東方騎士譚   作:城縫威

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中華娘

時は数日が過ぎ、時刻は昼下がり、アルトリウスは籠沢山に入れられたシーツや服を庭に干していた。仕事着である燕尾服を貰い着替えた後、咲夜に頼まれたことは基本的な家事などであった。そしてその多くは力仕事である。男手が一切ない紅魔館では例え咲夜の能力があったとしても重いものが軽くなるわけではない。

ちなみに咲夜の能力については仕事の内容を説明してくれた時に教えてくれた。それは時間を操る程度の能力だという。アルトリウスはある程度どのような能力か推測が出来ていたため驚きはしなかったが、その様な能力を程度で済ませていいのだろうかと内心少し思っていた。

アルトリウスの主な仕事としては一日に出る洗濯物の処理、またエントランスやそこらの部屋の掃除、そしてたまにの重たい荷物を運ぶといった様な仕事だ。死ぬ以前、彼がまだこの幻想郷に生き返る前の世界での彼は一本数十キロといった大剣を片腕で扱い、またそれと同等位の盾を使っていたのだ、ちょっとやそっと重たい荷物を運ぶことなど苦にもならない。外見こそ長っ細いもやしのような体つきをしているが、その身体の筋肉一つ一つが鋼のように鍛えぬかれており、そして限界まで無駄をなくしていった結果だ。

彼の仕事は明朝に始まり夕刻に終わる。レミリアの身の回りの世話などは常に咲夜が行うことになっている。パチュリーの方は聞いた所優秀な部下が居るとの事だった。

しかしながらアルトリウスは器用に仕事を進めていく。武器を扱う無骨な手でありながら別段滞る事なく与えられた仕事をこなしていくのだ。アルトリウス自身、このような仕事は一切したことがなかったが、と言うより騎士である身分だった故、このような事はする立場ではなかったとのもあるが、一度、咲夜の手本を見た後は自分なりの工夫を加えながらこなしているのだから凄いと言えるだろう。

さすがの咲夜も、アルトリウスが何故こんなにも騎士であった筈なのに仕事を覚えるのが早いのかと疑問に思い、当人に聞いた所、当人曰く「いや、一度でいいからこのような仕事をしてみたかったのだ。あちらの世界では騎士として殆ど戦場にしかいなかったのでな。」とのこと。

だが、そうだとしても仕事の巧さに関係はない。それにアルトリウスは「なに、慣れてしまえば後は工夫を加えるだけの簡単な仕事だ。」と、言った。本来なら一般の人にとっては一寸した重労働なのだが、アルトリウスにとっては、ほんの一寸の労働でしかない。そんな彼にとってこれらの仕事は戦場で剣を振るうよりも易く、戦場でいかに自らの命を護るかと戦略を巡らすよりも楽だと言う。要は気の持ちようなのだ。

ちょいとコツがわかれば後はトントン拍子ことが進む。仕事が巧く進む理由としては、死と隣り合わせであった時とは違い、ゆったりとした時間の中やる仕事が彼にとってとても楽しく思えることが言えるだろう。

夕暮れ時、咲夜に仕事と共に貰った銀時計に目を見やる。それは蓋の中心に意匠を凝らしてある懐中時計で、アルトリウスも気に入っている時計である。蓋の裏には貰った後、咲夜に貸してもらったナイフで、彼の世界の言葉でアルトリウスと彫り込まれている。

時計が指す時刻は五時を少し過ぎた頃、辺は少しずつ日が落ちて暗くなっていく。

「さてと、今日の仕事はこれで終わりだな。」

ちょうどやっていた仕事も区切りがいいので彼の一日の仕事はこれで終わりである。

「今日はまた、花壇のあったところでも行こうか。」

仕事を始めてから数日、仕事中にたまに綺麗に咲き誇っている花々のある花壇を目にする。仕事を終えてからよくその花壇の所へと足を運ぶのだ。

アルトリウスは争いの中によく居ることが多かったのだが、基本、争いは好きではない。その所為か、なにもない日には親友であり相棒である灰狼のシフと、白描アルヴィナを連れてよく森へ赴くのだ。そこで彼は森の中でみる珍しい植物をスケッチしたり、持ち帰り、それについて調べていたりしていたので、周りの者より数段に草木について知識があったという余談がある。

