東方優幻想   作:エウラス

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お久しぶりです、エウラスです。
随分と長い期間が開いてしまいましたが続きの投稿です。
こんな亀編集ではありますが、見放さず見ていただけてる方には感謝の限りです。


新章第9話

新章第9話:優曇華たちと見る里の様子

 

うどんげ「こんにちは、いつもの常備薬の点検に来ました」

村人「ああ、助かるよ。それじゃあ、これだから」

うどんげ「はい……大丈夫そうですね。何かありましたらまた伺いますね」

うどんげ「……ふぅ」

優希「大変だけど頑張ろうぜ、うどんげ。あと数件行けば終わりなんだろ?」

うどんげ「う、うん。お師匠たちがたまには息抜きをしてこいって……」

優希「ならさくっと行こう。そうすれば遊ぶ時間も多くなるしな」

うどんげ「……なるほど、確かにその通りね」

 

俺の提案を受けて、先ほどまでの疲れた表情から一転明るい笑顔を浮かべる。

さて、なんで永遠亭での生活を見に来ていた俺が里に来ているのかというと――。

 

永遠亭に来た翌日……つまり今日の朝のことだ。

 

優希「お? おはよう、うどんげ。今日もいい天気だな」

うどんげ「あ……うん、そうね」

優希「うん?」

 

昨日はすごく明るい感じで、ウキウキした空気をだしていたはずなんだが。

こちらに返ってきたのは妙にげっそりとしたうどんげの声だった。

心なしか耳も垂れ下がっている気がする。

 

優希「どうしたんだ? 体調でも悪いのか?」

うどんげ「そういうわけじゃないんだけど……えっと……」

永琳「鈴仙は里へ行くのが憂欝でそんな風になってるのよ」

優希「えっ?」

うどんげ「し、師匠っ?」

 

うどんげの出てきた部屋から半身をのぞかせるようにして永琳先生がネタ晴らしをしてくれた。

しかし、里に行くのが憂欝って……。

 

優希「やっぱりまだ人見知りは治ってないのか?」

永琳「むしろ悪化してるわね。例の件もあって、ちょっと神経質になってるのよ」

うどんげ「ううっ、佐伯には内緒にしてくださいっていったのに……」

永琳「そんなこと言ったって、うちに泊まりに来るのなら遅かれ早かれバレちゃうでしょ?」

うどんげ「そうですけど……」

 

永琳先生相手にも珍しく反抗的な態度を取りながらこちらに視線を送ってくる。

話の流れから察するに俺にはばれたくなかったみたいだが、なんでだろうか?

まあ、恥みたいなもんだしそうそう聞かれたくない内容なのかもな。

 

優希「それにしても、里にって買い物にでも行くのか?」

永琳「ほら、例の常備薬の点検よ」

優希「……ああ! 時々、顔隠しながら来てる時のあれか?」

永琳「ええ、そのあれよ」

 

俺が里にいる短い間にも何度かは見かけたうどんげの姿。

深めにフードっぽいものをかぶって、昔の木こりみたいな感じで荷物を背負ったスタイルだ。

最初はうどんげだとは気づかなくて驚いたっけ。

そこで確かに常備薬の点検がどうのって聞いた気がする。

 

永琳「まあ、幸いなんとか業務はきちんとしてるみたいだけどね」

うどんげ「逃げてもお師匠の罰があるじゃないですか……」

永琳「ま、その通りなんだけれど」

優希「えーっと、それなら俺も付いていこうか?」

うどんげ「えっ?」

 

ふと思い立ってそう提案してみると、うどんげが目を丸くして短い声をあげる。

 

優希「うぬぼれじゃなければだけど、俺とは普通に話せるだろ?」

うどんげ「そ、そりゃ佐伯だもん。(……あの時、色々助けてもらったし)」

優希「うん?」

うどんげ「な、なんでもないっ!」

 

最後のほうが聞こえなかったけど、まあ否定はされてないならいいか。

やや顔が赤いのが気になるけど。

 

優希「なら、知り合いが一緒にいたら多少はましなんじゃないかなってさ」

うどんげ「そ、それは……でも、佐伯はうちの生活を見に来たんだし……」

永琳「……そうね、佐伯君。良かったら鈴仙と一緒に行ってもらえるかしら?」

うどんげ「し、師匠?」

永琳「何よ、その顔は。うちの生活を見せるっていうのなら、これも一つの姿でしょう?」

永琳「今日はそんなに回る先も多くはないし、終わったらそのままゆっくりしてきなさい」

うどんげ「で、でも夕飯の支度もしないと……」

てゐ「ま、そこはあたしも手伝うからさ。行ってきなよ、鈴仙」

うどんげ「て、てゐまで……」

 

