校庭のど真ん中に起きている竜巻。「第二の刃を持たざる者は……暗殺者の名乗る資格なし!」先生の言葉が響き渡った。
全員が参加せざるを得なくなった放課後の自習時間。クラス全員が50位以内を取らなければE組の校舎から
「あれ珍しい!如月さん!」
「……?えっと……」
E組校舎のある山を下って帰宅していたところだった。E組の女子だった。記憶が合っていれば中村さんと倉橋さんと矢田さんだ。倉橋さんとは以前少しあったが、気にしないで接してくれるようだ。
「いつもこの時間には合わないしさ」
「あ……隣が、鬱陶しくて」
「隣?カルマくんが?」
意外と口々を揃えて言う3人。……意外?頻繁にやってくるものだからそういうものかと思った。
いつの間にかみんな歩幅が合っていた。自然と私が合わせていたのか、それともみんなが合わせてくれていたのか。
「確かに殺せんせー相手にはいっぱい悪戯してたけどねー」
「思い当たる節とかはないの?」
「特に……」
きっかけは思い当たるけれど、別に間違った事を言った覚えはないし。ならばこれも相性の問題でしょうがないことなのだろう。黙っていれば問題はないはずなのだ。
「ところで、テストはみんなどう?」
「う、あんま考えないようにしてたのにー……」
そう言ったのは倉橋さん。しょっちゅう放課後に勉強してる時見かけるから大丈夫だと思うのだけれど……。
「あーそっか、如月さん椚ヶ丘のヤバさ知らんもんねー……ねぇ、如月さんって一々呼ぶのもあれだし琴音って呼んでい?」
「問題はないよ……ヤバさ?えっと」
「難しい、ね。名門校だから問題もちょっとね……」
難しい……そう言った彼女らの顔はどこか暗い。エンドのE組……転級する理由は様々だが主に成績の良し悪しで転級するらしい。成績が良ければA組へ、悪くなればE組へ。
「でも殺せんせーが逃げないように帰ったら頑張んないとね!」
「だね」
「そだ、終わったら放課後琴音含めた暗殺練んないとな!」
そういえば、そんなことも言っていた。殺す気も起きないがみんなに合わせておくのが得策なのだろう。
「覚えておくよ」
E組の生徒は仲がいい。3人が始めた会話に私は適当に相づちをうっておく。ここでもまた、どこか独りだと感じた。
「本校舎とE組校舎、こんなに違うんだ……」
私の呟きに苦笑いを浮かべる渚くん。木造とは違って頑丈そうな作り、綺麗な黒板に綺麗な机と椅子。空調管理もちゃんとしてるらしく、いかに差別化されているのかが分かった。
席の場所はE組と同じ場所らしい。隣の厄介者はまだ来ていないようでどこか安堵した。
「最初は数学かー……初っ端から担当が大野らしいぜ」
「どんな嫌がらせをしてくるか……ね」
先生までもがE組生徒を差別しているのかと悟った。一体何がそこまで差別化されているのだろうか。
「如月さん……大丈夫?」
「大丈夫だけど……何が?」
「顔が堅かったから……」
元からこういう顔だと思うのだけれど。けれどそれは私がここの問題に慣れていないからによる渚くんからの心配なのだろう。
「そっか……お互い頑張ろう」
「そうだね」
鳴り響くのはこつこつ、という指の音とペンを進める音。数学の問題をさらっと見てみる。
確かに1つ一つの難易度が高い。先生が行う小テストとはレベルが違う。問題の途中で目が止まった。
その問題は問い11、それ以降の問題。それは中間テストの範囲外の問題。
解けない事はないけれど……時間をかけそうだ。皆はこの問題に気付いていないのか?辺りのペンを走らせる音は止まらない。
範囲外の問題は一番最後に残そう。手をつけ始めるのは範囲内の基本問題と応用問題。もし時間が足りなければ確実性、だ。
少し時間が経って、ちらほらとその手を止め始める人が出てきた。
チャイムが鳴る頃にはもう誰も、ペンを進めるものは殆どいなかった。
それ以降の教科もまた、聞かされていた範囲とは違う問題が後半でてくるようになっていた。
返されてきた答案用紙。数学が82点で1番いい。その次が理科の78点。が、ここからが低く社会72点に国語が67、英語が64点。合計点が363点でE組女子で2位の筈なのに、E組4位なのに。この点数で学年50位にはほど遠く75位という結果だった。
理数系はまだ理解が追い付いていたので出来ていたのだが他が点でダメとも言っていいほどで。
E組4位で50位に到達していないのであればみんなかなり落としたのではないのか……
思い当たるのはやはり範囲外の問題で。E組の先生らが教え忘れただなんて到底思えなかった。烏丸先生からの報告によるとテスト2日前に範囲を広げた、とのこと。
「先生の責任です……」
そう暗い雰囲気の中、先生は背中を向けたまま言葉を発した。
……E組から去るのだろうか。クラス全員が50位以内を取れなければ先生は去る。本気でそう言った先生。
こつん、と前の方で音がした。黒板に対先生用のナイフが当り重力でそれは落ちた。
「いいの?顔向け出来なかったら俺が殺しにくんのも見えないよ」
ぱさっと、前の机から1枚の答案用紙を持って行かれた。ちょっと待て、この注目した中でも嫌がらせをしてくるのだろうか。
そのままカルマくんは私の1枚の答案用紙と自分の5枚の答案用紙を教卓に置いた。
「カルマくん!先生は今落ち込んで……!にゅや!?」
6枚の答案用紙は見られる。この際何もせずに知らぬ振りでもしようかと思って机を見た。……なくなってる答案用紙は1番いい数学じゃ……?前を見ると挑発気味に先生に向かって言うカルマくん。
「俺の成績に合わせてあんたが余計な範囲まで教えたからここまで出来たし、あんたの教え方が上手かったから異国人さんもちゃんとここまで結果出せたんじゃないの?ま、俺には及ばないけど」
「異国人さんって……」
「ここから尻尾巻いて逃げちゃうの?
それって結局さぁ、殺されるのが恐いだけなんじゃないの?」
最後の1文は妙に挑発気味で。黄色い丸い顔に1つの筋が出来たのを見計らって便乗して行く生徒。
そして増えて行く筋。
「にゅやーーッ!!逃げる訳ありません!期末テストであいつらに倍返しでリベンジです!」
そのリベンジをするのは先生じゃなくて生徒なんだけれどね。
そう思いながらも、このE組の教室に渦巻く笑いと怒る先生の姿らを見守った。