光り輝くその瀬戸際に   作:いろすけ

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茜色の約束は…

 

「厄介ですわね」

「それはどうも」

 

 只今、僕たちはアリーナで模擬戦中だ。セシリアはビットを使い、多角攻撃をしかけるが、僕はそれを全方位式バックラー、《アイギス》で受け止める。

 

「では、これならどうします?」

 

 セシリアが放ったミサイルが迫る。しかし、アイギスは球状のバックラー。僕はその中に入っている状態、つまり死角はない。ちなみにエコロケーションにより、盾で視界を覆われていても問題ない。

 

「無駄だよ」

「ですが、光輝さんもそれでは攻撃できませんわ」

 

 意識を集中すると、アイギスの背部のみが開く。それと同時に僕はアイギスを前方に蹴り飛ばす。

 

「なっ!?」

 

 耐久力が異常な盾、すなわち砲弾にも等しい球体がセシリアを襲う。

 

「ここだっ!」

 

 間髪入れずトライデントの片方を投げつける。これは以前、代表決定戦で使った技だ。しかし、一緒ではない。トライデントにプラズマエネルギーを装填させ、放たれた一撃。それは言うなれば稲妻のよう。

 イメージとしては雷を纏って攻撃力と速度を上げた、って感じ。代わりにシールドエネルギーを消費するからあんまり多用はできないんだけどね。

 しかし、セシリアは読んでいたのか体勢を崩しながらも避けてみせた。

 

「やるね、けど」

 

 予想通り!

 瞬間、背部スラスターにプラズマエネルギーを装填。爆発的に加速した。その速度は代表決定戦のときとは比べものにならない。

 

「イ、インターセプター」

 

 慌てて武器を展開するが遅い。近接戦ならいける。そう確信したときセシリアが円状制御飛行を行っているのがわかった。

 サ、サークル・ロンド!?やば、曲がれない。

 気づいた時にはもう遅く、僕はアリーナのシールドに突っ込んでいた。

 

「だ、大丈夫ですか?光輝さん!」

「やっぱり、強いね、セシリアは」

 

 代表候補生、恐るべし。

 

「光輝さんも強かったですわ」

 

 いやー、お世辞でも嬉しいね。

 

「光輝―、大丈夫かー?」

 

 《白式》を纏った一夏と、訓練機《打鉄》を纏った箒が近づいてくる。

 

「全く、出鱈目にも程があるぞ」

 

 本当だよ、あの状態でサークル・ロンドなんてできる、普通?

 

「光輝…お前のことだ」

「ええっ!?」

「エコロケーションなんぞ、出鱈目以外なんだと言うのだ。挙句の果てには盾まで投げよって」

「確かに…」

「ですわね」

 

 僕より強い二人には言われたくないんだけど。

 

「大体、曲がれないスピードというのも、ふざけている」

 

 あ、これ長いやつかな?

 

「いちかー」

「へいへい。箒、もう時間もアレだし今日はここまでにしようぜ」

「…うむ、仕方ない」

 

 こういうときに一夏は使えるよね。

 

「光輝、あとでなんか奢れよ」

「…現金なやつだ」

 

 そう言うとセシリアは笑ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 今日の特訓を終え、僕は一夏と控室にいた。

 

「一夏、光輝、お疲れ様」

「おう、鈴、サンキュー」

 

 飲み物、それにタオルまで用意してくれるなんて、嬉しくて涙が出るよ。

 

「待っててくれたの?」

「ま、まあ、呼んだのあたしだし。…待たせるのも悪いじゃない」

 

 珍しく素直だな。逆に気味悪いわ。

 

「あたしがいなくて寂しかった?」

「そりゃ、友達がいなくなるのは大なり小なり寂しいさ」

 

 さすが唐変木オブ唐変木ズ!

 

「そ、そうじゃなくて」

「ん?」

「はあぁー…」

「どうしたんだ、光輝?」

 

 溜息くらいつきたくなるよ、そりゃ。

 

「でも鈴が転校してきてくれてよかったぜ」

 

 お?

 

「話し相手が少なかったからな。な、光輝」

「頼むから僕にふらないで」

 

 鈴が怖いからさ、滅茶苦茶ね!

 

「い、一夏!」

「どうした?」

「あのさ、約束……覚えてる?」

 

 僕いるよ!?いや、アドバイスしたの僕だし、鈴も承知の上だろうけど。気を遣ってよぉ。

 

「約束?…ああ、あれか!」

 

 僕はさりげなく出て行こうとしたんだけど、次の一夏のセリフで固まってしまう。

 

「毎日、酢豚を…奢ってくれる、ってやつか?」

 

 世界が止まった。いや、比喩でなく、僕と鈴は少なくとも止まったね、一瞬。

 

「な、何よ…それ……」

 

 あ、やばい。そう思った時にはすでに一夏は殴られていた。

 

「な、何すんだよ、光輝!?」

 

 鈴の代わりに殴り飛ばしていたよ、自分でも知らないうちに。

 

「流石にそれはないよ、馬鹿」

 

 正直、怒鳴る気にもなれない。呆れたように一夏を一瞥した後、鈴に視線を向ける。

 

「女の子との約束を覚えてないなんて最低!」

「はあ?覚えてただろ?」

「約束の意味が違うのよ、意味が!」

「意味ってなんだよ?」

「そ、それは…」

 

 聞くなよ、それ!…こいつ、救えない馬鹿だ。

 

「と、とにかく謝んなさいよ。馬鹿、間抜け、朴念仁、唐変木!」

「なんで謝らなきゃいけないんだよ、この貧乳」

 

 お、お前!?

 瞬間、鈴はISを部分展開。そのまま一夏に向けて――

 ギリギリのところで割って入る。ただしこっちは素手。鈴が本気だったら今頃僕は亡き者だよ。

 

「鈴、ちょっと落ち着きな」

「…こ、光輝」

 

 受け止めた左腕は赤く腫れ上がっていた。ヒビ入ったかな?…あはは。

 

「光輝、大丈夫か?鈴、お前!」

「一夏、僕のことは大丈夫。それより鈴のこと考えてやりな」

「な、どういうことだよ?」

 

 こいつも大概だな。まあ、知ってたけど。

 

「光輝、ごめん。あたし、そんなつもりじゃ…」

 

 頼むから泣くなよ。一夏は意味わかってないし、鈴はこの有様。全く、世話のかかるやつらだね。

 

「一夏は約束の意味が知りたい。鈴は一夏に謝ってほしい。って、ことでいいかな?」

「「…」」

 

 無言の肯定と取らせていただく。実際そうでしょ、多分だけどね。

 

「なら、こうしよう。来月のクラス対抗戦で勝った人の言うことを何でも聞く、ただし一つね」

 

「なんだよ、それ」

「いいでしょ、その方が丸く収まりそうだし。それとも何?一夏、負けるの怖い?」

「そういうわけじゃないけど」

「じゃあ、決まり。鈴もいい?」

「光輝、あたし…」

 

 やっぱ、こいつは泣き顔より笑顔がいい。ったく、人が気を遣っているんだから泣くなよ、頼むからさ。

 黙って鈴の頭を撫でる。

 ここまで醜態晒したんだ、今更恥ずかしいなんて言うなよ?

 

「わかった、それでいい」

 

 うん、なんとか纏まったかな?あとは二人が本音で話し合えるかだね。僕の役目はここで終了。本当は最後までとりもちたいけど、そこは自分たちでなんとかしないとね。

 

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