「…ここは?」
ぼやっとした光が天井から降りているのを感じて、シャルロットは目を覚ます。
「お目覚めですか、お嬢様」
目の前のスーツ姿の女性がシャルロットに問いかける。
「…光輝は!?光輝はどこですか!?」
「ご安心を。彼は無事です。ただ、ここにはいませんが」
そう言うと女性は黙り込んでしまう。ふと、本来自分の首にあるはずのネックレスがないことに気が付く。
「ここはデュノア社ですよね?」
女性は無言で頷く。その機械的な仕草に昔の息苦しかったあの頃を思い出す。
「あの人に頼まれたんですか?」
「ここに連れて来い、と」
短く吐き捨てられた言葉。しかしそれだけで全て把握する。
「会わせてください。あの人に」
意を決したシャルロットだが女性の返答は予想外のものだった。
「なりません」
「ど、どうして!」
「あなたは今、監禁されているのですから」
「あ、あんたは?」
「美人でミステリアスな謎の美女、ってとこかしらね?」
如何にも怪しい研究所、などではなく普通の民家の普通のベッド。そこで光輝は目を覚ました。
「な、何者だよ?」
「あら、それを言うならあなたこそ何者?道端に倒れ込んでいたから心配したのよ」
「…え?」
そこまで言われてようやく倒れる前の記憶が蘇ってくる。
「シャル!!」
自身のすべきことを思い出し、すぐさま起き上がろうとするが、自称謎の美女に止められてしまう。
「離してください」
「落ち着きなさい。相当な訳ありなのは分かったわよ」
「早く行かないと…シャルが、シャルが!」
「だから落ち着いて頂戴、瀬戸光輝君」
「…え?僕の名前?」
突然、謎の美女に名前を呼ばれたので反射的に動きを止める。
「あなた、世界的に有名なんだから当然じゃない。世界で唯一の男性操縦者君」
確かに当然と言えば当然なのかもしれない。今まで外国はもちろん、IS学園の外にさえ行かなかったので実感がなかったが、光輝と一夏は世界的にニュースで取り上げられた有名人なのだ。
「怪我はなさそうだけど…」
少し考えて冷静になったのか、あることに気が付いた。
「…日本語」
「ああ、うまく使えているかしら?」
「…ええ」
「もしかしてデュノア社にご用?」
「は、はい。そうです!」
「ふふっ、お城に閉じ込められたお姫様を救出に行くのね」
「…え?」
「車、出してあげるわ」
怪しく微笑むその笑みは妖艶で、それでいてどこか子供のような感じがした。
「早くしなさい。急いでいるんでしょ?」
「え、はい!あ、あの」
「何かしら?」
「…まだ名前を」
「スコールよ。ごめんなさい、遅れたわね」
「い、いえ。ありがとうございます、スコールさん!」
不安を振りほどく様にスコールを追って駆け出した。
スコール――激しい気候の変化。