陰陽師少女   作:花札

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学際の準備をする生徒一同……


麗華達の教室では、指定の場所に机と椅子を動かしていた。


「だいぶ喫茶店らしくなってきたじゃない」

「本当。あとは当日に着る浴衣を試着して、問題なければ完成よ!」

「去年はお化け屋敷で、今年は喫茶店か」

「危うくメイド喫茶になるところだったけどね」


教室内に飾るカーテンを縫う麗華は、九死に一生を得たような表情をしながらため息を吐いた。


「まぁ、麗華がメイド服着たらお店は繁盛すると思うよ」

「着た瞬間に、メイドが冥土になるぞ」

「上手いな、大輔」

「伊達先輩、今ここで殺されたくなければ止まっている手を動かしてください」

「おぉ、怖ぇ」


「女子ぃ!控室取れたから、浴衣に着替えるよぉ!」


やっていた作業を止めて、女子達はワイワイ燥ぎながら自身の鞄を持って教室を出て行った。残った男子達は、一息つきながら作業を休んだ。


「しっかし、神崎が着付けできるとは……意外だったな」

「そうか?」

「俺は神崎さんは出来ると思ってたよ」

「何で?」

「だって、神崎さんいつも姿勢良いじゃん。

着物着てるって感じがしてるし」

「そんな理由で」

「伊達さんは分かってたんですか?神崎が着付けできるって」

「いや」

「ま、祓い屋とか陰陽師関係だったら、着物の着付け位できるだろうよ」

「何で?」

「だってよ、ゲームとかに出て来る陰陽師関係のキャラって、絶対着物系統の服着てるじゃん」

「ゲームと一緒にするなよ」

「斎藤に関しては、去年の夏休みに散々神楽舞をやるから見に来いと、宣伝していたから」

「着付けできるかと思いきや……」

「全然できないという……」




女子更衣室……


説明書を読みながら、一同は浴衣に悪戦苦闘していた。分からない箇所を、麗華に教えて貰いながら数時間かけて何とか全員浴衣に身を包んだ。


「ずいぶん時間がかかっちゃった……」

「どうしよう……朝早く来ないと、間に合わないよ」

「学際始まるのって、朝10時だよね?」

「その前に、お店の準備とかがあるから……」

「先に男子着替えさせて、その間に下準備をして大掛かりな準備は、男子に任せてその間に私たち女子が着替えればいいんじゃないの?

男子の着流しは、女子と違ってそこまで難しくないから」

「麗華の意見に賛成」

「そろそろ戻らないと、男子達が待ちぼうけしてるから」

「だね。麗華は残るの?」

「着流しの着付け、教えなきゃいけないし。

甚平でいいのに」

「何か面白みないじゃん!」

「面白味を求めるな」


和服の喫茶店

文化祭当日……

 

 

「え?陽の奴、来るの?」

 

 

浴衣の帯を締めながら、麗華は携帯で美幸と話していた。美幸は書類を先輩に渡しながら、話を続けていた。

 

 

「そうなんよ。あたしが今、仕事が忙しくて今年は行けんって言うたら、一人で行くって言って」

 

「……兄貴も、今年無理だよ。

 

署の仕事が大量にあって、とてもじゃないけど休みとれないって言ってたから」

 

「陽一の奴、それ分かってんの?」

 

「一応、メールはしたけど」

 

「……

 

見てへん可能性あるな」

 

「まぁいいや。

 

とりあえず、陽が一人で来るってことは分かった」

 

「本当にごめんね、麗華ちゃん」

 

 

携帯で謝る美幸の背後から、彼女の名を呼ぶ声が聞こえてきた。話を切り上げようと、麗華は軽く挨拶をして通話を切った。

 

 

「麗華!お客さん来たから、対応お願い」

 

「はーい」

 

 

長い髪を持ってきていた簪で軽くまとめ上げると、麗華は迎えに着た朝妃と共に教室へと向かった。

 

 

 

 

お昼過ぎ……

 

受付で名前を書いた陽一は、パンフレットに載っている地図を頼りに校内を歩いた。麗華の教室に着こうとした時、久瑠美と大輔が話していた。陽一に気付いた彼は、教室の戸を開けて麗華を呼んだ。

 

 

「夏休み以来やな、大輔」

 

「そっちも元気そうだな」

 

「大輔、この人誰?」

 

「神崎の従兄弟」

 

「へー」

 

 

しばらくして、浴衣を着た麗華が携帯を持ちながら、教室から出てきた。

 

 

「もう、来たら連絡してって」

 

「すまんすまん!ついうっか……」

 

 

