昼休みに、僕たちは屋上にいた。
「ふふ、ふふん~♪」
僕がなぜここまで上機嫌かと言うと、学校の屋上って憧れない?ただそれだけ。
「キモッ」
機嫌のいい今なら鈴の罵声も心地よく思えるね。注意、変態じゃないから!
「光輝ってサックス吹けるんだ」
シャルルよ、いいとこに気が付いた。僕は今、愛器の手入れをしている間最中。それも機嫌がいい理由の一つだったね。
「かなりお上手ですのよ」
「へぇ~」
セシリア、ハードル上げないで…。
「何か吹きなさいよ」
「え~、どうしよっかなぁ~」
「ウザッ」
「光輝、演奏もいいが昼休みは短い、早く食べるべきだ」
「箒の言う通りだぞ」
もぉ~、二人とも真面目なんだから~。
「はい、一夏あんたの分」
おい、鈴。タッパーを投げるなよ。
「おお、酢豚だ!」
「そ、今朝作ったのよ。あんた前に食べたいって言ってたでしょ?」
微笑ましいねぇー、全く。
「あんたの分もあるわよ」
「え?」
おお、ついでとは言え嬉しい。超ね、超!
「コホンコホン。光輝さん、わたくしも今朝はたまたま偶然、こういうものを用意してみましたの」
サンドイッチ。こっちもなかなか美味しそう。これは楽しみだよ。
「イギリスにも美味しいものはありますわよ?」
「いや、その節はどうも…」
「もちろん、一夏さんとデュノアさんも召し上がってください」
では、有難く頂きます。まずは、サンドイッチから…。
うぐっ、これは…。
「ど、どうでしょうか?」
死ぬほど…マズい…。でも、期待した目でこっちを見られたら…その、マズいとは言えないし、残すのはもったいないし。一夏は?くそっ、酢豚か…。ど、どうする?
「お口に合いませんでしたか?」
「い、いや、そんなことないよ?ぼ、僕は好きだな、あ、あははは…」
「本当ですか!では残りもどうぞ」
「馬鹿ね、あんた」
な、なんとでも言え。僕は食うぞ!
「箒、から揚げ美味いぞ」
「そ、そうか。ならよかった」
「鈴、料理できるんだね。ちょっと意外かも」
「デュノア、あんたケンカ売ってんの?」
みんな楽しそうだね、あははは…。
「ん?箒、なんでそっちにはから揚げがないんだ?」
「…うまくできたのがそれだけなのだから仕方ないだろう」
「ん?」
「わ、私はダイエット中なのだ!」
別に太ってなくない?むしろ痩せてる部類だと思うけど…。
そんなことを考えていると無意識のうちに箒を見ていたらしい。
「な、何を見ている」
「え?いや、別に太ってないじゃん?」
「あー、男ってなんでダイエット=太ってるの構図なのかしら」
「全くですわ。デリカシーにかけますわね」
「いや、でも―」
たまたま隣にいたセシリアを見た。それだけだったのに、それがいけなかったらしい。
「ど、どこを見てらっしゃいますの!?」
「…体?」
いや、口に出して思ったよ。これじゃあ、変態だね。
「なに堂々と女の子の胸見てんのよ。あ・ん・た・は!」
胸は断じて見てない。それはお前の思い違いで。だからセシリアさん、顔真っ赤にして俯かないで。せめて怒ってー。
「光輝、お前のおかげで助かった気がする」
「あ、あははは…」
一夏とシャルルは対岸の火事ですか?薄情者!…僕もそうしただろうけどね。
「光輝さんは紳士として不足しているものが多いようですわね」
「全くよ」
「ていうか、早く食べようぜ。食べてすぐダッシュは避けたいからな」
さすが親友、頼りになる。薄情者とか言ったやつ、出て来い!
「一夏ってもしかして実習で毎回スーツ脱いでんの?」
「え?脱がないとダメだろ?」
なんか嫌な予感。
「女子は半分くらいが着たままよ?だって毎回面倒じゃん」
「ということは…」
一夏、ご愁傷様。でも二度目は君の責任だよ、プププッ。
「だからっ、女の子の体をジロジロ見ないでよ!スケベ!」
「え?いや、違う」
「紳士的ではないと言っているんですわ」
「不埒だぞ!」
「こ、光輝」
「さて、シャルル。早いとこ食べよう」
「…う、うん」
「光輝――――――!!」
一夏を裏切ることで上機嫌のまま昼食を終えることに成功したのであった。