永琳先生の後ろから現れたてゐもまた、珍しく素の笑顔で説得に回っていた。

へえ、あいつってあんな顔もできるんだな。

 

てゐ「なんか失礼なことを考えられてるようなきもするけど……まあいいや」

てゐ「今日は里でちょっとしたバザーが開かれてるみたいだし、楽しめると思うよ」

優希「へえ、そんなことまでやってんだな」

てゐ「なんでも以前こっちに来た外来人が伝えた行事らしいね」

優希「分かっちゃいたけど俺以外にもいるんだな」

永琳「ええ、多くは帰っていったけれど」

 

まあ、そりゃそうだろうな。

俺の場合が特殊なだけで、他の外来人はみんな帰るべき場所があったはずだ。

しかし、なんでまたバザーという微妙なものを広めたのだろうか。

確かにバザーなら手軽にできるだろうけどさ。

 

永琳「それじゃあ佐伯君、お願いできるかしら?」

優希「ええ、大丈夫ですよ」

てゐ「ここまで言ってくれてるんだし、鈴仙もいいでしょ?」

うどんげ「わ、分かったわよ……」

 

渋々といった感じにうなずくうどんげを横目にてゐがうなずいている。

とはいえ、嫌だったというわけではないのだろう、徐々に顔色はよくなってきていた。

 

うどんげ「それじゃあ、さっそく行こうと思うんだけど……準備は大丈夫?」

優希「ああ、俺は基本的に荷物なんてないしな。最悪、能力で出せばいいし」

うどんげ「そっか……じゃあ、いきましょ」

 

 

……ということがあり、現在に至るわけだ。

回想してる間にも残りのいくらかの家を回っており、今は最後の民家が済んだところである。

大分気疲れしているみたいだが、それでもやりきったことで晴れやかな顔しているな。

 

優希「お疲れ、うどんげ」

うどんげ「ありがとう。……ごめんね、本当は一人でやらなきゃいけないんだけど」

 

照れくささと申し訳なさの混じった笑みを浮かべるうどんげに首を振って応える。

もともと人見知りだった彼女が、あんな異変に巻き込まれたんだ。

普通の奴だって人間不信になってるのに、うどんげが平気でいられるわけがない。

むしろ、よく我慢して続けているなと感心するほどだ。

 

優希「うどんげはよくやってるよ。同じ立場なら、俺は出来る気がしない」

うどんげ「そんなことないよ」

優希「えっ?」

うどんげ「佐伯って、確かに腕力とか……肉体的な強さはないよ?」

うどんげ「けど、心は誰よりも強いと思うから」

優希「……そうか?」

うどんげ「うん、そうだよ」

 

ふわりとほほ笑みながらそう答えるうどんげについ見とれてしまう。

こうしてみると、本当に人見知りなのか疑ってしまうくらいだ。

だけど、ふとした拍子に里の人とすれ違うと身を固くしている。

バザーがどうのって言われてたけど、彼女のことを考えると避けるべきか?

 

慧音「おや? もしかして佐伯君じゃないか?」

 

そんなことを考えていると、聞き覚えのある声が。

そちらに顔を向けると、朗らかな笑みを浮かべた慧音先生が手を振っていた。

 

優希「うん? ああ、慧音先生。久しぶり」

うどんげ「ご無沙汰してます」

慧音「ああ、一緒にいるということは、例の順番かい?」

うどんげ「ええ、昨日からうちに泊まってくれてるわ」

うどんげ「それにしても、慧音はこんなところで何を?」

優希「そういえば……」

 

今はお昼になったあたりだ。

普段であれば普通に寺小屋にいる時間帯。

こんな時間に里中に出ているのは確かに珍しい。

そんな俺たちの疑問に『ああ』、と短く声をあげて笑う。

 

慧音「今日はバザーの日だろう? 学校でも出していてな」

慧音「私は子供たちの引率さ」

優希「ああ、そういうことだったんだ」

慧音「まあ、ここにいるのはそれだけではないのだが……」

阿求「慧音さん、お待たせしました!」

優希「おっ?」

阿求「あれっ? 佐伯さん?」

 

脇にいた俺たち気づいたのか、阿求が目を丸くしていた。

そういえば、あの時の宴会以来だな。

 

