修学旅行から帰って来ての通常授業が始まる。いつも通り日の昇っていない時間帯に起きてジョギングし、学校に向かう。
修学旅行にてカルマくんに色々注意された。そういう意味ではいつもとは違う意味で迎えなければ行けないのだ。どう学校で過ごしていけばいいのだろうか。どう接していけばいいのだろう。いつも通りを変えるにはどうすればいいのか、悩んでとりあえずいつも通り学校へ行った。
のだけれど
「……?」
おんぼろの木造の校舎にあるいつもの教室。私の席の隣に正体不明の黒く四角い何かがあった。……なんだこれ。
もしかして、と思って携帯を出し電源をつけるとメール受信箱。1通のメールを開く。
そのメールは烏丸先生からだった。
それは今日、転校生が来るということ。そしてその転校生の外見に驚くそうだ。
……これのことなのだろうか。本当に?流石に時間的には先生らは来ていないし、クラスメイトに確認は出来ない。
つまり人じゃない?いや人じゃないとして、一体なんなんだ、これは。
席にも座れずにそれの前にそのまま突っ立って考えているとガラッと教室の引き戸を開く音。
「おはよう」
「おはよー!」
片岡さんと倉橋さん。まず最初に目に入ったのが私だったようだが、私に駆け寄る途中で表情が変わる。目線は先ほど私が見ていたそれに。
「……なにこれ」
「私も聞きたい」
答えてくれる人は存在しない。そうして数秒後男子5名が入って来る。まぁ私たちが見ている視線に釘付けで。当たり前だけど。
その物に圧倒されていると突然、小さい画面と思われる場所が起動した。それはピンク色の髪に同じ制服を着ている可愛らしい女の子。若干それは画面の問題上青掛かっている。どこからか、その物から電子的な声が聞こえた。
「おはようございます。今日から転校してきました、自律思考固定砲台と申します。宜敷くお願いします」
返事を待たずに画面はまた黒へと戻った。……転校生は、機械?転校生に、機械なんてありえるのかなとふとみんなを伺えば衝撃を受けたような表情。……どうやら普通では、ないらしい。
どうやら彼女は機械と言ってもただの機械ではないようで、ちゃんと固定砲台という武器であることが今日一日の学校生活によって身に染みた。
授業中、あれの横の側面からたくさんの銃を出す。そして先生を暗殺する。何度もそれを行い、分析していく。先生というモンスターは授業中絶対教室から出て行かない。そこを狙ってどんどん自ら分析し、最終的に暗殺するということ。
まぁそれだけならいいのだが、発砲した弾は殆ど乱射。私は位置的に問題はないが、みんなに当るし授業中はずっとその暗殺で全く授業が進まない。
そして乱射した弾の後始末は私たちということで
「や、やっと終わったぁ……」
「……これ、何個くらいあるんだろう」
先生はその弾に触れない。自立思考固定砲台は暗殺以外何もしないということで、生徒が授業と授業の合間の少ない時間で全て片付ける。骨が折れる作業なのだ。もうこれで6時間目を迎えたという頃にはみんなうんざりと疲労の溜まった表情になっていた。
ちゃんとした暗殺者としての生徒、それでも機械。先生の触手を破壊したところで生徒たちの不満は消えずに翌日は拘束するという行動に出た……。
「暗殺者が如月みてぇな奴だったらマシなんだけどよ」
ガムテープを自立思考固定砲台に投げつけた寺坂くんはそう言った。正直寺坂くんには嫌われてると思っていたので避けていたのだが、マシと評価される。マシ……この場合はいい評価で合ってるよね?そもそも私はあまり暗殺に気は進まないのだけれど、いつかは
接触、しなければ……そうとも思えたけどそうすればこのクラスに私はいないのか。
そのまた翌日。これまた訳の分からないことを目の前にされる。
「如月さん!いつもお早いですね!おはようございます!」
「え……と、はい……おはようございマス……」
満足げに自立思考固定砲台の隣に立つ先生。
その機械の画面の幅が大きくなり、表情豊かな自律思考さんが満面な笑顔で表情のある声で訳の分からない朝を出迎えてくれた。
……正直熱でも出そうなほど急激な変化と異常に頭を抱えたくなった。
自立思考固定砲台はその明るい性格と可愛さのある人柄、そして色んな人と同時に色んなことをできるクラスの愛されるキャラへと変わった。その影響で先生の財布に大ダメージを負い、貧乏人な生活を送ることになったらしいが。
愛されるそれに名前を付けられた。自律の律するという文字を取って律。
「そうでしたか!如月さんは異世界から……道理で察知出来なかった訳です」
「察知?」
律のその言葉に渚くんは反応する。察知が出来なかった。つまり気付かれなかった?
