多分不定期。
睨み聞かせたパルさんの絵を誰かかいてほしいなあ
ここは旧都。地底深くに封印された危険な妖怪たちの都。
陽の光はここまで届かず、代わりに店と民家の明かりが煌めいている。
数多くある飲み屋の一つ、店の灯がその出来事を照らしていた。
「ぐぇほぅ!」
どう表現すればいいのだろうか?例えるなら、カエルが嘔吐したような――そんな声を上げながら、名もなき妖怪はテーブルや椅子を跳ね飛ばしながら吹っ飛ぶ。
壁に轟音と強い衝撃が走ったところで、名もなき妖怪はようやく止まった。
「おい、てめえ……」
名も無き妖怪に慣性の法則を与えた存在……もとい、妖怪が言葉を発する。
ガタイのいい体に、頭に朱の角ひとつ。鬼である。
「なあに、俺様の目の前で酒飲んでやがる!存在を知る奴がほとんどいねぇ、低級妖怪に飲ませる酒なんざねえ!」
「ひい!」
鬼はゆっくりと、堂々と、不敵な笑みを浮かべて、怯えた妖怪に近寄る。
「ゆ、ゆりゅして……ゆるしてください……!」
「おう?許して欲しいのか?いいぜいいぜ、もうちょい痛めつけたらなアア!」
絶望に歪んだ妖怪の顔面に今、岩をも粉砕する鬼の拳が――――――――
「まったく、酒も静かに飲めないの?どいつもこいつも鬼ってのは」
届く前に、細腕一本で止められた。雪のように白い肌をした手のひらに、鬼の拳が収まっている。
「……誰だ、嬢ちゃん」
鬼の目にはなんと見えただろうか?旧都独特のデザインをした女性の服、尖った耳、エメラルドグリーン色の目、ウェーブの掛かった金髪。
少なくとも。強くは見えなかった。
「ただの客よ。あなたと違ってマナーのいい、ね」
鬼は腕を引いて、拳を女の手のひらから脱出させた。
「今日は友人と飲むつもりなの。あなたがいるとゆっくりできないから、さっさと出て行って」
「女の尻に敷かれる趣味はねえな」
「おとなしく敷かれたほうが身のためよ」
「ぬかせ、小娘!」
鬼の右ストレートが女の顔――――があったところを進む。
「!」
「なっちゃない」
女はかなりの速度で放たれた攻撃を、上半身を少し後ろにそらし、紙一重で避けた。
「しょせん、チンピラのパンチね」
鬼は気づいた。自分の『ミス』を―――――――
不意打ちのような形でストレートを放ったこと?否!
相手の挑発に乗ってしまったこと?否!
あのとき‐‐‐‐‐‐‐妖怪の中で一番力の強い、鬼。すなわち自分。
そのパンチを。
片腕で止められて、すぐに逃げなかったことだ!
「いい?ド素人さん。パンチってのは、こうやんのよ!」
重い‐‐‐‐‐‐痛み。
それを感じた時には、鬼は吹っ飛んでいた。
飲み屋の入り口の戸と共に。
「が、がぐ、うう……」
まともにうめき声すら出すことの出来ず、ひんやりとした地面に落ちる。仰向けになった視界に、顔が写った。
「おーい、大丈夫か?派手に飛んだなあ……」
「ゆ、勇儀姐さん!」
鬼という種族でトップに立つ、星熊勇儀姐さんだ!この方なら金髪女にも勝てる!
「た、助けて下さい……変な金髪女に、やられ……「あ、それ」
「私の友人だわ」
………………え?
「遅いわよ、勇儀!」
「悪い悪い、パルスィ!ちょっと呑んでたら遅くなった!」
「もう呑んでるの!?」
「ウォーミングアップだよ」
「んな準備前運動、聞いたことないわよ!」
「はっはっはっは!」
ああ、なるほど。姐さんの友人なら、あんなバカみたいに強えの納得だな……
そこまで考えて、ふっとばされた鬼は眠りについた。
ちなみに、丸一日ねむったそうな。