様々な模擬店を行き、そこに売られている物を食べたり買ったりして楽しんでいた。
「たこ焼き、美味ぇな」
「本当」
自身の容器からたこ焼きを一つ食べる麗華を、ふと目で追うと彼女の頬に青海苔が付いていた。陽一は然り気無く、その青海苔を取ろうと手を伸ばした。
「あ!麗華ぁ!」
その呼び声に、陽一は慌てて手を引っ込めた。声の方を見ると、そこには久留美と彼女の行為にため息を吐き頭を抱えた大輔がいた。
駆け寄り楽しそうに話す久留美と麗華を前に、陽一は邪魔しやがってと言いたそうな表情を浮かべて大輔を睨み、彼は悪いと言わんばかりに手を前に出した。
「陽、どうかした?」
「何でもねぇ!」
「……」
ムスッとしている陽一に、麗華はたこ焼きを一つ割り箸で掴むと彼の肩を叩きこちらに向かせた。向いたと同時に開いた陽一の口に、たこ焼きを突っ込んだ。
「……美味い」
「これで機嫌直してね」
「あら、結構ラブラブじゃん!」
「良いのか?俺等の前でそんなこと」
「星崎は口が堅いし、私達の関係知ってるでしょ?
九条はどうせ島に帰るし、バレる心配はない」
「バラしたら、どうなるか分かってんやろうな?」
「分かったから、その怖い笑みを浮かべるのやめろ」
「麗華の彼氏、超怖い」
「最強のボディーガードですから」
校舎裏へと来た来校者は、地面に陣を書くとその中央に瓶を置いた。
その者が詠唱すると、瓶はカタカタと音を鳴らしそして蓋をこじ開けると、勢い良く黒い霧を出した。それを見届けると、後ろで待機していた何かに飛び乗り去って行った。
「おい、あれなんだ?」
校庭でバトン部の踊りを見ていた生徒の一人が、空に指をさしながら立ち上がった。大空に広がる黒い煙……その中から現れたのは、黒い毛に覆われた獣だった。獣は咆哮を上げると、校庭にセットされた舞台目掛けて突進してきた。
「キャァァアアア!!」
悲鳴を上げながら、生徒一同は一斉にそこから逃げた。校舎内にいた生徒達は、校庭から聞こえる悲鳴に気付き外を見た。
「な、何だあれ?!」
「虎!神崎に連絡!」
「今してる!」
弓道場に来ていた麗華は、携帯が鳴っているのに気付きすぐに出た。射的をしていた陽一は、賞品のお菓子を持ちながら彼女の元へ歩み寄ってきた。
「妖怪?校庭にですか?」
「俺等今、四階の教室にいるんだけど……
外の様子見る限り、結構な騒ぎになってる。今から大達連れて残ってる奴等の避難させようと思う!」
「避難のことだけを考えて下さい。
妖怪は私達が何とかします」
電話を切った麗華は、別の所に掛けた。その間に陽一は波と焔に至急校庭へ行って、逃げ遅れた生徒の救助に当たれと命令を下し、先に行かせた。
「もしもし星崎、今平気?」
「あぁ、何とかな。
九条を今、俺等の教室に避難させたところだ」
「先輩からさっき連絡が来て、逃げ遅れてる生徒達がいるらしい」
「らしいな。今校舎から校庭見てるけど、逃げ遅れた生徒を、数人の男が賢明に助けてる。
神崎達が来るまでの間、俺が奴の気を引き留めておく」
「頼んだ」
携帯を切ると、大輔は口笛を吹きながら廊下を駆けた。すると彼の周りに、メル達が姿を現した。
「一仕事やるぞ、お前等」
大輔との通話が終わると、麗華は陽一の方を見た。彼は全てを悟ったようにして、刀を出し外で待っていた。
「せ、先輩……」
「ここにいるお客さん達に、待機するように伝えて」
「は、はい!」
「麗、早く!」
麗華は薙刀を出すと彼と共に校庭へ向かった。彼等と入れ違いに教師が弓道場へ入り、校庭が危険と言う事を伝えた。
逃げ惑う生徒達に、獣は一直線に突進してきた。足を滑らせ倒れた生徒の前に、メル達を憑依させた大輔が降り立ちそいつを止めた。
「な、何だ?」
「早く行くぞ!」
「あ、はい!」
どこからかやって来た藤宮は、彼を立たせると一緒に校舎の中へと駆けて行った。彼等と入れ違いに、弓道場から駆けてきた陽一は、大輔の背後から刀を獣目掛けて突いた。獣は痛みから咆哮しながら、後ろへ下がり身を引いた。
「サンキュー、大輔。時間稼ぎ」
「応」
「何、こいつ……妖怪?」
「見たことないってことは、野良か?」
「可能性はある。
しっかし、どっから……」
「神崎!!前ぇ!!」
どこからか聞こえた藤宮の声に、三人は妖怪の攻撃を素早く避けた。攻撃してきた妖怪に、波と焔は水と火の攻撃を食らわせると、二人の前に立った。
「人の主を攻撃しようとは、いい度胸してるじゃねぇか」
「ホンマに。うちの主、傷付けるなら容赦はせいへんで」
「うわっ、お前等のパートナー怖っ」
「とっとと退治して、学祭の続きしようよ」
「せやな」
「あーあー!
