陰陽師少女   作:花札

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ご褒美

晴天の空に輝く太陽……

 

 

水飛沫が上がる中、海では一部の生徒達が飛び込み遊んでいた。その中。麗華達は浜辺に刺さっていたビーチパラソルの下で、牛鬼達と話をしていた。

 

 

「まさか、修学旅行が延長されるとは」

 

「前代未聞だな。普通、空港まで行って乗れる便が来るのを待つのが当たり前だろう?」

 

「それも考えたそうだけど、仕事客や家族客、団体客の対応でてんやわんやしてて、これ以上待ってると他の人にも迷惑がかかるし、学校にも保護者にも迷惑がかかると思ったから延長にしたんだってさ」

 

「へー」

 

「まぁ、鈴村先生が言ってたことだけどね。全部」

 

「盗み聞きかよ」

 

「まぁ、俺等も仕事延長になったんだけどな」

 

 

「牛鬼、兄貴が電話代わってくれって」

 

 

携帯で電話をしていた麗華は、疲れ切ったかのような表情で携帯を牛鬼に渡した。彼女から受け取った牛鬼は、携帯を耳に当てながら話を始めた。深く息を吐きながら、麗華は体を伸ばした。

 

 

「何か、お疲れだね……」

 

「結構長い間、電話してたよな?」

 

「兄貴がうるさかった……」

 

「ハハハハ」

 

「龍義兄との電話、終わった?」

 

 

準備体操をしながら、陽一は麗華に質問した。麗華はその質問に答えながら、パーカーを脱ぎ立ち上がった。それを見ると、陽一は何かを話す牛鬼から麗華の携帯を取り、耳に当てた。

 

 

「龍義兄、俺が一緒におるから心配せんでもええで!」

 

 

そう言うと、すぐに携帯を牛鬼へ返すと麗華を担ぎ上げ防波堤へ行き、陽一はそこから彼女と共に飛び込んだ。彼等に続いて、翼達も駆けて行き、その防波堤から海へと飛び込んだ。

 

 

「龍二、心配ご無用だ。

 

何かあったら、俺等で対処する」

 

 

その光景を見ながら牛鬼は、携帯越しで騒いでいる龍二に言って通話を切った。

 

 

「ヤッホー、牛ちゃん、安土」

 

 

人の姿をしたアカマタが、キジムナーを数体連れて牛鬼達の所へ歩み寄ってきた。

 

 

「お前……見張りはどうした?」

 

「んも~、牛ちゃんの心配性!

 

大丈夫よ!ちゃんと代わりの見張り付けてるから!

 

 

それより、あの子は?牛ちゃんの元ガールフレンド」

 

「別れたみてぇに言うな!!」

 

「振られたんだもんな」

 

「地獄に落とすぞ」

 

 

楽しく騒ぐ声に、アカマタは耳を傾けながら海の方を見た。海には、楽しそうに泳ぐ翼達と燥ぐ麗華達の姿があった。

 

 

「あら、楽しそうじゃない!あのお嬢ちゃん達」

 

「お前だろう、今回の騒動」

 

「ん?何の事?」

 

「飛行機停めて、麗華達をここに留めたのは」

 

「だって、何のご褒美もなく帰るなんて可哀想じゃない!」

 

「だからって、やり過ぎだ。他の奴等に迷惑かかってんだぞ」

 

「あら、そう言うなら……私達の住処も返して貰いたいわね。

 

そうすれば、お愛顧でしょ?」

 

「……」

 

「それにしても、懐かしいわね……」

 

「何が?」

 

「あのお嬢ちゃん見てると、昔会った人の事を思い出すのよ」

 

「?」

 

 

アカマタの目に映る光景は、昔の光景へと変わった。そこには、髪を団子にした女性と肩まで伸びた髪を耳下で結った男性が、幼い子供を連れて浜辺を歩いていた。煙管を吹かす男性は、振り返りアカマタに向かって手招きをした。

 

 

 

 

『こっち来て、ガキの相手してくれ』

 

 

 

 

「牛鬼ぃー!!

 

麗の携帯で、写真撮ってくれぇ!」

 

 

陽一の声にハッとしたアカマタは、彼等の方を見た。

 

 

「持ってこなくていいから!!

 

陽、降ろして!歩ける!!」

 

「何言うてんねん!!姫抱っこした麗を写真に撮って、姉貴に自慢するんや!!」

 

「姉弟喧嘩のネタを、ここで作ろうとするなぁ!」

 

 

呆れる牛鬼を隣に、安土は笑いながら麗華と陽一の携帯で写真を撮りまくっていた。

 

 

「コラ安土!!写真撮るなぁ!!」

 

「陽一の旦那、それ後で俺の携帯に送ってくれ」

 

「了解した」

 

「テメェ等、どこの組だよ!!」

 

 

そんな騒ぐ彼等の元に、二頭のシーサーが降り立った。降りてきたシーサーを、陽一の腕から降りた麗華は撫で、続いて降りてきたもう一頭のシーサーを陽一が撫でた。

 

 

「あれ?そのシーサーって、確か麗華が召喚した……」

 

「そ、あん時のシーサー」

 

「召喚獣って、戻るんじゃねぇの?」

 

「でも、伊達さんの妖怪戻ってないよ?」

 

「私の用心棒として、残ったみたいよ」

 

「妖怪の用心棒って……」

 

「有りなの?」

 

「その方が、なんかいいじゃない!」

 

「アンタね……」

 

「それより、お嬢ちゃん」

 

「?」

 

「私達、沖縄妖怪はあのマジムンを封印するために、お力お貸しいたしましたけど……

 

その褒美は無いのかしら?」

 

 

怪しげな目を光らせながら、アカマタは麗華に顔を近付かせて言った。

 

 

「顔近い……

 

何が欲しいの?できる範囲の事はやるけど」

 

「じゃあ、神楽舞!」

 

「は?」

 

「噂で聞いたのよ!本州に、すっごい舞を見せてくれる巫女と巫覡がいるって!」

 

「どこの誰だ、噂流した奴」

 

「さぁ……」

 

「ねぇ、いいでしょ〜?

