ハリポタ要素は結局出せませんでした。重ねて申し訳ない。
2016.5.8 誤字修正しました。報告してくださった方はありがとうございました。
季節がくるくる移り変わり、今年もまた桜の季節がやって来た。私が生まれ変わってから実に五十回目の春だ。
我らが白玉楼の庭には西行妖の一本を除いて、無数の桜が咲き誇っている。冥界の暗い空の下で観る桜は、怪しい魅力に満ちていた。
散った花びらの片付けを考えると頭が痛いが、この美しい光景の前では無粋だろう。
桜が咲いているのに、はしゃがない道理は日本人には存在しない。なので、今日は花見である。
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⎯⎯花より団子と言う言葉は、きっと幽々子様の為に在るんだろうなぁ。
目の前の光景をぼんやり眺めながら、そんなことを思う。
桜の木下で笑う美少女、といえば聞こえは良いが、その美少女が食器の山を量産していては、魅力も半減だ。
母様と姉様がせっせと食事を運び、幽々子様がせっせと消費する。
その隣で私と父様はちびちびと花見酒を楽しんでいた。幽々子様の世話は完全に二人に丸投げしている。
「我が子と酒を呑む日が来るとはのぅ。これも幽々子様が生き返らせてくださったお陰じゃの」
父様が言う。彼が酒を呑む姿は、実に様になっている。見た目は落ち着いた好青年なのだが、口調だけが残念でならない。
この幻想郷には飲酒の年齢制限などのルールはないのだが、子供の姿で酒を呑むことに拒否感があった私は、これまで酒を呑まないようにしていた。だが、五年前から身長が伸びなくなった⎯⎯だが胸は膨らみ続けている⎯⎯ので、五十歳に成る今年から飲酒を解禁することにしたのだ。
「ふふっ大袈裟ですね。姉様とも呑めるでしょう?」
「忌波は弩級の下戸じゃからの。一滴で潰れてしまいおる」
そういえば、思い返すと、姉様が酒を呑んでいる姿を見たことがなかった。ならば、父様の言葉もあまり大袈裟ではないかもしれない。姉様が生まれてから今日まで、軽く百年は待たされたことになる。
ここは、私が姉様の分も父様に付き合って差し上げなければ。
「これから色々教えてくださいね。お酒の事」
「おうとも。わしが知る、酒のすべてを伝授してくれよう!」
ほどよく酒が回り、機嫌のよくなった父様が声高に宣言する。
かくいう私も、段々と気分がよくなってきた。
あぐらをかく父様の膝に割り込み、筋肉質な胸に体を預ける。何となく、人肌恋しくなったのだ。
空になった酒器に父様が新しい酒を注いでくれる。次いで、天に杯を掲げて言った。
「ほれ、もう一度、娘とのはじめての酒に乾杯じゃ!」
「乾杯です!」
二人揃って一口で杯を乾かす。
ここから、記憶があやふやで思い出せない。
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翌日、すっかり酒の味を覚えた私は、酒瓶を片手に酒を呑む理由、つまり花見をする場所を探していた。
空から桜色を探す。そして、幻想郷の隅に見事な桜を見つけた。
早速飛んでいく。
果たしてたどり着いたのは、歴史を感じさせる趣の社だった。博麗神社である。
人気の無い境内には満開の桜達が枝を伸ばしている。
早速、一際大きい桜の元に着地して、見上げてみた。本当に素晴らしい桜だ。そういえば、この前烏天狗の新聞にも取り上げられていたっけ。
このまま酒を呑んでも良いのだが、やはり肴もあった方がいい。しかし、人間の里にまで買いにいくのも面倒だ。
ならば、と私は社の方に歩いていく。
先ず、賽銭箱に一貫文程投げ入れる。特に祈ったりはしない。妖怪が神に祈るのも筋違いだし、そもそも此処に誰が祭られているのかも知らないからだ。
玄関の戸は鍵がかけてなかったので、遠慮無く入らせてもらった。
「お邪魔しまーす」
返事は無い。が、人の気配は感じるので博麗の巫女はご在宅のようだ。
勝手知ったる他人の家。と言う奴で、先代の時代から私は時々この神社にやって来ては、手合わせをお願いしたりしていた。向こうも安全に実戦の経験が積めるので基本的に断らない。その辺の妖怪を相手に積めば良いのでは、と思うかもしれないが、あくまで彼女達の仕事は人妖のバランス調整なので、適当な相手に喧嘩を売るわけにも行かないのだ。
廊下を歩いて、気配を感じる部屋の前にたどり着く。寝室だ。
引き戸を開ければ案の定、今代の博麗の巫女が布団にくるまっていた。
博麗の巫女には必ずと言って良いほど変人しかいない。原作に登場する博麗霊夢は無気力だし、修行相手だった先代はバトルジャンキー。そして今代は・・・。