優希「久しぶりだな。元気してたか?」

阿求「ええ、相変わらず引きこもってばかりですが」

うどんげ「阿求の場合、それは仕方ないでしょ?」

阿求「あはは……体のこともあるのですが、やはりまだ少し怖くて……」

うどんげ「ええ、その気持ちは痛いほどわかるわ」

慧音「こらこら、暗い顔をしていてはせっかくのバザーが台無しだぞ?」

阿求「そ、そうですねっ!」

優希「それで、結局こっちのバザーってどんな感じなんだろう?」

慧音「そういえば佐伯君は元外来人だったな。良ければ見て行ってくれないか?」

慧音「感想なんかを聞いておきたいのだが」

優希「うーん、俺は構わないんだけど……うどんげ、大丈夫そう?」

うどんげ「わ、私は別に大丈夫よ?」

 

声が震えてるし……っていうか体も震えてるんだが。

どうしたもんかと考えていると、慧音先生が何か思いついたのかポン、と手を打っていた。

いや、その表現を実際にする人って結構珍しいな。

 

慧音「なら、佐伯君と手でも握っていればいいんじゃないか?」

うどんげ「!?」

優希「へっ? 俺と?」

慧音「見たところ、佐伯君と一緒にいるときはリラックスしているように見えるぞ?」

うどんげ「ちょっ、ちょっと! 慧音、な、なに言ってるのよ!?」

優希「そうだって、俺だって一応男なんだし緊張させてるはずだぞ?」

うどんげ「……否定されるとされたでなんだかイラっとするわね」

優希「どう答えろっていうんだよ!?」

 

何を言っても針の筵状態だった。

おかしなことを言っているつもりはないんだがなあ。

 

優希「うどんげだって俺と手を繋ぐのは嫌だろ?」

うどんげ「そ、それはっ……」

うどんげ「さ、佐伯となら嫌じゃない、わよ?」

優希「えっ?」

慧音「ほう?」

阿求「むむっ……」

 

いつになくしおらしい態度でチラチラとこちらを見るうどんげ。

その隣で興味深いものを見たという反応を見せる慧音先生。

そして、なぜか微妙に不機嫌そうな阿求という妙な状況になった。

俺? 俺は正直びっくりしてる。

今でこそ自然に接してくれてるが、俺は彼女の苦手な人間で男だ。

手を繋ぐなんてことを許容するなんてみじんも思えないくらいには重度の、である。

なのに、うどんげからは特に嫌がっている様子が見えない?

 

優希「えーっと……それで、変に緊張せずに人ごみに行けるのか?」

うどんげ「え、ええ……たぶん」

優希「まあ……そういうことなら俺は構わんぞ?」

 

そう言って、手をうどんげに向かって差し出した。

その手と俺を交互に見て、しばらく躊躇した後――。

 

うどんげ「じゃ、じゃあ……お願いするわ」

 

差し出したままになっていた俺の手にその白い手を重ねてきた。

体温が低いのか、少し冷たく感じるけど男にはない柔らかさを感じる。

そのことに少しだけ動悸が早まるのを感じつつ、平常心をもってやんわりと握った。

一瞬だけ身を固くしたみたいだけど、すぐに力を抜いてほほ笑む。

何この子、不覚にも可愛いって思っちゃったんだけど!

 

阿求「こほんっ! そ、そういうことでしたら……私もお願いできますか?」

優希「へっ?」

慧音「なっ?」

うどんげ「むっ……」

阿求「では失礼して……ふふ、やっぱり男の子って手が大きいんですね」

阿求「ほら、こんなに違います」

優希「お、おお……そうだな?」

 

さっきまで不機嫌そうにしてたと思えばこれである。

無邪気に笑いながら俺の手と大きさを比べた後、満足げに握ってきた。

阿求の手はうどんげとは違いやや温かいし、柔らかさも少し違って感じる。

うーん、女の子って不思議だな。

 

慧音「……ま、まさか稗田様まで? いや、しかし……」

阿求「ほら、慧音さん。早くいかないと始まってしまいますよ?」

慧音「お、おお……すまない。今行くよ」

阿求「さっ、佐伯さんも行きましょう」

優希「お、おいっ! 引っ張らなくても行くってっ!」

うどんげ「私だっているんだから、忘れないでよね!」

 

引っ張られるようにしてたたらを踏みそうになったところでうどんげに支えられた。

その様子を見てまた少しだけ不機嫌そうになる阿求。

……いったいなんだというのだろうか。

 

優希「なあ、うどんげ、阿求」

うどんげ「何よ」

阿求「なんでしょうか?」

 

