西方妖々花   作:縁々

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 スランプです。花粉症です。新学期でてんてこ舞です。遅れたけれど『ボクは悪くない』



 ・・・すいませんでした


2016.4.4 サブタイ入れるの忘れてました。すみません。



妖花と父親(予定)②

 道路の脇に座り込み、人々の往来と風で揺れる白いウサギの耳をぼんやり眺める。

 耳の持ち主の名前は鈴仙・優曇華院・イナバ。見た目はウサミミを着けたコスプレ女子高生と言うところだろうか、此方ではあまり見ない学生ブレザーのようなものを着込み、シルバーフレームの眼鏡(・・・・・・・・・・・)を掛けている。

 彼女は今日のように時々人間の里に出てきて、八意永琳様が作った薬を販売しに来る。現に今も風呂敷を広げて、恐ろしく高度な薬をお手頃価格で提供している。

 

 私が先程購入した薬を手の中で遊ばせながらぼんやりしていると、終始こちらをチラチラ見てきていた鈴仙が言った。

 

「薬買ったなら早く帰りなさいよ。もしかして営業妨害のつもり?」

 

「気配は消してありますから、周りの人は気付いていませんよ」

 

「これでも私は元軍属なの。中途半端に気配を消されると寧ろ気になるのよ」

 

「あーそう言えば逃亡兵でしたね貴女」

 

「うぐっ。もう少し言い方ってものが・・・」

 

 それはそうと、お客さんが怪訝な顔をしていますよ。誰も居ない─ように見える─場所に話しかける今の彼女は、服装と合間って中二病を患っているようにしかみえない。

 

 全く、お客様を放置して私語とは何事か。

 私はひとつ嘆息すると、能力の使用を止めて、気配を元に戻した。

 

「お客様。どのような薬をお求めでしょうか?」

 

 先々代霧雨店主直伝の営業スマイルでお客さんに訊ねる。

 

「うお?!・・なんだ妖花ちゃんか。驚かせないでくれよ」

 

「あはは。すみません」

 

 お客様は知り合いだった。霧雨道具店でたまに見かける人物だ。

 和やかに接客していると、鈴仙がUMAでも見るような顔をする。そんな顔をする暇があるなら自分で接客してほしい。

 お客様が商品を購入して帰っていったのを見て、彼女は言った。

 

「えらく手慣れてるのね」

 

「二代前の霧雨道具店の店主さんに仕込んでもらいましたから」

 

「妖怪が商人魂身に付けてどうするのよ」

 

「寧ろ貴女は教わるべきでは?前から思ってましたけど、接客の時に顔がひきつってるんですよ貴女」

 

 私が指摘すると、心当たりがあったらしい鈴仙はむぅ、と言ったきり沈黙した。三角座りをして、膝に額をグリグリ押し付ける。

 

 動く様子がないので、仕方なく私が接客する。幸い、鈴仙が幻想郷にやって来る迄は私がこの薬を売る役割を担っていたので、困ることはない。

 思い返せば、当時の霧雨店主さんに弟子入りしたのも、永琳様に薬の販売を手伝うよう頼まれたのがきっかけだったか。

 

 流石永琳様の薬だけあって売れる売れる。

 二十人程のお客様を捌き終えた頃、鈴仙が私に言った。

 

「それで?貴女は何でここにいるの?」

 

 問われた私は声を潜めると、鈴仙の肩に自分の肩を引っ付け、周りに聞こえないよう注意を払って話す。

 

「・・・噂で聞いたことはないですか?幻想郷に一波乱ありそうだと」

 

「あー最近入ってきた新顔が暴れ回ってるそうね。種族は確か・・・空亡(そらなき)、だったかしら」

 

 鈴仙も心なし真剣な顔になる。どうやら彼女は今回の件を少し気にしているらしい。

 だが・・・。

 

「いえ、そっちではなく。私の姉に男の影が有ると言う噂です」

 

 依然、三角に折った膝の上に乗せられた鈴仙の頭がずり落ちた。

 

「知らないわよ?!その話と一波乱と、どう関係が有るって言うのよ」

 

「いえね?家族を溺愛する父様ですから、娘に恋人ができたなんて知ったら八つ当たりで博麗大結界をみじん切りにしかねないと思って」

 

「あんたのお父さん何者よ」

 

 知りませんよ。娘の私でさえ計りきれないナニカです。

 

「とにかく。幻想郷が崩壊の危機に瀕する前に噂の真偽を確かめようと、こうして大通りを張ってるわけです」

 

 幻想郷を救う決意を胸に、私は手を固く握りしめた。だが鈴仙は他人事のように、あっそがんばってね、と言って片付けを始める。

 ひどい親友だ。しくしく。

 

「何帰ろうとしてるんですか?『私も手伝うわ!』とか無いんですか?」

 

「今日はやけに売れたからもう帰「接客態度の差ですね」・・うるさい」

 

 尚も帰る支度を続け、本当に荷物を纏めてしまった鈴仙を逃がさないように、腰に抱きつく。

 

