光り輝くその瀬戸際に   作:いろすけ

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赤髪兄妹、弾&蘭

SIDE ~鈴~

 

「遅いわよ、馬鹿」

「第一声がそれ!?」

 

 五反田食堂。中学の同級生〝五反田弾〟の実家が営む定食屋。

 中学時代は一夏と光輝と弾、それにあと一人、〝御手洗数馬〟の五人でつるんでいたっけ。

 

「久しぶりー、弾」

「おう、変わんねぇな、光輝は」

「そういう弾こそ」

 

 女子は基本あたしだけだったけど、なんというか気にしてない。ぶっちゃけ女子のグループより居心地がよかったし、楽。まあ、こいつらが馬鹿なだけでしょうけど。

 

「鈴は何食べるんだ?」

 

 一夏はメニュー表を見せながら聞いてくる。とは言え、あたしが頼むやつは決まっているけど。

 

「業火野菜炒め定食よ」

「なら、俺はカレイの煮つけ定食」

「僕はやっぱりカボチャ煮定食かな。さっき昼ご飯は済ませたけどね!」

 

 カボチャ煮定食、よくあんな激甘な定食が食べられるわね。

 

「お前ら、相変わらずだな。もっといろんなもん食えよ」

「いやー、僕はここに来たらコレ、って決めてるからね」

「あんたの味覚がおかしいのは昔からよね」

「ええっ、ひど!?」

「鈴、それはうちの店にケンカ売ってるのか?」

「光輝が既に昼飯を済ましてることには誰も突っ込まないんだな…」

「カボチャ煮定食は別腹だよ」

「まあ、デザート並みの甘さ、って意味では間違ってないけどな」

 

 正直、楽しい。その、こいつらといると…。

 

「じいちゃん!聞こえてたー?」

「おう」

 

 奥から現れたのは八〇歳を過ぎてもなお健在。五反田食堂の大将にして一家の頂点、〝五反田厳〟その人だった。

 

「あれ?光輝、琥珀は?」

 

 言われてみるといつものチョーカーがないわね。

 

「あー、倉持技研の方に預けてるんだ。福音の一戦で相当無理させちゃったしさ」

 

 まあ、妥当よね。国に帰れば甲龍も検査されるだろうしね。

 

「時に光輝、頼みがあるんだが…」

「断る」

「即答!?」

 

 弾の頼みなんて碌なことじゃないから正解よ。

 

「俺と数馬がバンドやってるのは知ってるよな?」

「僕、断ったんだけど…」

 

 バンドって、こいつらが作った私立・楽器を弾けるようになりたい同好会のこと?

 

「そのメンバーとして向かい入れたい!」

「いや、サックス以外できないから、楽器」

「じゃあ、サックスバンドってやつでいい!」

「…僕メインになってるけど」

「そうだ!一夏と鈴もどうだ」

「俺は楽器なんて無理だよ」

「一夏がギターで鈴がボーカル…いける!いける気がしてきた!」

 

 はあ、馬鹿ね。知ってたわよ、それぐらい。

 

「おにい、誰か来てるのー?」

 

 愛嬌たっぷり…というよりお怒り気味の声を振りまき、二階から降りて来たのは五反田食堂看板娘〝五反田蘭〟だ。

 

「い、一夏さん!?それに光輝さんに鈴さんまで!?」

「久ぶりねぇー、蘭」

 

 この子は所謂、ライバル。もちろん一夏を巡っての。

 

「お久しぶりです、鈴さん」

 

 って、なんで光輝がアタフタしてるのよ。

 

「おー、蘭か。邪魔してる」

「蘭ちゃん、久しぶり。それと落ち着いて?」

 

 もう、光輝は気を回しすぎなのよ、馬鹿。

 

「蘭、お前も食ってくか?」

「…ええ、そうします」

「…コクコク」

 

 五反田兄妹のアイコンタクト。…弾の奴も不憫ね。まあ、馬鹿だから仕方ないけど。

 なんだかんだ、全員分の料理が出来上がった。厳さんは咀嚼中に喋ろうもんなら中華鍋も飛ばすような人なのでみんな黙る。その辺のテーブルマナーは徹底してるのよね。

 

「一夏さん、私、IS学園を受験しようと思っているんです」

「はぁ、お前、何言って!?」

 

 ビュッ―――ガンッ!

 ご愁傷様、弾。ちなみに蘭には甘いらしく、今まで一度も蘭が叩かれているところを見たことがない。

 

「え?蘭の高校ってエスカレーター式で大学まで行ける名門校じゃなかったか?」

「大丈夫です。私の成績なら余裕です」

「でも、IS学園は実技もあるよ。適性がないと問答無用で落とされるらしいし」

 

 一夏と光輝が口々に止めるよう勧めている。

 

「……」

 

 蘭は無言で一枚の紙を取り出し、弾に手渡す。

 

「げえ!?」

「なによ?」

「IS簡易適性試験……判定A…」

「問題はすでに解決済みです」

 

 へぇ、やるじゃない。

 

「…IS学園に入れば嫌でも戦う機会がある。志望動機が軽いとお勧めできないよ。代表候補生の鈴はどう思う?」

 

 光輝が助けを求めるように聞いて来たけど、悪いわね、光輝。

 

「やりたいならいいんじゃない?」

「お、おい、鈴!?」

「別に自分で決めることじゃない。大体、一夏や光輝なんて志望動機も何もないじゃない」

「まあ…」

「確かに…」

「なんなら、手伝ってもいいわよ?」

「り、鈴さん」

 

 あたしも一年猛勉強して代表候補生になった。全部、日本に来れば一夏と光輝に会えるから、って理由。ライバルだし、生意気な奴だけど、あたしに似てる。だからほっとけない。

 

「…僕たちでフォローすれば何とかなるかぁ」

「お、おい、光輝まで」

 

 諦めなさい、シスコン。

 弾が再び何かを言いかけた時、携帯が鳴った。

 

「あ、ごめん」

「ギンッ!」

 

 厳さんに睨まれる光輝に黙とうを捧げる。

 

「まさか食事中に出ないよな?」

「あ、あははは、急用みたいで…」

「女か?」

 

 お、女!?いや、こいつのことだからその可能性は高いでしょうけど。というか、どうせシャルロット辺りでしょ?……って、なんで、あたしがこんなこと。

 

「ごめんなさい。出ます」

「恐れを知らないな、さすが光輝」

「女なら殺す。美人ならもっかい殺す」

 

 こいつらは相変わらずね…。

 

「…もしもし」

 

 光輝は命がけで携帯に出る。

 

「どうしたの?ちょ、ちょっと落ち着いて!」

 

 電話の相手が誰かは分からないがここで大声を出すなんて馬鹿ね、馬鹿。

 

「な、なにそれ…今更…なんだよ…」

 

 光輝の声色が徐々に低くなっていく。

 

「待ってて!すぐ行くから!!」

「ちょっと、何があったのよ?」

「ごめん、一夏、鈴。説明できない」

「ど、どうしたんだよ?」

「厳さん、残しちゃってごめんなさい。美味しかったです」

「お、おい、待てよ、光輝!」

 

 光輝はそのまま店を後にした。厳さんが何も言わなかったのは気を遣ったのかしら?

 

 

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