お互い何を張り合っているのかわからないが、間にいる俺のことも考えてほしいものだ。

そういうわけで、俺からちょっと提案をしてみることにしよう。

 

優希「見に行くのはやぶさかじゃないんだが、ゆっくり見て回らないか?」

優希「場所は違っても、俺もバザーってのは久しぶりでさ……じっくり見たいんだ」

うどんげ「……わ、分かったわ」

阿求「そうですね、私も少し急ぎすぎちゃいました。ごめんなさい」

うどんげ「私もごめん……それに阿求、あなたにも」

阿求「ふふ、お互い様ですよ。私だってちょっと申し訳ないなって思いましたし」

優希「よし、意見がまとまったところでさっそく行こうぜ」

優希「慧音先生……って、どうしたんだ?」

慧音「あ~……うん、君にはいろいろな意味で脱帽だよ」

優希「?」

慧音「まあいい、会場はこっちだ。ついてくるといい」

優希「あいよ」

 

何やら遠くを見ながらつぶ焼いていたけど、大丈夫だろうか。

まあ、案内してもらえるというなら喜んで受けよう。

右手にうどんげ、左手に阿求と両手に華の状態で歩き始める。

うどんげたちの歩幅がそれぞれに違うため、ちょっと戸惑う。

 

うどんげ「……」

 

などと思っていたら、急にうどんげの歩調がゆっくりになった。

そう、ちょうど阿求と合うように。

 

うどんげ「? どうしたの? 佐伯」

優希「いや、何でもない。誰かさんは優しいなって思っただけ」

うどんげ「ふ、ふーん? そうなんだ」

 

せわしなく視線をさまよわせながら、うどんげは明後日のほうを見ていた。

その耳が真っ赤になっているのは見逃さない。

うんうん、ちょっと素直じゃないけど、やっぱり優しい子だよな。

うどんげの内面を改めて確認していると、阿求が小さく声をあげた。

どうしたんだろう? 特に何かあったような感じでもないが。

 

阿求「慧音さん。出来れば迂回していきませんか?」

慧音「うん? ……ああ、なるほど。わかった」

優希「何かあるのか?」

慧音「この先は少し準備で男連中が多いんだ。そのためだと思う」

優希「ああ……なるほど」

うどんげ「悪いわね、私が気にしなければいいんだけど……」

阿求「いえ、先ほども言いましたけど、私もまだ怖いですから」

うどんげ「そうよね……どうも、紅魔館でのことを思い出しちゃって」

阿求「私も、慧音さんたちと逃げているときのことを思い出しちゃうんですよ」

 

何気なく、自分も怖かったからということにしていく阿求。

その姿を見て少し温かい気持ちになった。

さっきはどうなることかと思ったけど、やっぱり彼女たちの根本は優しい。

一部、優しさが見えづらい奴もいるけどそれは確かだ。

さりげない気づかいが出来るのはその証だと思う。

ほどなくして、俺たちはひときわにぎやかな通りに出た。

 

優希「へえ!」

 

思わずそんな声が出るほどに、その光景に心を打たれた。

それは俺の知っているバザーとは程遠い見た目をしていたはずだ。

レジャーシートなんてものはなくて、風呂敷を敷かれた展示場所も。

並んでいる商品だってそうだ。

今じゃ全く見ないだろう物が所狭しと置いてある。

だけど、それは確かに俺の知っているバザーが時代をさかのぼった姿だった。

 

慧音「どうだ? 見てみた感想は」

優希「うん、まだ遠目だから何とも言えないけど……すごく懐かしいよ」

慧音「そうか」

うどんげ「ふーん? なんか色々あるのね」

阿求「あっ、そうなんですよ。なんでも外の世界の物もいくつか仕入れたそうで」

優希「たまに外の世界の物って流れ込んでくるんだっけ?」

阿求「はい、主に仕入れてくるのは霖之助さんという方なんですが」

優希「そういやまだ会ったことないんだっけ……」

 

こっちの有力者での現状唯一の男という森近霖之助さん。

とはいえ力があるわけではなく、商人としての名がそれなりに通っているとのこと。

漢ではあるが荒事を得意なわけでも、好んでいるわけでもない。

人里にはないような一風変わったものを売っているため重宝するんだとか。

あ、後妖怪とか相手にも普通に商売をするとかいってたっけ。

 

慧音「そのうち会う機会もあるだろう」

優希「そうだよな」

阿求「それにしても……今回はひときわ見たことのないものが並んでいますね」

うどんげ「そうなの? 確かにあまり見かけない物だけど」

 