好きな花々を見るのが少し楽しみなアルトリウスは、早くその場へ行きたいという思いを胸に、花壇の場所へと向かった。

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日差しの下に咲、花々。風にそよぐそれらはとても美しく、花が好きにな者には至福の時だろう。流石にこの大きな紅魔館の花壇だけあってその大きさはそこらの民家がやるよりも大きく手入れも大変だろうと容易に分かる。

「あの世界には無かった花が多いな。一度でいいからしれべてみたいものだ。」

そう思いながらアルトリウスが歩いていると見慣れない人影が見える。近づいてみるとそこには一人の女性がいた。頭に緑色の帽子をかぶり、服も少し独特な物を着ている。赤髪の女性はどうやら花の手入れをしていることからここらの花壇は彼女が手入れをしているのだろうか。もう少し近づくと、アルトリウスの足音にでも気がついたのかしゃがんで花に水をやっていたのを立ち上がりこちらを向く。

「手入れの最中、邪魔をしてすまない。」

彼女はアルトリウスの事を誰だとでも言うような目で一瞬見たが、直ぐに何か合点が行ったように笑顔になる。

「もしかして貴方が咲夜さんの言っていたアルトリウスさんですか?」

「ああ、アルトリウスで間違いない。この紅魔館で働かせて頂くことになる。よろしく頼むよ。」

アルトリウスは女性の前まで行き手を差し出す。女性はその手に快く答えた。

「よろしくお願いしますね。私は紅美鈴です。この紅魔館の門番をしているんですよ。」

「ほお、門番か。私は一応執事(バトラー)を受け持つことになっている。と言ってもまぁ、雑用が殆どなのだがな。雑務か何かあったら言ってくれ。私にできることなら出来うる限りやろう。」

「いいんですか?了解しました。」

なかなかに気さくな性格なようだ。館の中に居ると咲夜や妖精たちにしか会う機会がない。そうするとこの美鈴の様な性格はとても話していて楽しいのだ。

「ここの花壇の花は君が手入れをしているのか?」

「はい!一人だけだと大変だけどこんなに綺麗に咲いてくれるのでとてもやっていて楽しいんですよ。」

美鈴もアルトリウスに負けず劣らず花が好きらしい。花を育てることを話す美鈴はとても楽しそうに話す。会って直ぐだというのに気が合うのはお互いに植物が好きだからなのだろうか、アルトリウスは美鈴に花のことについての質問をする。美鈴もそれに自分の答えられる範囲で答えていく。

「ふむ、君みたいな綺麗な人に育てられるのなら花も本望だろうな。」

ただの花の話の中からふとそんなことをアルトリウスは言う。

「もう、綺麗だなんてお世辞はいいですよ。」

「いや、私は本当のことを言っただけなのだが…。」

美鈴は少し照れくさそうな顔をする。

「なるほど、可愛らしくもあるな。」

「なっ、かわっ。もう!からかわないでくださいよ!」

アルトリウスは咲うことで答える。

「なに、一人だと大変だろう。少しだが私も手伝うよ。」

無理矢理に話題を転換するアルトリウス。納得の行かない様子の美鈴んだったが、手伝われるのは嬉しかったのだろう。

「じゃあ水汲みと土を持ってくるのを手伝ってください。一人だと時間がかかるんですよねぇ。」

少しだといったのに少しハードな内容を頼む美鈴。多分これは彼女にとってのからかわれた仕返しなのだろう。

「了解した。」

何はともあれ、アルトリウスにとって美鈴はとても好印象の存在なったのだ。

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