「クソ!!この糸、本当むかつく!!」
「麗華はん、口が悪いですよ」
「うるさい!!」
巻き付いていた全ての糸を取った麗華は、立ち上がると馬の姿になっていた雷光の元へ行った。
「参戦してくるから、ここ頼んだ!」
「気を付けて下さいよ!
先程の糸、麗華はんの霊力吸収していた様でしたから!」
「あの糸に当たらなきゃいいだけ!
雷光、行くよ」
「御意」
薙刀を片手にした麗華を乗せた雷光は、すぐさまその場から飛び立った。
体をぶつけ合うマジムンと二頭のシーサー……三頭が戦闘する中、陽一達は襲い掛かってくる蟲達を、駆除していた。
「ちょこまかちょこまかと、動くな!!」
「氷鸞、氷の息吹!!」
大輔が起こした雷に、陽一は氷鸞に氷を起こさせ合体技を作り、蟲達目掛けて放った。蟲達は痺れながら、氷漬けにされ氷になった蟲達は、皆海へと落ちていった。
別の場所でも、牛鬼達は自身に襲ってくる蟲達を各々の技で次々と倒していった。
「どんだけ数いるねん!!」
「そろそろ、体力の限界だ……」
息を切らした大輔を、氷鸞が背に乗せようとした。その時、彼の腕を掴み雷光の背中に乗った麗華が現れ、背中へ乗せた。
「麗!」
「麗様!」
「星崎は一旦休んでて」
「お、応」
「雷光、星崎連れて晴彦達の所に戻って」
「御意」
自身から氷鸞に乗り移った麗華を見ると、雷光は大輔を乗せて先程の島へ戻った。
「牛鬼!安土!
アカマタ連れて、マジムンが封じられてた祠に戻って!!」
「分かった!!」
「行くぞ!おカマ!」
「牛ちゃん!オカマっていうのやめて!!」
最後の蟲を刺した牛鬼達は、祠があった場所へと戻っていった。
「陽、体力は?」
「まだまだ余裕!」
「だろうと思った」
「あれ、やるん?!」
「やるよ!」
そう言った麗華は、数枚の札と数珠を取り出した。同時に陽一も同じ物を取り出し、二人を乗せた氷鸞は空中に氷の板を作り二人をその上に下ろした。
「結界発動!!」
「結界発動!!」
数枚の札は円を作るような配置に着き、陣を造り出した。手に数珠を絡ませた二人は、手を合わせた。
「臨、兵、闘、者」
呪文に反応するかのように、それぞれの位置に着いた札が別々の色の光を放った。
「皆、陣、列、在、前!」
札は光線を出し、その光線はマジムンの体に巻き動けなくさせた。その時、明理達がいる小島から光の帯が伸び、マジムンの腕に絡みついた。
「明理達、やったんか!!
麗!!」
「一気に押し込む!!
氷鸞、雷光!援護をお願い!!」
「風月、氷月、頼む!!」
迫り来る蟲達の大群に、氷鸞達は各々の技で全てを覆い払った。手を合わせる二人の体に霊気が纏い、その霊気はマジムンの体に巻き付く光線の力を増していき、口を開け鳴き声を出そうとしたマジムンの口に、光線と帯が巻き付き封じた。
「口塞いだ!!」
「完全に終わるまで、気ぃ緩めるな!!」
小島では強風が吹く中、手を合わせ陣を前にして中心に置かれた鏡にマジムンの体が徐々に吸い込まれていった。
「影から生まれし悪霊よ、我の名に置いて闇へ還れ!!」
マジムンの身体が吸い込まれていく中、周りに群がっていた蟲達は麗華と陽一、明理達に向かって攻撃しようとするが、別の場所から突如として現れた光の網が蟲達を覆い捕まえた。
その様子をマジムンが封じられていた祠から、安土が眺めていた。その傍には、壺に封じられていく蟲達を見届けるアカマタと蟲達を封じる術式をする牛鬼がいた。
「蟲達の封印、成功!!」
「あとは、麗華達だ」
全ての蟲が封じられ、独り身となったマジムンは明理が出した光線を振り解き島の陣に目掛けて手を伸ばしてきた。その腕を、二頭のシーサーが噛みつき、攻撃を防いだ。
強風が吹く中、明理達の力によりマジムンは鏡の中へと封じられてた。封じた鏡に、明理はすぐに札を貼り注連縄を締めた。
「お、終わった……ハァァァ」
「明理はん、お疲れ様です」
座り込み倒れ掛けた彼女を、支えながら晴彦は優しく言った。そんな二人を、シーサー達は自身の体を擦り寄せ頬を舐めた。
一方、麗華と陽一は術の反動から氷の板から海へ落ちていた。先に落ちた陽一は、あとから落ちて来た麗華の元へ行き彼女を抱えて海面に顔を出した。
「フィー、終わった」
「あ~、何で沖縄に来てまで妖怪退治しなきゃいけないんだが」
「ええやん、別に」
笑顔を見せる陽一に釣られて、麗華は笑みを溢した。その時、沖縄の精霊達が姿を見せ、二人の頬に軽くキスをすると手を振って、その場から去って行った。
「脅威は去ったってか?」
「だね」
「あ~〜〜!