そういって二人は出品者に声をかけながら手に取ってみていた。

見ていたのはシャボン玉などの玩具だ。

確かに科学の発達していないこっちでは見られないものかもしれない。

 

優希「二人が持ってるのはシャボン玉って玩具だな」

阿求「シャボン玉、ですか? でも玉のようなものはみえませんが……」

優希「あー……実演すりゃわかるとは思う。おばちゃん、これ二つともくれる?」

村人「あいよ」

 

俺は書かれていた金額を見て支払いを済ませ、それぞれの物を受け取る。

 

阿求「あ、お金を……」

優希「いいっていいって、これくらいだすよ」

うどんげ「い、いいの?」

優希「ま、女の子に支払いをさせるのが嫌っていう意地みたいなもんだからきにしないでくれ」

 

俺はそう笑ってから二人にそれぞれ渡す。

大したものじゃあないんだけど、二人とも妙に嬉しそうだ。

 

優希「それじゃあ説明だ。これはまず、この容器のふたを開けて、その棒をその向きで突き刺す」

阿求「こうですか? 先が濡れているようですが……液体なのでしょうか?」

優希「そうそう。じゃあ手に持ってる側を口にくわえて、ゆっくり吹いてみてもらえる?」

阿求「えっと……ふぅ~……」

うどんげ「へえ……」

慧音「ほぉ……」

阿求「……」

 

それぞれに、阿求のくわえていた棒から飛び出したシャボン玉に驚いているようだ。

まあ、確かに初見では驚くかもしれない。

 

阿求「きれい、ですね。なるほど、これが玉なのですね」

優希「うん。まあ、シャボンっていうのが泡っていう意味でさ」

優希「直訳して、泡の玉ってことなんだよね」

うどんげ「泡? それじゃあ中に入ってるのは石鹸水かなにかかしら」

優希「まあ、似たようなものかな? ひと手間くわえる必要はあるけど」

 

詳しくは知らないが界面活性剤がどうのって聞いたことがある。

どれくらいの分量に対してどの程度いれるのかわからんが。

何はともあれ、阿求たちはシャボン玉が気に入ったらしい。

ご機嫌な様子で辺りに泡を飛ばしていた。

その様子に周囲は微笑ましい顔をして通り過ぎているのだが。

特に阿求なんて見た目が幼いから余計にその様子が合う。

うどんげは雰囲気が華やかというか、これはこれでいいなという感じだ。

 

慧音「シャボン玉か……寺小屋の子供たちにも人気が出そうだな」

優希「ん? ああ、確かに。でもこれ、消耗品なんだよなあ」

うどんげ「佐伯の能力があれば大丈夫じゃない。あまり無茶はさせられないけど」

優希「あー……その辺なんだけどさ、どうも反動がかなり軽減されてるみたいなんだよ」

阿求「えっ、そうなんですか?」

優希「ちょっと込み入った話になるからその辺はまた今度な」

優希「お?」

 

相変わらずシャボン玉に夢中な二人をから目を離すとあるものが目に入る。

それはいわゆるアクセサリーショップ的なものだ。

手作り感満載ではあるものの、意外と凝った作りの物が多い。

 

慧音「急に立ち止まるからどうしたのかと思ったら」

阿求「わぁ、素敵な装飾品ですね!」

うどんげ「意外ね、こういうのに興味あるの?」

優希「まあ、嫌いじゃないよ。身に着けるほどじゃないけど」

おばさん「おやまあ、佐伯君じゃない。冷やかし上等、見てってちょうだいな」

優希「ありゃ、おばさんが作ってるんですか? これ」

 

名前を呼ばれてようやく気付いたが、どうやら知り合いの一人だったようだ。

とはいえ、そんなに広くもない人里ではよくあることではあるが。

冷やかし上等ってことだし、せっかくだからしっかり見させてもらおう。

なんだかんだでうどんげたちも気になるものらしい。

3人ともあーだこーだいいながらそれぞれに似合いそうなものを探しているようだ。

 

優希(んー……個人的にはうどんげにはこっちかなあ)

優希(阿求は見た目子供だけど落ち着いてて大人びてるからなあ……)

 

何気なく二人に似合いそうなものを見繕ってみる。

うどんげは見た目が日本の女子高生に見えなくもない。

そのためかブレスレットとかネックレスなんかが似合いそうだ。

阿求はそうだなあ、完全な和服姿だからやっぱりかんざしとか髪飾りか。

だけど髪飾りはすでにつけてるし……ん? これは……。

 

