陰陽師少女   作:花札

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紅葉の放つ攻撃を前に、弓を構えた晴彦が紅葉目掛けて矢を放った。その矢は彼女の胸に刺さり、紅葉は動きを止めその胸に刺さる矢に触れ、己の血を見た。


「あらあら、もっとゲームを楽しみたかったのに」

「人の命を弄ぶなということだ」

「それ、貴方が言う?」


紅葉柄の封印

封印の陣から伸び出る無数の、光の帯。帯は街中に現れている鬼達を包み次々と、大きく空いた空洞の中へと引き込んでいった。その様子が、明仁の目に入り怒りから彼は麗華に向かって拳を振ってきた。構えていた彼女の前に、陽一が立ち彼に向かって足刀を腹に食らわせた。もろに当った彼は、腹を抑えて倒れた。

 

 

「麗に手ぇ出すな」

 

「こ、この野郎…!!」

 

「もう無駄な戦いはやめろ。明理が封印している。

 

これが終われば、もう終わりだ」

 

「分家の分際で……」

 

「その分家に負けてんのは、アンタだろう!

 

宗家宗家って威張ってるけど、宗家なら宗家の力を見せてみろ!!これだったら、晴彦の方がアンタより何倍も強い」

 

「んだと……あの落ちこぼれが、俺より強いだと」

 

「現にそうやろ。明理を守るために、先に行かせたけど……アイツ等が辿ってた道に矢が刺さった鬼達がぎょうさん居った」

 

「たった一人で、明理を守ったんだよ。

 

アンタさ、私と式神対決した時負けたのを式神のせいにしていたけど……負けたのは、弱いアンタのせい」

 

「!!」

 

「虎の威を借りる狐。まさしく、アンタじゃん。

 

月影院という名を盾に、あらゆる悪事をしてたんじゃないの?被害に遭った人は、妖怪から助けて貰っているから訴えようにも訴えられずに、泣き寝入りしてるだけだと思うよ」

 

「……」

 

 

唇を嚙み締める明仁……そんな彼の元へ、主水と式神達は歩み寄った。

 

 

「まぁ、式神達に好かれてるって事はそれなりの奴だって事か」

 

「嫌われていちゃ言う事聞きまへんからな、式神は」

 

 

そう言う二人の元に、焔達は寄り彼等の頬を撫でてやった。

 

 

 

全ての鬼を空洞の中へと封じた明理の前に、酒吞童子と紅葉が立った。彼等の体には光の帯が巻き付いていたが、それだけまるで時間が止まっているかのように動作していなかった。明理の前に、晴彦は弓を構えて矢を弦に嵌めた。

 

 

「そんな警戒しなくても、もう攻撃も邪魔もしないわよ」

 

「え……」

 

「コラ紅葉!!とっとと兄貴達の毒消せ!!」

 

「あ~ら、おっかないお嬢さん」

 

「この糞女、痛い目見ないと分からねぇか?」

 

 

怒りに満ちている麗華の背後に立つ焔は手から炎を、続いて雷光は刀に雷を、氷鸞は錫杖に水をためて攻撃態勢を取っていた。それは陽一の波達も同様に、攻撃を構えていた。

 

 

「あ、あら……滅茶苦茶、殺気が」

 

「とっとと治せ。そうすれば、罪は軽くなる」

 

「はいはい」

 

 

指を鳴らす紅葉……すると、彼女の手に紫色の液体が集まりそれを彼女は握り消した。

 

 

「はい、解毒完了」

 

「本当だろうな?」

 

「本当よ!!この辺については、嘘は吐かないわ!!」

 

「どうだか」

 

「信じなさいよ!!」

 

「解毒したのは事実だ。安心しろ」

 

「……まぁ、酒吞童子が言うなら」

 

「ホンマやろうな」

 

「コラ!!私を信用しなさい!」

 

「あの~、そろそろ封印していいですか?

 

体力的に、限界が」

 

「とっととしろ」

 

「早う帰って、親父達の安否確認したいわ」

 

「迷惑をかけた、感謝する」

 

「またゲームやりましょうね」

 

「やらん」

 

「酒吞童子は、また会ってもいいけど」

 

「そんな酷い!」

 

 

帯に包まれ、二人は空洞の中へと封じられた。空洞の前に大岩が下がりそこに紅葉柄の呪印が刻まれると、強力な妖気を放ちながら封じられた。

 

 

封印を終え倒れかけた明理を、晴彦が支えた。全てを終えた麗華と陽一は、地面に座り込み安堵の息を吐いた。

 

 

「はぁ~、やっと終わった」

 

「あの、早く戻りまへんと!」

 

「だね。雷光、氷鸞、お疲れ」

 

「氷月、風月、おおきに」

 

 

それぞれの式を戻すと、陽一と麗華は寄ってきた波と焔の頬を撫でた。

 

