光り輝くその瀬戸際に   作:いろすけ

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紅舞う空

 合宿二日目。今日は丸一日ISの各種装備試験運用とデータ取りに追われる。専用機持ちだけでなく全員参加なので規模も手間も段違いだ。

 

「全員集まったか」

 

 馬鹿騒ぎしていた一日目とは打って変わって、今日は一日IS漬けとなるらしい。気を引き締めなければ鬼の制裁(物理)をくらうハメになる。

 

「それでは各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行うように。専用機持ちは専用のパーツのテストだ。全員、迅速に行え」

 

 装備試験、と言っても僕と一夏には関係のない話だ。一夏の白式には後付武装(イコライザ)がない。つまり追加で何も付け加えることができない我儘機体なのだ。その点、僕の琥珀は後付けが可能だ。しかし知っての通りプラズマエネルギーを用いるのが僕の戦法。そこで後付武装が邪魔になる。平たく言うと琥珀の初期武装であるトライデントとアイギス以外にはプラズマエネルギーが反応しないのである。だから付けても無駄なのだ。ちなみにこれらは琥珀と白式を作った倉持技研からの情報なので間違いない。

 長ったらしく説明したが、詰まる所―――暇なのだ!

 

「瀬戸、なんならランニングしてきてもいいのだぞ」

「謹んで遠慮させていただきます」

「ああ、篠ノ之。お前はちょっとこっちに来い」

「は、はい」

 

 箒の奴、なにかやらかしたのかなー?決してワクワクなんてしてませんとも。

 

「……」

 

 無言で睨まれた!?久しぶりに心読まれた気がする。…え?そうでもない?

 

「篠ノ之、お前には今日から専用――」

「ちーちゃ~~~~~~~ん!!!」

 

 砂煙って実際に起こるんだね。初めて見たよ。

 

「…束」

 

 え?今、束って?ええ!?

 

「やあやあ!会いたかったよ、ちーちゃん!さあ、ハグハグし――ぶへっ」

 

 うわぁ、アイアンクローってやつだ。しかも顔面に…。

 

「うるさいぞ、束」

「相変わらずちーちゃんの愛情表現は過激だねぇー」

 

 ち、千冬さんの拘束をものともせずに抜け出した!?この人、ただ者じゃなさそうだ。

 

「えへへ、久しぶりだね。こうして会うのは何年ぶりかな?大きくなったね、箒ちゃん」

「ど、どうも」

 

 今の会話からもこの人が〝篠ノ之束〟であることは間違いなさそうだね。この人がISの生みの親か。

 

「ん?お前は…?」

「へっ?」

 

 なになに、なにかした?

 

「いっくーん、久しぶりだねー」

 

 なんか一瞬、ものすごく睨まれたんだけど。それこそ殺意に満ちた、とでも言うような感じで。

 

「光輝、知り合いなの?」

「いいや。僕もよくわかんない」

 

 隣にいたシャルにも伝わるくらいの殺気だったらしいね。

 

「それで、頼んでおいたものは……?」

 

 箒が躊躇いがちに尋ねる。さっきも思ったけど実の姉妹なのによそよそしくない?箒だけ、だけどさ。

 

「うっふっふっ。それはすでに準備済みさ。大空をご覧あれ!」

 

 びしっと真上を指さす束博士。それに従い、箒も、他の生徒も真上を見上げる。

 ズズーンッ!

 突然、金属の塊が落下してきた。よく見るとそこには――。

 

「じゃじゃーん!これぞ箒ちゃんの専用IS《紅椿》!全スペックが現行のISを上回る束さんお手製ISだよ!」

 

 とんでもないことサラッと言ったよ。全スペックがどのISよりも上って…。

 

「さっそくフィッティングとパーソナライズを始めようか。とは言っても箒ちゃんのデータは入れてあるから更新するだけだね、ブイブイ」

「お願いします」

 

 束博士は空中投影のディスプレイを六枚呼び出し、作業を開始する。しかも超早い。

 

「あのISって篠ノ之さんがもらえるの?身内ってだけで?」

「ずるくない?」

 

 まあ、当然の反応だよね。

 

「おやおや、歴史の勉強をしたことがないのかな?有史以来、世界が平等であったことなんて一度もないよ」

 

 指摘を受けた子は気まずそうに自身の作業を開始する。なんというか、唯我独尊って感じの人だ。いい意味でも、悪い意味でも。

 

「いっくん、白式見せて」

「え、あ。はい」

 

 言うなり一夏は白式を呼び出す。一夏と話している間も休むことなく作業をしているところを見ると本当に天才なんだと実感できる。そうこうしている間に作業を終え、試運転を開始するよう、箒に促している。まさに神技だった。

 

「どうどう?飛び心地は?」

「はい、問題ありません」

 

 問題どころか、圧巻の一言だ。箒の纏う紅椿は物凄い速さで飛翔した。

 

「刀使ってみてよー。右のが《雨月》で左が《空裂》ね。武器特性のデータ送るよん」

 

 箒は何かしらのデータを受け取ったのだろう。試し打ち、とばかりに刀を振るう。でも心なしかその太刀筋はいつもの箒の鋭いものとは似ても似つかない、そんな気がした。

 

「た、大変です!おお、お、織斑先生!」

 

 いつも慌てている山田先生だが、今回の慌て様はさすがに異常だった。

 

「どうした?」

「こ、これをっ!」

 

 渡された小型端末を見て千冬さんの表情が曇る。

 

「専用機持ちは?」

「一人欠席していますが、それ以外は」

 

 いよいよただ事ではないようだ。先生同士の暗号なのだろうか。明らかに通常とは異なる手話で会話をし始めた。

 

「全員、注目!」

 

 いつも以上に真剣な空気が場を支配する。

 

「現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。各班、ISを片付け次第旅館へ戻れ。連絡があるまで各自室内待機すること」

 

 不測の事態に一同はざわざわと騒がしくなる。しかし、それも千冬さんの一喝で静まり返る。

 

「以上だ!以後、許可なく室外に出たものは我々で拘束する!いいな!!」

「「「はっ、はい!」」」

「専用機持ちは全員集合しろ!織斑、瀬戸、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰!―――それと、篠ノ之も来い」

「はい!」

 

 嫌な予感がする。僕はどうしてもこの胸のざわつきを鎮めることが出来ずにいた。

 

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