喜び合う三人……
その光景を、麗華は離れた場所から眺めていた。すると取調室から出て来た池蔵は、彼女の肩に手を乗せ笑みを浮かべ彼等の元へ駆け寄った。
「ご連絡させていただきました、池蔵です」
「刑事さん……本当に何から何まで、ありがとうございました!」
「いえ……当たり前のことをやっただけです」
「叔母ちゃん、恵達どうなるの?」
「二人は私が、責任持って育てる!
だって、大好きな兄さんの子供だもん。捨てるわけにはいかないわ!」
「叔母さん……
(そうだ)刑事さん、あの二人は」
「児童虐待、恐喝罪、詐欺罪……その他諸々で、当分の間は刑務所から出られねぇな」
「……」
「昔から、プライドが高かったみたいなの、あの人。
自分より後に産まれた妹が、幸せになって何で私は幸せじゃないんだって……」
「そんな勝手な理由で……」
「でも、もう大丈夫。
二人は、私が責任を持って育てます」
「その言葉が聞けて、俺達も安心します」
「お兄ちゃん、もうお姉ちゃんのお家に行っちゃ駄目なの?」
「え……それは……」
チラッと麗華を見る翼……彼女は、一瞬笑みを浮かべそして、恵の前でしゃがみ込んだ。
「来たくなったら、いつでもおいで。
でも、兄さんと一緒に」
「うん!」
「あら、そんなこと約束していいんですか?」
「いいですよ。うちは、大歓迎です」
「ワーイ!」
大喜びする恵に釣られ、麗華達は思わず笑みが溢れた。
外へ出た翼……見上げると、雲一つ無い真っ青な空が広がっていた。
「真っ青だねぇ」
声がした方を向くと、そこには野良猫撫でる麗華がいた。
「神崎」
「優しそうな叔母さんで、よかったね」
「……都叔母さん、子供作れない体なんだ。
だから、結婚はしないで長く続けられる仕事に就いたんだ。昔から子供大好きで、よく俺等と遊んでくれたっけ」
「へ~……
話変わるけどさ……どうだった?」
「……」
撫でるのを止め、麗華は立ち上がり翼の方を見た。
「恐くなかった?」
「……最初は驚いた。
でも、あの黒い奴と戦ってるお前見て恐くなくなった」
「そう……
白い陰陽師……正体は私なんだ」
「……」
「私の家、陰陽師家で悪霊退治とか時々やってるんだ」
「じゃあ、あの白い狼は」
「こいつ」
髪の毛に隠れていた焔は顔を出し、翼の前で鼬から狼の姿へと変わった。
「白狼一族で、名は焔。
私の相棒」
「……」
焔を撫でる姿を見た翼は微笑した。
「お前のこと、他に知ってる奴は?」
「星崎と一部の先輩達」
「……そうか」
「知ったところで、お願いが……」
「黙っててやるよ。
その代わり、手伝えることがあったら手伝わせて貰うからな」
「は、はい……(星崎と同じ事言ったわぁ)」
翌日……
通学路を歩きながら、麗華は大輔に昨日のことを話した。
「金目当てで、子供を引き取るとは……
卑怯な大人も増えてきたな」
「そうだね」
「神崎さん!星崎君!」
呼ばれた方を向くと、後ろに手を振る卓也と翼がいた。
「二人共、お早う!」
「おう」
「おはよう」
「神崎さん、聞いて聞いて!
翼、学校転校せずに済んだんだって!」
「え?転校って」
「都叔母さんの仕事場が、別の所にあって……
引き取られる際に、学校も変えなきゃイケなかったんだ……けど、叔母さんが仕事をこっちに移して貰ったから転校しなくていいって」
「へー、よかったじゃねぇか」
「まぁな。
だから、これからも兄妹共々よろしく頼むぜ」
「ハイハイ。お世話しますとも」
「何かあったの?」
「何でもねぇよ。
それより、早く行くぞ」
「あ、うん!」
走り出した翼の後を、卓也は追い掛けた。二人に釣られて、大輔と麗華も追い掛けていった。
翼の顔は、どこか晴れ晴れとしていた。まるで今日の青空のように……