光り輝くその瀬戸際に   作:いろすけ

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迷える子ウサギ、視界はクリア

 いよいよ学年別トーナメントが始まるわけだけど、これはちょっと…いや、かなり千冬さんの悪意が反映されているね。一回戦からラウラペア対一夏、シャルルペアなんてね。

 

「ま、やるだけやるしかないよね」

「…貴様、どういうつもりだ!?」

「ん?ラウラ、お互い頑張ろうね」

「ふざけているのか?」

「まさか」

 

 そう言いながら不敵に笑うとラウラの機嫌はさらに悪くなる。

 

「まあ、いい。邪魔はするな」

「善処はするよ」

 

 

 

 

 

 

「どうして…」

「あいつ…」

 

 一夏とシャルルは驚愕していた。何も一回戦の相手がラウラだからではない。ラウラのペアが光輝だということにだ。

 

「あいつ、何考えてるんだよ」

「…きっと光輝なりに考えがあるんだよ」

「いや、でも」

「大丈夫、だってあの光輝だよ。どうせボーデヴィッヒさんとも仲良くなりたい、とかじゃないの?」

 

 呆れたシャルルの声に一夏は笑い出した。

 

「え?おかしなこと言った、僕?」

「いや、悪い。光輝が考えそうなことだな、って」

「そうだね。相談くらいしてくれてもよかったのに…」

 

 シャルルは誰に向けるわけでもなく頬を膨らませる。

 

「よし、それじゃ、行くか。あいつらぶっ飛ばしに」

「うん!」

 

 シャルはリヴァイヴの待機状態であるオレンジのネックレスを握りしめる。リヴァイヴはそれに答えるように優しく光った。

 

 

 

 

 

 

 アリーナに佇む四機のIS。互いに言葉は交わさない。ただひたすらに睨み合う。主に一夏とラウラがね。

 

「一夏もラウラもクールダウン、クールダウン」

「一戦目で当たるとは。待つ手間が省けたというものだ」

 

 あれー?無視ですか?

 

「こっちも同じ気持ちだぜ」

 

 お前もか、一夏!

 苦笑いをしながらシャルルを見ると向こうも同じように笑い返してくれた。

 

『それでは只今から学年別トーナメント一学年、第一回戦を始めます』

「「叩きのめす!」」

 

 血の気が多くて大変だよ。

 試合開始と同時に一夏は瞬間加速を行う。ラウラは一夏の動きに合わせるように右手を突き出す。

 《AIC―アクティブ・イナーシャル・キャンセラー》言わば慣性停止能力。第三世代兵器特有の使用者の集中力に依存する代物である。故に、切り崩す手はいくらでもある。しかしBT兵器などの例外を除けばほぼすべての攻撃を防ぐことができる、とんでも兵器に変わりはない。

 

「光輝、悪いけど手加減しないよ」

 

 やっぱり分断させる手筈か。ハッキリ言ってラウラはチームプレーをする気がさらさらない。だからまず弱い方から倒しに来たわけだ。…賢明な判断だね。

 

「こっちもそう簡単にやられないよ、シャルル」

 

 シャルルは自在に距離を変化させ、それでもなお攻撃の手を休めることはない。

 《高速切替―ラピッド・スイッチ》戦闘と並行して行うリアルタイムの武器呼び出し。戦況を見極められる目と対応力、そして何よりシャルルの器用さが揃って初めて光る。

 

「これは厄介だね」

「光輝ほどじゃないよ」

 

 軽口をたたいている間も銃弾は絶え間なく降り注ぐ。

 

「…しょうがない」

 

 僕はアイギスを展開、瞬時に殻にこもる。それと同時に反響定位も発動させた。

 

「ボール?そんなのずるいよ」

 

 この状態だと攻撃できない。けど速攻で勝負を決めたい相手にはこれ以上ないほど厄介だろう。

 

「…くっ」

 

 僕からの攻撃はできないと判断したシャルルは迂闊にも近づいてくる。初見だと仕方ないけど、僕にはちゃんとシャルルの動きは見えているんだよ。タイミングを合わせ、アイギスを思いっきり蹴る。

 

「なっ!」

 

 当たりはしなかったけど僕がラウラの元に行くのには十分さ。

 

「一夏、悪いね」

 

 光速加速をして一夏の背後に回り、蹴飛ばす。

 

「貴様、余計なことはするな!」

「ラウラ、後ろ」

 

 寸でのところでシャルルの攻撃をかわすラウラ。

 

「また余計なことを」

「はい、まだ来るよ。一夏は一旦引き受けるから、シャルルをよろしく」

「おい、貴様!」

 

 ラウラは文句を言いたそうだったけど試合中に聞くわけにもいかないしね。試合後に聞くよ、そういうのは。

 

「まいったな、光輝にしてやられちゃった」

「貴様も邪魔するなら消すぞ」

 

 当初の狙いとは真逆の展開。シャルル対ラウラ。そして僕はもちろん。

 

「やあ、一夏。まだ飛べるかい?」

「当たり前だ」

「なら、よかったよ!」

 

 こうして僕は一夏とのサシの勝負に出た。

 

 

 

 

 

 

 いきなりの瞬間加速。光速加速ほどじゃないけど接近戦ではこの上なく厄介だ。

 

「やっぱり強いね」

 

 一夏の雪片弐型をトライデントで捌く。手数はこっちの方が上なのに防ぐので精いっぱいだ。

 

