かなり短めですが、重要な話なのであえて纏めませんでした。
シャルロットはIS学園の医務室にいた。自身が怪我をしたわけではない。いや、全くの無傷というわけでもないのだがそこまで大きな怪我ではないのは確かだ。
「……」
目の前には眠ったままの光輝がいた。光輝だけじゃない。一夏も隣のベッドで寝ている。ここにはいないがセシリアも軽傷ではないと聞いた。
「…僕は何もできなかったよ」
そっと想い人の手に触れる。もちろん反応はないがそれでもシャルロットは声を掛けることを止めない。
「また、みんなのために無茶したんだね」
前髪を優しくかき上げると、少しだけ幼さの残る顔がある。その顔は本当に普通の少年だった。とても世界に二人しかいない特異な人間には見えない。ましてやみんなのことを背負って戦えるような強い人間になど見えるはずもなかった。
「ごめんね。……今度は僕が、光輝を守るからね」
それだけ言うとシャルロットは光輝の手の甲に一つ、キスをした。まるでお姫様に誓いを立てる王子様のように。
「僕も、頑張ってみるよ」
ゆっくりと席を立ち、医務室を後にした。そこでシャルロットはISを使ってある人物と連絡を取った。今まで避けてきて、自分からは関わろうとしなかったことにシャルロットは自ら飛び込んだのだ。それが彼女なりの決意の表れ。
高層マンションの最上階。豪華な飾りで溢れかえっているその部屋に三つの影がある。スコールとオータム、そして篠ノ之束だった。
「束博士、あれは一体どういうことなのでしょう?」
Mと光輝の一戦を目の当たりにしたスコールは険しい顔つきで話を切り出した。
「ん、分からないなぁー」
対して束はどうでもいいとばかりに返事をする。
「入手した琥珀のデータを見る限り唯一仕様は発現されていませんでした。今回の戦闘で見せた力こそがあの機体の唯一仕様」
「あぁ?じゃあ、あのプラズマは何だってんだ?」
「簡単よ。プラズマ化はあくまで途中経過。物質を分解する過程での不安定な状態でしかない。素粒子…いいえ、もっと細かい単位での分解。そこまで細かいと分解というより消滅に近いわね」
ただ沈黙だけが流れる。当然だ。そんな能力が存在するのならシールドエネルギーは意味をなさない。完全にISという規定から一脱している能力なのだから。
「んー、五〇点かなぁー」
「…どういうことですか?」
そんなスコールの仮説を束はいともたやすく否定する。
「考え方は悪くないけど全然違う。だから五〇点」
「…いえ、配点の問題ではなく」
「それよりさぁ、まどっちの専用機だけどね」
「あ、あの、Mの専用機を作っていただけるのは嬉しいのですが、琥珀の話が―」
話を戻そうとするも稀代の天災はすでに別の話題に興味を移しており、戻る気配はなさそうだ。
「遠距離型?近距離型?特殊武装は?」
亡国企業のM。本名は織斑マドカ。この名が何を意味するのか分からない者達ではない。
「Mが起きてからにしてください」
「それもそうだねぇ」
ちらりと奥の扉に目を移す。先刻の戦いで負傷したMが寝ているのだ。
「そうだ。琥珀のデータをもとに唯一仕様をコピーしてみたんだけど、うまくいかないんだよねー」
「え?」
「劣化版しかできないんだよねー。おかしいなぁー」
唯一仕様のコピー。すでにそれだけでとんでもない事なのだが束はとくに気にすることなく言ってのけた。
「君たちの機体につけてみる?」
「そ、そんなことできんのかよ…」
「失礼ですが本当に安全なのですか?」
用心深いスコールならではの問い。
「9割方、暴走するだろうね」
「「……」」
この時ほど聞いておいてよかったと思ったことはないだろう。
「ところでさぁー」
びしりと入口に立つ女性を指さす。
「あれ、誰?」
とくに警戒することなく、いや、する必要なく、退屈そうに尋ねる束。
「ああ、彼女はMが誘ったらしいです」
「へぇー、まどっちが」
一瞬、Mという名に反応したがそれだけで、再び退屈そうな目に戻る。そんな中、スコールだけがひっそりと笑みを浮かべていた。
「ようこそこちら側へ。歓迎するわ」
笑みを浮かべたまま入り口付近に立つ少女に呼びかける。そして一言、少女の名を口にするのだった。
「セシリア・オルコットさん」
個人的にはなかなか衝撃の展開でした。(書いといて…
結構賛否別れるかもしれません。
セシリアは個人的に大好きなキャラなので絶対無碍に扱いません。
まあ、そのあたりは今後の展開に期待ということで。
ようやく動き出した物語(今更ですが…)クライマックスの構成もだいぶ固まってきました。でもまだ終わりません。結構続くと思います。ですので拙い文にこれからもお付合い下さい。よろしくお願いします。
次回は番外編を挟みつつ、新章暴走編に入っていきます。