「シャルロット!」
誰かの叫び声が響き渡る。
『キイイイィィ』
第二形態に移行した福音は圧倒的な戦闘力を誇った。エネルギー状へと進化した銀の翼がシャルロットを包み込む。
(ああ、結局、負けちゃったのか。でも頑張ったよね。光輝がいなくても戦えたよ。私、頑張ったよ。ちゃんと褒めてくれないと怒るからね。…光輝、会いたいよ。私――。)
「…こう……き…」
「諦めるのは早いよ」
『!?』
突如、閃光が福音を吹き飛ばした。
「…え?」
宙に投げ出されたはずのシャルロットが空中で静止した。もとい、抱きかかえられた。
「諦めるのはもったいない。そう思わない?」
「…こ、光輝、なの?本物?」
「うん。間違いなく本物だよ」
「なんで?どうして?」
「そう言われてもねぇー」
そう言って誤魔化したらシャルは怒ったような、驚いたような、それでいて安心したような顔をしていた。
「あー、その、ごめん」
黙って抱きついてくる、シャル。優しく抱きしめ返してあげたいけど、そうも言っていられない。全く、空気の読めない奴だな。
『キャアアア』
「シャル、戦える?」
僕はシャルの肩を持ち、問いかける。
「……うん!」
「よし!じゃあ、僕以上の遅刻者が来たところで始めますか」
「え?」
僕が言えたことじゃないけど、遅いよ。色男(ヒーロー)。
福音の翼が輝きだす。砲撃開始までの秒読みが始まる。
「任せていい?」
「おう!」
瞬間、眩いほどの光が爆ぜる。爆煙が晴れるとそこには――
「一夏!」
「おう、箒。それにみんな。遅れて悪い」
一夏のISは白く、眩い輝きを放っている。白式は今までとは大きく異なっていた。左手に荷電粒子砲が装備されていた。白式第二形態・雪羅がそこにいた。
「一夏さん、光輝さん、ご無事で!?」
「あんたたち大丈夫なわけ?」
「信じられん。怪我はいいのか?」
セシリアに鈴、ラウラまで心配してくれていたようだ。あとで殴られる程度じゃ済まないだろうね。
「うおおお!」
一夏は雄たけびを上げながら福音に突っ込む。セシリアとラウラは援護を開始する。
「シャル」
僕はシャルに、リヴァイヴに触れる。すると共鳴するように琥珀とリヴァイヴが輝きだす。
「これは…?」
「行くよ!」
戸惑っているシャルをおいて一夏の援護にまわる。
『キイイイイイイン』
福音の砲撃を一夏は荷電粒子砲の形状を盾に変化させ、防ぐ。新兵器《雪羅》は状況に応じて様々なタイプに切り替えが可能だ。一夏は雪羅をクローに変化させ、福音に斬りかかる。福音は異常な機動力を生かし、クローを躱す。
「一夏、落ちついて。二人で行くよ」
「ああ、分かってる」
今度は福音の方から接近してくる。瞬間、シャルロットが割り込み、福音にダメージを与える。その速度は光速加速にも劣らない、いや、光速加速そのものだった。
「シャ、シャルロット?」
呆気にとられている一夏の肩に手を置く。すると先程と同様に輝き始めた。
琥珀の新しい能力。《プラズマ化》。
それはプラズマエネルギーの譲渡。今までは琥珀と初期装備の武装にしか使用できなかったが、その制限が解除された。たとえ他のISでも、それ以外の物体でも例外ではない。改善されたのはそれだけではない。燃費が向上した。プラズマエネルギーを操るときに発生していたシールドエネルギーの消費がなくなったのだ。その代わりプラズマエネルギー自体のエネルギー残量があるので多用できるわけではない。
詰まる所、シールドエネルギーとプラズマエネルギーの管理元がバラバラになったのだ。
「光輝…これは…?」
「僕はみんなにプラズマエネルギーを渡してくる。一瞬、前線は任せるよ?」
そう言ってみんなの元へ向かう。光速加速を使い、瞬時に全員に触れる。
「こ、これは」
「な、なんなのよ」
「不思議な感覚ですわ」
「ありえるのか、こんなことが」
ひとまず全員に渡し終え、一夏の援護にまわる。
「光輝!」
「了解!」
光速加速で福音の後ろを取る。今まさに砲撃しようとしている翼をトライデントで弾く。体勢を崩した福音は一瞬の隙が生まれる。
「セシリア、頼むよ!」
「お任せください」
プラズマ弾の弾雨が降り注ぐ。すぐさま離脱を試みた福音の動きが止まる。
「逃がすか」
AICによる捕縛。しかもプラズマが静止している福音にダメージを与えていく。
「さすがですわ」
完全に停止した福音に一夏が零落白夜を振るう。しかし福音は停止した状態でエネルギー弾を放つ。AICの唯一の弱点、BT兵器による攻撃。
「まずいっ!」
この間合いでは雪羅の防御は間に合わない。完全に直撃する寸前でシャルが割って入る。
「大丈夫、一夏!?」
「ああ、おかげさまでな」
続けざまに砲撃を開始する福音。
「くっ、長くは持たないよ。箒!鈴!」
ガーデン・カーテンの四枚のシールドが次第に破られていく。
「行くぞ!紅椿!」
迫りくる砲弾をありえない速度で避け、防ぐ。篠ノ之流剣術二刀型・盾刃の構え。繰り出されたプラズマの斬撃は福音の装甲を破壊した。
「プラズマ付加の特製弾よ!」
鈴の放った衝撃砲は見事福音に命中。福音はそのまま落下していく。
「一夏、しっかり決めなさいよ!」
「おう!」
瞬間加速と光速加速の併用。一瞬と呼ぶにも満たない時間で肉薄する。
「終わりだぁ!」
零落白夜を使った突き。福音と一緒にそのまま落下する。
「おおおおおおっ!」
あと、少しのところで福音が一夏に腕を伸ばす。その腕が喉元に食い込んだ。
「ぐっ…」
一夏は予想外の反撃に雪片弐型を握っていた手が緩む。その隙を逃さず、福音は雪片弐型を弾く。
「詰めが甘いのは相変わらずだね、色男(ヒーロー)」
プラズマエネルギーを纏ったトライデントの一閃。
「みたいだな、光輝」
一夏もすぐさま体制を立て直す。トライデントと雪片弐型が交わり、そこを中心に眩い輝きが辺りを埋め尽くした。