麗華の浴衣姿を見た陽一は、言葉を詰まらせたかと思うと鼻血を出した。それを見た久瑠美は慌ててティッシュを出し、彼に渡した。

 

 

「何興奮してんだよ、お前」

 

「いや、余りにも綺麗過ぎてビックリしたんや」

 

「麗華とこの人って、どういう関係?」

 

「俺等と同じ関係」

 

「やっぱり」

 

「麗、着るなら俺が選んだ浴衣着たらよかったのに」

 

「汚れると嫌だから、やめたの」

 

「何や、そうやったんか。

 

にしても、その白生地に紫陽花柄、めっちゃ似合ってるな!」

 

「それはどうも」

 

「ところで、まだ暇にならんの?」

 

「そうだよ、大輔!

 

アタシと回るって言ったじゃん!」

 

「十三時まで待ってくれ。そっからシフト入ってないから」

 

「本当!」

 

「麗もか?」

 

「そうだよ。だから、店に入ってなんか食べてて」

 

「よっしゃー!麗の手作り和菓子が食べられる!」

 

「そんな凝った物、作ってない!」

 

「お前も、店に入って時間潰してくれ」

 

「分かった。

 

にしても、和服のカフェなんてオシャレじゃん」

 

「喫茶店だ」

 

「同じよ。

 

さぁて、何食べようかなぁ!」

 

 

教室内で美味しそうに、あんみつときな粉餅と磯辺焼きを食べる陽一と久瑠美の姿に、他の客人は彼等と同じメニューを次々と注文していた。

 

 

「凄い……お店繁盛してる」

 

「麗華、誰よ!あのイケメン!」

 

「従兄弟」

 

「大輔、お前の彼女めっちゃ可愛いな」

 

「手ぇ出した瞬間、中村に不倫してるって報告しますんで」

 

「優梨愛は関係ねぇだろう」

 

 

「ちょっとお姉さん達!」

 

 

お餅を焼いていた麗華と朝妃に、若い男二人がニヤニヤと笑いながら話し掛けてきた。

 

 

「はい、お替わりですか?」

 

「この後暇?」

 

「え?」

 

「俺等に付き合ってよ!」

 

「私とこの子、先約いるんで」

 

「良いじゃん、別に。

 

ちょっとだけ!ね!」

 

 

しつこく誘ってくる男二人に、軽くため息を吐いた大輔が助けに入ろうとした時だった。朝妃が盛り付けた磯辺焼きを、背後から翼が彼女の手首を掴み自身の口へと運び食べた。口に入った餅を食べながら、彼は二人を睨み付けた。睨まれた二人は怖じ気つき、朝妃から麗華に乗り換えようと彼女の方に向いた。だがそこには、いつの間にか彼女を背後から抱き着く陽一が、今にも噛み付きそうな目で、二人を睨んだ。

 

 

「お客さん、あんまりしつこいと警察呼ばれますよ?」

 

「は?」

 

「この女子生徒、親類に警察関係者がいるんで……

 

 

あんまり、問題起こすとお二人の将来が」

「失礼しましたぁー!!」

 

 

慌てた様子で、二人は教室を飛び出して行った。出て行った奴等に向かって、どこからか持ってきた塩を久留美は撒いた。

 

 

「お前、その塩どこから?」

 

「パパが持ってけって」

 

「……」

 

「ちょっと翼!勝手に食べちゃダメじゃない!」

 

「醤油かけ過ぎ。

 

失敗作」

 

「かけ過ぎてないわよ!」

 

「お二人さーん、喧嘩は他所でやってー」

 

「杏莉!」

 

「龍義兄の言う通り……麗を背後から抱き着くだけで、悪いムシが去ったわ」

 

「おいコラ、何入って来てんのよ」

 

「悪いムシを追い払ってやったんや。感謝せい」

 

「公共の場で女に抱き着く馬鹿がどこにいる!!」

 

「ここや」

 

「いったん表へ出ろ。アンタの頭に踵落とし食らわせてやるから」

 

「ごめんなさい。できる範囲で我慢しますので」

 

「あと十五分だから、みたらし団子でも食ってろ」

 

「やったぁ!麗のみたらしやぁ」

 

 

嬉しそうにする陽一を見て、麗華は軽くため息を吐きながら作業場へと戻った。




賑わう校内に、受付所を通り抜け入る一人の者……彼は煙草に火を点けようとライターを取り出した。


「すみませーん!

校内は全禁煙です!煙草は控えてくださーい!」


風紀委員の腕章を付けた生徒の言葉に、その者は煙草をしまいそのまま校舎の中へと入った。
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