自由時間が無くなってしもうた!!」
「え、そこ?」
「俺、麗の水着全然見てへんよ!それに、泳いでもない!!」
「いや、今泳いでるでしょ」
「違うねん!!麗の水着を拝みながら、海を泳ぎたいねん!!」
「どういう意味よ!」
海で騒ぐ二人を、助けに来た氷鸞が回収するようにして海から引き上げ抱え、小島へと連れて行った。
雷光の背に乗っていた大輔は、ふと浜辺を見下ろした。そこには浜辺で横になる麗華と陽一、明理と晴彦がいた。傍には、獣姿となった氷鸞、彼の傍に風月と氷月が座っており、更に近くには二頭のシーサーが大あくびをして横になっていた。
「(海から打ち上げられた魚みてぇだな)
雷光、あそこ」
大輔が指差す方向に、雷光は降り立った。憑依を解除した彼は、雷光から降りるとすぐに麗華達の元へ駆け寄った。
「生きてるか?」
「霊力、使い過ぎたぁ」
「明日、ボロボロや」
「もう無理〜」
「限界です……」
「お疲れ様。俺もボロボロだ」
そう言いながら、大輔は麗華の隣に横になった。雷光と氷鸞は、頭を軽く振ると立ち上がり麗華の傍へと行き顔を近付けた。近付いた二人を、彼女は交互に頬を撫でた。
「あ~、これが明日7時起きか〜」
「てか、この状態で起きるの無理」
「先生に言って、僕等だけの部屋を用意する様お願いします?」
「全員で土下座すれば、叶うかも!」
「いや、普通に無理だろう」
「星崎、アンタの力で鈴村に願って」
「出来るか!」
ごちゃごちゃ騒いでいる間に、牛鬼と安土が彼等の元へ到着した。
「お前等、何ギャーギャー騒いでんだ?」
「青春だね」
「牛鬼、どうしたの?」
「どうしたの?じゃねぇだろう。
マジムン封印した鏡、祠に戻すぞ」
「え〜、動きたくな〜い」
「動け!!」
封印した鏡を持った麗華達は、アカマタが待つ森へ辿り着いた。
「皆ぁ!封印、おめでとう!」
「お前がミーナが依り代だってことを、もっと早く教えてくれれば、もっと早く封印できたのに」
「んも~、そんな過ぎたこと言わないで!」
「あのね!」
「まぁまぁ、麗華。
ほら、鏡を祠に。こっから厳重に封印術施すんだから」
封印した鏡を持つ明理と共に、麗華は祠の中に用意された場所に鏡を置いた。
祠の戸を閉めると、牛鬼達は手を合わせ閉めた扉に封印の印を書き札を貼った。
「これで、封印が解かれることはもうない」
「封印を解除するには、俺等の血を与えないと解けないからな」
「アカマタ、封印の見張りを頼む」
「ハイハーイ!」
「こいつに任せて、大丈夫なん?」
「あら〜?心配?」
「い、いえ……別に(顔近っ!)」
「まぁ、なにはともあれ……」
「これで、終わった」
「お疲れさん」
座り込んだ五人に、牛鬼達はそう声を掛けた。その様子を、精霊達は眺めており、耳打ちに何かを話し合っていた。