 

会場はもうセッティングしてるから!ね!」

 

 

アカマタの言葉に、麗華は陽一の方を見た。彼は軽く溜め息を吐きながら、仕方が無いと言わんばかりな表情を浮かべた。

 

 

「いいよ。そこまでしてくれてるなら」

 

「本当?!やったぁー!!

 

ありがとう!お嬢ちゃん!!」

 

「陽、どうする?やる?」

 

「もっちろん!

 

楽器や道具もあるんか?」

 

「準備万端よ!

 

ささ!シーサーちゃんに乗って、会場に行くわよ~!牛ちゃん、二人借りていくわねぇ!」

 

「勝手に連れて行くな!」

 

「兄貴ズルっ!俺も行く!」

 

 

シーサーに乗った二人を追い掛け、牛鬼と安土はその場を去っていった。その様子を一から見ていた翼達は、互いを見合いながら飛んでいく彼等を見送った。

 

 

 

 

翌朝……

 

 

空港に集まる、生徒一同……麗華と陽一は、大あくびをしながら体を伸ばした。

 

 

「昨日といい今日といい……本当、お疲れ様」

 

「あの蛇、注文多い」

 

「まさか、あんな激しく舞うとは思わんかったわ」

 

「そんな凄かったの?」

 

「氷鸞が休みなく琵琶を弾きまくってたわ」

 

「それはご苦労さんな事で」

 

「明日休みで良かったね。ゆっくり休めるし」

 

「本当……」

 

「陽一はん、そろそろ集合時間ですよ」

 

 

晴彦に呼ばれた陽一は、名残惜しそうにして麗華を見た。視線に気付いた彼女は、彼に何かを言おうと口を開いたがその直後に、自身の高校にも集合時間を知らせる声が響いた。

 

 

翼達がその集合場所へ向かうが為に、振り向き背を向けた時、陽一は麗華の頬にキスをした。頬を赤くした麗華に、彼はニッと笑うと先に行った晴彦達の元へ駆けて行った。真っ赤にしながらも、彼を見送った麗華は朝妃に呼ばれて自身のクラスの元へ駆けて行った。




空港……


ゲートから、出て来た鈴海高校の生徒達。荷物を片手に、皆自分達の迎えに来た親の元へと駆け寄った。


大輔と共に出てきた麗華に、一緒の飛行機だったのだろうか同じゲートから牛鬼と安土が出て来た。


「麗華ちゃーん!」


その声と共に振り向いた麗華に、何かが抱き着いた。その勢いに唖然とする牛鬼と安土に、背後から肩に手を置かれ恐る恐る振り返ると、そこには茂と真二が立っていた。


「ボディーガード、ご苦労様」

「お、応」

「ところで、何で沖縄に行くってことを僕等に教えなかったのかな?」

「いや、あれは急だったし」

「まさか、麗華が修学旅行行く日と俺達が行く日が重なっていたとは思わなかった」

「その事に関して、龍二が帰ってきたらみっちり聞きたいとさ」

「……」

(表情が尋問される寸前の人みてぇ)


迎えに来てくれていた志津江にキャリーバックを渡す代わりに、大輔は自身に抱き着いている樹梨を抱き上げた。傍にいた海斗は、彼の手に持っていたお土産の袋を受け取り嬉しそうな声を出しながら、手を引っ張り志津江と共に帰路に就いた。




「緋音、そろそろ麗華を離せ。窒息死するぞ」


真二に言われ、ハッとした緋音は慌てて麗華を自身から離した。咳き込む麗華は、息を吸いながら彼女の方を見た。


「緋音姉さん……限度を…知って」

「ごめん……嬉しくてつい」

「あれ?そういえば兄貴は?」

「仕事。休み取れなくって」

「それはお気の毒に」

「帰ったら、洗濯しないとね」

「ハーイ」

「あ、そうだ。忘れるところだった。

麗華ちゃん、ちょっと」


茂は手に持っていたペット用キャリーを持ち上げ、麗華の方に向けた。中には、シガンが鼻をヒクヒクさせながら、嬉しそうに鳴き声を上げて一緒にいる焔を踏みつけながら、キャリーの中を周った。


「シガン!焔!」

「ずっと寂しがってたわよ、二匹共」

「さぁ、龍二帰ってきたら今日は久しぶりにご馳走食おうぜ!」

「じゃあ、俺等が腕を振るってやるよ!なぁ!兄貴」

「よぉし!そうと決まれば、速攻帰るぞ!」


麗華のキャリーケースを持って、真二は先に行きその後を安土は追いかけて行った。茂からペット用キャリーを受け取った麗華は、呆気にとられながら牛鬼達と共に空港を後にした。
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