光り輝くその瀬戸際に   作:いろすけ

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番外編6
生徒会での色々なお仕事


「結構なお手前で」

「うむ」

 

 此処がどこだという説明をしておこう。IS学園部室棟校舎、一階。茶道室に光輝とラウラはいた。

 

「しかし、ラウラが茶道なんて意外だねー」

「日本らしい素晴らしい部だぞ。なにより織斑教官に勧められた」

 

 入部動機はほぼ後者だろうね。

 

「光輝こそ意外だな、そういうのは堅苦しくて嫌だ、とか言いそうなのにな」

「ん?まあね」

 

 ウサギの形をした茶菓子を指で摘み、感心したように眺める。その間にラウラは茶筅などの用具を片している。案外いいお嫁さんになりそうだなぁー、と内心思っていると知らないうちに声に出ていたようだ。

 

「私の嫁は一夏だぞ、光輝」

「…あー、そうだったねぇー」

 

 訂正しよう。いいお婿さんになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 ラウラは良しとして、何故光輝が茶道室にいたのか。簡単だ。仕事なのだ。これを説明するとなると順を追っていく他ない。

 

「こーきくん、遅い」

「やっほー、こっきー」

「お疲れ様です、瀬戸君」

 

 薄々感づいているかもしれないが瀬戸光輝は生徒会の副会長になりました。正確にはさせられました、が正しい。

 

「茶道部の手伝い、終わりましたよ」

「お疲れさま。じゃあ、次は…」

 

 仕事というのは生徒会が行っている生徒会執行部、部活動奉仕キャンペーンだ。とはいえ駆り出されているのは光輝だけなのだが。

 

「ラクロスね」

「はーい」

「今日はこれで最後。明日は剣道とテニス、それから料理研の三つをお願い」

「…あの、もしかして専用機優先権とかあったりします?」

「ないわよ?ただ、全部活動に競わせたらたまたま専用機持ちのいる部活が優先権を取ったってわけ」

 

 ……いや、まあ、そこに驚きはしないけどね。だって専用機持ちなんて本来そういう人たちの集まりなんだからさ。にしてもね、大人げないよね。

 

「はい、瀬戸君」

 

 楯無さんからラクロス部の資料をもらい、席に着くとすぐに虚さんからお茶を出される。本当にデキる女性だ。

 

「あ、ありがとうございます」

「こっきー」

「なに?のほほんさん?」

「わたしもー、のどかわいたなぁー」

 

 長い袖をバタバタと揺らしながら注文を口にするのほほんさん。もちろんお茶くらい構わないんだけど…。

 

「本音!自分で淹れなさい、それくらい」

「えぇー」

 

 と、まあ、いつもの感じだ。本当に仲のいい姉妹だ。更識姉妹も少しは見習うべきだと思うね。

 

「こーきくん?肩とか凝ってなーい?」

「だ、大丈夫です!!」

 

 即座にお茶を飲み干すと、逃げるようにラクロス部のところへ向かった。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…」

「おつかれ、鈴」

 

 練習に区切りがついて、戻ってきた鈴にスポーツドリンクとタオルを渡す。

 

「ん」

 

 タオルを首から下げ、汗を拭う。コクリと音を立てドリンクが流し込まれていく。汗ばんだ髪が首筋に張り付き、太陽の光を反射させる。普段の活発な印象とは違い、さらには不意打ちだということもあって不覚にもドキドキしてしまった。

 

「なによ?」

「いや?なにも?」

 

 汗ばんでる鈴が色っぽくて見惚れてました、なんて言えない。

 

「視線がエロい」

「ぬがっ!?」

 

 バッチリ気づいてるじゃないですか!

 

「あんた、マッサージとかできないの?」

「それは一夏の専売特許だよ…」

「気が利かないわね」

 

 あんなハイスペック主夫と一緒にしないでよ。

 

「はい」

「ん?」

 

 突然こちらにドリンクを突き出す鈴。これは炎天下の中、マネージャー業に勤しんでいる僕をねぎらっての厚意なのか!?だとしたら優しすぎるぜ、鈴さん。

 

「ありがと」

 

 ありがたく厚意に甘えたのだが鈴のリアクションは予想外のものだった。

 

「ちょ、な、な、なにしてんのよ!」

「え?なにって…飲食?」

 

 食はないけどね!

 

「は、はぁ?」

 

 真っ赤な顔にも慣れてきたなぁー。

 

「あ、あたしは、その、練習始まるから持っててもらおうと…ただそれだけで…」

 

 なんだか少し悪いことをした気分。いい加減、関節キスくらい慣れて欲しいものだけどね。

 

「ごめん。てっきり飲んでいいのかと」

「…いや、まあ、いいけど」

 

 そう言いながら手でパタパタと仰いでみせる。当然涼しくはならないのだが、なんとなく僕もつられてしまった。

 

「こらー、凰!練習始まったわよー!」

「す、すみません!」

 

 おそらくラクロス部の先輩だろう。鈴は怒鳴られながらグラウンドに走っていった。

 

「………」

 

 取り残された僕とドリンク。何の気なしにドリンクを見つめる。

 

「ぐへへ、誰もいなくなったところで飲み口についた唾液を―」

「楯無さん!」

 

 いつからいたのか後ろにニヤニヤした楯無さんがいた。一応言っておくが先程の唾液発言は楯無生徒会長のアテレコである。

 

「お仕事お疲れさま」

「馬鹿にされた直後に聞いても有難さはないですね」

「馬鹿になんてしてないわよ」

 

 と言いつつ顔は笑っている。絶対馬鹿にしてますよね。

 

「それより、どう?生徒会は?」

 

 楯無さんは僕の隣に座ると控えめな伸びをした。

 

「大変ですね。こういう仕事は正直、性に合わないですし」

「そんなことないわよ。虚も本音も助かってるって言っていたわ」

 

 もちろん私もね。と付け足す楯無さん。

 

「あなたには感謝しきれないもの」

 

 え?僕の方こそ感謝しきれないはずなのに、なんで楯無さんが?

 

「ふふふ、なんで?って顔ね」

 

 お得意の読心術で楯無さんは微笑む。扇子を取り出し、小さく開いてみせた。

 

「簪ちゃんのことよ」

 

 楯無さんと簪はつい最近まで仲が悪かった。と言ってもわずかなすれ違いが原因だったんだけどね。僕はその誤解を解く手伝いをしたに過ぎない。ようは大したことはしていないのである。

 

「それを言うなら僕の方こそお世話になりっぱなしで―」

「ありがと、光輝君」

 

 お礼を言おうとしたけれど、楯無さんに先に言われてしまった。楯無さんは普段の雰囲気とは違い、優しくもあり、温かい感じがした。そんな楯無さんにお礼を取り下げさすようなことはできないな。

 

「じゃあ、有難く受け取っておきます」

「ふふ、よろしい。素直な子は好きよ?」

「光栄です」

「ふふふ、なに、それ」

 

 まあ、無理やりだったとはいえ、よかったんじゃないかな。生徒会に入って。

 

「女たらしじゃなければもっと好きになったかもしれないわねぇー」

「どういうことですか、それ!?」

「その通りの意味よ」

 

 ひとしきり笑い合って、生徒会室へと歩き出す。さて、もう一仕事しますかね。

 微笑みながら閉じた楯無さんの扇子には珍しく何も書かれてはいなかった。

 




はい、鈴は可愛い(結論)
楯無さんもなかなかです。

次回から新しい章、コア・ネットワーク編に入ります。
いよいよ物語が大きく動き出す…かも?
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