「起きてください。妖怪に不法侵入されても布団にくるまっているようでは、博麗の巫女失格ですよ」
「・・・仕事なんてくそ食らえ」
・・・ニート気質である。
「何故紫様は貴女なんかを博麗の巫女にしたのでしょうか」
「はっ。こっちが聞きたいね。そもそも巫女ってなんだよ、こちとら無神論者だっての」
「無神論はないでしょう、神様ならその辺にいるじゃないですか」
石を投げれば神仏妖霊に当たるのが幻想郷である。
「あんな、掃いて捨てるほど居ればありがたみも薄れるよ」
「神様を掃かないでください。バチが当たりますよ」
「この程度で神罰を下すような神なら、やっぱり崇める価値なしだね」
枕に顔を押し付けながら、少女は吐き捨てるように言った。
はぁ、紫様、今からでも遅くありません。早急に巫女を変えましょう。巫女がこの調子では幻想郷が心配でならない。
これでも実力があるからタチが悪いのだ。この子は。
「台所を借りますよ。もう昼過ぎなんですから、貴女も布団から出てください。一緒に花見をしましょう」
「妖怪と花見とか、博麗の巫女としてどうなのかね」
「お前が言うな」
「・・・普段は上品ぶってるけど、結構がさつだよね。きみ」
放っておいてください。
私はだらけ巫女を引きずって台所に向かった。
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翌日。
昨日はいざ花見、と言うところで巫女が酒を一口飲んだだけで潰れてしまい、ろくに呑めなかった。あの子はうちの姉様並みに下戸だったらしい。
なので今日こそは、と思いやって来たのは霖之助の家だ。彼の家のそばには、立派な桜の樹が一本立っている。春になると、よくそこで二人で花見をするのだ。
戸をノックしてから中に入る。
「お邪魔しまーす」
玄関で少し待つと、奥から霖之助が出てきた。
「いらっしゃい妖花。また何か、面白いものでも拾ってきたのかい?」
「いえ、一緒に花見でもどうかと。お酒と肴も持ってきましたよ。一緒に飲みましょう」
私がそう言うと、霖之助は少し驚いた様子だった。
「君は酒は呑まない主義だと思ってたよ」
「今年から呑むことにしたんです。お酌もできますよ」
「楽しみにしておくよ。準備してくるから少し待っていてくれ」
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森近霖之助はひどく困惑していた。
その原因は、彼の膝の上で鼻唄を歌う小さな少女だ。
魂魄妖花。彼女は霖之助と趣味を共有する貴重な、それこそ親友と呼べるほどの大切な友である。付き合いもそろそろ四十年程に成るか。
そんな彼女が霖之助を花見に誘ったのは昼過ぎの事だった。
春に成ると、二人でひっそり花見をするのは毎年の事だが、今日はいつもと違うことが一つあった。今まで酒を呑まなかった妖花が酒を持参してきたのだ。不思議に思って訪ねてみれば、今年から呑むようになったとの事。それならば、と秘蔵の酒を倉から出してきたのが間違いだった。
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先ず桜の木の下に陣取り、料理を広げた。さすが、妖花の趣味は良く、酒が思いの外進む。親友と呑む初めての酒と言うシチュエーションも効いたのかもしれない。
彼女もなかなか呑める口だったようで、早々に彼女が持参した酒を開けてしまう。
次いで二本目、三本目、と談笑しながら開けていく。霖之助は酒にかなり強いと自負していたし、彼女も頬がうっすらと桜色を帯びてきた程度で、堪えた様子はなかった。なので自然とペースが上がっていく。
異変は七本目を開けたときに起こった。ついさっきまで理性の光を宿していた彼女の瞳が突然、とろん、と蕩けたのだ。夢を見ているような、心底幸せそうな顔の少女が霖之助を見上げた。
すこし不味い事態を察知しつつ、霖之助は妖花に声をかけた。
「大丈夫かい?なんだか急に酔いが回ってきたみたいだけど」
「そうでふね。らじょーぶでふ。よゆーでふ」
「いや口調が既に大丈夫じゃなさ「らいじょーぶでふ」
不味い。霖之助は思った。いくらなんでも酒を呑み初めてすぐの相手に飲ませすぎたと後悔した。彼女はどうやら突然酔いが回るタチのようだった。
霖之助をぼんやりと見つめていた彼女は、なにかを考え付いたようで、突然、にぱぁー☆と擬音が付きそうな笑顔を浮かべると立ち上がった。
「しつれーしまふね!」
「へ?」
少女は言うが早いか突然霖之助に勢い良く抱きつく。
思わず霖之助がのけぞると体を反転させ、すっぽりと膝の上に収まってしまった。
「いいひざでふ」
「あの、妖花?」