「離しなさい!私は手伝わないわよ!余った時間でモブイナバ達を撫でるんだから!」

 

「私の頭でも撫でてれば良いでしょう!良いから手伝いなさい集音機!」

 

 事情は違えど、私も鈴仙も注目を集めたくはないので、終始気配を消して小声である。

 

「貴女は私にたくさん借りが有るでしょう。少しはここで返しなさい」

 

 例えば月から逃げてきて行き倒れてた鈴仙に食べ物をあげたり、迷いの竹林に連れていったり、かぐや姫様の説得を手伝ったり、魔眼殺し的な眼鏡を作ってあげたり。我ながらよくここまで借しを作ったものだと思う。

 

 私がじぃ、と鈴仙の目を見つめると、やがて彼女は観念して頷いた。

 

 

■□■□■□

 

 

 姉様は人間の里で一番モテると言っても過言ではないほど、人気の女性だ。私が人間の里で比較的顔が売れているのも、『高嶺の花の妹』と言う要素が強いのかも知れない。

 どうか、男性諸君にはもう少し同族に目を向けてもらいたい。そして一部の稀有な女性諸君にはせめて異性に興味を持って欲しい。幻想郷でまで『少子化』のワードは聞きたくない。

 普通なら妖怪に懸想などすれば親が止める所だが、父、いや祖父の代から彼女は高嶺に咲き続けてきたので、これも難しい。

 そんな姉様だから、遂に何処ぞの誰かに射止められたと言う噂はすぐさま人里中に伝播したらしい。

 

 先程入手した優秀な集音機が立ち聞きした所によると、噂は様々だった。

 曰く、手を繋いで中睦まじく歩く姿が多数目撃されている。

 曰く、相手は姉様に釣り合う程の美男子である。

 曰く、相手は剣の腕に長けた、新進気鋭の妖怪退治屋である。

 他にも多数の噂があったが、どうやら姉様に恋人ができたことは事実と見て間違いないようだ。相手の男性にも悪い噂は無く、寧ろ若いながらもやり手の妖怪退治屋として頼りにされているらしい。

 妖怪退治屋が妖怪に恋をするのはどうかと思うのだが、案外この手のラブストーリーは幻想郷では稀によく有るらしい。ソースは幻想郷縁起。

 

 私と鈴仙は極力目立たないように気を付けながら、人里の比較的大きな通りを歩いていた。

 現在の私たちの格好は先程とは大きく異なる。私は腰まであった長髪を能力で肩の辺りまで縮め、色も黒く染めている。鈴仙は特に目立つウサギ耳を目眩まし術で隠し、私と同じく髪を黒く染めてある。

 全身を魔法で隠せれば話は早いのだが、流石にそれをすると、妖怪の襲撃と取られかねないので止めておいた。

 私達から目算十メートル程のところを歩く男女の二人連れがいた。女の方は間違いない。姉様だ。と、なるとその隣を歩く彼こそ噂の美男子くんなのだろう。

 私が姉様を射止めたと言う青年を慎重に見定めていると、鈴仙が言った。

 

「見たところ相手はただの人間みたいね」

 

「ですね。霊力は辛うじて中級妖怪レベル。・・・正直あまりパッとしませんねぇ」

 

「でも、身のこなしは中々じゃない?」

 

「それも姉様にすら及んでいませんけどね」

 

 今のところ父様が認めてくれるようなポイントを見つけられないでいた。というか、私もまだあの人を『義兄様』と呼びたいとは思えない。いや、年齢的には弟になるのか。

 

「というか、まだ付き合い始めただけで結婚するかどうかわからないじゃない」

 

「いえ、よく見てください二人の左手薬指。ベアリングがはまってますよ」

 

「幻想郷にも婚約指輪の文化があるのね」

 

「?そう言えば聞いたこと無いですね」

 

 私の記憶では人間の里に婚約指輪の文化は無い。あるいは浸透していないはずだ。

 そう言えば私は姉様に何度か蔵書を貸したことがあった。その内容を姉様が真似たのだろうか。

 そうこうしているうちにカップルは落ち着いた雰囲気の茶屋に入っていく。大きな茶屋だ。ちょっとした宿屋くらいの大きさは有るだろう。

 見たところ他の客も恋人どうしだったり夫婦ばかりらしい。流行りのデートスポットなのだろう。

 私たちもカップルから一番遠い席が空いたのを見計らって入店した。私はあんみつを、鈴仙は団子を注文した。鈴仙が強気の値段設定に文句を言っているが、無視。

 

 今は目に見えないが耳をピンと立てているんだろう。鈴仙が突然、慌てたように言う。

 

「ちょっと!あの二人赤ちゃんがどうとか言ってるわよ!」

 

 思わず口に含んだ甘い物体を吐き出さなかったのは幸運だった。

 

「?!・・・もしかしてデキちゃったかんじですか」

 

「分からないわ。もう話題が変わったみたい。店に入るのが少し遅かったかな」

 

