光り輝くその瀬戸際に   作:いろすけ

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お久しぶりです。(なんか毎回言ってる気がする…)

今回は3話連投します。


灰から脱するとき

 金属と金属のぶつかる音だけが響く。ここにきて楯無さんとの修行の成果が発揮された。

 

「ハハハ、おもしれえな、クソガキ」

 

 オータムの駆るIS《アラクネ》の八門同時攻撃をトライデントで防ぎきる。否、流しきる、だ。

 武器の接触は最小限で抑え、相手の勢いを止めることなく受け流す。すると相手は僅かながらに体勢を崩す。反撃の隙ができる程ではないが攻撃のタイミングを遅らせることはできる。

 

「はぁ…はぁ…」

「かなり息が上がっているようだが」

 

 確かにアラクネの連撃を捌ききるのは難しい。いつ途切れてもおかしくない極限の集中状態は長くは続かないのだから。

 

「なら…こっちから仕掛ける!」

 

 目を閉じ、反響定位を発動させる。瞬間、トライデントの刃から強烈な光が発せられた。

 

「ぐっ」

 

 至近距離で突然の発光。その光は離れていた一夏と簪ですら眩しいと感じるほどだ。当然、オータムは一瞬、視界が奪われる。琥珀にとってはその一瞬で十分だ。

 

「ぐがっ!」

 

 光輝が放ったのはただの突き。しかしその突きは最良な姿勢から最適な角度で放たれた最速の一撃。たったそれだけでただの突きは必殺の突きとなる。

 

 ―――バリバリバリバリ。

 

 追撃するように雷が迸る。

 

「この野郎…」

 

 アラクネは装甲脚それぞれから独立したPICを展開しているらしく、ISとは思えないような複雑でしなやかな機動を行い、辛うじて逃れる。

 

「…今のを躱すなんて」

「今の動き、まんまクモだろ」

 

 確かにすごい。回避能力は目を見張るものがある。だが、今回は琥珀に分があった。その証拠に今の一撃でアラクネの八門の装甲脚のうち一つが破壊された。

 

「…ガキが」

 

 楯無さんとの特訓で培った防御と攻撃が確実に活きた証だ。

 

『簪ちゃん、聞こえる?』

『こ、光輝!?』

 

 プライベート・チャンネルを簪につなぐ。

 

「図に乗んじゃねえぞぉー!!」

 

 オータムは咆哮をあげると同時に両手にマシンガンを構築。光輝めがけて弾丸を放つ。

 

「遅い」

 

 発砲と同時に光速加速。弾丸なんかに捕まるほど琥珀は遅くない。だがオータムはそれすら読んでいたのか、背後の回り込んだ光輝を装甲脚で打ち抜いた。

 

「!!」

 

 焼けるような痛み。弾丸はシールドエネルギーを確実に抉り取る。

 

「背後に回り込むとはな。これだから素人は」

 

 姿勢を崩した一瞬。その一瞬が致命傷になるのはお互い同じだ。

 マシンガンと装甲脚による一斉射撃が光輝を蜂の巣にする。

 

「光輝!」

「一夏、ダメ!」

 

 射撃の影響で粉塵が視界を覆う。

 

(ああ?粉塵?ここは整備室だろ。なんで粉塵なんか)

 

 またしても一瞬が致命的となる。

 

「姿勢は正しく、腰を落として、力を入れるのはインパクトの瞬間のみ」

「そこか!?」

 

 霞む視界の中眩い光が渦を巻く。その一撃は神をも穿つ天災の一撃。

 

「光速の槍か。確かに派手だ」

 

 オータムは指先であやとりのようなものを弄っていたかと思うと、光輝めがけそれを投げつけて――

 かかった!

