下手で稚拙な文章ですが、それでもよろしければどうぞ
たとえばこんなクラス代表戦 前
「はぁ……」
織斑千冬は軽く息を吐いた。
白騎士事件から数年、高校を卒業した彼女はインフィニット・ストラトス専門学校、IS学園の教師として生活していた。
朝早く、しかも職員室で彼女がため息を吐いた原因は、成人後の女性が悩む異性との関係ではなく、教え子であり、彼女の実の弟である織斑一夏の件だった。
女性にしか扱えない『兵器』ISを唯一使うことが出来る男として女性ばかりのIS学園に入学した彼は、入学早々フランスの代表候補生、セシリア・オルコットと諍いを起こした。
最初は口喧嘩程度だったのだが、自分の言った言葉が原因で、IS同士の決闘になってしまったのだ。
結果的に、一夏はセシリアとほぼ互角の戦いを繰り広げ、敗北した。
その後、お互いを認め合い、謝罪したおかげでその件は治まったのだが、何故自分は戦闘を促すような事を言ってしまったのだろうか。
弟を馬鹿にされたことが原因なのか、それとも自分が戦闘を求めているという可能性もあるかもしれない。
その答えをだせずに居るのが一つ、それともう一つ原因があるのだ。
これも織斑一夏に関する事で、転校生であり彼の友人であった中国の代表候補生、鳳 鈴音(ファン インリン)と軽い口論になった。
その程度のことであれば、別に構わないのだが、鈴音は転校してきたクラスの代表になりたいと言ったのだ。
しかし、すでにクラスの代表は入学から数日ほどで決定されており、変更は難しいのだが、それを鈴音は半ば無理やりやってしまった。
自分の受け持つクラスではないが、その原因には自分のクラスの生徒である一夏が関わってしまっている。
千冬は自主的に責任を取り、鈴音のクラスの代表候補生の変更を手伝ったのだ。
その程度であれば普段は苦ではないのだが、セシリアの件の対応を終わった直後にその手伝いをしたのでかなりの疲れが溜まっているのだ。
その二つが主な原因だった。
若干寝不足気味な頭を目覚めさせるの為に、コーヒーを胃に流し込む。
呆けているわけにもいかず、授業で使う資料をまとめているとふいに声をかけられた。
「おはようございます、織斑先生」
「ああ、山田君か、おはよう」
挨拶をしたのは同じクラスの副担任である山田 真耶(やまだ まや)だった。
あまり要領がよくないようで、彼女のフォローをすることも多いが、失敗に負けないほどやる気のある、いい教師だと千冬は認識していた。
「織斑先生、ちょっと疲れてません?」
「ああ、資料の整理をしていて、あまり寝る暇が無かったんだ」
不安そうに尋ねる真耶に、若干曖昧ながらも答える。
さすがに正直に理由を言うわけにはいかないだろうから。
「大変ですねー、何か私に手伝えることがあれば言ってください」
「そうだな、なら、コーヒーを淹れてもらえないか?」
「分かりました!」
真耶は返事をすると、職員室に備蓄してあるコーヒーを自分の分も含めてつくり始めた。
そうしている間に他の教師も入ってくる。
「……ん?」
真耶の淹れたコーヒーをすすりながら、インターネットを眺めていると、彼女の目に、一つのニュースが流れ込んできた。
「ドイツの軍事施設に襲撃?」
ぽつり、と千冬はつぶやく。
そのニュースは、ドイツの軍事施設、それもISの研究施設が破壊されていたらしい。
「あれ、織斑先生知らなかったんですか?」
隣で同じく資料の整理をしていた真耶が、不思議そうにたずねる。
「ああ」
「えーっと、私もつい昨日知ったんですけど、ドイツのIS研究施設が襲撃されたみたいです。それも結構前の話らしくて、世間に公表しなかったのは、犯行がかなり手際がよくて、研究員全員が殺された上に監視カメラも全部破壊されていたので、まったく状況が分からなかったらしいです」
「なんだと!?」
千冬は声を荒げて真耶に詰め寄る。
いつも取り乱すことの無い彼女の慌てように周囲の教師が驚き、千冬に注目する。
千冬がここまで焦った原因は、彼女の職歴にあった。
彼女は、とある理由で一時期ドイツで軍の教官をしていた。
その時の教え子が巻き込まれたかもしれない、と言うことが、彼女をいらだたせていた。
「お、落ち着いてください織斑先生!」
「被害は? 巻き込まれたのは研究者だけか?」
「え、えっと、たしかISが一機行方不明になったとか……くらいで研究者と警備員以外は被害は特に無いみたいです」
その言葉を聞き、ホッと安堵の息を吐く。
「すまない、取り乱してしまったな」
