陰陽師少女   作:花札

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大輔が輝三の家に来てから三日が経った。


完璧に三体を自由に憑依できるようになった大輔は、木の薙刀を手にした麗華の隣に立っていた。


「最終試験、麗華と戦ってもらう」

「……ハァ?!」
(やっぱりかぁ)

「やっぱり姉ちゃん、戦うのか」

「お姉ちゃんと龍二お兄ちゃんの修行が終わった時、確か泰明叔父さんと対決したって聞いた」

「い、いいんですか?

神崎と戦って」

「私が弱いとでも?」

「その逆だよ」

「平気だ。勝てる勝てる」

「どこからその自信が」

「大丈夫。私の時もこう言ったから」

「お前は別だろう」

「ちょっとタイム!


伯父さん、俺が相手していいか?」


陽一は麗華の元に肩を回しながら歩み寄ってきた。


「男同士の方が、力加減せんでええやろう?

それに、大輔の実力がどのくらいなのか、俺は見たいし」


勝負を挑むような表情で、陽一は大輔を見た。その様子に、麗華は軽くため息をつきながら輝三の方を見た。


「ま、いっか。

じゃあ陽一、準備しろ」

「応!」


憑依

向かい合う大輔と陽一……その中心に輝三が立ち彼の隣に麗華が立ち、その観客として果穂と大雅は縁側に座り見ていた。

 

 

「大輔、憑依しろ」

 

「はい」

 

 

深く息を吐く大輔……それを合図に、メル達は光の魂となり彼の身体へと入った。すると彼の容姿は変わり、それはあの時島で見た胸下まで伸びた深い青色の髪を耳下で結い、青と黄色の瞳に青い下半身の道着を穿き、羽衣を身に纏った姿だった。

 

 

「島の時と変わらないな」

 

「陽一、式神は使用禁止だ」

 

「は?!」

 

「もちろん、波もだ」

 

「はぁ!?」

 

(道理で朝から竃と、焔と波がいないわけだ)

 

「札は使ってええよな!?」

 

「それは構わねぇ」

 

「陽一、少し手加減しろよ?」

 

「せーへん。

 

戦闘に、初心者も経験者も関係ない!」

 

 

笑みを浮かべながら陽一は駆け出し、大輔目掛けて木刀を振り下ろした。大輔は手から扇子を出すとそれで木刀を振り払った。

 

 

「本気で来る奴があるか!?」

 

「木刀だから、平気やろ!?」

 

 

足の軸を変えて、陽一は木刀を振り回した。次々に来る攻撃に、大輔は扇子で全て振り払い後ろへ下がると、水の弾を放った。

 

放たれてた水弾を木刀で振り払うと、陽一は札を出し雷を放った。その雷を大輔は扇子と切り替えに傘を出し、それを広げ雷を防いだ。

 

 

「え?その傘、そんな役割があるんか?」

 

「いや……咄嗟に広げたら、こうなった」

 

「まぁええや。攻撃続行!」

 

 

二枚の札を出すと、そこから火と風が出てきてその二つを陽一は融合させ火の風を作り出し、それを大輔目掛けて放った。大輔は傘から再び扇子へと切り替えるとそこから水飛沫を出し、火の風を消し去った。消し去ると煙が上がり、その中から木刀を構えた陽一が現れ大輔は彼が振り下ろしてくる木刀を、扇子で振り切り後ろへ下がった。下がると大輔は、扇子から太鼓と撥へと変わると音を鳴らし始め、そこから無数の雷を放った。

 

放たれてきた雷を同じ様に雷で対抗し、陽一は放たれてくる全ての雷を消すと上がる煙を木刀で振り払い、大輔を見た。

 

 

「……流石……神崎の従姉弟だ」

 

「どんなもんや!」

 

「そろそろ決着付けさせてもらう」

 

「そりゃあ、こっちの台詞や!」

 

 

三枚の札を出すと陽一は、それを投げ火・水・雷の技を大輔目掛けて放った。彼は武器から雷と水を出すとそれを放った。

 

 

二人の技が同時に当たると土煙が上がり、さらに風が吹き荒れた。風に耐え切れなかった陽一は飛ばされ、輝三に足で止められた。

 

