陰陽師少女   作:花札

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とあるカフェ……


カウンター席で、一人赤い百合の髪留めを見る優梨愛。


(……亮。

お願い……帰ってきて)


髪留めを強く握りながら、優梨愛はそう願った。


賭ける命

「やっと痛みがなくなった……」

 

 

丙から治療を受けていた麗華は、携帯ゲームをしながらそう言った。

 

 

「傷痕の方は、妾より時雨の方が消すのが上手い。後で頼むといい」

 

「あいつに頼むと、舞をやる数が増える……

 

丙~、何日かかっても良いから治してよぉ」

 

「仕様が無いなぁ!この丙に任せな!」

 

「わ~い!」

 

 

その時、、ドアをノックしながら誰かが入ってきた。

 

 

「麗華!起きてる!?」

 

「ちょっと杏莉!ここ病院!」

 

「個室だから平気だって!

 

カーテン、開けるよ!」

 

「え?!ちょ、ちょっと待っ!」

 

 

飛び起きた瞬間、声の主であった杏莉は勢い良くカーテンを開けた。

 

胸を丸出しにした彼女を見た卓也と翼は、素早く後ろを振り向いた。

 

 

「ち、治療中でしたか?」

 

「白鳥……」

 

 

 

「じゃあ、明日には退院かぁ」

 

 

服を着た麗華はベッドに座りシガンの頭を撫でながら、ソファーに座る杏莉達と話していた。

 

 

「傷はもう平気だし、身体にも異常がなかったらね」

 

「良かったぁ!

 

驚いたんだよ!昨日来なくて心配してたら、先生から事故に巻き込まれて病院に運ばれたって聞いて!」

 

「大怪我したかと思ってたけど、大したことなくて良かったよ」

 

「ほぼほぼ、丙に治して貰ったからね」

 

「そういえば、中村達が入院してるって聞いたけどどうなんだ?」

 

「茂さんからの話じゃ、回復はしてるけどもう少し入院が必要だってさ。

 

中村は知らないけど」

 

「あれ?一緒に入院してんじゃないの?」

 

「いや、あいつは入院してないよ。

 

と言うより、中村は長谷川達と一緒にいなかった」

 

「珍しい、あいつ等と一緒じゃないなんて」

 

「つうか、早く来ないと退学になるぞ」

 

「あぁ、確かに」

 

「鈴村先生、凄く頭抱えてたよね。

 

『また不登校児を出した。もう人生終わった~』って」

 

「……星崎に鈴村を励ませとでも、メールしとくか」

 

「昔からああなの?先生って」

 

「何でもすぐに、悪い方に考えるのが悪い癖でね……

 

保護者や他の先生からよくクレームが来たよ」

 

「うわぁ……大変」

 

「そういや、肝心の星崎は?」

 

「部活。練習試合が近いんだって」

 

「何々?やっぱ大輔いないと、寂しいの?」

 

「そんな訳ないでしょ。気になっただけとちょっと調べて欲しいことがあったから」

 

「調べて欲しいこと?」

 

「何それ?」

 

「話す必要は無し」

 

「えぇ!!」

 

「“えぇ”じゃない」

 

 

その後他愛のない話をした杏莉達は、面会時間が終了となり帰って行った。彼等が帰って数時間後のことだった。

 

突然ドアが開き外から、腕に包帯を巻いた渡部秀が入ってきた。

 

 

「渡部……どうかしたの?」

 

「……頼みがあんだ」

 

「?」

 

「中村とあいつの彼氏を……助けてくれ」

 

「……どうして、助けたいんだ?」

 

「中村には、借りがあるんだ。

 

中学の時、うちが貧乏だからって理由でクラスで集めた給食費の窃盗犯にされたんだ。先公から!

 

 

だけど、中村は俺のことを信じてくれて……数日経って真犯人を見つけてくれたんだ」

 

「その時の借りを、返したいと」

 

「あぁ、そうだ!」

 

「……はっきり言って、私は中村に借りはない。だから、あいつ等を助けるつもりはない」

 

「はぁ!?」

 

「先輩がああなったのは、自業自得。私は何回も忠告した。

 

それを守らなかった方が悪い。だから、助けるつもりはない」

 

「この!!」

「偉そうなこと私に言ったんだから、それくらい自分達で解決しな」

 

 

腕を組み怒りに満ちた目で、麗華は秀を睨んだ。

 

 

秀は乱暴にドアを閉めると、そのまま自分の病室へ戻った。彼と入れ違いに、茂が塗り薬と錠剤を持って部屋に入ってきた。

 

 

「何かあったの?」

 

「別にぃ」

 

 

甘えてきた狼姿の焔の頬を掴み、自身の額を彼の額に撫で当てながらそう言った。

 

 

 

自身の病室へ帰ってきた秀は、部屋の壁を思いっ切り蹴った。

 

 

「その様子じゃ、助けてくれ無さそうね」

 

「あぁそうだよ!!

