東方騎士譚   作:城縫威

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料理

料理、と言ってもどこからどこまでが料理といえるのか、刃物で捌けばそれは料理なのか、煮て焼いたのが料理なのか。料理といってもそれは多岐にわたる調理法の中、簡単に分けて行っても、日本料理、中華料理、イタリア料理、フランス料理、それ以外にも場所の違いによっては同じ地方でも違った料理の形態がある。

料理というものは多種多様、料理の中には薬膳料理や精進料理など、病気を直したり、宗教に則って作られたものなどがある。

そしてアルトリウスの前には、テーブルにずらっと並べられた料理本がある。

 

「ふむ、一口に料理といっても沢山あるものだな。」

 

「それはそうよ。料理なんてものは組み合わせによって無限にレシピが出来るんだから。」

 

アルトリウスのつぶやきの答えたのは紅魔館、メイド長を務める十六夜咲夜である。

 

「今までは料理の基礎しかやっていなかったから、次は色んな種類の料理を練習してそこから応用が利けるまでが目標ね。」

 

「ふむ。」

 

アルトリウスは数十種類ある料理本の中から一冊を手に取りパラパラとめくる。

 

「見た限りでは特殊な調理法はないのだな。」

 

「ええ、基本は食材を切って焼いたり煮たり、だけど味付けは料理によってガラッと変わるから、そこら辺の塩梅を見極められる様になれば大体の料理は作れるようになる筈よ。」

 

「なるほど。私の世界ではこんなにも料理と言ったものに種類がなかったからな。こんなに沢山の種類があると覚えるのも一苦労だ。」

 

咲夜の顔が少しだけ怪訝な顔になる。

 

「貴方の世界ってどんな料理が一般的だったの?」

 

咲夜にとって、料理というものは基礎からなり、沢山の種類のあるものだと最初から思っていたため、ここまで種類がないというアルトリウスの世界に若干だが興味が湧いた。

 

「私の世界では、か?そうだな…調味料と言うものが殆ど無かったな。従って料理といったものは殆どが焼くと言うものだったな。狩りを行い、獲ってきた獲物を食す。まあ勿論、盛り付けの際にはちゃんと飾るが、ここまで沢山の工程の後に食す、と言うのはなかったな。」

 

「へぇ、随分と原始的なのね。」

 

ただ焼くと言う調理の他には殆ど無く、狩りを行うと言う。

 

「どちらかというと、私達は質より量をとっていたからな、腹を満たすために沢山の量の料理を食す。皆がその食事で満足していたからこちらの料理のように発展しなかったんだ。」

 

「なるほどね。貴方が沢山食べる理由もわかったわ。」

 

「はは…いや、よく働くものだから、な?私の世界でも、私は食べ過ぎだと怒られたんだ…。」

 

咲夜の言葉にアルトリウスはばつが悪い顔をして答えた。アルトリウスはその身体の大きさからも分かるように、一度に沢山の量の食事をとることが出来る。更に戦の最前線での戦いが続く時もあるので、より体力を付けるために量を食べる。そこに食事をすることの喜びが拍車をかけて彼の世界の調理人を困らせる程まで食べるようになる。アルトリウス自身が食材を狩って取ってくるので、王宮の食物庫が尽きることはないが、何分量が多いので、それら全部を調理するとなれば一苦労なのだ。

しかしこれでもアルトリウスの食べる量は減っている。この幻想郷の世界に来てからアルトリウスが戦うと言うのは、美鈴との組手の時でしかない。それ以外を紅魔館の雑務をこなすことで一日を潰しているアルトリウスの運動量は、彼の世界とで比べると圧倒的に少ない。だからこそ咲夜が作る料理の量だけで済ますことが出来るのだ。もしアルトリウスの食欲が、彼が彼自身の世界と同等であれば咲夜の作る料理の量では到底足りない。

 

「それで?今日はどの料理を勉強するんだ?」

 

「そうねぇ…中華なんてどうかしら。」

 

咲夜は並べられた本の中から一冊の古ぼけた本を取る。

表紙には中華と大々的に書いてあるのだが漢字というものを知らぬアルトリウスにとっては読める筈がない。

 

