陰陽師少女   作:花札

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翌朝……


メルに起こされた大輔は、あくびをしながら起き上がった。腕時計を見ると、起床時間の五分前だった。


(メルが起こしたってことは、俺はそこまで霊力を使った訳じゃなかったのか……)


体を伸ばしながら立ち上がり、ふと隣を見た。

隣に敷かれていた布団の中は空になっており、その隣を見ると晴彦が静かに眠っていた。

(陽一の奴、先に起きたのか?)


向かい側に敷かれていた布団に目を向けると、いなかった陽一が気持ちよさそうに眠る明理の隣の、麗華の布団の中で彼女を抱くようにして眠っていた。彼に抱かれた麗華は、甘えるようにして陽一の胸に顔を埋めて眠っていた。


「(……俺は何も見なかった)


メル、ニア、リユ、行くぞ」


戯れ合う三体に声を掛け、大輔は部屋を出た。丁度そこへ鈴村が様子を見にやって来たが、彼は起きない事を説明して部屋を遠ざけた。


キジムナーの悪戯

数時間後……

 

 

目を開ける晴彦。起き上がり枕元に置いていたメガネを掛けながら、腕時計を手に取り見た。

 

 

(8時……完全な寝坊や。

 

 

しかし……何でこの男はいつも)

 

 

向かいに敷いている麗華の布団の中で、気持ちよさそうに眠る陽一を見ながら軽く溜め息を吐いた。

 

 

「(これ、先生に見せたらアカン光景や)

 

 

明理、起きなさい。時間です」

 

「ウ~ン……」

 

「陽一はん、夜にやらかしたような状態ですから、早う起きて下さい」

 

「やってねぇ……」

 

 

寝惚けながらそう答えた陽一は、体を伸ばしながら大あくびをした。彼の隣で寝ていた麗華は、眠たそうにしながら体を起こし、乱れた髪を指で軽く梳かした。

 

 

「眠い……」

 

「同じ布団で、何寝てるんですか…」

 

「麗が寂しいかなぁって」

 

「……」

 

「眠い……」

 

 

眠い目を擦りながら、麗華は氷鸞の翼に顔を埋めた。顔を埋めた彼女に、雷光は髪を口で撫でながら数束噛み軽く引っ張った。

 

 

「ん~~起きるぅ……」

 

 

眠い目を擦りながら、麗華は起き上がり雷光と氷鸞に礼を言って式に戻した。彼女に続いて陽一も、風月達を式に戻した。

 

 

丁度その時、ノックする音が聞こえ先に着替え終えた晴彦は返事をしながら部屋の戸を開けた。外にいたのは、鈴村だった。

 

 

「あれ?確か、先生……」

 

「神崎、起きてるか?」

 

「あ、はい。一応」

 

 

歯磨きを口に加えながら、麗華は寝惚け顔でドアの方を見た。

 

 

「あれ?鈴村、何で?」

 

「話は後で。それより皆、早く着替えて。

 

朝食食べに行くよ」

 

 

 

 

食堂……

 

 

「へ?予定続行?」

 

 

朝食を食べながら、麗華達は鈴村の話を聞いた。鈴村はコーヒーを飲みながら、淡々と説明した。

 

 

「一時間遅れでね。一応、今日の予定は首里城に行った後ひめゆりの塔に行って、そのままホテルに戻って明日の帰りの準備。

 

俺が責任を持って、君等を送るから」

 

「良く通ったね、こんな無責任極まりない事を」

 

「話し合った結果、君等には命を助けてもらったから、今回だけ特別にって。

 

君等麟音高校の先生方も、了承を得たから」

 

「あの頑固爺、よう許したな」

 

「陽一はん、口が過ぎます」

 

「へい」

 

「まあそういうことだから、問題起こさないでね」

 

「前代未聞ですよ、他校の生徒と一緒に行動するなんて」

 

「俺等の所、確か午前中はひめゆりの塔やったな」

 

「うん。午後が首里城でそのままホテルに戻って、帰りの身支度だって」

 

「逆だけど、いいの?」

 

「……多分、大丈夫かと」

 

「……」

 

「まぁ、俺等親戚同士やからな」

 

「それがあったから、許可が出たんでしょうね。予定が違っていても」

 

「ある意味、最強」

 

「ですね」

 