マイクテストマイクテスト!
さぁ!やってまいりました!伝説の生徒会長の妹による妖怪ショー!」
校内に設置されているスピーカーから響く聞き覚えのある声……ハッとテントが立っている所を見ると、そこには息を切らした真二が、麗華に向かってVサインを送っていた。
「し、真二兄さん……いつの間に」
「あの人のおかげで、少しはマシになったな」
「さぁ、本日の司会を務めさせていただきますはこの私!
元副会長兼雑用係をしておりました、滝沢真二!」
校庭に響く真二の声に、教室の窓から生徒達が顔を出した。
「ねぇ、この中で戦えと?」
「そうやろ?」
「……」
「麗、今夜泊まらせてくれ」
「泊まるつもりだったんでしょ?」
「なんや、バレてたん?」
「当たり前でしょ……」
「お前等、イチャつく暇があるなら目の前の敵を倒してからにしろ」
大輔の言葉に二人は引き攣った顔を浮かべながら、そそくさと武器を構えた。
「さぁ、始まりますぜ!
会長妹達による、妖怪退治!皆ぁ、応援よろしくぅ!」
真二の応援に、生徒一同は一斉に歓声を上げた。
前足を上げ、勢い良く振り下ろしてきた妖怪の攻撃を三人は素早く避けた。飛び上がった麗華と陽一はすぐに傍へ来た焔と波の背中に乗り、札を取り出し印を結んだ。
「大地の神に告ぐ!」
「汝の力、我に受け渡せ!」
「その力を使い、目の前の敵を倒す!」
「その力を使い、目の前の敵を倒す!」
光り出す札と共に、焔と波は口に炎と水を溜めていった。
「出でよ!志那都比古神(シナツヒコノカミ)!」
「出でよ!建御雷之男神(タケミカヅチ)!」
札から出る風と雷の技が、吹き出した焔と波の攻撃と合わさり妖怪に当たった。さらに反撃しようとした妖怪に雷と風の合わさった攻撃が当たり、その攻撃の方に視線を向けた。そこにいる大輔に向かって、咆哮をあげた妖怪は、口に黒いオーラを溜めだした。
「アカン!麗!」
「分かってる!」
二人は二匹の背中から飛び降りると、持っていた薙刀と刀を構え、刃を突き立てた。
落下していく勢いと共に、二人の刃が妖怪の頭と目に突き刺さった。断末魔をあげながら、妖怪は灰になりながら倒れていき、その中で麗華と陽一は傍へ来た焔と波の背中に飛び乗った。
「………!
き、決まったぁあ!!
勝者は、伝説の生徒会長妹達の勝利ー!」
真二の声に、生徒達は一斉に歓声を上げた。戦い終えた麗華と陽一は、焔達の背中から降りると軽くため息を吐き、大輔は憑依を解き地面へ降り立った。三人は互いを見合うと、ハイタッチを交わした。
歓声が上がる中、学校を出て行く者が一人……
その者は、ポケットから煙草を取り出すとそれに火を点け一服した。振り返った彼……秀二は鼬姿の陽炎を撫でながら、その場を去って行った。