一話 終わりと始まり
時刻は7時
「……懐かしい夢だな」
夕霧 一樹は窓から差し込む太陽の光で目が覚めた。
あれから八年の月日が流れ、歳は十五になった。
少し背筋を伸ばしながら立ち上がり、クローゼットから私服を取り出すため開けると、そこに真新しい高校の制服が掛かっていた。
「…そういえば今日から学校だっけ?」
それは一週間程前に遡る。
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「破軍学園?」
一樹は間の抜けた声で問いかけた。
「はい。カズキも年頃ですから、学校という場所にも通ったほうがいいと思いまして」
目の前にいる純白の美女は食事中の手を止め、どこか嬉しそうに答えた。
彼女の名前はエーデルワイス。
純白の長い髪に白銀の瞳が相まって神秘的な雰囲気を纏っており、肌は初雪のように白く、まるで芸術家が生涯の全てを賭けて精巧に作り上げた人形のような美しさがある美女だ。そして一樹の親代わりであり師匠でもある。
「まぁ、師匠がそう言うなら行ってみようかな?」
「そうですか。服はカズキの部屋のクローゼットに掛けておいたので、それを使ってください」
(どちらにせよ行かせる気だったなこの人)
拒否権が初めからなかったことに気がつき、一樹はジト目でエーデルワイスを見やると、バツが悪そうな顔で顔を背けた。一樹は溜息を吐きつつ、真剣な顔になり、エーデルワイスに問いかけた。
「それで
「どういう意味です?」
「そのままの意味ですよ。破軍学園に通うということは俺は師匠にこれまでみたいについてはいけない。しかも、今回師匠は俺が拒否しても行かせる気だった。それは俺がついては行くことのできない次元の場所に行くということ。尚且つ、師匠が断ることのできない人物からの依頼ということしか考えられないんですよ」
一樹はこの八年間エーデルワイスと世界各国を回り、いろんな環境で修行をした。その時にエーデルワイスは一樹に力が身につくまで、全ての依頼を受けなかった。
一樹の確信を持った顔を見て、エーデルワイスは聡い子に育ったことに喜べばいいのか、悔やめばいいのか、少し微妙な気持ちになりつつ答えた。
「流石ですね。すいませんが
一樹はエーデルワイスと離れることに寂しさを感じつつも、顔に出さないように答えた
「わかりました。師匠に言うのもおかしい気がしますが、気をつけてください」
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そんな事を思い出しつつ、一樹は新しい制服に着替え終わり、朝食を食べ終えた。
玄関に向かう途中、ふと後ろを振り向く。
二年間という短い期間であったが、エーデルワイスと過ごした空間。色んなことが思い出せる。楽しそうに食事をとりながら話す風景、テレビに映る動物の赤ちゃんを張り付くように見るエーデルワイスの姿に苦笑する自分の姿。たまに言い合いになって喧嘩した風景。喜怒哀楽を共に過ごしたこの部屋に一樹は一礼し、部屋を後にした。