光り輝くその瀬戸際に   作:いろすけ

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今回はかなり短いです。


帰郷編
恋する相手はグレーゾーン!?


SIDE ~セシリア~

 

 八月。うだるような暑さの中、一台の高級車がIS学園の正門ゲート前に停車した。IS学園は夏休み真っただ中。故に昼間でも正門には警備員を除いて他に人はいない。

 

「さて、やっと戻って来られましたわ」

 

 IS学園の生徒は国籍豊かで、一クラスの三分の一が外国国籍の人である。それ故、こうした大型連休に自国ないし、実家に帰る生徒は少なくない。事実、セシリア・オルコットも本国での仕事を終え、日本に戻って来たばかりだ。

 オルコット家での溜まった職務、国家代表候補生としての報告、専用機の再調整、それ以外にもバイオリンやピアノのコンサート、旧友との親交、それに――両親の墓参り。

 

「………」

 

 考えても仕方のないこと。頭では分かっているのに、どうしても考えてしまう。

 ――どうして、何も言わずに逝ってしまったのだろう。

 ――どうして、自分一人だけ残されたのだろう。

 ――どうして、最期は二人一緒にいたのだろう。

 三年前、セシリアの両親は事故で他界した。陰謀説が囁かれたが、事故の状況はとてもあっさりとそれを否定した。越境鉄道の横転事故。死傷者は百人を超える大規模な事故だった。いつも別々に過ごしていた両親が、どうしてその日に限って一緒にいたのか、それは未だに分からない。

 ただ、あっさりと、とてもあっさりと、両親は帰らぬ人になった。

 いつか、わかるときが来るのかしら……。

 

「お嬢様」

「―――っ!?」

 

 振り向くと、そこにはセシリアの幼馴染であり、専属メイドの〝チェルシー・ブランケット〟がいつもと同じように微笑みを浮かべて控えていた。

 

「どうかなされましたか?」

「い、いえ。何でもありませんわ」

「そうですか。お荷物の方は私共がお部屋まで運んでおきますので」

 

 チェルシーはそう言うとうやうやしく頭を垂れる。

 

「早速、瀬戸様に会いに行かれますか?」

「な、何を言っていますの!?」

「お恥ずかしながら一つ確認しておくことがありまして…」

 

 チェルシーが確認し忘れるなんて珍しいですわね。

 

「お嬢様、派手すぎる下着は却って逆効果と思われます」

 

 …え?

 

「一昨日ご購入された黒のレースの下着ですが―」

「ちぇ、チェルシー!?」

 

 ネット通販で買って、二重底のスーツケースまで用意しましたのにぃー。

 

「――――ん?あれ?セシリア」

「こ、光輝さん!?」

 

 ドキドキと高鳴る胸を押さえ、あくまで冷静に、平静を保ち、ゆっくりと振り返る。

 

「なんか久しぶりだね」

「一週間ぶりでしょうか。…ごきげんよう」

 

 スカートをつまんで華麗に挨拶。し、自然にできたでしょうか……?

 

「お出かけですか?」

「うん。中学校の友達とね」

 

 ふと、いつもの光輝とはどこか違う気がした。

 あら、琥珀を付けてらっしゃらない。整備中なのでしょうか?

 

「こちらの人は?」

「お初にお目にかかります。セシリア様にお仕えするメイドで、チェルシー・ブランケットと申します。以後、お見知りおきを」

「こちらこそ。えーっと、瀬戸光輝です。セシリアからチェルシーさんのことは聞いていますよ」

「瀬戸様。ときに、ご無礼を承知の上でお尋ねしますが、私のことをお嬢様はなんと?」

「とても気が利く方で、優しくて、優秀。それに美人だって言っていました」

「まあ」

 

 にっこりとした柔らかな笑み。お世辞のしようがないくらい綺麗で、それでいて嫌みではなく、人を包み込む優しさが感じられる。

 光輝さんったら、わたくしには一度も美人だなんて言ってくれませんのに!

 そんなちょっとしたやきもちさえ見透かしたように、またチェルシーが微笑む。

 

「私も瀬戸様のことはお嬢様から耳にしております」

「へえ、ちなみになんて言ってました?」

 

 ちぇ、チェルシー!?

 セシリアの動揺を察したのか、茶目っ気のある笑みを浮かべ、人差し指を唇に持っていく。

 

「女同士の秘密です」

 

 その魅力的な笑みに見惚れている光輝に少しご立腹なセシリアだった。

 

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