 

「……痛ってぇ」

 

「ここまでだ。

 

会場から出た、陽一の負けだ」

 

「やったぜ」

「納得いかんわ!!」

 

 

 

 

 

夕方……

 

 

体の至る所に、絆創膏を貼った陽一は不機嫌顔をしながら、縁側で麗華の膝に頭を乗せふて寝していた。

 

 

(絶対長引くと思ったから、中止したんだ……あのクソ伯父。

 

 

しかも、ええタイミングに仕事に行きやがって……)

 

「陽君、機嫌治りましたぁ?」

 

「治らん!!」

 

「そんな怒鳴らなくても」

 

「納得いかんわ!!」

 

「ハイハイ(まだ時間かかりそう)」

 

 

その時、シガンが陽一の前にヒョッコリ現われると鼻で彼の顔周りのにおいを嗅ぐようにして鼻を動かした。そんなシガンの頭を、陽一は撫でてやった。撫でるとシガンは嬉しそうに頭を擦り寄せ、彼の頬を舐めた。

 

 

「いつまでふて寝してんだよ。お前」

 

 

そう言いながら、大輔は陽一の足元の縁側に腰を下ろした。

 

 

「ほっとけ」

 

「ガキだな」

 

「うっさい」

 

「星崎、あんまり刺激しないで。

 

ただでさえ、面倒なんだから」

 

「お前も大変だな」

 

「まぁ、私もさっきの勝敗には納得いってない」

 

「ただ単に、俺が外部の人間だからじゃねぇの?」

 

「さぁね」

 

 

その時、庭の向こうの茂みがガサガサと動き、そこからムーンが鳴き声を発しながら出てきた。

 

 

「ムーン……どうした?」

 

 

歩み寄ってきたムーンに席を譲るようにして、陽一は起き上がった。ムーンは縁側に前足を乗せると、麗華の膝に頭を乗せ擦り寄せた。寄せてきたムーンの体を、麗華は撫で彼女に続いて陽一も撫でてやった。

 

 

「甘えに来たのか」

 

「ずーッと、お墓守ってるから疲れちゃったんでしょ」

 

「墓?」

 

「この山道を上った先に、俺等分家の墓があるんや。

 

ムーンはそこの見張り役」

 

「へー……」

 

「陽一君、ちょっと」

 

「ハーイ」

 

 

美子に呼ばれた陽一は、立ち上がり部屋の奥へと入って行った。麗華は、ムーンの頭を撫でながら話をしだした。

 

 

「不思議だよね……

 

 

妖怪や地縛霊、浮遊霊は見えて、自分達の守護霊や死んだ家族が見えないって」

 

「……そうだな」

 

「小学校の時の先生、覚えてる?ゲジ眉の」

 

「あぁ、あの鬼の手持ってた奴だっけ?」

 

「そうそう。

 

前に授業の一環で、守護霊を見て貰ったことあったんだ」

 

「へぇ。

 

で?誰だったんだ?」

 

「それが、何故か知らないけど見覚えのない女性だったんだよね」

 

「は?

 

守護霊って、確か血縁関係の奴が憑くんじゃねぇの?」

 

「そう思うでしょ。

 

ところが、私に憑いてたの見たこともない女性だったの。

 

 

祖父さんや祖母さん当たりの人かなって思って、写真見たんだけどどっこにもいなかったんだよね」

 

「曾祖父や曾祖母の可能性は?」

 

「そっち系統の写真も見た。でもいなかった」

 

「誰なんだ?そいつ」

 

「分かんない」

 

 

ムーンの頭を撫でる麗華に、シガンは体を擦り寄せながら首周りを歩いた。

 

 

「ちょっとシガン、擽ったい!ジッとして」

 

「キュー!」

 

「シガン!」

 

「相変わらず、動物に愛されてるね。神崎」

 

「うっさい!!」

 

 

麗華に甘えるシガン達を見て羨ましく思ったのか、大輔の周りを飛んでいたニアとリユは彼の頬を頬擦りした。

 

 

「あ!こら!」

 

