなる時間じゃ。昼飯を作らなくてはの」

 

「ああ、もうそんな時間ですか」

 

 父様は膝の上の私を抱き上げると、厨房に歩きだした。




⎯⎯妖花(主人公)
 素直クールならぶりー幼女です。


⎯⎯幽々子様
 食欲の権化。幽々っぱい信奉者の作者が書く幽々子様は当然のように巨乳です。


⎯⎯妖忌さん
 設定がはっきりしていないのをいいことにオリ設定の塊に成った人。引くほど強い。
 幽々子様に三百年仕え、西行妖の開花を見たことがある。妖夢の祖父かつ、師匠である。などの設定から本作では以下のような設定に成りました。
 ①幽々子様の父に門番として、妻と共に仕える。
 ②幽々子様の父が桜の木下で自殺。その他大勢も後追い自殺。結果西行妖が開花してその気に当てられて妻ともども死亡。白玉楼に埋葬される。魂は幽々子を最後まで守れなかった未練で成仏できず、現世に留まる。
 ③何百年かたった頃、幽々子様が夫婦を気紛れに蘇生。(咲夜が空間を操れるように、幽々子様も生をある程度操れる?) 幽々子様や西行妖の妖気に触れすぎていたため、妖怪化する。
 ④ひたすら修行。
 ⑤引くほど強くなる。


⎯⎯母
 目立たせる気はない。名前考えてるけど多分でない。妖忌さんと良い勝負が出来るくらい強い。


⎯⎯姉
 目立たせる気はない。未来の妖夢の母。鉄人レベルで料理がうまい。



2016/3/15誤字修正しました
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