 

 

 

屋敷……

 

毒が消えた龍二と輝一、輝三はスッと目を覚ました。起き上がった彼等に、家族一同は抱き着き泣きながら喜んだ。

 

 

歓声を上げている所へ、雛菊を抱えた鎌鬼が戻り彼等に、もう少ししたら麗華達が戻ってくること、鬼達は一匹残らず封じたことを伝えた。

 

それからしばらくして、麗華達は屋敷へと帰還した。焔から降りる麗華に、龍二は思いっ切り殴り反論しようとした彼女を、すぐに抱き締めた。

 

 

「無茶、済んじゃねぇ」

 

「……お互い様じゃん」

 

 

口籠りながらも答えた麗華は、龍二を抱きしめ返した。その様子を見る陽一を、静華は涙を流しながら拳骨を食らわせて、ふらふらになった彼を泣きながら美幸は頭を拳骨でぐりぐりやった。

 

そんな彼等を、晴彦は遠くから眺めていた。そして晴政と母の前に立つと、深くお辞儀をし彼に続いて火夜に支えられていた明理も深々とお辞儀をした。二人は安堵の息を吐き、二人の肩に手を置くと“良くやった”と褒め称えた。

 

 

彼とは裏腹に、明仁は誰にも何も言うことなく、傷を癒やした数日後には誰にも挨拶せずに日本を発った。

 

 

「全く、自己中過ぎにも程があるでしょ」

 

「ホンマ」

 

「まぁまぁ」

 

「兄さんから、二人宛に手紙預かってますよ」

 

「え?!いつの間に?!」

 

「兄さん、昔から感謝の言葉とかを言うの苦手でしたので」

 

「面倒な兄貴だな」

 

 

広げた手紙には、今回余計な事をして申し訳なかった事、家族を危険な目に合わせてしまって申し訳なかった事、封印の妨害をしてしまい申し訳なかった事についての謝罪文でビッシリと埋まっていた。

 

最後である三枚目の手紙には、弟とその嫁を助けてくれた事、鬼達を封印してくれた事、そして己の弱さを指摘してくれた事について感謝文で埋まっていた。

 

 

「何だ、あいつ感謝言えるんだ」

 

「礼儀はきっちりしていますので」

 

「しっかし、夏休み始まって早々こんなゴタゴタに巻き込まれるとはな」

 

「まぁ、残りの夏休み気儘に過ごせばいいよ。

 

 

どうせお盆になったら、輝三の厳しい修業が待ってんだから」

 

「確かに……」

 

「それはお互い様ですよ。

 

僕も夏休み、修業をみっちりする予定ですので」

 

「明仁はやらないの?」

 

「兄さんはあっちで、自主的にやっているそうです。

 

仕事の関係上、日本に長期滞在できないので」

 

「へー」

 

「うちも修業するよ。封印の」

 

「だろうね。アンタ体力無さ過ぎ」

 

「そんなはっきり言わなくても!」

 

「あと髪の毛うざい。前見えてないでしょ?」

 

「いや、私みたいな芋女が目立つようなことしたら」

 

「芋女どうこうは置いといて、前髪は切れ!戦闘時邪魔くさい!」

 

「は、ハイ!」

 

「ほら言われた」

 

「う~」

 

 

「麗華!そろそろ帰るぞ!」

 

「はーい。

 

じゃあ帰るね。晴彦、またね」

 

「何がありましたら、いつでも呼んで下さい。

 

力お貸しします」

 

「うちも!」

 

「期待しとく」

 

「麗!俺には何もねぇへんのか?!」

 

「アンタはどうせ来月会えるんだから、良いでしょ!私は晴彦達に会えるのいつになるか、分からないんだから!

 

 

じゃあね」

 

「あぁ!」

 

「また会えるのを待っています」

 

「またね麗華ちゃん」

 

 

彼等に手を振りながら、麗華はシガンと焔を連れて屋敷を後にした。

 

 

麗華が去った後、陽一は何かを思い出したかのようにして晴彦と明理に質問した。

 

 

「なぁ、そういえば結局原因ってなんや?今回の騒動って」

 

「さぁ……今現在も調査中と言っておりました」

 

「何やったんやろう……」

 

「何か良くないことの前触れ」

 

「何ですか?良くないことって」

 

「大昔に封じた、古の妖怪が復活する!」

 

「ハイハイ」

 

「あぁ!信じてねぇな!」

 

「信じてます信じてます」

 

「何や!その棒読みは!!

 

転入してきても、面倒見へんぞ!」

 

「一人でやりますので、大丈夫です」

 

「何や!その強がりは!」




大江山……


木に登り煙草を吹かす秀二……夜の京都を眺める彼の脳裏には、過去の記憶が蘇っていた。


「もうすぐだ……もうすぐで、終わる」
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