光り輝くその瀬戸際に   作:いろすけ

11 / 64
貴公子編
転校生はブロンドの貴公子


 

「瀬戸光輝、完治した事をここに宣言します!」

「「「「おぉー」」」」

 

 現在地は一年一組の教室内、もっと言えば僕の席の真上。そこで左腕に巻かれた包帯を勢いよく剥がし取り、左腕を天井に向け、掲げる。するとクラスから歓声が上がった。

 

「よかったな、光輝」

「おめでとうございますわ」

「片手では何かと不便だっただろう」

 

 箒の言う通り不便だったなー。その度に鈴が手伝ってくれたんだけどね。あ、ちなみに鈴は二組にいるよ。なんたって、もうすぐSHRだからね。

 

「諸君、おはよう」

「「「「お、おはようございます」」」」

 

 鬼教官の登場により、賑やかだった教室は軍隊のように空気が張り詰める。

 いや、すごいな、毎回思うけど。

 

「貴様は何をしている?」

「えっと、完治宣言?」

 

 無言の出席簿アタック。辛辣ですね。

 

「で、では、ええっと、あの、SHRを始めます」

 

 なんか今日の山田先生はいつも以上に慌てている気がするな。

 

「今日はなんと、転校生を紹介します。…しかも二名です」

「「「「ええええええっ!?」」」」

 

 いきなりの転校生の紹介に教室全体がざわつく。

 

「ていうか、何でうちのクラス…?普通分散させるもんじゃないのか?」

「一夏、普通じゃないんだよ、きっと」

 

 その言葉を裏切ることなく、転校生は普通ではなかった。その証拠にあれほど騒がしかったざわめきがピタリと止まる。

 そりゃそうだ。だってそのうちの一人が男だったんだから。

 

 

 

 

 

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします」

 

 僕を含め、クラス全員が呆気にとられる。

 

「お、男?」

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方達がいると聞いて本国より転入を―」

「きゃ…」

 

 あ、これ耳ふさがないとヤバいやつだ。

 

「きゃああああああ―――っ!」

「男子、三人目の男子!」

「しかも、守ってあげたくなる系の!」

「爽やか系、馬鹿系、可愛い系、三拍子そろったー」

 

 一夏、馬鹿系だってさ、ドンマイ。

 

「光輝、お前、馬鹿系だったんだな」

 

 え、僕なの?僕が馬鹿系なの?

 

「み、みなさんお静かに。まだ自己紹介が済んでませんからー!」

 

 もう一人も個性強くない?銀髪、長髪、赤目、ロリ、そして何より黒眼帯!?……萌えだ!

 

「…挨拶をしろ、ラウラ」

「はい、教官」

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。織斑先生と呼べ」

「了解しました」

 

 今の会話から察するに、千冬さんの教え子。しかもドイツ軍の。また大変そうだね、この子も。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

「「「「………」」」」

 

 まあ、妥当な反応だよね。

 

「あ、あの、以上…ですか?」

「以上だ」

 

 うわー、一夏より酷い挨拶。山田先生も可愛そうに。

 

「貴様が!」

 

 え、僕?

 バシンッ!

 

「え?」

 

 いきなり殴られたよ、完璧な平手打ちでしたとも。

 

「私は認めない。貴様があの人の弟であることなど認めるものか」

 

 弟?僕には兄弟どころか、親もいませんけど。…というか勘違いだよね。狙いは一夏ですよね、絶対。いや、僕も外国人の顔が一緒に見える時はあるけど、間違えるかね、普通。

 そうこう考えている間に去って行ってしまった。

 訂正できなかったー。これ、ややこしくなるやつ!千冬さん今笑ったでしょ、このドS!

 

「あー…ゴホンゴホン!ではHRを終わる。一限目は実習だな。各人遅れないように」

 

 と、とりあえず、置いておこう。まずは移動、移動。

 

「織斑、瀬戸。デュノアの面倒をみてやれ」

 

 おっと、そうだった。

 

「君が織斑君?初めまして僕は―」

「一夏!」

「お、おう」

「とりあえず男子は空いてる更衣室で着替え。これから実習の度にこの移動ね。早めに慣れてね。あ、僕、瀬戸光輝ね」

「俺は織斑一夏、よろしくな」

「よ、よろし―」

「一夏、シャルル、早く」

「わかった、行くぞ」

「え、ええ!?」

 

 その後、僕たちは他クラスの包囲網により、織斑先生の主席簿アタックをくらうハメになった。解せぬ。

 

 

 

 

 

 

「では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する」

 

 二組と合同だから人数多いなー。ちなみにまだ頭痛いよ。出席簿で何故あんなに威力が出せるのか知りたいね。…やっぱ、いいや。

 

「ずいぶんゆっくりでしたわね」

「道が混んでいてね」

「光輝さんは女性の方との縁が多いようですから?そうでないと二月続けて女性からはたかれたりしませんわよね」

 

 いや、鈴はノーカンでしょ。それに今回は人違いだよ。一方的な被害者と言ってもいいね。というか、セシリアの言葉に棘があるのは気のせいですか!

 

「なに?またなんかやったの?」

「お、鈴いたのか」

 

 またとは何だ。失礼なやつだな。僕がいつ、問題を起こしたって言うんだよ。

 

「…」

 

 痛い、痛い、黙って蹴るな。せめてなんか言えよ。

 

「こちらの光輝さん、今日来た転校生の女子にはたかれましたの」

「はあ!?あんたはなんでいつも馬鹿なの!?」

 

 だから人違いだって。馬鹿は一夏!