「いえ大丈夫です、でもどうしてそんなに焦っていたんですか?」
「いや、ちょっと知り合いがドイツにいたからな」
真耶はその言葉に一応納得したようだ。
千冬は落ち着きを取り戻すと、周囲から注目されているのに気がつき、その理由を簡単に説明しはじめた。
クラス代表戦から、数日前の朝の出来事だった。
「一夏、いまさら謝ったって許してあげないわよ」
「別に悪いなんて思ってないことを謝る必要なんて無いだろ」
クラス代表戦一回戦、戦闘開始直前に鈴音に言われた言葉に、一夏はそう返した。
思えば、少し苛立っていたのかもしれない。
つい最近まで知らなかったISの知識を無理やり覚え、篠ノ之 箒(しののの ほうき)の剣道の練習を手伝い、セシリアとのISの練習を毎日ほぼ続けて行っていたため、かなり体が疲れていたのだろう。
そんなことを考えながら自分の専用機、白式を装着すると、織斑一夏は戦場へと飛び立った。
戦闘は拮抗していた。
鈴音の専用機であるIS、甲龍の兵器『龍砲』は空間自体を圧縮することで砲身とし、衝撃を発射するという中~遠距離の武器で、特徴としては弾丸と砲身を視認することが出来ない。
雪片弐型という刀型のブレードしか武装の無いこちらとは違い、どの距離でも対応して回避の困難な攻撃を仕掛けることが出来るのだ。
「くっ!」
紙一重で横を通り抜ける龍砲をかわし、どうにか近づこうとする。
しかし相手は自分とは違い、ISの専用機を手にすることが出来るほどの実力を持っている。
その経験と武装の差が、徐々に二人の残りエネルギーに差をつけていった。
「ほらほら、この程度でへばってんじゃないわよ!」
容赦なく連発される龍砲を、何度か回避し続けたがそろそろ限界が来たらしい。
すでに何発か直撃を受け、さらに甲龍の近接兵器に牽制されてうかつに近寄ることも出来ない。
「こうなったら……」
どうやら、こちらには余り手は残されていないらしい。
白式の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)、零落白夜は自らのシールドエネルギーを消費し相手のシールドやエネルギー兵器を無効化する兵器である。
それを使えば劣勢の今でも五分五分程度に戻すことが出来るかもしれない、あくまで成功すればの話ではあるが。
しかし零落白夜は雪片弐型を変形させ発動するものであり、こちらの攻撃を当てられなければ意味が無い。
もし、外してしまえば自分には勝ち目が無くなるだろう。
そう考えた時、鈴音はこちらに向かって突っ込んできた。
彼女も自分と同じくこの先頭の膠着状態に痺れを切らしたらしい。
相手がわざわざ射程内に近づいてきてくれたのだ、このチャンスを逃してどうする。
そう自分を叱咤すると、一夏は雪片を握り直すと、龍砲を撃ちながらこちらへと突進する鈴音に向けて、瞬時加速(イグニッションブースト)した。
「……なっ!」
先程まで逃げ回っていた一夏が急にこちら側に特攻したことで、鈴音は僅かに硬直してしまった。
それが、勝敗を分けた。
零落白夜を発動し、かなりの速度で鈴音へと加速する一夏はもう10メートルほどまで近づいており、もはや鈴音には回避する術はなかった。
次に来るであろう衝撃を覚悟し、鈴音は目を閉じ歯を食いしばる。
「うわあああああ!!」
しかし、次に鈴音を襲ったのは斬撃では無く、空気を劈く轟音と一夏の悲鳴だけだった。
「えっ?」
呆気に取られた鈴音は、少しづつ瞼を開ける。
しかし視界にうつったのは、もうもうと発生し続ける土煙だけだった。
鈴音も、一夏も、千冬も、観客も、皆何も言えなかった。
今、何が起きてるのか誰一人理解できなかったからだ。
一瞬遅れて異常を知らせるアラームが鳴り響く、それはアリーナに張られているシールドが破壊された合図であり、同時に何者かがアリーナ内に侵入したことを知らせるものであった。
そして、その異常性に気がついた観客が悲鳴を上げ、混乱を周囲に撒き散らす。
その様子を別室で見ていた千冬は、素早く近くに居た他の教員に声をかけ、観客の避難をさせる。
呆気に取られていた教員達も千冬の指示に従い、混乱を収束させようと動き出した。
「なっ……」
千冬がアリーナ内の映像を見る、観客の悲鳴をバックに現れた侵入者は――
「何故、あいつがここに居る……?」
忘れることも無い、数年前『白騎士事件』と呼ばれる束が起こした事件で、自分と戦った、あの人型兵器だった。
今回の話は前後に分かれてます。