暗殺する教室で生きていく   作:SiriusSTAR

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自己紹介の時間~2話~

Another side

 

 

 

「ということで異世界の本業暗殺者さんがこのE組でみなさんと暗殺するそうです〜!」

 

ターゲットの隣で怪訝そうに、そして肩を竦めて小さく首を動かし会釈をする女の子の暗殺者。

 

 

 

 

その人はこの間の全校集会が終わった時にサボっていたカルマくんが森の中で見つけてきた。まるで僕たちの世界にはいない、ゲームに出てきそうな姿をした人と不思議な剣。

異様な姿に僕たちは言葉を失った。カルマくん曰く倒れていたところを見つけて、一回目を覚まして話してみると言葉が通じない。で再び倒れたのだと。

 

「全くこんな子がこんな危ないものを持ち歩いて……にゅわぁ!?」

 

そこでもまた僕たちに衝撃を受けた。殺せんせーは恐らくその刀を食べようとしたのだろう。だけれどその刀の持ち手を持った途端、先生の触手は破壊された。そのまま刀は落ちる。

まるで僕たちの持つ対先生用ナイフと同じ。だけれど

 

「なぜだ……!?こいつの効く武器は国が開発したもの以外はないはずだ……!」

 

全員分のナイフと銃を渡してくれた烏丸先生もまた、動揺に陥った。

 

「それ、多分この人にしか抜けないよ。柄を握ってるところ俺見たし。あ、鞘部分は持っても問題ないから〜」

 

けどまぁせんせーの触手が効くとは思わなかったけどねー、と呟くカルマくん。軽やかに言う言葉とは裏腹に右手を握ったり開いたり、何度もそれをしていた。カルマくんもまた、剣を触ったのだろう。そうしてみんなの注目は女の人から刀へと変わった。

僕はなんとなくその刀が禍々しい雰囲気が出ているように思えて、睨みつけた。

 

 

 

あの時とは打って変わって椚ヶ丘中学の女子制服。クラスの人に見られている事が落ち着かない様子で、僕は内心普通の子なんだと思った。

 

「はい、自己紹介を宜敷くお願いしますねぇ」

「き……如月、琴音です……」

 

消え入りそうな声はとても暗殺者の人とは思えなかった。

 

 

 

Another side fin

 

 

 

「ぬぅ、もう少し大きな声で名前を言いましょう!」

 

こう思うと私が学校に入るのはまずかったのではないか。例えばこの服装も、私のいた世界にはない服装で風の通りが感じ易いためどこか落ち着かない。この状況にしても私は今まで人と接することも必要最低限で子供たちが喋っている様子も遠くから見ることしか出来ず、いざ言葉にするのも恐く感じる。今更、こんなことを後悔しても遅いのだけれど。

先生の言葉に会釈で返し前を通る。恐らくみんなが座るような空いている椅子と机の場所、多分私の座る席なのだろうと察し部屋の奥の方へ向かう。

 

「もう元気そうだねぇ。まぁこれからよろしく」

 

隣の席に座る赤い髪の男の子が握手をしようと手を差し伸べてくる。……そういえばこの前初めて会った、烏丸先生曰く助けてもらった人なのだろうか。なんだかその人の笑みが胡散臭く感じる……。渋々無言で差し出した手を彼は受け取り上下に揺らしてその手を離した。

 

「先生無視されて悲しいです……カルマくんに嫉妬します……」

 

教室の隅っこでいつもなら大きい体もこの時は縮こまってめそめそ泣いていた。周りからは元気出しなよーとかめんどくせーと言う言葉が先生に投げかかる。隣のカルマくんとやらは先生に向かって挑発気味に舌を出して笑っている。

 

私は……さらっと1年過ごせてさらっと暗殺終わって、それで元の世界に帰れればそれでいい。その考えにあの言葉が思い浮かんだ。

 

__夢だったらいいのに、アンタァそれで何が救われるのォ?

 

思い浮かんだくせに、その言葉に言い返せる考えもない。数秒してその問いに対する答えが

いつもの日常に戻れればいい

そんな答えだった。

 

 

 

一時間目という授業が終わる合図の鐘の音。感想を言うとすれば疲れた。

赤い石に触れてみる。これは言葉の翻訳だけで決して書き物に関しては影響してくれないことを知っている。入院中は授業が終わった放課後に先生がこっそりマッハ20で来て基本的な文字は教えてもらえたけど(そのついでにもらったばかりのナイフを使ってかわされたけど)。今もまだ基本的な文字は覚えきれてない自分が、当たり前の中にいてそこで勉強というのも酷なものだと内心思う。深い溜め息も出てしまう。