「ひざこそわたしのあんそくのちでふ」
「さっきから言動が意味不明なんだけど?!」
あわてふためく男など意に介さず、妖花は上機嫌に口笛なぞ吹いている。
「早く降りて!水でも飲んで酔いを冷まそう!」
「みずならここにありまうよ」
妖花はまだ半分ほど残った一升瓶を口の中にひっくり返す。それに焦ったのは霖之助だ。この状態の妖花にさらに酒が入ればどうなるかわからない。その答えは直ぐに、分かった。あまり嬉しくない方法で。
「ダメでふねりんすけは!これはみずじゃなくておさけでふ!」
「知ってるよ?!君が勝手に飲んだんだろう?!」
はぁーーと長いため息をついた。この事態はどう収集つけよう。
「つかれてまふね」
「君のせいでね・・」
「わるのはしゃかいでふ。せいじかがむのーだからだめなんでふ」
「訳がわからないよ」
「でたな!いんくぺーたー!」
本当にどうしよう。もう一度深いため息をつく。
「つかれたときはひとはだのぬくもりがいいんでふ!」
そう言うと妖花は霖之助の膝から立ち上がった。霖之助が助かったかと顔をあげると同時、なにかとても柔らかい感触を感じた。そして感じる圧迫感。
「ぎゅーー」
彼女の身長は霖之助の胸に来る程度だ。そして今霖之助はあぐらをかいている。それを抱き締めようとすれば、当然胸は顔に当たるわけで・・・。
一瞬の思考のあと、霖之助は絶叫する。
「わーー!?ちょ、妖花離し「わたしはでーかっぷでふ!」
「聴いてないよ!」
「もうすぐいーになりまふ!」
「だから聴いてないよ?!」
このままでは窒息してしまう。仕方なく霖之助は彼女の両脇にてを差し入れて持ち上げる。手に当たる柔らかい感触は無視。
「もちあげましたね?とーさまにもたかいたかいされたことないのに!」
「あーすぐ下ろすから」
「さくらがきれいでふ・・」
もう、いちいちこの子の言葉を聞くのは止めよう。酔っぱらいの言葉など聞くだけ無駄だ。
「たかいたかいはとーさまにされていらいでふね」
「されたこと無いんじゃなかったの?!」
だめだ。つい突っ込んでしまう。
とにかく、妖花がこの状態ではもう花見は続けられないだろう。先ずは酔っぱらいを寝かせてしまおう、と妖花をおぶって、家の方に歩き出した。
「だっこがいいでふー」
無視だ、無視。
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目覚めると、何故か霖之助の家の寝室だった。
事態を把握すべく、家主を探す。どうやらここには居ないようだ。
霖之助の香りがする布団から起き上がり居間に出ると、霖之助が道具に埋もれるように眠っていた。熟睡しているようだ。起こしてしまうのは躊躇われた。
窓から見える空は、まだ白み始めたところだ。部屋の隅に置かれた振り子時計は五時頃を指している。
霖之助が目覚めるまでやることがない。つまり暇だ。
なんとなしに、眠る親友の顔を観た。少し顔色が悪いように思える。こんなところで眠っていれば、仕方ないのかもしれないが。
そもそも、何故私が布団で眠り、霖之助が此処で眠っているのだろう。
記憶を探ってみても、昨日の事は、お酒を六本飲んだ辺りからあやふやだ。何となく、幸せだったような気はする。
「うーん」
霖之助がうめいた。起きようとしているのではなく、魘されているようだ。時折、高い高いだとか、おんぶだとか寝言を言っている。
私が頭をそっと撫でると、少し落ち着いたようだ。
ふと、名案を閃いた。
「疲れたときは、一肌の温もりを感じると癒されますよね」
早速実践すべく。横になり、そっと霖之助に抱きついた。
彼が起きるまでは、私も眠ることにしよう。
私は目を閉じた。
霖之助の叫び声が辺りに響き渡るまで、あと二時間と少々。
妖花ちゃん、初めての朝帰りの回でした。
最近霖之助とくっつけようか悩んでいます。
⎯⎯妖花ちゃん
酒を呑むと幼児退行する。
喜べ同志諸君、Eカップだ!
⎯⎯妖忌さん
引くほど呑む。
⎯⎯お姉ちゃん
さらっと名前が初登場。忌波ちゃんです。
妖花 + 忌波 → 妖忌 + お母さんの名前になります。
⎯⎯今代巫女ちゃん
たぶんもうでない。
だいたい霊夢の二代前。
妖花が博麗の巫女に接するスタンスの伏線のつもりで出しました。ハリポタのキャラもそうですけど、みんな妖花より早く死んでしまいます。
妖花は死を悲しみはしても、人の道を外れて迄生き長らえてほしいとも思いません。そうすると、自然とカップリングが霖之助に固定されるわけです。
⎯⎯霖之助くん
通称りんすけ。
お疲れさまでした。そして、羨ま氏ね。
春休みに入ったら、もう少し更新ペース上がると思うので、お待ちください。