光り輝くその瀬戸際に   作:いろすけ

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孤高の黒

 IS学園、特記事項第二一、本学園における生徒はその在学中においてありとあらゆる国家、組織に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする。

 結局、僕が思いついたのは問題の先送り。根本的な解決にはなっていない。それでもシャルルはありがとうと言ってくれたけど、鈴の時にも感じた無力感を感じずにはいられなかった。

 

「成長してないのかね、僕って…」

「何か言ったか?」

「…いや、独り言だよ」

 

 僕と一夏、シャルルの三人は第一アリーナに向かっている。

 ちなみに一夏にもシャルルのことは協力してもらっているよ。さすがに同室の人を誤魔化し続けるのは難しいからね。

 

「今日は対射撃戦だったよな。頼むぜ、シャルル」

「うん、任せて」

 

 シャルルはなんとなく明るくなった気がする。僕自身は何もしてやれてないけど。

 

「なんか人多くないか?」

「多分、学年別トーナメントが近いからじゃない?」

 

 一夏の疑問に答えるシャルル。しかしアリーナに入った瞬間、それが正しくないことが分かった。

 

「あれは!?」

 

 目の前に飛び込んできたのは一機のIS、シュバルツェア・レーゲン。そして足元にブルー・ティアーズと甲龍が後から確認できた。勝負は明らかについている。にもかかわらず、ラウラはセシリアと鈴に攻撃を仕掛けている。

 

「あいつ!」

 

 静止を促す間もなく、一夏はアリーナのシールドを破り、突入する。

 

「うおおおおぉぉ!」

 

 瞬間加速をしながら突っ込むが、ラウラにあっさりと止められてしまう。

 

「やはり敵ではないな。この私とシュバルツェア・レーゲンの前では、貴様も有象無象の一つでしかない」

「そういうのは倒してから言いなよ」

「ちっ…」

 

 僕が背後から攻撃するとラウラは慌てて回避を行う。それと同時に一夏を拘束していた見えない力が消滅する。

 

「シャルル!」

「大丈夫、二人とも無事」

「ふうっ、よかった」

 

 僕はラウラに向かい合う。

 

「一夏、シャルル、医務室に二人を連れて行って」

「光輝!俺も残る」

「いや、一夏もシャルルについて行ってあげて」

「でもっ!!」

「…いくらお前でもあんまり見せたいもんじゃないんだ」

「…分かった」

 

 僕の殺気を感じたのか潔く引いてくれる。全く、いい親友を持ったもんだよ。

 

「ただし、負けるなよ」

「当たり前だ」

 

 一夏はシャルルと共に離脱しようとする。ラウラとて、そう易々と逃がしはしない。

ワイヤーブレードが一夏達の行方を阻もうと動くが僕はそれよりも速く、ラウラに突っ込む。

 

「…!」

 

 一度目の光速加速はノーダメージ。しかし牽制にはなった。

 

「邪魔を…」

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」

 

 やばい、最近感情のコントロールが効かなくなってるな。その証拠に最高に言いにくいラウラさんの名前が言えてるし。

 

「なんだ、腰抜けが戦えるのか?」

「黙せ!」

「…っ!」

 

 僕の威圧に言葉を詰まらせる。

 

「ぶっ潰す」

「ふんっ、ISが兵器だという自覚すらなく、のうのうと生きている弱者をどうしようが構わないだろ?」

「…」

「ここの生徒は皆そうだ。そんな奴らにISを扱う資格などあるものか」

「…じゃあ聞くけど、なんで君はISを兵器と認識していながら無抵抗の相手に攻撃できた?それこそ自覚が足りないんじゃないか?」

「何を!」

「まあ、いいや。どの道話し合うつもりもないし」

 

 言い終わるや否や光速加速により、相手の背後に回り込む。

 

「くらえ!」

 

 僕がトライデントでワイヤーブレードを叩き切り、ラウラ自身にも攻撃を仕掛ける。ここまでの動作が終わったころに相手はようやく僕が消えたことに気づく。模擬戦の時よりも明らかに数段速い。

 

「…ぐっ」

 

 ラウラからしてみれば振り向いた途端、ダメージを負ったように感じたはずだ。

 

「遅い」

 

 そのままラウラを地面にたたきつけ反撃を許さない。

 

「…この…イレギュラーが…」

 

 ラウラもワイヤーブレードとプラズマブレードを駆使した猛攻で反撃に出る。しかし体勢的にも僕の方が圧倒的に有利だ。

 

「…調子に乗るな!!」

 

 至近距離でレールカノンをぶっ放す。その衝撃で視界が眩む。ラウラはその隙に距離を取り体勢を立て直す。

 

「き、貴様など…」

 

 向こうのが技術も経験も戦闘能力もすべて上。はっきり言って真正面からでは歯が立たない。

 それに持久戦は出来ないしね、琥珀は。だったら、覚悟決めますか!

