目が覚めた時、そこはどこか白い室内のベッドのような物の中に私はいた。……結局夢、だったのか。そう思うと突然拳が熱くなった。
この感覚は……覚えがあると思って拳を開いてみると、赤い石のネックレス。
「神様、か……」
自嘲の笑みの呟き。目頭が熱くなって、握っていたものごと一緒に拳を目に押し付ける。色々世界は巫山戯過ぎている。
まだ状況確認も、情報すら得られてない中で勝手に現れた神様ごときは言うだけ言って押し付けて。確かに神様はいたという証拠を残し、私はここにいるのだ。今まで何度も祈った。今まで何度も祈っている人たちを見てきた。何度も何度も見て、そんなもの叶えてくれる者なんていないと既に悟ってしまった私に現れた、どうしようもなく絶望が好きな神様。今までの私の人生もとんだ茶番じゃないか。
これが神様の望んでいた絶望なのか。上体を起こし、反対の手で目から流れて来るものを触れようとするがそんなもの流れてもこない。
「□×●●」
「ッ!?」
突然すぐ近くから感じた気配。手元に武器はなく、警戒態勢を取るしかなかった。恐らく倒れたときに押収されてしまったのだろう。
今度はどこかヤバいと思った。それは恐らく人間ではない。聞き慣れない言語を相変わらずそいつから発しているのだろうが黄色い球体らしきものの顔に描かれた口は動いているようには思えない。最早それは人の肌の色でもないし、人の大きさよりも明らかに大きい。そして何より服の布から恐らく手であるのだろう触手らしきものが見える。
これは……
……得に変わった感じはしないけれど、一応話しかけてみよう。
「……言葉、通じます、か」
「!ヌルフフ、はい通じてますよ」
……ぬる?なんだろう、ここの言葉のものだろうか……?翻訳はされてないものもあるのかと納得して受け入れる。
何か……何から聞き出せばいいのか。いやまず、安全だ。
「貴方は敵ですか」
そう言って訳も分からない生物を睨みつけた。敵……もし何か不審な点があれば、効くかどうかは分からないが体術で……。逃げ道はそこの四角い窓らしきもの。頑丈な作りだろうが少し開いているので問題ない。武器は……でも大丈夫だ。ここまでみっともなく生きているのだ。最悪誰かを脅してでも。考えが纏まったその瞬間に生物は声を発した。
「大丈夫ですよ、私はあなたの先生です」
「……は、ぃ?」
先生?意味の理解が追い付かないそのとき扉が開いてちゃんとした人の、男性が入ってきた。入ってきた男性はこちら、主に生物の方に目を見開いた。
「貴様!何故ここにいる!」
「まぁいいではないですか、これから担当する生徒の心配くらいさせてくださいよ烏丸先生」
その、からすま先生と呼ばれる人はおもむろに緑色のナイフのようなもので生物を斬りつけようとするが狭いこの部屋の中、かわす場所もなくどこからか取り出したハンカチのようなものと一緒に触手で挟む。状況の、判断が追い付かない。この人たちは敵同士なのか。生物は私の先生と言って、つまり敵ではないということだから……?
「このナイフも手入れして差し上げますから。その間にこの子の説明でもどうでしょうか?」
「くそっ……すまない。気分は大丈夫か、言葉は通じてるか?」
「あ……大丈夫、です」
なだめられたその男性は手に細長い布で包まれた何か……私の
いつの間にか生物はハンカチでナイフを挟みながら決して触手と触れ合わないようにナイフを磨いている。……いつ、窓のそばに椅子を出したのだろうか。先ほどまでなかったと思うのだが。
「……君を助けた人物からは言葉は通じていないように思えた、と聞いたが」
「え、っと……このネックレスを身につければ言葉は翻訳されるそうです」
そう言って首にかかってるネックレスを見せる。
多分、この人に今少しでも嘘をついたらまずいんだと思う。だから、必要最低限の事実を話す。にしたって当然怪しさはあるのだろうが。それでも私の武器を取られていて、尚かつ生物に逃げ道の窓を、男性に扉の逃げ道を確保されている状態では逃げようにも逃げ切れないのだろう。そもそもちゃんと立ち上がることも出来るか分かっていない状態だ。
「……さっきまでそのようなものは持っていなかったようだが」
「目が覚めて、そしたら持っていました」
「確かにこの人は嘘をついてありませんよ、ちゃんと実証済みの監視済みでしたからねぇヌルフフ」
生物は口を挟むようにそう言ってのけた。
……監視、されてたんだ。いつからいたのだろう。この生物はどこまで分かっているのか、それがこちらに理解出来ないから恐い。
「後でまた聞くとしよう。本題に移るが、君は何者だ?どこから来た」
「…………」
「異様な格好であの校舎近くの森で何をしていた?森に入るには校舎の前を通る必要があるが生徒は誰も見ていない、近所の方も見ていない。
おまけに調べてみればどの国にも君の情報は載っていない」
「私は……」
こんなことを言って信じてもらえるのだろうか。私ですらちゃんと確認出来ていない世界。確かにこんな服装を来ている人もこんな生物も私は生まれてこの歳見た事がない。だとしても……こんな私一人の言葉なんて聞いてもらえるのだろうか。
「信じてはもらえないでしょうけど……違う世界から来ました」
「成る程、な」
とても短い納得の言葉に意味が分からなかった。そんな簡単に信じるものなのだろうか。
「とても信じがたいが……君の服の素材なんてこの世界にはない。この抜けない刀も、だ」
「ヌゥ……」
布で包まれた刀を私にも見えるようにすると生物はどこか萎縮した。……多分、鞘から抜こうとしたのだろう。
「それは、他の人には抜けません。
「……ここは剣や銃を持ち歩く事を禁止されている場所だ」
武器の禁止……?何故そんなことを……魔物がいれば人間武器なければ対処出来ない。
「大丈夫なんですか!?そんなことしたら
「モンスターなんて、この世界にこの私しかいませんよ。まぁここ1年は別に誰かに危害を与える気はありませんがねぇにゅるふふ」
何故か、そのモンスターは顔の色を変えた。黄色い顔に緑のしましま模様。……顔の色、こんな鮮やかに変わるモンスター。スライムのようにも思えるけど何かどこか絶対的に違うと思わせる。
ここ1年……どういうことだろう。その言葉に男性は深い溜め息を吐いた。
「君に頼みがある。衣食住全て用意しよう。一切君に負担させない。
その代わり学校に通いこの教師を一年以内に暗殺して欲しい」
何もない私にとっては理想的な取引で。長期期間な依頼、けれど
「教師を、殺す?この生物をということですか?」
「あぁそうだ。こいつは来年の3月に地球を破壊する。この前は月の7割りを破壊し三日月へと変えた」
「殺せるといいですねぇーマッハ20の先生に、にゅるふふ」
「……はぁ」