IS学園の大黒柱
長かった夏休みも終わり二学期が始まった。昨日、SHRと一限目の半分を使って全校集会が行われた。内容は今月半ばに行われる学園祭についてだ。
IS学園の学祭ってどんなのかなぁー。絶対豪華だよ!何がかは分からないけどね!
そんなことを考えながら自室を出るとたまたまセシリアと出くわした。
「あ、セシリア」
「…光輝さん」
「今から食堂?」
「……」
「え?…」
ここ最近セシリアの様子がおかしい。明らかに僕を避けている気がする。特に何かした覚えはないんだけど。
「こーきくん」
「ひゃ、ひゃい!?」
「相変わらず可愛い反応するわね」
「た、楯無さん」
脇をワキワキしないで!
「お出かけ?」
そう言いながら耳元まで接近し、後ろから僕を抱きしめる。…なんと言うか、その、止めて欲しい。この人は毎回ボディタッチが凄まじい。楯無さんはかなり美人だし、スタイルも並のモデル以上だ。そんな人に抱き付かれたら…嫌ではない、断じて嫌ではないのだが…困る。物凄く困る。
「えっと、食堂に」
「それならお姉さんが何か作ってあげるわよ」
「結構です!」
「ちょっと、何で即答なのよ」
いや、だって楯無さんが料理なんて想像できないじゃん。
「私だって女の子なのよ。花嫁修業くらいしてるわ」
……。
「信じられません、って顔ね。いいわ、証明してあげる」
僕の意見も聞かず、勝手に部屋に入る楯無さん。…これは逃げられないパターンですか。
「一夏君、ちょっとお邪魔するわね」
「え?誰?」
そっか。一夏と楯無さんって面識ないんだっけ。
「この学園の生徒会長よ」
そしていつも通り何処から取り出したのか分からない扇子を広げる。もちろん書いてある内容は〈学園最強〉。
「光輝が言ってた生徒会長さん?」
「あん、楯無でいいわよ。もしくはたっちゃんでも可」
たっちゃん、って…。
「一夏君にもお姉さんの手料理を食べさせてあげるわね」
「…え?光輝?」
一夏、逃げられないんだよ。この人からは、ね。
結論から言うと楯無さんの料理は超絶美味しかった。…負けた気がする。いや、僕がこの人に勝ったことなんかないか、一度も。
こんな感じで普段はお調子者なんだけど、スイッチが入るとかっこいい。まあ、実際楯無さんには何回も助けられたしね。シャルの在学しかり、フランスへ行けたのだって楯無さんのおかげだ。そう考えるとたくさん借りがあるな。もちろん楯無さんはそんな風には思ってないだろうけど。
「光輝君、それではダメよ」
最近は楯無さんにISのコーチをしてもらっている。うーん、お世話になりっぱなしだね。
「防ぐ、じゃなくて流すよ」
とにかく優秀でいつも的確な指示をくれる。どうやら楯無さん曰く、僕に足りないものは戦闘の土台らしい。プラズマエネルギーの燃費が向上したとは言え、多用できるわけではない。そこで重要になってくるのが二つ。使用するタイミングを見極める感覚と使用せずに戦えるだけの戦闘技術。詰まる所、僕は戦闘の基本がなってないらしい。
「いい?双槍には短剣のような使い方もあるけれど結局は槍なの。槍である以上切れ味は劣る」
専用機《ミステリアス・レイディ》を纏った楯無さんは説明を交えながらも僕に猛攻を仕掛ける。これだけの作業をしているにも関わらず余裕の笑みを崩さないのが驚きだ。僕も負けじと反撃するのだがあっさりと、驚くほどあっさりと無力化されてしまう。
「軽いわ。槍の一撃は本来、もっと重いの。双槍でもね」
ミステリアス・レイディの武装は異質。その機体はどの専用機にも似つかない。アーマーは全体的に狭く、小さい。それをカバーするのが水のドレスのようなフィールド。《アクア・クリスタル》と呼ばれるものらしい。そんな代物を自ら組み立てたというのだからいよいよ人間離れしている。
IS装着時って、みんな水着みたいになるから正直目のやり場に困るんだけど…その、楯無さんのISは…なんか、特にエロい。いやいや、変な意味では…あるな。
「こーきくん、えっちなこと考えてた?」
そしてこの読心術。反則ですよ!
「まあ、いいわ。休憩にしましょ?」
そう言ってISを解除する楯無さん。ちなみに楯無さんの武器は大型ランス。その名も《蒼流旋》。お互いに武器が槍だからこそ真に迫った指導ができるのかな?
「重さ、かぁー」
「槍の真髄は突き。覚えておいてね」
「突き…」
「攻撃面はそんなとこかしら」
僕もISを解除すると楯無さんが近づいてくる。
「防御面はさっきも言った通り、流すよ」
なんでも双槍と言う武器は攻撃を防ぐほど武器の耐久値が高くないらしい。ではどうするか。答えは受け流すこと。躱すと防ぐのちょうど中間。これがまた難しい。だけどこの方法は躱すより確実だし、防ぐより速い。
「プラズマが使えないと戦いにくそうね」
「正直、そうですね」
この訓練ではプラズマエネルギーを使わないよう制限されている。それを多用する癖が僕にはあったようで、おかげでとても戦いにくい。
「知ってはいましたけど強すぎですよ」
「あら、生徒会長だもの。当然よ」
僕はもちろん一年の専用機持ちよりも一枚も二枚も…いや十枚くらい上だろう。そこに誇張や贔屓は一切ないと言い切れるのだからこれまた凄い。
「ウフフ♡」
まあ、当然と言えば当然か。実際楯無さんはロシア国籍持ちの国家代表。候補生と格が違うのは当たり前。本当にかっこいい人だ。
「こーきくん。疲れたでしょ?マッサージしてあげよっか?」
「遠慮しときます」
「さてはお姉さんの腕を疑っているな?」
「そうじゃないですから!」
「ええい、すべこべ言わずに揉ませなさーい」
…こういうところがなければ。
どうにか楯無さんを落ち着かせ、ピットに向かおうとした途中で呼び止められる。
「今度は何ですか?」
「その疲れきった顔はやめなさい。モテないわよ」
誰のせいだと思ってるんですか。誰の!
「あのー、その…なんて言うのかしら……」
珍しく歯切れが悪いな。よっぽど言いにくい事なんだろうか。
楯無さんは一度大きく息を吸うと僕に頭を下げた。
「お願いがあるの」