光り輝くその瀬戸際に   作:いろすけ

6 / 64
約束編
再会のち飴色


 

「織斑君、瀬戸君、おはよー。ねえ、転校生の噂聞いた?」

 

 朝、席に着くなりクラスメイトに話しかけられた。この子は〝相川さん〟。入学から数週間で、なんとかクラスに溶け込めるようになった。

 

「今の時期に、か?」

 

 一夏が疑問に思うのも無理ないね。何たってまだ四月、入学でもギリギリ間に合う時期だからね。…それは違うかな。

 

「なんでも中国の代表候補生なんだってさ」

「パンダみたいな専用機だったりして~」

 

 〝谷本さん〟、それに狐の着ぐるみ姿で馬鹿なこと言ってるのが〝のほほんさん〟。 えーっと、確か本名は…。

 

「ど、どんな奴だろうね、あ、あはは」

「こっきーが失礼なこと考えてる~」

「な、何故わかった!?」

 

 こ、こやつも千冬さんスキル発動か!?

 

「光輝、今のは俺でもわかるぞ」

 

 なにぃー!一夏ですらわかるのか!?

 

「おりむーにも失礼なこと考えてたでしょ~?」

「グハッ」

「あはは、話し戻していい?」

「おのれ、春先のチャップリンと呼ばれた、この私を差し置いてボケ倒すとは、ぐぬぬ」

 

 何だろう、突っ込みどころは多いけど相川さんのボケは嫌いじゃない。

 

「わたくしの存在を危ぶんでの転入かしら」

 

 ごめん、違うと思う。…睨まれた。僕の心の声にプライバシーはないのか!?

 

「このクラスに転入してくるわけではないのだろう?騒ぐほどのことでもあるまい」

 

 さすがに箒も女子、噂に敏感なのか、ちょっと意外だ。ちなみにこの数週間でお互い名前で呼び合う仲には成長した。まあ、箒は篠ノ之って呼ばれるのが嫌いらしい。だから向こうから言ってきたんだよね。

 

「どんなやつなんだろうな」

「むっ…気になるのか?」

「ん?少しは」

「ふん…」

 

 あーあ、拗ねちゃった。こうしてみると箒もよっぽど分かりやすいな。それでも気づかない一夏の方がもっとすごいけどね。

 

「一夏さん、来月のクラス対抗戦に向けて、より実戦的な訓練をしましょう。もちろん光輝さんもお付き合いくださいな」

 

 今ではセシリアは僕たち二人のコーチみたいな立ち位置だ。正直言ってありがたい。

 

「おう、サンキュー、セシリア。光輝もよろしく頼むよ」

「織斑君、頑張ってね」

「フリーパスのためにもね」

「ケ~キ、ケ~キ」

 

 御三方からの熱い声援なんて羨ましいね。三分の二は景品目当てらしいけど。

 

「今のところ専用機持ってるのは四組の代表と一夏だけなんでしょ?マジでいけんじゃない、一夏」

「おい、光輝。プレッシャーかけるなよ」

 

 なんて言いながら笑いあっていると珍入者が現れた。

 

「その情報古いよ」

 

 ん?何だろう?めちゃくちゃ聞いたことある声なんだけど。

 

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

 

 腕を組み、片膝を立ててドアにもたれていたのは―

 

「「鈴!?」」

 

 僕と一夏の中学時代の同級生〝凰鈴音〟。驚きすぎて一夏とハモっちゃったじゃんか。変わんないなー。ツインテールなのも、胸が小さいのも…。

 

「死にさらせー!!!」

「グ、グフッ」

 

 ドアの位置からドロップキックだと!?身軽なとこも変わってないな。(ゲホ、グホ)その時スカートの中身が見えたのは決して言わない。ちなみにピンクの縞々(バタッ)ここまでの思考、およそ一秒。

 

「中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」

 

 頼むから僕の上で話すなよ。そしてみんなスルーなの!?僕ドロップキック、もろに喰ったよ。

 

「何かっこつけてるんだ?すげえ似合わないぞ」

「んなっ…なんてこと言うのよ、アンタは!」

 

 一夏この状況でこいつを刺激したら…。

 

「痛い、痛い、悪かったから、鈴、どいて」

「あっと、ごめん、ごめん」

 

 ああ、死ぬかと思った。

 

「おい」

「何よ!?」

 

 バシンッ!聞き返した鈴に痛烈な主席簿アタックが入った。

 鈴、お前のことは忘れないよ。ざまあみろ、とか思ってないよ。

 

「SHRの時間だ。教室に戻れ」

「ち、千冬さん」

「織斑先生と呼べ」

 

 鈴に記念すべき二回目の指導(物理)が入った。

 

 

 

 

 

 

「待ってたわよ。一夏、光輝」

 