 

「今日は実戦をしてもらおう。ちょうど活力が溢れんばかりの十代女子もいることだしな。凰、オルコット、前に出ろ」

 

 ほら、ご使命だぞ。バーカ、バーカ。

 

「どうしてわたくしが…」

「光輝のせい、光輝のせい」

 

 ブツブツ言いながらも前に出る二人。僕を殴ることも忘れないあたりは、さすが代表候補生、と言ったところか。

 

「お前ら少しはやる気を出せ。―――。」

 

 千冬さん、なんて言ったんだ?二人のやる気が最高潮に…。

 

「それで相手はどちらに?わたくしは鈴さんとの勝負でも構いませんが」

「こっちのセリフ。返り討ちよ」

「慌てるな、馬鹿ども。相手は―」

 

 キィィィン…。

 この音は?

 

「ど、どいてくださいー」

「シャルル、一夏の能力について説明しよう」

「え?」

 

 ドカーン!

 どうやったのか知らないけど山田先生の上に覆いかぶさる一夏。この後の展開はテンプレだね。

 

「こ、光輝、一夏の能力って?」

「一夏の能力、それは―。ラッキースケベ体質だ!」

「え?」

 

 え?むしろ何で、「え?」なの?今、目の前で起こってるじゃん。狙撃するセシリア、双天牙月を投げる鈴、それを弾丸で逸らす山田先生。…山田先生!?

 

「山田先生はああ見えて元代表候補生だからな。今くらいの射撃は造作もない」

「む、昔のことですよ。それに候補生止まりでしたし…」

「さっさと始めるぞ」

「え?あの、二対一で?」

「さすがにそれは…」

「安心しろ。今のお前たちならすぐ負ける」

「「…っ!!」」

 

 あらら、プライドのお高い二人にあんなこと言ったら…。

 

「手加減しませんわ」

「さっきは本気じゃなかったしね」

「い、行きます」

 

 なんという小物発言。…二人が上空に飛行してなかったら、殺されてたかも、割とマジで。

 

「ちょうどいい。デュノア、山田先生が使っているISの解説をしてみせろ」

「は、はい!」

 

 シャルルも大変だねー。

 試合はシャルルが解説を終えると同時に終了した。結果はもちろん山田先生の圧勝。

 

「これで諸君にも教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように」

 

 ぱんぱんと手をたたいて意識を切り替える。

 

「専用機持ちは織斑、瀬戸、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰だな。六グループに分かれて実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること。いいな?」

 

 千冬さんが言い終わるや否や、一夏とシャルルの元へ女子が詰め寄ってくる。

 そんなの想定内さ。でも意外だったのが…。

 

「瀬戸君、一緒にがんばろう」

「とりあえず、瀬戸君よね」

「確かに、安パイよね」

 

 褒められてるのかよく分かんないんだけど…。というよりも僕のとこにも人が来るとはね。予想外だったよ。

 

「出席番号順に並べ、馬鹿ども。次はないぞ」

 

 蜘蛛の子を散らすがごとく、ってやつか。すごいね、千冬さん。怒られるのも嫌だし、さっそくやりますか。

 

 

 

 

 

 

「やあ!」

「お、うまいね。ちゃんと狙いもつけられてるし」

 

 そう言って僕はトライデントで弾丸を防ぐ。アイギスを使わないのかって?さすがに手加減位するよ。

 

「瀬戸君って思っていた以上に強い!?」

 

 まあ、専用機持ちの中では最弱だろうけどね。それはあくまで専用機持ちの中では、の話。

 

「はい、終わり」

 

 トライデントを相川さんの喉元に突き付け、終わりを宣言する。

 

「ああー、負けちゃったー」

「いやいや、相川さんもなかなか強かったよ」

 

 直後、ISの転倒音が響き渡る。反射的に音の発信源に目を向ける。そこには訓練機に乗る女の子が倒れており、その横にはラウラの駆る《シュバルツェア・レーゲン》が立っていた。

 

「やりすぎだぞ!」

 

 げっ、一夏のやつ…。

 

「邪魔するなら容赦しないぞ」

「なんだと!」

「は~い、そこまで。戻りな、戻りな」

「でもよ!」

「言いたいことは分かるけどね、グループの子が困ってるよ?」

「うっ、でも」

「僕らのとこは終わってるからここは任せてもらうよ」

「…分かった。頼む」

「おっけー」

 

 ちゃんと戻ったみたいだね。

 

「織斑一夏、何のつもりだ?」

「いや、遅れてるみたいだから手伝いにね」

 

 気に入りません、って顔してるね。というかまだ一夏と勘違いしていたのか。別にここで誤解を解いてもいいんだけど、それだと矛先が一夏に移るだけで、何も解決しない。

 

「まあ、いい。織斑一夏、私と戦え!」

 

 う~ん、とりあえず、様子を見るか。

 

「どうしよっかな~。じゃんけん三回勝負とかにする?あ、五回じゃなくて三回ね!」

 

 さ、殺気!?茶化すと殺されそう…。

 

「じゃあ、二対一ね?」

「…なに?」

「アシストは任せて!」

「え?私?」

 

 倒れていた女の子の手を引き、立ち上がらせる。

 

「行くよ?」

「う、うん」

 

 気に入らない、とばかりに舌打ちをする。僕は構わずおそらく二組の女の子と共にラウラへと向かった。

 

「貴様、ふざけているのか?」

「まさか」

 

 飛来する《ワイヤーブレード》を僕が弾く。するとラウラは《プラズマブレード》を展開する。どうやら初心者には本気を出さないらしい。

 

「ちっ」

 

 二組の子を狙ったワイヤーブレードを僕が防ぎ、その間に二組の子が刀を振り下ろす。

 

「いい感じだよ。もっと踏み込むスピードを速めれば当たったんじゃないかな」

「ありがとう」

 

 ある程度動いたところでアドバイスをし、交代させる。

 

「じゃあ、次行こうか」

 

 そうしてなんとか実習を終えた、僕だった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。