光り輝くその瀬戸際に   作:いろすけ

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色即是空

 見知らぬ建物の一室。シャルロットはアルストラ社と名乗る男に拘束されていた。

 

「何故男性操縦者のデータがない!」

 

 リヴァイヴのデータを隈なく探して男は憤る。それもそのはず、最初からシャルロットはISのデータなど盗んでいないのだから。

 

「話が違うじゃないか!これでは奴らに…」

 

 何やら雲行きが怪しい。さっきまであれほど余裕だった男は顔色を悪くし、何かに怯えているようにみえる。

 

「マズい、マズいぞ」

 

 明らかに落ち着きをなくし、動揺している。何事かと聞こうとした瞬間、男の携帯電話が鳴った。

 

「はい、こちらアルストラ社」

『私だ。例の物は?』

「い、いや、それがですね…」

 

 もちろん相手の声は聞こえない。だがおそらく怯えていた正体は電話の相手に対してだろう。

 

『あぁ!?ふざけてんのか、てめぇ!』

「ですから、小娘が男性操縦者のデータを持ってなくてですね」

『つまりは交渉決裂ってことでいいのか?』

「ち、違うんです!これは私共にとっても不測の事態でして」

『知るか。約束のデータを用意できねえんじゃ仕方ねえ』

「…あ、あ」

『…死ねよ』

 

 ブツッ………ツー、ツー、ツー。

 

「な、な、ありえない…」

 

 男は携帯電話を放り出し、顔を青くする。

 

「貴様のせいだ。貴様の」

 

 ゆらりと立ち上がり、シャルロットのそばまでやって来る。直感的に危険だと感じた。

 

「死ね、死ね、死ね!」

「…ぐっ…」

 

 首を絞められ悲痛な声をあげるシャルロット。必死に抵抗するも男の力に敵うはずもなく、徐々に意識が薄れていく。

 

「や…め…」

 

 意識が完全に闇に沈にかけたとき、勢いよく扉が開かれる。瞬間、肺に空気が送り込まれた。

 

「シャル!大丈夫!?」

(ああ、やっぱり来てくれた…)

 

 光輝がそこにいた。

 

「よかった。本当によかった」

「光輝…心配し過ぎだよ…」

 

 光輝はそっと頭を撫で、元凶の男に向き直る。

 

「誰だ、貴様!外の奴らはどうした!?」

「ああ、それなら安心しな。全員鎮圧済み」

「な、馬鹿な!?」

「あんた、デュノア社舐めすぎ!」

「…なんだと」

 

 外にいた連中なんてISを装備した人間の前では無力同然。いくらフランス国内第二位の企業と言えどISに関しては天と地ほどの差がある。第二世代のISしか作れない企業とIS制作に取り掛かったばかりの企業、結局のところ比較するまでもないのである。

 

「光輝、どういう意味!?」

「後でちゃんと説明するよ。とりあえず今は帰ろ?」

「う、うん!」

「そうか、貴様、男性操縦者だな」

「だったら?」

「ちょうどいい。お前も捕らえる。そうすれば帳消しどころかお釣りがくる」

 

 光輝は興味なさそうに男を一瞥し、シャルロットにネックレスを渡す。

 

「リヴァイヴ!?」

「な、なに!?」

「帰ろ?」

「うん!」

 

 怒りと恐怖で怯えている男を尻目に二人はその場を去ったのだった。

 

 

 

 

 

 

「君に力を貸したい」

 

 デュノア社長は確かにそう告げた。

 

「え?」

 

 立ち去ろうとしていた僕は驚き、立ち止まる。

 

「あくまで会社のためだ。あの子は関係ない」

 

 そんな顔で言われても全く説得力ないけどね。

 

「おそらく黒幕はアルストラ社。監禁場所も目星はついている。信用できる部下を数人だが付き添わせよう」

 

 そう言うとせかせかと準備を始める、社長。

 

「あなたは行かないんですか?」

「…私は社長だ。そんな危険なところには出向かんよ」

 

 嘘だ。本当はシャルと会うのが怖いくせに。

 

「シャルは会いたいと言っていましたよ」

 

 だから背中を押す。お節介なことかもしれないけど、それでも僕は背中を押す。

 

「そんな暇はないな。こう見えても忙しい身なのでな。デュノア社の経営立て直しをしなければ」

 

 もうひと押ししようとしたが先に口を開いたのはデュノア社長の方だった。

 

「それに墓参りにも行かなくてわな…」

 

 え?今なんて?

 

「それからだ。あの子の顔を見るのは」

 

 ………。

 

「瀬戸君、と言ったね」

「は、はい」

「約束させてくれ」

 

 そう言って僕の目をしっかりと見据えるデュノア社長。その瞳も僕がよく知っている瞳だった。

 

「三年後の…あの子の居場所を守る、と」

 

 デュノア社長は確かにそう告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 音楽が流れる車内。妖艶でミステリアスな色気の女性はどこか楽し気に窓の外の景色を眺める。

 

『もしもし……もしもし!聞こえてんのか、スコール!!』

「そんなに怒鳴らなくとも聞こえているわよ」

『だったらその趣味の悪い曲を止めやがれ』

 

 スコールと呼ばれた女性はなおも窓の外の景色を眺めている。

 

『えらいご機嫌じゃねえか』

「うふふ、そうかしら?」

 

 その瞳は純粋な子供のようで、それでいて捕食者のような鋭さを内包していた。

 

『アルストラ社がしくじった』

「ああ、大丈夫よ。元から期待していなかったもの。それにデータならMが手に入れたわ」

『はっ、ただの捨て駒かよ。処分するこっちの身にもなれ、ってんだ』

「まあ、そう言わないで頂戴。どの道、筋は通さなくてはいけないわ」

 

 一瞬にして捕食者の鋭い目に変わり、外の景色を捕らえる。

 

「―――亡国機業として」

 

 




帰郷編はこれでお終いです。
次回から文化祭編に入っていきます。
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