 これは博麗大結界が崩壊する未来が現実味を帯びてきた。私は内心冷や汗でびっしょりだ。が、少し考えて思い直した。案外これは悪い事態ではないかもしれない。親バカの父様の事だ、孫の顔を見せてしまえば簡単に懐柔できる可能性もある。

 私が頭を悩ませていると、姉様たちに動きがあった。店員に話しかけられ、店の奥に入っていく。

 

「どうしましょう。向こうの音を拾えますか?」

 

「ちょっと待って」

 

 私が言うと、鈴仙は目を瞑った。聴覚に神経を集中させているようだった。或いは能力で空気の波を感知しているのかもしれない。

 十秒ほどそうしていると、突然かっと目を開き。私の手を掴んだ。

 

「帰ろう。今すぐ」

 

「え?」

 

「良いから早く!」

 

 鈴仙は私を引っ張ると、素早く勘定を済ませ、茶屋を出た。みるみる茶屋が遠くなっていく。

 私は引きずられながらしばらくの間呆然としていたが、なんとか現実に復帰する。

 

「突然どうしたんですか鈴仙?!」

 

 私が突然親友を里中引き回しの刑に処すという凶行の理由を訊ねると、鈴仙はようやく立ち止まった。突然止まるものだから私の体は慣性の法則に忠実に従い、十メートル程空を飛んだ後、木の根本に額を打ち付ける形で止まった。この飛距離から鈴仙が如何に全力で走っていたかがご理解頂けるだろう。

 気づけば私たちは人間の里を飛び出していたようだ。辺りには木が生えているだけで、人工物は見当たらない。

 

 私が痛みを訴える首を宥めながら鈴仙の方を見ると、彼女は赤面しながら地面を無心に殴っていた。

 鈴仙の能力は遂に彼女自信まで発狂させてしまったのだろうか。そう思わずには居られないほど珍妙な光景が其処に在った。

 

「ほんとにどうしたんですか?鈴仙」

 

 念のため、五メートルほど距離を開けて問う。

 鈴仙はようやく私の方を見ると、か細い声で言った。鈴仙の目には涙が浮かんでいて、顔も依然赤いままだった。

 

「・・・あの、お茶屋さん・・でっ出合い茶屋・・だったの・・」

 

「?であいちゃや?何ですかそれ」

 

 出会い?茶屋で?何と?

 

「連れ込み宿の事・・よ」

 

「連れ込み宿・・・?宿・・ホテル・・ああ!もしかしてラブホテルですか?」

 

「・・・・・そうよ」

 

 そうかそうか。であいちゃやはラブホテルの事だったのか。それなら客がカップルばかりだったのもなっ・・と・・・くぅ?!

 

「ええええ?!らっらぶほてる?!リア充の巣窟?!」

 

 自分でも顔が急速に赤くなっていくのが分かった。

 

「そっそそそそれはつまり、そのっ私たちはさっきまでそのっそういうことをイタす所に女の二人連れで居たってことですか?!」

 

「・・・そうよ。周りには私達がレズのカップルに見えたでしょうね」

 

「じゃあっ・・その・・・姉様達が奥に入っていったのもそういうことでっ今頃姉様はあのお茶屋さんであんなことやこんなことにっ?!」

 

「そういうことよ!うあああぁぁぁーさっき聞いた声が耳から離れなぃぃ」

 

 今日ほど穴があったら入りたいと思った日はないだろう。私も鈴仙も顔から火が出そうだった。

 

 

 結局、私達が平常心の半分まで落ち着いた頃にはとっぷり日が暮れていた。




 私はいったい何を書いているのだろう。疲れてるのかな?でも、赤面する女の子が可愛いのは真理ですよね。


──妖花ちゃん
 昼に幻想郷を救うんだーとか言いながら出ていって、夜に赤面して帰ってきた。


──うどんげ
 人間の月面進攻(たぶんアポロ計画)にビビって幻想郷に逃げてきた脱走兵の玉兎。玉兎は月に住む兎の事で地位的には奴隷階級。だが表現的にはパシりに近い。
 『狂気を操る程度の能力』を持つがその本質は物の波長を操る能力。脳波や音波など波なら大抵操れるっぽい。鈴仙の目を見ると発狂してしまうが、今は妖花が作った『魔眼殺し的な眼鏡』で封じ込んでいる。
 例の茶屋でエロい声や湿っぽい音、何かを打ち付ける音を聞いてしまった模様。当分は淫夢に悩まされるだろう。


──お姉ちゃん
 童顔で妖花ちゃんを越える爆乳。料理が三ツ星レベル。嫁に欲しくば妖忌さんと幽々子様を越えていけ!


──彼氏
 タヒね。五回ほどタヒね。話はそれから聞いてやる。


──出合い茶屋
 江戸から明治ぐらいにかけて流行ったいわゆるラブホ。ラブホにすら行ったことのない作者にはシステムなんかはちんぷんかんぷん。
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