これから本編は少しの間セシリア中心になります。なので鈴もシャルも出番がだいぶ減るかもしれません。
ご了承ください。
色は思案の外1
僕…いえ、私はシャルロット。シャルロット・デュノア。IS学園に通うごくごく普通の女の子。と、言うわけでもなく、フランスの国家候補生です。少しだけ変わった女子高生です。
突然ですが私には好きな人がいます。その人はとっても優しくて、とってもカッコいい。それなのに謙虚でいつも他人のことを気にかけている。そんな人。私はそんな彼が大好きです。
他にも彼は―――。
「シャル?」
「ひゃあぁぁー」
「シャル!?」
いつも突然で私の心をドキドキさせる、そんなズルい人です。
「そんなに驚かなくても…」
「えぇ!?あ、あぁ、ごめん」
「変なの」
そう言って笑う彼の笑顔は子供みたいで可愛い。私の密かな癒しです。
「プラズマエネルギーなんだけどさ」
「う、うん」
ISをお互い装備したままとは言え、無防備に近づいてくる彼に私の心はまた高鳴ります。
最近は琥珀のプラズマ譲渡の機能を使いこなすため実際に試しながら練習しています。とは言え実際に重要なのは渡す彼ではなく渡される私たちの問題なんです。ラウラと楯無さんは流石と言うべきか見事に自身の技にプラズマを組み込んでいるようです。
それに比べ、私は完璧に使いこなせているとは言えません。今も私のために彼は練習に付き合ってくれているのです。やっぱり優しい。そう思わずにはいられません。
ハッキリ言うと悔しいです。だって彼が渡してくれた、彼とのコンビネーションのようなものだもん。
「やっぱり実弾に使った方がいいんじゃない?」
「うーん、それだと決定打にかけるっていうか。それで射出速度が落ちたら元も子もないし」
「そっかぁ」
本当のところは私が気に入ってないだけ。一発一発の威力は確実に上がっているし、射出速度もそこまで変わったりはしない。それどころか弾丸速度は段違いに速くなるので寧ろ利点の方が大きかったりもする。
でも―――。
ラウラはAICと組み合わせて捕縛+ダメージを与えることが出来るようになったし、楯無さんはナノマシンの水面にプラズマを乱反射させることで武器の強化だけでなくエネルギーそのものを増幅させられるらしい。
二人が特別凄いということくらい分かってる。分かってるけど、一番になりたい。彼のペアには私しかいない。そう思わせたいんだ。それがどれだけ傲慢で卑しい考えかも知ってる。
でも――――――。
「もういい時間だし、ここまでにしよっか」
「うん。分かった。ありがとね、光輝」
「うん?全然かまわないよ」
私の大好きな笑顔で微笑んだ後、彼はピットへ消えていった。残された私は少し寂しい気持ちになりながらも彼とは違う反対側のピットへ向かうのだった。
練習を終えたあと私はIS学園の自室には戻らず寮の廊下にいた。少し先には想い人の姿があった。
「…うぅ」
別に、その、ストーカーじゃない。うん、違う。ただちょっと様子が気になって…ってそれじゃあ、本当にストーカーな気がする。
ここ最近、光輝の様子は少しだけ変だ。本人は隠しているつもりだし、光輝にしてはうまく隠せていると思う。でも、想い人だからこそ分かる少しの変化が私には感じられた。だからこそ、というわけではないけど、こうして光輝の様子を窺っているのです。
「おっ、一夏。今から食堂?」
「おう、一緒に行くか?」
一夏と合流し、二人はそのまま食堂に向かうらしい。私も同じように食堂に向かう。
(…一夏と仲いいよね、光輝。ちょっと良すぎるくらい)
意味のない嫉妬だと分かっていても気になってしまいます。乙女心は複雑怪奇なんだもん。
「今日の日替わりランチはアジフライだぞ。美味そうだな」
「僕はカレーにしようかな」
「光輝にしては無難な選択だな」
「トッピングはもちろん納豆で」
