BBちゃんのFate/Zero   作:火影みみみ

4 / 6
第2話 後編

 私が目覚めて数日が過ぎた。と言っても私は何をするでもなく、ただただ桜の視界から彼女の送る1日を眺めているくらいしかすることがなかった。

 アルターエゴの性能は概ねccc通りのスペックとなっているようで、宝具もステータスもそのままなのはありがたかった。こちらまで弱体化していたら本当に余裕がなくなっていたかもしれない。ただ、問題がなかったわけではない。

 cccやその前作のエクストラは現実ではなく電脳空間での聖杯戦争を行っているため、こちら側つまりはステイナイトやZeroとは形式がかなり異なる。

 パッションリップはあまり変化がないが、メルトリリスは違う。

 彼女は電脳空間そのものにハッキングを仕掛け、自分を無敵化したりレベルを上限の999まで上げるというチート行為を得意としてきたが、こちら側ではそれはできないだろう。

 

 それを考えると私の基本ステータスやスキルが大幅に弱体化したのもうなずける。

 あれはBBが電脳空間で行った自己拡張や他のサーヴァントを吸収した結果なので、最初から生まれ持つことはない。むしろここまで残っていることが幸運かもしれない。

 

 それにしても、と私は思う。

 

 毎日を幸せそうに送る二人や、それを優しく見守る父と母、ついでにカリヤーンを見ていると、ここが本当にZeroの世界なのか疑わしくなる。

 この少女があんな悲惨な目にあうのか、父は魔術師らしい魔術師なのか、雁夜はぼろぼろになった末に死ぬのか、疑わしくなる。

 いや、きっとそうなるんだろう。

 注目してみればわかるが父の、遠坂時臣の桜と凛を見る視線に何か悩んでいるといったような感情が含まれている。

 考えるまでもなく、あれは悩んでいるのだろう。桜か凛、どちらに後を継がせるべきなのかを。ま、結局は凛が継ぐことになるけどね。凛の魔術属性のほうが扱いやすいし。

それに時臣は嫌いだけど凛は大好きよ、私。遠坂の跡取りになったからステイナイトの凛がいるわけだし、そう言う意味では両親に感謝している。

 

 だけど、だけどね。どうしても桜の境遇には納得いかない。

 確かにあの設定と境遇は必要だったのかもしれないし、HFは最高と言っていい。

 けどね、桜の境遇は悲しすぎると思うの。純潔を蟲なんぞに奪われて、体を改造されて、ワカメにいじめられ、HFルートでは思いがかなったものの大虐殺しちゃうし。

 

 だからこそZeroの二次創作界隈では桜救済が一つの目標になってたりするけれど、現在進行形でタイムリミットが迫っている私は一体どうしたら良いのかしら……。

 

 読んだり見るのはまだ感情移入する程度で済むけれど、桜の中にいる私はその感覚がダイレクトに伝わってしまう。体を共有しているわけだから当たり前なわけで、桜のピンチ=私のピンチというわけ、泣けてくるわね。

 あの拷問は小さい桜だったからステイナイトまで耐えることができたわけで、ある程度の感性と価値観を持ち合わせている私だと耐えられる自信がない。蟲は嫌いだし。

 

 となると私自身がどうこうするしかないのだが、一つ問題が発生する。

 

 この世界には魔術協会と言った組織があることは型月ファンなら周知の事実だけれど、その中に厄介なものが存在している。

 それは【封印指定】とよばれ、それは魔術師にとっては最高の栄誉であり、同時に厄介ごとでもあるという。細かいことは省くけれど、それを受けてしまうとその人は永遠に保護という名の監禁をされてしまう。研究第一な魔術師にとってはたまったものではない。

 そして、その指定される条件は単純で【一代限りで受け継がれることのない希少な能力を持つ】こと。作品内の例を上げるなら最高の人形師である蒼崎橙子が有名かしら。

 このことを念頭に置いて今の桜の状況を考えてみてほしい。

 

 ①架空元素・虚数の資質をもつ。

 ②私という人格はサーヴァントクラスのスペックを持ち、失われた神格の能力を有している上に、さらに規格外のスキルや宝具を持つ。

 

 ①だけでもホルマリン漬けクラスだというのに、②の事実が露見したらどうなるか、考えるまでもないと思う。

 素人目にみても、危うい。ホルマリン漬けどころか一生監禁コースが確定する未来しか見えない。

 

 だからこそ私は秘密裏に動く必要がある。できるかぎりスキルも使いたくはないが、蟲爺相手にそれは流石に無理があると思う。あれを始末するにはメルトリリスで溶かすのが一番効率的と言える。あの蟲どもの相手にはメルトリリスの蜜が理想的なほど相性がいい。本体を探すのに一匹一匹潰すよりも全体を一気に溶かして吸収してしまえるのだから使わない手はない。

 あとはそれを蟲爺に叩き込む手段なのだけれど、私はギリギリまで、具体的には桜が蟲蔵に入れられるくらいまでは表に出ずにチャンスを伺うつもりでいる。そうして桜をただの母胎として認識させ、油断したところにメルトウイルスを全力で叩き込むことにした。

 確認したところによると、メルトリリスの敏捷はA+。五次ライダーやバサクレス以上、アサ次郎や四次ランサーと同じクラスの速さということになる。いくら蟲爺でもこれらの英霊から逃げきれるほどの強さはないはずだと思う。