優希「おばちゃん、これってバッヂか何か?」

おばさん「うん?そのばっぢとかいうのはよくわからないねえ」

おばさん「でも、佐伯君が指差してるのは帯留めね」

優希「帯留め?」

慧音「一般着物を体に固定するための帯締めを通す装身具があるんだが」

慧音「帯留めというのはその中でも飾り物の装身具のことだ」

優希「へえ、それで裏に不自然なわっかがあったのか」

 

俺からすればブローチやバッヂにしては引っ掛ける部分が大きすぎると思ったんだ。

でもどうやら話を聞くにこれは和服を止めている帯を止めるための物の一つらしい。

これは阿求にピッタリそうだ。

ちょうど、阿求がいつもつけている花の髪飾りに似た花のデザインのようだし。

後はうどんげだけど……こっちも割とすぐにいいのが見つかった。

これまたタイミングの良いことに優曇華の花を模したペンダントがあった。

鎖の部分も淡い紫色に染められていてうどんげのイメージに合いそうだ。

 

優希「おばさん、これとこれを買うよ」

おばさん「あいよ、ちょうどね。毎度あり」

うどんげ「何々? なんか買ったの?」

阿求「興味ありますね、何を買ったんですか?」

優希「まあ、なんだ……今日付き合ってもらったお礼ってことで」

二人『えっ?』

慧音「ほぉ……にくいことをするじゃないか」

優希「あ、慧音にも……」

慧音「私のことは気にするな。というか、気にしないでくれ」

慧音「子供たちにシャボン玉を提供してくれるだけで十分だ」

優希「そ、そう?」

優希「まあ、そういうわけだから受け取ってもらえるかな?」

うどんげ「う、うん!」

阿求「もちろんです!」

 

二人とも嬉しそうにそれぞれの物を手に取り、笑顔を浮かべてくれていた。

ほっ、どうやらお気に召したようだ。

と、思っていたら何やらうどんげがちょっと恥ずかしそうにこちらを見ていた。

 

優希「? どうした、うどんげ」

うどんげ「そ、その……よかったら着けてもらえる?」

優希「えっ……ま、まあいいけど」

 

同意の上とはいえ、女の子にアクセサリーを着けて上げるか。

結構難易度の高いことを要求してくるなあ。

内心の動揺を悟られない程度に平静を装い、優曇華の後ろに回る。

背後から手をまわし、ペンダントの留め金を付けようとして気づく。

 

優希「えっと……ちょっと髪をあげてもらっていいか?」

うどんげ「え? ああ、ごめん。気づかなったわ」

うどんげ「これでいい?」

優希「お、おう」

 

両手でかき上げるようににして髪の毛がどけられたわけだが。

 

優希(きれいなうなじしてるな……って何考えてるんだ俺は!)

 

思わず浮かんでしまったことを振り払うようにして、留め金をはめた。

俺がゆっくりと離れると、うどんげも髪を下ろし振り返る。

 

うどんげ「ど、どう?」

優希「ああ、よく似合ってるよ」

うどんげ「本当っ? ありがとう!」

優希「っ!?」

阿求「ずるいです! 私にもぜひ……!」

優希「えっ!?」

慧音「阿求さま、さすがに公衆の面前でそれは不味いです!」

阿求「む、むむ……そ、そうですね。さすがに帯を緩めるわけには……」

阿求「非常に残念ですが、ここは我慢しましょう。でも、ありがとうございます。佐伯さん」

優希「あ、ああ……気にするなって。喜んでもらえてよかったよ」

うどんげ「む……もう! ほら、もっと見て回りましょうよ!」

優希「うおっ? ちょっ、うどんげ! 引っ張るなってっ!」

うどんげ「ボーっとしてるからよ~っだ」

 

俺の腕を引っ張りながらいたずらっぽく笑う。

そんな彼女の笑顔にまた少し胸が高鳴る。

うーん、ここ最近こんなんばっかりだな。

……でも。

 

優希(悪い気はしないかな)

 

少しずつだけど、幻想郷になじめてきている自分を感じていた。

いつかはどこかを起点に定住することになるんだろうけど、今を全力で楽しむとしますかね。

 

うどんげ「時間はまだまだあるんだから、全部回っちゃうわよ!」

 

永遠亭を出る前までのどこかおびえた表情はどこへやら。

満面の笑みで俺を引っ張る彼女の胸には優曇華のペンダントが光っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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