「その、中華というのはどういった料理なんだ?」

 

「特別難しい料理ではないわ、勿論、簡単でもないけどね。だけど作り方は覚えやすいと思うから、初心者の貴方でも出来る料理ね。具体的に説明するなら、火力は常に強火で一定で味付けは豆板醤、甜麺醤、要するに辛味噌、甘味噌を使った料理や、お酢やごま油、唐辛子や八角を使って味付けるものが多いわね。」

「ほぉ、全体的に辛い料理が多いのか?」

 

「そうね、辛い料理もあるけど、辛くない料理だってあるわよ。」

 

「色々とあるのだな。」

 

アルトリウスは感心したように言った。別段、アルトリウスは味付けのない料理だけしか知らないというわけではない。食事の度に咲夜にレシピを聞いたり、どういった料理か説明を受けてはいた。しかしこれまで用意された食材を切ったり、味付けたりなど、基礎的な下拵えの仕方や包丁の使い方は習ってきたが今回のような実践的な事はやっては来なかった。咲夜曰く、実際に料理を作るとき、基礎的な事をちゃんと修めなくてもそれなりの物は作れるが、それ以上の物は絶対に作れない。美味しい料理というのは基礎をしっかりと修め固めた盤石な技術の上に成り立つのだと言う。

アルトリウスはその考えに感嘆した。戦場に立つ身のアルトリウスにとって信じられるものは己の腕、脚、肉体、そして経験。何よりも積み上げてきたものだけが信じられた。彼に仲間がいなかった訳ではない。むしろ彼を慕い付き従うものは沢山いた。彼の横に立ち、彼の補佐をすることが一生の目標だと堅忍不抜の精神をもって精進する者だっていた。それほどまでにアルトリウスは一個人として騎士として人望が厚く、敬愛されていたのだ。だがそれらの仲間はアルトリウスにとって互いを助け合う友ではなく、彼が一方的に守る友なのだ。彼が独りを望んだことは一度もなかったが、彼の戦いは何時だって独りであった。それは自分が周りより戦え、強く、驕った考えを持っていたわけではない。アルトリウスは友が死ぬのが嫌だったのだ。その考を突き詰めて出来上がったのが今のアルトリウスだ。彼は仲間が傷つき果てには死んでしまうのを恐れ、常に前に出て戦う。それは切り込み隊長役を務めているわけではなく、自らの部下が、仲間が戦う事がなくなるように、一人でも多く敵を倒そうとする思想から来ているのだ。

 

「それじゃ、早速始めましょうか。」

 

「よろしく頼む。」

 

「貴方…この本読める?」

 

アルトリウスは差し出された本を受け取るが開くことはせずに、少し困ったような顔で言った。

 

「全く。」

 

咲夜は一つ嘆息を付く。一つ一つの料理を手取り足取り教えていかなくてはならない事が指導する側として多少面倒なことだ。

 

「この前にパチュリーに文字を教わろうとしたのだがな?すっかり頼むことを忘れていて。」

 

「まあいいわ。ちゃんと一から十まで教えてあげる。でも二度は言わないわよ。しっかりと頭に詰め込みなさい。」

 

「了解した。」

 

アルトリウスは大きく頷き、机の端に本を寄せ、手を洗いに台所へと向かう。

 

──はぁ…。一つ一つを教えるのは少し面倒だけど、筋はいいから直ぐに覚えるでしょう。それに彼が料理を作ることが出来るようになったら私としても負担が減るし、それを考えたら軽いものね。

 

咲夜は手を洗い、包丁や道具を引き出しから出して並べているアルトリウスを見てそんなことを思った。そして咲夜は自分も準備を済ませるためにアルトリウスと同じく台所へと向かった。

 






お久しぶりですね
今回は短いですがここまでにして、次回にこれに続く物を書きたいと思います
前置きとしてこれを投稿し、次回は詳しく料理について書いていこうという予定です
まあ結局は浅はかな知識で書くので余り期待はしないでください
できるだけ一定のペースで投稿したいのですが、何分高校に入り慣れない環境でなかなか執筆に手を付けられずにいる今日この頃なので
気長に待っていただけると幸いです
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