「はい、殺せんせーもクラスの皆さんも人間として判断出来ます。そうでなくても動物として判断もできるのですが、そのどれにも如月さんにあったデータはありませんでした」
「あぁ……うん、私の先祖は人間でも猿でもないから……」
ではどのような?という律の問いに
「正確に言うと
みんなの平均温度は36℃ほどが平均だろうが、私は34℃未満。私が36℃になれば大熱で倒れるほどなのだ。
「妖ってどういうやつなんだよ?」
「……妖は妖としか……」
妖は魔物とは違うし、そもそも妖の定義はなんだろう。悩んでいると機械から声が聞こえた。
「妖怪の類ですね、あるいは幽霊などの認識になるかなと」
妖怪……こっちの世界ではそう呼ばれているのか。そう思っているとみんなからの視線に気付く。
「……なに?」
「えっと……つまり、幽霊ってことなのかなー……って……」
「死んではいないから……」
幽霊なんて無害なのに、なぜそこまで怯えるのだろうか。そう思いながらも否定をした。まぁ自分が向こうで死んでることになってるかもしれないけれど。そうすれば私はどうやって生きるのだろうかな。人生やり直すことも可能なのだろうか。
「後もう一つ聞きたいのですが、如月さんの保護者が烏丸先生になっているのですが本当ですか?」
「違うと思うー」
保護者……烏丸先生になっていたのか。でもまぁ私のことを知っているのは烏丸先生と先生だし、国家機密が保護者っていう訳にもいかないんだろうな。
「では別に家族はいるんですか?」
家族……
「まぁ異世界だろうけど」
「いないかな」
向こうの世界にも家族と呼べる人はいない。家族ってどういうものなのか、よく分からないけれど違う言い方があるんだ。自分を生んだ親の顔も兄妹の顔もよく覚えていない。里で覚える事を覚えて、そっと里から消えた。
私の言葉にどこか雰囲気が重くなり、そのまま違う話へと変わっていくのに気付かなかった。
「素晴らしい!律さん、貴方は」
「はい!自分の意志で
翌日、律は所有者によって先生が追加した機能殆どを暗殺に不要とし消去された。けれど律自身がそっと隠し込んでいたと言う。
ちゃんとした感情も意志もない機械が親に逆らう。まるで私は機械以下の存在なんじゃないのか。そうどこか思えてしまう。みんなが喜んでいる中、私はどうも顔を上げれない。
気持ち悪い、そんな不快感を覚えた。
それは以前感じたような気がする感覚。
__さっさと食べろ、それを食べたらクナイの使い方だ
__……はい
__そいつを殺すんだ
__ひ……い、嫌だ……助けてくれ……!
__……でも
__殺さなければお前が死ぬぞ
あの時の選択から間違っていたのだろうか。あの時、もし嫌だと言えば。嫌だと言えるようになっていれば私はちゃんと生きていけたのだろうか。
なんで私は忌み子だったんだろうな。みんながその理由で避けていたのは知っていた。こんな生きる意味も、人を殺す事しかできなかった癖に、死にたいと思った癖に。
利き手の手を広げればそれはどこか微かに震えている。そうであってほしかったが、そんなはずもなかったのだ。