 

「こっちもチンタラしてられないからね」

「腰抜けが!排除してやる!」

 

 僕は目を閉じ、集中する。今までより深く、もっと深く。

 

「行くぞ、ラウラ・ボーデヴィッヒ!!」

 

 三度目の光速加速。正真正銘の最後の一撃。しかし、それは乱入してきた者によって防がれる。否、そんな生易しいものではなかった。ぶっ飛ばされる、まさしくその通りだ。

 

「…痛っ、誰だ!」

 

 僕は敵意をもって乱入者を睨む。すると、そこにいたのは―

 

「やれやれ、これだからガキの相手は疲れる」

 

 IS用の近接ブレードを持った千冬さんだった。生身で光速加速中の僕を捉えますか。とんでもないな。

 

「模擬戦をやるのは構わん。だが、アリーナのバリアまで破壊する事態になられては黙認しかねる。この戦いの続きは学年別トーナメントでつけてもらおうか」

「教官がそう仰るなら」

 

 そう言うとラウラさんはISを解除した。ちなみに僕のISは三回目の光速加速を終え、強制解除されてしまった。どうやら全力で使用するとなると三回でも厳しいのかもしれない。

 

「お前もそれでいいな?」

「はい」

 

 千冬さんに短く返事し、ラウラさんに向き直る。

 

「…一ついいかな?ボーデビッ…ラウラさん」

「…」

「自己紹介がまだだったね。僕の名前は瀬戸光輝、よろしく」

「なんだと?」

 

 目を見張る、って感じかな。初めて表情らしい表情が伺えたよ。

 

「ではあいつが…」

「そうなるね」

 

 そこで千冬さんが割り込むようにアリーナ内すべての生徒に向けて言った。

 

「学年別トーナメントまで私闘の一切を禁止する。解散!」

 

 パンッ!と手を叩く音が響き渡ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 場所は保健室。第一アリーナでの一件から約一時間は経っていた。

 

「別に助けてくれなくてもよかったのに」

「あのまま続けていれば勝っていましたわ」

 

 お前らなぁー。いや、感謝されたいわけじゃないけどね。反省はしてよ。

 

「たいしたことなくてよかったよ、ホントに」

「それを言うならこっちのセリフだぞ、光輝!」

「そうだよ、心配したんだからね」

 

 一夏もシャルルもご立腹ですね…。けど、あれは仕方なかった。故に無実を主張する。

 

「だって、柄にもなくブチ切れしたからね。恥ずかしいじゃん」

「き、切れたって、あんたが?」

「光輝さんが怒る所は想像がつきませんわね」

 

 う~ん、実際怒った記憶がないくらい怒ってない。何せ鈴が知らないくらいだしね。

 

「それだけ、セシリアも鈴も大切、ってことだと思うよ」

「な、な、デュノアさん…それは、その…」

「ば、馬鹿、変なこと言わないでよね!」

 

 別に照れることでもないだろ、事実だし。

 

「ま、そういうこと。僕だけじゃなくて、みんな心配してるんだからね」

「へぇー、あんたにとってあたしは大切なんだ?」

 

 随分と都合のいい解釈だけど間違ってはいないね。

 

「こ、光輝さん。わたくしも大切だということでしょうか?」

「いや、まあ、そうですね」

 

 誘導尋問でしょ、それ。いいえ違います、とは言えないよ。いや、実際大切だからいいけどね。

 

「…二股」

 

 シャルル、僕にだけ聞こえる声でなんてこと言うんだよ。大体、鈴は一夏が好きなんだよ?セシリアだって、ね?

 

「シャルル、機嫌悪い?」

「べっつにぃー」

 

 あー、これ悪いやつだ。どうしよう。

 ドドドドドドドッ…!