 

人がお願いしてんのに、他の奴等の依頼は受けて俺等の依頼は受けねぇって言うのかよ!!」

 

「まぁ、そうだろうね」

 

「スキー合宿の恨み、まだ持ってるんでしょうね」

 

「だから女は好きになれん」

 

 

そう言いながら、駿は眼鏡を中指で上げた。

 

 

「だから、ガリ勉オタクって呼ばれるのよ」

 

「何だと!!」

 

「おいおい!ここで喧嘩はすんなよ!

 

何か、神崎の知り合いの病院みたいだし……問題起こしたら、何が起きるか」

 

「何者なんだよ、神崎麗華」

 

「刑事に病院の院長……只者じゃ、なさそうだな」

 

 

「只者じゃないから、頼むのよ」

 

 

扉が開く音と共に、その声が聞こえた。奈々達はドアの方に目を向けると、そこにいたのは優梨愛だった。

 

 

「優梨愛!」

 

「妖怪と戦える人なんて、そう滅多に見つかりはしない……

 

何が何でも、あいつに頼むのよ!」

 

「でも、神崎さんはやる気無いって……」

 

「そうだよ!クラスメイトでもある駿の頼みすら」

「妖怪と戦うって、相当体力を削る上に命を賭けなきゃいけないんだよねぇ」

 

 

彼等の話を聞いていたのか、麗華はドアの縁に凭り掛かりながら言った。

 

 

「い、いつからそこに?!」

 

「中村が入ってきた時に」

 

「……」

 

「アンタ達さ、戦え戦えって言うけど……それって、アンタ達も戦うって事なの?」

 

「え?」

 

「言っとくけど……今まで助けてきた奴等は皆、己の命を賭けて妖怪と戦おうとしていた。

 

アンタ達に、その度胸あるの?あるなら、手は貸さないでも無い」

 

「何それ……」

 

「俺達に、その妖怪の生け贄になれって言うのかよ!?」

 

「まぁ、簡単に言えばそうだね」

 

「ふざけるな!!テメェ、クラスの仲間が助けを求めてんだぞ!!見捨てる気か!?」

 

「禁忌を犯して、妖怪の世界に足を突っ込んだのは誰?」

 

「っ!」

 

「これが、過って起こってしまった。

 

私以外の別の誰かと一緒にやってて、それで起こってしまった……

 

 

そういう理由なら、私も手は貸す。

けど、散々忠告した挙げ句に人の鞄から本を盗んで、勝手に禁断術やって外道の道を行こうとしてる奴なんか助けたかない。

 

 

妖怪も私も、いい迷惑だ」

 

「……」

 

 

黙り込む一同……

 

 

「命を賭けてもいい」

 

 

静かに、優梨愛は言った。麗華の方に振り向き、涙目になりながら話し出した。

 

 

「私の命を賭けてもいい!

 

だからお願い……亮を助けて!

 

 

亮は……あいつ昔からお調子者だった……

でも、全然嫌いじゃなかった。必ず誰かを笑わせてくれてた……閉ざしてた私の心を、開いてくれて……

 

 

 

あの頃の亮、苦しそうだった……スポーツ推薦が破棄になった途端、剣道部のコーチや顧問から見捨てられて、同級生や後輩達、担任まで彼のことを見捨てた……

 

酷いよ……大怪我負って、大好きな剣道は出来なくなったけどちゃんと生きて学校に来たのに……皆、彼のことを空気扱い!!」

 

 

ふと思い出す麗華……校舎内でいつも友達を連れていたが、剣道部を辞めて以降誰一人と彼に近寄る事は無かった……いつも一人で歩いていた

 

 

「亮がいなくなったら、生きている意味が無くなる!だからお願い!亮を助けて!!」

 

「……

 

 

見つけろ」

 

「え?」

 

「本人を見つけろ。

 

そして、ここに連れて来い。無論アンタも一緒に」

 

 

場所を描いた紙を渡すと、麗華は病室を出て行った。




「殺された奴等が、皆伊達に関わってた?!」


配られた資料を目にしながら、新米刑事は驚き声を上げた


「あぁ。

最初の犠牲者は、怪我をさせた仲間の一人」

「怪我って……


確か、剣道の試合が行われる前に伊達は自転車の接触事故を起こしてる……!まさか」

「その事故、ブレーキが壊れていた自転車に三人で乗っていた。

下り坂を勢いを付けたまま飛ばしていたんだが、横断歩道に差し掛かった時、突然伊達亮介が現れた。止まろうとしたが、ブレーキは利かずそのまま事故を」

「……」

「そして、今回の犠牲者は犯人である二人の父親」

「いや、違う。


最初の犠牲者になった仲間の父親だ」

「ウ、嘘」

「一人は大手企業の社長、もう一人は弁護士。さらに殺されたのは警察関係者。

恐らく、倅の事件を隠蔽したんだろうな」

「酷……」

「次狙うとしたら、恐らく倅・またはその父親。

仮に父親が死ねば、隠蔽も何もされませんからね」

「……すぐに、警備を付けないと!」

「そのつもりだ!」
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