 

「きっさらぎさーん!」

 

う、わあ。その言葉はどんどんと席の周りに人の群れが出来て行く。

 

「どう?勉強はかどってる?」

「あ、あ……あんまし……?」

「聞いたよー文字まだ覚えている途中でしょ?纏めきれなかったらノート貸すからいつでも言ってね」

「あ、う、ありがと、う」

 

「随分と緊張しきってるねぇ」

 

席の後ろから、主に私の顔の横に顔を出して来たカルマくん。人の近さに、多さにやっぱりどうにも慣れない。どうすればいいのか本当に分からなくて言葉がついたどたどしくなってしまう。翻訳されているにも関わらず、だ。

 

「暗殺者って感じはやっぱりこう見るとしないよな」

「うんうん普通にシャイな女の子って感じ」

 

シャイ……そんな言い方をされてしまった。結構みんな同じような感じで私を見られているのだろうか。

人は集まって話しかけてくれるもののちゃんとした名前もまだ分かっていなくてそれが気になってしまう。そもそもちゃんとした会話が出来ている気もしない。話しかけてくれた言葉に相づちか感想を言うくらいで。

 

「ねえ、如月さんのいた世界ってどんなところだった?」

 

水色の髪をした男の子がそう聞いてくると皆気になっていたようで、私も聞いてみたいーとかそんな反応がちらほら。

 

「どんな……ど、どういうことを言えば……」

「じゃあ武器持ってたけどやっぱりなんか倒さなきゃいけないやつとかいた!?ゲームにでてくるような!」

 

倒さなきゃいけないやつ……?げーむにでてくるような……?意図や意味が分からなくてどうにも返事がしづらい。

 

「馬鹿前原。そんなん言っても如月には通用しないだろ?」

「まぁぶっちゃけて言うと殺せんせーみたいなモンスターのことだよ」

 

カルマくんの模範解答は分かり易いしありがたいけど両肩に体重を乗っけてくる……。重いし痛い……けどそれを言うタイミングが分からない。

 

魔物(モンスター)ならいるよ……最も先生みたいに友好的で理性と知識兼ね揃うモンスターは初めて見たけど……」

「おぉ!やっぱりいるのか!倒したりするのか!?」

「そりゃ……倒さないと殺されるし……」

 

前原、と呼ばれた人はやや興奮気味に、いや多数の男子が興奮気味に思える。私の思う想像の世界がこの世界のように、彼らもまた世界に憧れるようなものなのだろうか。魔物がいない、武器も必要ないこの世界は私にとって不思議な感覚で、みんなに保証されてる安全が少し羨ましく感じる。

それでも向こうの世界とこちらの世界の会話の輪というものなのだろうか、同じように広がっているように思える。これは私が遠目で見ていたものと同じなのだろうか。

 

「あ、殺されるだけじゃなくて町にも入って来られると武器を持ってない人とかもいるし……後は荷物だったり食料を盗まれたり」

「や、やっぱ世界違うっていうなんか現実味とか実感を感じる……」

「如月さん暗殺者なんだよね?」

「えぇと、まぁ……」

 

メモを持ってペンを持って私に聞いてきた言葉。

こんな簡単に人に暗殺者だなんて聞くのかとどこか違和感を感じる。それもこのE組だからなのだろうか。明るい、殺意にどこか恐さも感じる。これがこのクラスの特徴……。

 

「どう?殺せそう?」

「どう……だろう」

 

先生の暗殺のことだろう。入院中はまだ一回も一撃を当てられてないけど。そもそもマッハ20というのも非現実に思える。というかマッハ20がどれくらいなのかもよく分からないし。

 

「背後から回っても早いんじゃ逃げられるし、そもそもあんまり情報がないから……」

 

いつもやっている暗殺方法は影に隠れ背後に忍び込み一撃の急所を狙う。基本はそれだし、人混みが多い中でもそれは実行出来るけど、自らターゲットと言ってくるものなんて見た事がないし経験がない。あそこまで曝け出されてしまうとどうにも……

 