 

「甘え!」

「ぐっ」

「簪ちゃん!」

 

 本命は簪。光輝が派手な演出で注意を引き付けている間に剥離剤を回収する手はずだったのだが。

 

「仕方ないよね、しっかり躱しなよ」

「あぁ!?」

 

 陽動のつもりだった。だって本当にこの一撃は威力が高過ぎる。だから撃つつもりはなかった。

 

「――!!」

 

 爆風。直後に爆音。光速の槍は躱すことも防ぐことも許さない。

 

「簪ちゃん、一夏は無事?」

「…大丈夫」

「死ぬかと思ったけどな」

 

 案外元気そうでよかったよ。

 

「ハハハッ、何だ今のは、最高だぜクソガキ。殺してやるよぉぉ!!!」

「しぶとい奴」

 

 クモの糸がアラクネ自身を包み込み、先程の一撃を凌いだようだ。もっとも、ダメージは深刻らしいが。

 

『…光輝、エネルギーは?』

『プラズマ残量は5%ってとこかな?』

 

 さっきの投擲は必殺の一撃と同時にプラズマエネルギーを爆発的に消費する諸刃の剣。けど、そうなってもいいように特訓してきたんだ。ここからが本当の勝負。

 

「今の相当エネルギーを消費したんじゃねえのか?」

「だったら?」

「瞬間移動は出来ねえんじゃねえか?」

 

 そう言い放つとオータムは光輝から視線を離し、簪へと移す。

 待てよ、何する気だよ!?

 奴の言う通り光速加速は使えない。光輝がたどり着くより明らかに向こうの方が早い。

 

「間に合えぇー!」

 

 加速も空しく、簪へ砲撃を開始するオータム。

 

「ちょっと調子に乗り過ぎではないかしら?」

 

 突如現れた場にそぐわない声。あまりの場違いさにその場にいた全員の動きが止まる。声の発信源にいたのは―

 

「楯無さん!?」

「な、お前どこから入った。何者だ!?」

「私はこの学園の生徒たち、その長。ゆえに、そのように振る舞うのよ」

「はぁ?何言ってやがんだ、てめぇ!」

 

 すぐさま身を翻したオータムの装甲脚が楯無の全身を貫いた。

 

「お姉ちゃん!」

「大丈夫よ、簪ちゃん」

 

 楯無は貫かれてもなお、簪に向かって微笑みかけた。

 

「手ごたえがない……だと?」

 

 もう一度にっこりと微笑むと、次の瞬間にはその姿そのものが崩壊した。

 

「…水か?」

「ご名答」

「ちっ」

 

 危険だと判断したのかすぐさま距離をとるオータム。

 

「相手をしてあげてもいいのだけど。あなたは私の大切な人を傷つけた」

「だからさっきから何言ってんだよ」

 

 ゆらりと、確かにそこに存在していた楯無の姿が消えた。まるで幻であったかのように、粉塵に紛れて。否、これは霧だ。

 

「ところで知ってる?」

「何!?」

「この学園の生徒会長というのは、最強の称号だということを」

 

 楯無が言い終えたときにはすでに剥離剤は回収されていた。

 

「て、てめぇ、どうやって!?」

 

 真後ろに回り込み、ランスで弾いたのだ。速い以上に滑らかだった。ゆえに楯無を除く、この場の全員が反応すらできなかった。

 

「《清き熱情―クリア・パッション》」

 

 パチリと指を鳴らした瞬間、オータムの周りの霧が異様に濃くなり、爆せた。

 ISから伝達されたエネルギーを霧として構築。霧を構築しているナノマシンが一斉に熱に転換することによって対象物を爆破したのだ。

 

「光輝君たちも元気そうね」

 

 最大展開した水のヴェールのおかげで光輝たちには一切怪我はない。しかしオータムはそうはいかないはずだ。そう思い視線をやるが、肝心のオータムはどこにも見当たらなかった。

 

「逃げられたわね」

「逃げた!?あの状況で!?」

「どうやらお仲間がいたみたいね」

 

 そう言いながらオータムがいた場所を見つめる楯無さんは珍しく険しい顔をしていた。

 

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