(それが半分、事実なんだよ……)

 

 

朝食を得た麗華達は、外に用意された車に乗り首里城へと向かった。

 

 

「何で俺が後部座席で、麗が助手席なんや!!」

 

「自分の担任の隣に座って、何が悪いの?」

 

「俺が麗の隣に座りたいねん!!」

 

「陽一はん、知らない生徒を助手席に座らせていたら、麗華はんの担任警察に捕まりますで」

 

「麗を座らせてても、捕まるやろう!!」

 

「私だったら、ギリギリOKなの!」

 

「何でや!!」

 

「あの君等、車内での喧嘩は止そう?」

 

 

鈴村が走らせる車で、麗華達は首里城・ひめゆりの塔へと回った。二つの観光地を回り終えた彼等は、丁度バスがホテルの前に到着した所に遭遇した。

 

 

「ナイスタイミング」

 

「ほんま」

 

「剛田先生達の所に行ってくるから、皆と一緒にロビーへ行って」

 

「ハーイ」

 

 

「あ!麗華!」

 

 

ロビーへ先に入りソファーに座っていた杏莉は、麗華の姿を見ると手を振りながら名を呼んだ。

 

 

「体大丈夫?」

 

「何とかね」

 

「星崎なんて、移動中ずっと爆睡してたもんな」

 

「眠かったんだから、仕方ねぇだろう」

 

「今まで何やってったんだ?」

 

「鈴村と一緒に、同じ所観光してた」

 

「え?!そうなの?!」

 

「俺等も一緒」

 

「何その特別扱い!」

 

「鈴村先生、捕まりそう」

 

「まぁ、私等が親戚同士だからできたことで、他人だったら絶対しないよ」

 

「羨ましい、親戚同士」

 

 

その後、夕飯を終えお風呂に入った生徒一同は各々の部屋で明日帰る準備をした。散らかっていた洋服やタオルをキャリーバックに詰めながら、思い出に浸った。

 

 

「あ~あ、明日もう帰っちゃうのかぁ」

 

「何かあっという間だったね」

 

「昨日は昨日で、妖怪騒動だったもんね」

 

「自由時間がなかったかのように思える」

 

「それ言えてる」

 

「何かさ、飛行機のエンジントラブルで欠航にならないかなぁ。明日の便」

 

「なるわけないじゃん」

 

「なったら困る」




翌朝……


制服に身を包んだ生徒達は朝食を終えた後、部屋からキャリーバックと貴重品が入った鞄を持って、ロビーへ集まっていた。携帯で龍二にメールを送っている麗華は、ふと慌ただしくしている先生達が目に入った。


「?」

「どなんしたんやろ……先生」

「陽達の所も?」

「あぁ。ホテルの従業員達とずっと何か話してんねん。朝食食べた後からずっと」

「何かあったのかな?」


携帯を閉じた時、麗華と陽一の肩へ嬉しそうにキジムナーが座った。二人は互いに乗るそれを見ると、引き攣った表情を浮かべながら先生達の方を見た。


「残念な報告があります。

今日乗る予定だった飛行機が、エンジントラブルにより飛行できなくなってしまいました」


携帯を弄っていた生徒達が、驚きのあまり携帯を落とした。楽しくお喋りしていた生徒達も黙り込んでしまい、麗華と一緒の部屋にいた女子達は一斉に夕美の方を見た。


(まさか、夕美が言った事が)

(事実になるなんて)

(え、え、わ、私の……せい?)


騒ぎ出した生徒達を、剛田は手を叩いて黙らせると話を続けた。


「今日中に帰路に就くのは無理だと判断して、先程このホテルの方と相談しもう一泊する事となった。学校側にも親御さんに連絡してもらっている。

そう言う訳だ。今日一日は自由時間とする。海に入るのも良し、部屋で寛ぐのも良し、ホテル内で買い物するのも良し、もし外に観光したいという生徒がいる場合、先生達が同行する。海に入る場合も、我々教員が同行する。以上だ。


質問等がある奴はいるか?いないなら、このまま」


剛田が言い終わる前に、生徒達は一斉に歓声を上げた。その中、麗華と陽一は軽く溜息を吐きながらも、自分達の方に乗っているキジムナーの頭を指で撫でた。


「キジムナーの悪戯」

「だね。よくやってくれたよ」
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