「如月さんが持っていた剣?触手一本やったよね」

「え?」

「あ確かに!あれなら()れそう!鞘から抜いた状態じゃ受け止めようがないし!」

「じゃあ今日それで決行してみようぜ」

「ご、ごめん、今日妖刀(ようとう)持ってきてない……」

「じゃあ仕方ないけど後日かぁ……」

「ま、それまでにちゃんと計画を練ろうぜ!」

 

どんどん言葉が交わされる空間の中で、私は完全に違う事を考えていた。やっぱり、あの先生刀を抜こうとしたのか……。

みんなも刀を警戒しなきゃいけないことを知ってる。そうだとすればここに来て、最初に触ったのがあの先生。警戒した方がいいのかな。あの先生が暴走したら……それこそ世界が崩壊するんじゃ……。

 

「ね如月さん、渚、律儀に殺せんせーの弱点をメモってるんだよー」

「茅野……いつか役立てるかもしれないでしょ?」

 

声を呼びかけられ考え事を放棄する。水色の髪の子を渚……くん?緑の髪の子を茅野ちゃんか。2人は随分仲が良さそう。

弱点のメモかぁ。確かに情報に役立つかもしれない。

 

「見てもいい?そのメモ」

「あ、うんいいよ」

 

そう言って渡されたメモ。渡されて気付くけど読むのは難しい。翻訳されてないから、文法とかそういうのも分からないのだ。

未知の文字に数秒睨みつけて降参の言葉。

 

「ご、ごめん……読んでください……」

「あはは……えっとね……」

 

未だノートも授業で聞こえた言葉は向こうの文字を使う事もある。本当に困る。今まで色んな言語や文字を小さい頃に覚えさせられたけど、どの文字とも全く違う感じの文字なのだ。先が思いやられる、と思わずぼそっと呟くと後ろから

 

「あーそろそろ中間テストが始まるし如月さんは大変そうだねぇー」

 

その他人事のようなカルマくんの声。いや確かに他人事なのだろうけれど。それにしてもちゅうかんてすと、というものがどんなものなのかよく分からない。今日の放課後は先生に勉強を教えてもらおうか……。テストというのはなんとなく試練、みたいなものだと自己認識をしている。勉強の試練。

 

完全に私の頭から妖刀(ようとう)や暗殺のことは抜けていた。

 

 

 

 

 

「確かに如月さんはみんなよりも大変な状況下で勉強をしなければいけませんねぇ」

 

放課後、早速先生の元に向かった。勉強熱心と触手で頭を撫でられて私の席で今日の授業のノート内容を見せていた。

そのノートはもちろん、全てが全て追い付かずところどころ文字が抜けていたりする。まぁいろんな理由があってノートをとったりするのが遅くなるのだけれど。

 

「この文字はなんと読むのですか?多様されているようですが」

「あ……えっとこちらでいう数式の累乗根です……。どうにも記号覚えられないしで……」

「ふむ……こちらのノートは」

「忍者、です」

「にゅる?“さむらい”ですよこれは」

 

侍、とその場に書かれてそれ以降忍者という言葉は出て来なくなった。ちゃんと侍と聞こえるようになる。

時々このように完璧に翻訳がされきれてない。困った事に同じ言葉でこちらとあちらでは聞いてみれば意味が違ったということもある。

休憩の雑談でサムライについての話を出してみた。

 

「私のところじゃサムライは武士じゃなくて妖力(ようりょく)を扱う人です……なんか、めんどくさいですね……」

「忍者は密偵、暗殺などを行う人たちですね。戦国時代に影で活躍されていました。

悩める如月さんにアドバイスです。同じ言葉でも全く違う言葉だと認識するのです」

 

一本の触手の指を立てて落胆する私にそう言ってきてくれる先生。……暗殺対象と言ってもちゃんと教えてくれるから不思議に思える。

こんな状況でもナイフを刺そうとしてもかわしたりするんだろうな、と考える。

 

「簡単に言いますね……」

「そうですねぇ、いっそのことここにいる間は向こうの言葉をリセットしてはどうでしょう」

「簡単に言いますね!」

 

今までそれで生きてきてしまったのだから無理なものは無理なのだ。早く慣れてしまうのがいいのだけれど、そんな上手くいかないんだろうなと思った。深い溜め息が漏れる。一定時間が経ったためペンを机の上に置く。

 

「殺せんせー数学教えてー!」

「はいはい今行きますよ倉橋さん」

 