 

「ん?」

 

 廊下から地鳴りが聞こえる。マジだって!しかも近づいて来ている気が…。

 

「織斑君!」

「デュノア君!」

「瀬戸君!」

 

 文字通り扉を蹴り破ってきたよ。千冬さんが怖くないのか、この子達は。

 

「「「「これ!!」」」」

「えーっと、何々?」

 

 女子一同が出してきた学年の緊急告知を一夏が読み上げる。

 

「今月開催する学年別トーナメントでは、より実践的な模擬戦闘を行うため、二人組での参加を必須とする。なお、ペアができなかったものは抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする」

 

 妥当な判断だよ、無人機の件もあるしね。

 

「「「「私と組んで!」」」」

 

 一斉に手がこっちに伸びて来る。怖い…怖すぎる…。

 

「悪いな。俺はシャルルと組むから諦めてくれ」

 

 い、一夏さん!?あの野郎、いつかの昼休みのこと、まだ根に持っていたのか。

 

「「「「…なら」」」」

 

 いや、ね。リアルに怖いから。

 

「「「「瀬戸君!!」」」」

「えーっと、あはは…」

 

 逃げられませんよね、知ってますとも。

 

「みなさん、ここは病室ですよ!静かにしなさい!」

 

 女神だ!山田先生という女神が舞い降りた。

 

「「「「…はーい」」」」

 

 みんな渋々だけど帰ってくれた。た、助かったぁー。

 

「光輝、あたしと組みなさいよ、馬鹿」

「いいえ、ここはわたくしと」

「ダメです。お二人のISはダメージレベルがCを超えています。出場は許可できません」

「う、ぐっ……!わ、わかりました…」

「非常に、非常に不本意ですが、辞退……します…」

 

 納得してないけど理解している、って感じかな?まあ、今後のことを考えるとしょうがないよね。

 

「なら、誰と組めばいいんだ、僕?」

「「「「………」」」」

 

 全員無言ですか。そうですか。

 

「親しい人いないんだよね、結構真剣に」

 

 交友関係って大切だね。ボッチ辛い…。

 

「箒とかはどうだ?」

「あー」

 

 でも一夏と組みたいだろうし、却下。というか一夏と箒が組めば解決なのでは?

 

「うーん、よし決めた」

「何を、だよ?」

「一夏、君に二つ託すよ」

「お、おう」

「まず一つ目はラウラとの勝負。二つ目はシャルルのフォローね」

「言われなくてもやるつもりだから安心してくれ」

 

 さすが親友。こういう時に頼りになるな。それに二つ目も周りからしたらペアとしてのフォローに捉えられるはず。うん、完璧。

 

「でも、結局光輝は誰と組むの?ぼ、僕…」

 

 シャルルが心配そうにするから、こっそり耳打ちする。

 

「大丈夫、一夏に任せとけばさ」

「でも、僕、光輝と―」

 

 続きが言えないのは一夏に気を遣っているからだよね。遠慮しすぎだって。

 

「僕に考えがあるんだ。任せといて」

「え、う、うん………わかった」

 

 なんとか分かってもらえたかな。一夏もシャルルの事情は知ってるし、問題ないはず。

 

「なに、こそこそ話してるのよ?」

「ん?何でもないよ」

「ふ~ん」

 

 鈴よ、なぜ睨む。

 

「そもそも何でラウラと戦ってたんだ?」

 

 相変わらず、たまにいいところで空気換えるよね。

 

「……何と言いますか。女のプライドを…侮辱された、と言いますか…」

「ま、まあ、そ、そうね。そんなところかしら…」

 

 どういう意味?

 

「好きな人を侮辱されたんだよ、きっと」

 

 ああー、一夏ですね。分かります。

 

「光輝はもっと自分に関心を持つべきだよ」

 

 はて、なんでそんな話に?

 

「…光輝にだって素敵なところくらいいっぱいあるのに」

「なんか言った?」

「なんでもない!」

 

 機嫌が悪くなった!?聞き逃したせいか?

 鈴とセシリアはその間もシャルルの言葉を必死に訂正しようと喚いている。一夏は相変わらず何が起こったのか理解していない顔だ。

 まあ、何にせよ僕がやるべきことは変わらないよ。

 

 

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