 どーん、って効果音でもつきそうな勢いだな。

 

「とりあえずそこどいてくれ。食券出せないし、普通に邪魔だぞ」

「う、うるさいわね。わかってるわよ」

 

 一夏の冷静な突っ込みも珍しいな。少し鈴が不憫だな。よし、乗ってやるか。

 

「お、お前は噂の転校生じゃないか(棒)」

「よくぞ聞いてくれたわね、あたしこそが噂の転校生、凰―(棒)」

「ラーメンのびるぞ」

 

 二人そろって一夏を睨む。しかもジト目で。

 

「な、なんだよ、お前ら」

「見損なったぞ一夏」

「そこまでか!?」

「あっち、席空いてるわよ」

 

 切り替え早いな。お前に乗ったんだぞ、鈴。

 

「それにしても久しぶりだな。元気してたか?」

「あ、あんたこそたまには怪我、病気しなさいよね」

「どういう希望だよ…そりゃ」

 

 今朝は気が付かなかったけどブレスレットを左腕にしている。鈴の専用機なのかな。代表候補生なら十分にあり得る話だしね。なんて考えていると、おいていかれたらしい。すると、さらにおいていかれていた奴らに捕まった。

 

「光輝!い、一夏とその、あいつはどういう関係なんだ」

「とても親しそうに見えますが…」

 

 箒さん、怖い。マジで怖いから。

 

「一夏、鈴、自己紹介」

「ああ、悪い、悪い。ええっと、こいつは凰鈴音。箒とは入れ違いで転校してきたんだ。箒が小四の終わりに転校しただろ?ええっと、鈴が―」

「小五の頭よ。んで、中二の終わりまで一緒だったわけ」

「あ、ちなみに僕は中学からの付き合いだよ」

「箒がファースト幼馴染なら、鈴はセカンド幼馴染、ってとこか」

 

 おいおい、そのネーミングセンスは酷いだろ、主に鈴が。

 

「篠ノ之箒だ。よろしく頼む」

「凰鈴音よ、よろしく」

 

 火花散ったぞ、今。この状況で昼飯を堪能できる一夏の精神はマジですげえ…。

 

「わたくしの存在を忘れてもらっては困りますわ。中国代表候補生、凰鈴音さん」

「誰?」

「な、イギリス代表候補生、セシリア・オルコットでしてよ!」

「あたし他の国とか興味ないし」

 

 言わんこっちゃない。まあ、鈴に悪気はないんだけどな。性格だからな、これ。

 

「な、な、な…」

 

 怒りで顔真っ赤だな。ゆでだこみたいなんて言ったら殺されるね。

 

「…光輝さん、あとでお話しがありますわ」

 

 うん、そんな気がしてた。せめて林檎にしとけばよかったかな?

 

「一夏。アンタ、クラス代表なんだって?」

「おう、成り行きでな」

「あ、あのさぁ、IS操縦、見てあげてもいいけど?」

「ブフッ」

「こ、光輝さん!?」

 

 こいつを知ってるやつが聞いたらみんなこうなるわ。…一夏以外な。別にこいつ自身はそこそこ、いや、かなり美人だと思うんだが…。単純に似合ってない。

 

「一夏に教えるのは私だ」

「あなたは二組でしょう。敵の施しは受けませんわ」

 

 セシリアまで一緒になって…。

 

「私は一夏に聞いてんのよ、関係ない人は引っ込んでて」

 

 そろそろほっとくのはマズいな。

 

「もしかしたら戦うかもしれないし、そうなったら互いにフェアじゃないでしょ?」

「…むっー」

「頬っぺた膨らませても可愛くないよ」

「うるさいわよ、馬鹿」

 

 可愛くないわけではないけどね、似合ってないからさ。…痛っ、蹴るな、蹴るな。

 

「鈴、日本に帰ってきたってことは店やるのか?」

「…お店はやらないんだ」

「何でだよ。親父さんの料理久々に食いたいのに」

 

 一夏、お前は勇者か。そうじゃなきゃ馬鹿だ。…馬鹿だったな、そういや。

 

「そ、それよりも…さ、えっと…今日の放課後、時間ある?」

「生憎だが、放課後は訓練なのでな、埋まっている」

「…え、あ…そ、そうなの?」

 

 やっぱりまだ禁句なんだ。当たり前だけど。仕方ない、ここは鈴の味方してやるか。

 

「訓練の後なら空いてるでしょ?一年ぶりの再会なんだ、それくらいの時間はつくれるよ」

 

 そう言って鈴に目配せすると恥ずかしそうに笑いやがった。その顔が一夏の前でもできればいいんだけどな。

 

「じゃあ、待ってるわよ、一夏」

 

 そう言って去っていく鈴はどこか寂しそうにも見えた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。