「……」

 

 こいつ、集中してるね。

 それは文字通りの意味だけではない。聴覚の遮断だ。

 けど、僕だって負けてはいないよ。

 

「…!!」

 

 一夏の表情が歪む。そりゃそうだ。だって突然視界が奪われたんだから。

 プラズマエネルギーによるフラッシュ。詰まる所、一瞬視界を光で覆った、ってわけ。良すぎる感覚は同時に弱点にも成りうる。普段、僕が使ってる能力なんだから知っていて当然でしょ。

 

「隙ありだよ、一夏」

「そっちもね、光輝」

「な!?」

 

 あと一撃、そこでシャルルに割り込まれる。近接武器《ブレッド・スライサー》で斬られたかと思うと次の瞬間には重火器《レイン・オブ・サタディ》が火を噴く。

 僕はそのままアリーナの地面に叩きつけられた。

 シールドエネルギーは…?残り二〇% 結構絶望的かも。

 

「一夏、このままボーデヴィッヒさんを落とすよ」

「おう」

 

 全く、いいコンビだね。僕らには真似できないよ。

 直後、ラウラの叫び声がアリーナに響き渡った。

 

「こんなところで…負けるわけには…いかない!」

『願うか…?汝、自らの変革を望むか…?より強い力を欲するか……?』

「言うまでもない。力があるなら私は―」

「馬鹿だよ、お前」

 

 光輝は光速加速し、ラウラの目の前に立ち塞がる。瞬間、ラウラのISが変形した。装甲をかたどっていた線は、ぐにゃり、と溶けてラウラと光輝を巻き込んでいく。

 

「こ、光輝!」

「おい、光輝!」

 

 シャルルと一夏の声を聞きながら、深い、深い闇に沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

「ここは…?」

 

 暗闇の中。その最深部に彼女はいた。

 

「ラウラ」

 

 どうやら僕の声は届かないらしい。今がどんな状況なのか分からない。でもなんとなく不安はなかった。

 

「安心してラウラ。すぐに一夏が助けてくれるさ」

 

 声は届かないだろう。それでも僕は膝を抱え蹲っているラウラに声をかける。

 

「でもさ、待っているのも退屈だろ?だから自分で歩いてみないかい?」

 

 そう言って手を伸ばすとラウラは僕の手を掴んだ。

 

「さっさと出よう。いつまでもここにいるのなんてもったいない。だって外はとっても綺麗だから」

 

 僕の言葉に反応したかのようにラウラが顔を上げる。それと同時に周りの闇が一斉に纏わりついてきた。

 

 

 

 

 

 

「光輝!?」

 

 シュバルツェア・レーゲン、正確には元シュバルツェア・レーゲンの黒い液体に光輝とラウラは取り込まれていった。次第に黒い液体は一つの形を形成していく。

 

「あ、あれは…?」

 

 黒い液体は徐々に纏まり、人型に姿を変える。

 

「千冬姉…」

 

 その姿は織斑千冬、そのものだった。

 

「一夏!?」

 

 一夏は突然、偽千冬に飛びかかるが、あえなく一閃される。その結果、白式が強制解除されてしまう。

 

「どうしたの、一夏!?」

「あいつ…あいつ、千冬姉の真似を…許さねえ!」

「待って、一夏!ISもないのにどうするつもり!?」

「関係ねぇ。…あいつは俺がぶっ飛ばす。それは他でもない…俺がやらなくちゃいけないんだ!」

 

 そう叫ぶ一夏は怒っているだけではないような気がした。

 

「…僕のリヴァイヴならコア・バイパスでエネルギーを移せると思う」

「本当か!?」

「その代わり、約束。…光輝を助けてあげて」

「ああ、光輝もラウラもみんな助ける!」

 

 ふっと目を閉じ、白式に触れる。

 

「じゃあ、始めるよ。…リヴァイヴのコア・バイパスを解放。エネルギー流出を許可」

 

 リヴァイヴから伸びたケーブルは待機状態(純白のガントレット)の白式に繋がれ、そこにエネルギーが流れ込んでいく。

 

「集中しろ。集中…集中…」

 

 零落白夜の刃が、細く鋭いものへと結束していく。

 

「…もっと…もっと深く!深く!!」

 

 集中が頂点に達したとき、異変が起きた。

 周囲の音がなくなる。三六〇度、視界が澄み渡り、この世界がスローモーションになったかのような感覚に陥る。

 

「―――。」

 

 後ろでシャルが何かを叫んでいるが、それさえも音をなくす。ただ、目の前の敵に意識が集中する。敵を撃ち滅ぼさんがために。

 

「―――――コロス」

 

 瞬間、意識が飛び、敵ISを切り裂いていた。

 

 

 

 

 

 

 纏わりつく闇にラウラは怯え、手を引っ込めてしまう。

 

「…っ!…っ!!」

「大丈夫、心配しないで」

 

 僕はいつも通り声をかける。だって、そろそろだからさ。

 

「ラウラ!」

 

 今度は強引にラウラの手を引く。引っ張られたラウラは泣きべそをかきながら僕に問う。

 

「連れて行ってくれるのか、私を!?」

「ああ、行こう。君の知らない世界に」

 

 その言葉に答えるかのように闇に亀裂が入る。

 もう、遅いよ、色男(ヒーロー)。

 

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