先生が倉橋さんという女の子の方へ向かう。様子を見ると教えてもらいながらも倉橋さんは問題に集中しながらナイフを先生に向かって刺そうとする。が、先生の触手で腕を掴まれ決して刺されないという状況で教えている。

 

「如月さんは全く暗殺しないね、自信ないのー?」

 

隣の席からのカルマくんの声。自信がない、か。にっこりした笑みで聞いて来る意味が私にはよく分からなかった。

 

「……そうなんじゃない?」

「へぇ認めちゃうの」

 

あっさりとした返答にどこか驚いたよう。

暗殺、か。再びペンを取ろうとしてあることを思いついた。机の中に入っていたナイフを取り出す。

 

「当ててみせようか」

「楽しみに見てるよ」

 

「ありがとー殺せんせー」

「はい、今度はもっと工夫した暗殺をお願いしますね」

 

倉橋さんに見せた顔色は緑のしましま模様。渚くん曰く舐めてる顔、だそうだ。続きを教えようと私の席の元へ向かってきた。机の中でナイフを弱く握りしめる。多分、あのような動きと一緒の動きをすればきっと。

 

「じゃあ再開しましょうか如月さん」

「お願いします」

「ぬるふふふ」

 

戻ってきた先生は私のノートを覗き込む。会話を続けながら左手で握ったナイフを振り下ろした。先生は私の左手を触手で抑えた。先生の顔を覗き込むと緑のしましま。会話を続け、ふと隣を見てみる。

詰まらなそうなカルマくんの顔。そうだよね、これじゃ倉橋さんと同じこと。でもね、私はこれを狙ってたんだ。この世界(ここ)にいる人たちには分からない。

 

だから2人の顔色は2、3分経った突然に変わった。

左手で握っていたナイフは破壊し錯乱。拡散した一部のナイフだったものは先生の触手を破壊し1本、地面に落ちた。

 

「にゅやーッ!?」

「……え」

 

先生は顔色を変え直ちに私からマッハで距離を取り、またカルマくんは肘をついて見ていた顔をわずかに動揺して上げた。

 

「先生、油断しましたね」

 

先生の顔を見ると緑のしましまは当然ない。だけれど黒板の側まで距離を取る必要があるのだろうか。そこまで萎縮するものか。

席を立ち上がり散乱した緑の破片を集める。その際カルマくんと目が合った。さっきまでつまらなそうだった顔も驚いた顔に。どう?と口パクで伝えてみせる。ムッとした顔を見せられる。

 

「嘘!如月さん殺せんせーの触手()った!?」

「うんやったよ、ほら」

 

破片を全て机の上に集め、最後に破壊された触手を見せる。先生、返すよと触手を先生に投げると触手を大事にしてください!と叱られた。破壊された触手なのに……

 

「……如月さん、手に力いれてなかったよね」

 

カルマくんの問い。それは半分正解で半分不正解。

 

「握力に力は入れてないよ。けど私の手、妖力(ようりょく)が流れ込むから、時間が経てばナイフみたいにバンッとね」

 

妖刀(ようとう)やサムライの里で手に入れたものを除く物であればどんな物でも時間が経てば私の妖力(ようりょく)に耐えきれず壊れてしまう。普段ならペンでもなんでも時間が経てば、手に持ってたものを落とす、あるいは置く。ノートとる際も一々休憩を挟まないといけないから不便だけど、今回はこれを活用した。

烏丸先生から次は2、3本用意してもらおう……。

 

「先生いつまで怯えてるんですか……」

「……かっこわるーい殺せんせー」

 

私と倉橋さんがそういえば顔色を赤くし始めて何かを言い始めた。まぁ1回きりかな。まだ殺すにはどこかもったいない気持ちがある。まぁそう中々殺させてくれないのだろうけどと思う。

 

「時に如月さん」

「はい?」

「それは、他人の一部の体でもそうなりますか?」

「……まぁ気をつけてますよ」

 

真剣な先生の声。後ずさりをする倉橋さん。まぁそれは私が人間(ふつうのひと)でない証拠だ。仕方ないことだと思ってる。

 

「因みに妖力(ようりょく)が出るのは手のひらだけだから、今まで間違えて破壊しちゃったなんてことはないし安心して」

 

なんて言っても無駄なのだろうけど。そうですか、では再開しましょう!と先生の声。それでもこの教室に、この4人に嫌な空気は残ったままなのだろう。

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