 なので作戦としては蟲蔵でメルトリリスに変身して叩く、が大雑把な道筋になる。

 タイミングだけはその場に合わせる必要があるが、当てれば即勝負が決まる。

 それまでに私ができることは、自身の能力の把握と私という存在の隠蔽だけだった。

 

 

 

 

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 はい、回想終わり。

 まだまだ桜がドナドナされるまで一年近くの時間があったけれど、私は主に観察か寝てたか、適当に自分のスペックの確認しかしてないからバッサリカットよ、面白くないわ。

 けど大体私のことに関しては理解できたはずよ。

 私は爆弾、それも超大型の爆弾なの。使い方を間違えば、桜まで危険にさらす超危険物体よ。

 

 それに視点を現代に戻したのにも理由がある。

 それはこれからのしなければならないことがたくさんあるからだ。

 

 物事というものは一つを解決すれば万々歳というものでもなく、新しい問題が発生してくる。

 箇条書きにするとこれらのこと。

 

 ・桜の魔術

 ・第四次聖杯戦争

 ・龍之介の抹殺or逮捕

 ・ウェイバー君とコネを結ぶ

 ・衛宮陣営を助ける

 

 といった感じ。

 これは重要な事柄を上から順に並べたもので、まず桜には魔術師になってもらう必要がある。

 私が魔術を学んでもいいのだけれど、それだと桜の時間を多く奪うことになりかねないし、何より役割を分担したい。桜が魔術と日常を、私が戦闘と参謀と言った感じにだ。この割と理不尽な世界で何が起こるかわからないし、何より今の私じゃあ絶対に勝てない相手が少なくとも地球に何人もいる。だから桜にももしもの時にそなえて力をつけていてほしいのだ。

 

 そして次に重要度が高いのがこれ、第四次聖杯戦争。

 これに関しては説明はいらないと思う。

 

 なので飛ばして次、シリアルキラーの龍之介。漫画版の所業は絶対許さない。あれを放置するほど私は冷酷にはなれないので聖杯戦争開始前までには始末をつけたい。

 

 これから下二つはできれば程度に考えていること。

 

 ウェイバー君のことに関しては彼の将来が重要になる。

 彼は成長し、ロードエルメロイⅡ世と呼ばれるほどに重要人物になるのだけれど、彼は教え子を成長させることが天才的にうまく、彼の教え子は全員が大成するといった具合だ。そんな彼はライダー陣営で第四次聖杯戦争に参加するために冬木にやってくる。これを機に彼とコネを結んでおけば将来の桜の手助けになるかもしれない。

 

 衛宮陣営のことについてはたぶん誰もが思うことだと思う。

 まずアイリスフィール・フォン・アインツベルンの生還と、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの救出は二次創作ではよく見かけているし、最初から願いの叶わないケリィなんて哀れというほかない。

 なので余裕があればこれも助ける気でいる。まあ、優先度は一番低いけれど。

 

 

 と、そこまで考えたところで足を止める。

 

「……そう言えば桜に私のことを話さなければならないのよね」

 

 蟲爺や周りを警戒していたあまり、大切なことを忘れていた。

 あちゃー、と私は片手を頭に当て天を仰ぐ。ある程度のことは伏せて話すにしても近いうちに話し合う必要がある。

 しかし、私の真名はステータス欄によれば【間桐桜】らしい。桜に桜がダブってややこしい。

 

「ま、とりあえず私はBBと名乗ることにしましょう」

 

 能力的にそっちがしっくりするし丁度良い。そう思って私は再び足を進めるのであった。

 

 




うーん、文章力が低い。しかも説明会だから進展しない。
まあ、次からは聖杯戦争の準備だとかである程度進む、と思います。
ではここでBBちゃんのステータスを解説付きで載せておきます。
では、また

【間桐桜(BB)】
 間桐桜の中に現れたもうひとりの人格、転生者。
 通常の性格はBBというよりかはむしろメルトリリスより。
 ただし、変身後の姿によって口調を変える傾向がある。
 桜のことを一番に考え、それ以外はノリと勢いと適当に行動する。

【ステータス】
筋力:D 耐久:E 敏捷:D 魔力:A 幸運:B 宝具:?

【スキル】
黄金の杯:B
バビロンの大妖婦がもっていた聖杯
転生の影響でランクが落ち、今は魔力を供給することしかできない

自己改造:B
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。

十の王冠:B
転生の影響でランクが落ちている。
ランクB以下の事象をなかったことにすることができる。

百獣母胎(ポトニア・テローン):B
万物を生み出す女神の権能
転生の影響でランクが落ちている。
それ相応の魔力などを消費して使い魔や無機物などを生み出すことができるが、
人間やランクより上の神秘を生み出すことはできない。
また生み出した生物は桜に逆らうことができない。

【宝具】
C.C.C.(カースド・カッティング・クレーター):使用不能

サクラファイブ:【二体まで変身可能】
自身のうちに存在する5体のアルターエゴに変身できる能力。
背丈や大きさは今の年齢に合わせて変化するものの、
スペックは原作のアルターエゴと相違ない性能を誇る。
ただし、それぞれの特性と共に弱点も受け継ぐことになるため、
運用には危険が伴う。
『例:メルトリリス→神経障害、パッションリップ→認識障害など』

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。