「わぁ!見て見て、朝姫!
島よ!島!」
「本当!」
船の上で騒ぐ杏莉達……そんな二人を、大輔は船の縁に寄り掛かりながら深くため息を吐き、麗華は引き攣った顔で二人を見た。
夏休みに入り、皆部活や塾等で何かと集まることが出来なかったある日、大輔は麗華を呼んだ。
『話って何?』
『これ』
そう言いながら、大輔は茶色の封筒と出した。それを手に取り、麗華は彼に許可を得ながら中身を見た。中にはお金と手紙が入っていた。
『親父から……
島に来て、今後どうするかを話したいんだとさ』
『で、私にどうしろと?』
『……来て』
『ハイ?』
『一人で行きたくないんで、一緒に来てください』
片言葉のように話しながら、大輔は背を向けた。麗華は呆れ溜め息を吐きながらも、承諾した。しかし、それをどこで聞きつけたのか、杏莉達は自分達もついて行くと言い、無理矢理ついてきた。
船は島へと到着し、杏莉達は荷物を持ち港へ降りた。
「スッゴォ!!本当に何もない所!」
「それ以上悪口言うなら、今すぐ帰れ」
「そう怒らないで!
それにしても、翼と卓也も来られてよかったわね!」
「半ば、強引だったけど……白鳥さん」
「ったく……」
「大輔ぇ!!」
聞き覚えのある声が、港に響いた。声の方に目を向けると、昔と変わらずサイドテールをした久留美が駆けてきた。そして、彼女は大輔に向かって飛び付いてきた。
「久し振り!元気だった!?」
「引っ付くな」
「え~、いいじゃ~ん。
どうせ用が済んだら、また行っちゃうんでしょう」
「いいから離れろ」
そう言いながら、大輔は久留美を離した。久留美は頬を膨らませながら、彼の腕にくっついた。
「大輔の彼女、グイグイ来るのね」
「?
誰?アンタ達」
「勝手についてきたクラスメート」
「へ~。
って、何で麗華も?」
「アンタのボーイフレンドに頼まれて、一緒に来ただけ」
「え?!どういう事?!」
「後で話す。
それより、しばらくお前ん家泊まらせろ」
「別にいいけど……先に自分家、行ったら!用有って来たんでしょ?」
「後で行く」
「大輔!もう……
麗華はどうする?」
「一応、おばさん所に連絡入れてるからそこに。
まぁ、大人数の泊まりになったんだけどね」
「やっぱり……
今の時期、観光客が多いから宿取れないもんねぇ」
「そういうこと。
じゃ、また後で」
「うん!七海達も会うの楽しみにしてるから!
あ、小学校来て!貸し切りにして、二人の歓迎会開いたから」
「ヘーイ」
「じゃあね!
大輔!待ってぇ!」
叫びながら、久留美は先行く大輔の後を追い駆けていった。
「騒がしいカップルねぇ」
「そうだね……
ほら、さっさと行くよ」
炎天下の中を歩くこと一時間……
「デッカーい!?」
門を見ながら、杏莉は大声を上げた。すると、玄関からサンダルを履いた少年が、飛び出てきた。
「麗姉久し振り!」
「デカくなった、大空」
「一応、一五〇いったからね!
あ!あの人達?麗姉の友達って」
「友達って……
あいつ等は勝手についてきたの」
「麗華、この子誰?」
「従兄弟の川島大空。
この家の子だ」
「大空です!始めまして!」
「初めまして!私は立花朝妃。
隣から、白鳥杏莉、山本卓也君、大野翼君と……えっと」
「恵ちゃん!翼の妹」
「そうそう!」
「あれ?何だ、来たのか?」
門を潜りながら、やって来たのはタオルを頭に巻いた龍実だった。
「あ!兄さん、お帰り!」
「応!
へ~、こいつ等が麗華の友達か」
「右のお姉さんから、朝妃さん、杏莉さん、卓也さん、翼さんと彼の妹の恵ちゃん」
「初めまして!」
「俺は龍実。大空の兄貴だ。
夏休みでこっちに帰ってきてるけど、普段は島から出て大学に行ってる」
「何の勉強してるんですか?」
「海洋生物。
大学出たら、ここの漁師になろうと思って」
「淒ぉい」
「お兄ちゃん、早く海入ろう!」
翼の手を握っていた恵は、彼の手を引っ張りながらそう言った。
「ここで長話も何だし、大空!
こいつ等部屋に案内してやんな。あとで一緒に海着いてってやるよ」
「ホントですか!?」
「あぁ!」
「じゃあ、上がって!
案内するから」
「お邪魔しまーす!」
中へと入っていく朝妃達……彼等を眺めていた麗華の肩に、龍実は腕を乗せてきた。
「結構いい奴等だな」
「まあね……
あいつ等のこと頼むよ。
私、星崎と小学校行ってくるから」
「りょーかい」
「それはそうと、静代さんは?」
「ピンピンしてる。
確か今は、老人会の温泉旅行で留守にしてる」
「何歳なの、あの人って」
「う~ん……
八十はいってると思う」
「それぐらい、分かっとけよ」
荷物を置き、水着に着替えた朝妃達はパーカーやティーシャツを着て、外に出て龍実達を待っていた。
しばらくして、包みを持った龍実達が出て来た。
「あれ?麗華、海行かないの?」
「星崎と小学校に行ってくる」
「そういえば、言ってたわね。
何か歓迎会やるとか何とか」
「そういうこと。
じゃあ、また後で」
龍実に彼等を任せた麗華は、小学校へ向かった。
「さぁ、海行くぞ!」
先に歩き出した龍実の後を、朝妃達はついて行った。
一人海岸沿いの道を歩く麗華……周りに誰もいないのを確認すると、札を出し投げた。札は煙を上げ中から、馬の姿をした雷光だった。
「しばらくいるから、その間この島でも見回ってみれば?
久しぶりの故郷なんだし」
「今回は妖怪退治でも何でも無いから、羽伸ばしてこい。
麗のことは、俺等二人に任せて」
「そういうことだから」
「……
では、お二人のお言葉に甘えて……」
雷光は二人に頭を下げその場から飛び立っていった。傍にいた焔は、人の姿から鼬の姿へと変わりシガンがいる反対の肩に登った。