「…前言撤回しとく」
光輝たちが席に座ると私も近くの席に腰を下ろす。別に同じテーブルに行けばいいんだけど、そこはなんとなく行かない。正直、尾行が楽しくなってきちゃった。
「どうした?シャルロット?」
「ってラウラ!?」
「そんなに向こうのテーブルを見て、何かあるのか?」
「ちょっと、ラウラ!?」
「―――うむっ」
とっさにラウラの口を塞ぐことで事なきを得る。
「ラ、ラウラ。静かに!」
「む?嫁たちに気づかれてはいけないのか?」
「えっと…う、うん!そういうこと!!」
「諜報活動というやつか。心得たぞ」
ちなみにこの会話はかなり小声です。怪しさで言えばこのテーブルは断トツだと思うよ。
「目標卓、2時の方向に接近者ありだ」
「…ノリノリだね」
光輝たちに近づいた正体は鈴だった。
「おーっす。って、また変なの頼んでるのね」
「アジフライのどこが変なの?」
「絶対そっちじゃないからな、光輝」
向こうのテーブルがなんだか盛り上がっているみたい。今になって私も混ざりたいなんて後悔をし始めました。
「シャルロット」
「ん?どうかした?」
「どうして尾行を?」
「ええ!?び、尾行!?」
「うむ」
私は尾行という単語が気になったけどラウラはそうでもないみたい。早く理由が知りたいという顔をしている。
「え、えーっと。最近光輝、元気ないみたいだからさ」
「ん?そうか?」
そんな私の言葉が意外だったのかラウラは首をかしげてみせた。無理もないと思う。だってそれだけ今回は隠すのがうまかったから。
「うん、変だよ。……少し、ね」
「…ほう」
ラウラは一瞬考えるようなそぶりを見せた後、感心したように私を見上げた。
「さすがだな」
その言葉にどのような意味があるのかは分からないけど、取り敢えず苦笑いをしておく。
「変と言えばセシリアの様子もおかしかったな」
「え?」
「なんだ、気づいてなかったのか?」
セシリアの様子が変?よくよく考えれば確かにそうだったかもしれない。元気がなかったような気もする。でも、言われるまでは全くそんなこと知らなかった。
「光輝のことはすぐ気がつくのにそれ以外は不思議―」
「ちょ、ラウラー!!」
「恋は盲目というやつだな」
「ラ、ラ、ラ、ラウラ!?」
頻りに頷いて勝手に納得しているラウラに私は慌てふためくことしかできない。大体ラウラがらしくないことを言ったら情報元は決まっている。光輝、もしくは―。
「副官のクラリッサが言っていたことだがな」
やっぱり。いつも間違った知識を植え込む副官さんだけど今回ばかりは的を得ているようで何も言い返せない。
「シャルロットは良くも悪くも頭の回転がすごい、と言っていたぞ」
「…ちなみに誰が?」
「光輝だ」
再びのやっぱり。あとで光輝とは話し合う必要がありそうだね。
(それにしても……)
気づかなかった。光輝のことにはすぐに気がついたのに…セシリアのことは…。ダメだな、私。本当にダメだ。私は何も見えてなかったんだ。
「それに関してだが、私も同感だ」
「え?」
「シャルロットの切り替える力は目を見張るものがあるな」
「…切り替える力?」
その言葉を反芻していると、ふと、一つの解が浮かんだ。電撃のように閃いたわけでも、じっくりと考え出したわけではない。ただ自然と浮かんできた。私…いや、僕のスタイル。
「ラウラ、ありがとう」
「?」
キョトンとしているラウラを尻目に僕は勢いよく飛び出した。いてもたってもいられなくなったんだ。ただ、今は試したい。このイメージを忘れないうちに。
「光輝!」
「ん?どうしたの、シャル?」
躊躇していたのが嘘のように光輝に話しかけることが出来た。
「光輝!付き合って!!」
「へ?」
「「「ええぇーーーーーー!!!!」」」
IS学園の食堂に悲鳴が木霊したのは言うまでもないが、それを気にするシャルロットでもないのだった。