光り輝くその瀬戸際に   作:いろすけ

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文化祭編最終話です。


淡い、淡い、青と藍

 セシリア・オルコットは焦っていた。突如、鳴り響いた警告音。学園祭は一時中断され、生徒たちは体育館に集合させられた。

 

「…はぁ、はぁ」

 

 しかし、どこにも一夏と光輝の姿がなかったのだ。あの二人の事だ、また事件の渦中にいるのだろう。そう思うと居ても立ってもいられなかった。

 教室や寮、食堂にアリーナ、可能性のある場所をしらみつぶしにまわる。そして最後に整備室に続く連絡通路に差し掛かったとき、目の前に一人の女が現れた。

 

「…あなたは?」

「…」

 

 年は比較的近そうだが服装からして明らかにこの学園の生徒ではない。女はセシリアの問いに答えることなく、ISを展開した。

 

「…そんな……まさか!?」

 

 セシリアには女が展開したISに見覚えがあった。

 BT二号機《サイレント・ゼフィルス》。シールド・ビットを搭載した機体であり、その基礎データには一号機であるセシリアのブルー・ティアーズが使われている。間違いなくイギリスが有しているはずの機体だ。

 

「…フン」

 

 まるでこちらに一切興味を抱いていないかのように薄く笑うと、シールド・ビットを展開する。

 

「―ブルー・ティアーズ!」

 

 マズい、そう直感したセシリアはすぐさまISを展開、回避体勢に移る。もし、判断が少しでも遅れていたら蜂の巣だろう。その証拠に先程までいた場所は無残にも焼き焦げていた。

 

「何者ですの!?」

 

 しかし、セシリアも負けてはいない。すぐさまスターライトmkⅢをコール。空中からの狙撃を試みる。

 

「…」

 

 驚くべきことに、それらは逆に狙撃によって撃ち落された。

 

(な、なんて精密射撃!?それに連射速度!?)

「その程度か」

「それならっ!」

 

 ミサイル・ビットを自身の真下へ射出。相手のレーザーを躱しながら空中で制御動作を取らせて死角からサイレント・ゼフィルスへと向かわせる。

 いくら連射性能に優れていてもビームを撃っている最中には攻撃できない。しかもBT兵器の特性として操作中はそれ以外の動作を並行して行うことはできない。BT一号機を駆るセシリアがそのことを熟知していないはずがなかった。

 

「なっ………!」

 

 必中を確信したセシリアを嘲笑うかのようにビームが弧を描き、ミサイル・ビットを撃ち落した。

 

(これはBT兵器の高稼働時に可能な偏光射撃!?)

 

 セシリアが驚くのも無理はない。なにせ、現在のBT適性の最高値こそがセシリアなのだ。セシリアですら使えない最高難度の技を他人が使えるわけはない。しかし、この襲撃者はいとも簡単に偏光射撃―フレキシブルを使ってみせた。

 

「他愛もない」

 

 信じがたい光景を前に棒立ちになってしまったセシリアに容赦のない射撃が襲い掛かる。

 

「…ぐっ、あがっ!!」

 

 最後にとどめを刺そうとしたとき、ふと襲撃者が立ち止まった。

 

「命拾いしたな。没落した貴族」

「―――っ!!」

 

 吐き捨てるように一瞥すると襲撃者はどこかへ去って行った。

 

「………ぐっ」

 

 ぎゅぅっ、と悔しさに唇をかみしめ、セシリアは敵が飛翔していった方向を睨む。

 …悔しくて、たまらなかった。

 

 

 

 

 

 

「みんな大丈夫かしら?」

「は、はい…一応」

 

 大きな怪我もないし見る限り大丈夫そうだ。

 

「楯無さん!あいつらは…何者なんですか!?」

「…一夏」

 

 問題は外傷ではなさそうだ。

 

「一夏君、少し落ち着いて」

「あいつら、俺を誘拐したって、そのせいで千冬姉が…」

「……」

 

 大切な姉。絶対的に完璧な姉の経歴に唯一ついた傷。それこそが自分の無力のせいなのだ。その姿を見た簪と楯無さんは何を思っているのだろうか。僕が知らない感情を抱いているのだろうか。

 

「亡国機業、通称ファントムタスク。目的は不明。けれど世界各国のISを強奪しているわ」

「え、そんなことニュースにすら―」

「光輝君、ISはその国の軍事力そのものよ。得体のしれない組織に奪われた、なんて公にできると思う?」

「…うっ」

「おそらく、一夏君と光輝君のISを狙ったのでしょうね」

 

 つまり、構成員どころか所持しているISの数すらも不明。情報通の楯無さんですらそうなのだ、僕が考えたところで分かるはずもない。

 

「お、お姉ちゃん」

「な、なに?」

「…今まで…ごめんなさい……」

 

 唐突に感じるかもしれない。だが、簪は今の今までずっと避けていたことを後悔していた。勝手なイメージで、勝手に壁を作って、ずっと。

 

「私…ダメな妹だから…」

 

 しかし、それは楯無さんも同じなんだと思う。きっと根はすごく不器用な人で、妹に誤解されてもどうしていいのか分からない。そんな弱い人、なんだ。

 

「あなたは私の大切な妹よ。とても強い、私の妹」

 

 二人の目から涙が溢れる。

 

「お姉ちゃん…お姉ちゃん…」

「ん」

 

 長いわだかまりが解けた姉妹がお互いの存在を確かめ合うように抱き合っていた。

 僕にはどうも、眩しすぎた。

 




更識姉妹の扱いが少し雑になってしまいました。展開に無理があったのも自覚しております。
一夏とセシリアの二人を丁寧に扱った(つもり)結果です。申し訳ないです。

また補足の話を別で入れるかもしれません。そのときは更識姉妹の話は懇切丁寧に書きたいと思います。

更識姉妹も好きだからね!

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