 

 

 

夜……

 

 

風鈴が鳴り響く中、眠っていた大輔はスッと目を開けた。庭の方を見るとそこには、白狼の焔と波の傍で陽一と何かを話す麗華がいた。二人だけの時間を楽しむようにして、笑みを零しながら麗華は話していた。すると陽一は、麗華の髪から何かを取りそれを捨てた。そして油断した彼女を陽一は、抱き上げると焔の背に飛び乗り、波と共に夜空へと飛んで行った。

 

 

(……幸せそうだな)

 

 

寝返りを打ち、大輔は再び目を閉じた。眠りに入った彼に、ニア達は寄り添うようにして腕の中に入り眠った。

 

 

月明かりが照らす夜空を、焔の背中に乗って陽一と麗華は散歩していた。

 

 

「きれいな星やなぁ、こっちは」

 

「本当。

 

東京じゃ、こんな星見られないもん」

 

「こっちもや。

 

 

なぁ、麗はどうするんや?」

 

「え?」

 

「俺は東京の大学行く予定やから、高校卒業後龍二兄ちゃんと入れ替えに麗達の家に行くんやけど……

 

麗はどないすねん?進路」

 

「……」

 

「ええ加減、考えへんと準備するにも取り返しが」

「分かってる」

 

「……」

 

 

風で靡く麗華の長い髪の隙間から、一瞬思い悩む彼女の表情が陽一には見えた。麗華はシガンの頭を撫でながら、前方を見つめた。

 

 

「医療関係の仕事には着きたいと思ってる……

 

でも、まだ無理……」

 

「……」

 

「未だに人は怖い。

 

時々、悪い方向に考えるし……」

 

「……」

 

「医者になった時、患者になんて声を掛けていいか分からないし……」

 

「……そっか。

 

 

悩んでる状態ならええ。何も考えてないってなったら、どないしようと思ったけど……よかったわ」

 

「……陽、ごめん。不安だった?」

 

「全然!

 

それより、麗は不安やなかった?周りがどんどん自分の進路決めていく中、一人残された様に思わんかった?」

 

 

優しく言う陽一に、麗華は自然と涙が流れ落ちた。そんな彼女を陽一は抱き寄せ抱き締めた。肩に顔を埋めた麗華は、泣き声を抑えながら彼に抱き着いた。

 

 

「溜め込んじゃあかんって言うたやろ?

 

俺は、麗の味方や。何があっても、どんな時でも」




翌日……


駅で駅弁を買う大輔。荷物番をしていた陽一は、麗華に切符を渡しながら話した。


「ほい、お前等の切符」

「ありがとう」

「ふー。童守駅着いたら、龍二義兄ちゃん迎え来るんか?」

「その予定」

「しっかし、果穂達まさか車でお迎えが来るとは」

「果穂はともかく、大雅の奴新幹線乗れると思ってワクワク気分だったからな」

「お迎え着た途端、ギャン泣きだったもんな」

「大雅はギャン泣き、果穂は里奈さんと大喧嘩……帰り際のとんだ修羅場だった」

「ハハハハ!確かにな!」

「笑い事じゃないよ」


話す二人の元に、三つの駅弁を持った大輔が帰ってきた。しの時、麗華の携帯が鳴り彼女は手に取った。画面に映し出されたのは『神崎輝三』。


「(?どうしたんだろう)

はい、もしもし」

「あぁ、麗華か。

悪かったな、今日駅まで送れなくて」

「別にいいって。

果穂達は?」

「今さっき、帰った」

「10時頃に迎えに来て、帰った時間が12時過ぎ……お疲れでしたね、輝三」

「俺より美子だ。

完全に疲れ切って、今昼寝してる」

「何か、想像できるわ。

お昼でも作ってあげれば?」

「そのつもりだ。


また、そっちに行く時連絡する」

「分かった。美子伯母さんによろしくね」

「あぁ。龍二に仕事の腕上げろと伝えとけ」

「了解」


通話を切った麗華は携帯の画面を閉じた。構内放送がかかり、麗華は陽一と別れ大輔と共に新幹線に乗り帰路に就いた。
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