第7話:異変の正体
あれからしっかりと休んだおかげで腰の傷も大分良くなった。
うどんげの献身的な治療と永琳先生の薬のおかげだ。
今じゃ傷口もほとんど分からない程度にはふさがっている。
そして、いよいよ三途の川へと乗り込むことになったんだが。
優希「さて、乗り込むメンツをどうするんだ?」
そう、問題なのはそこだ。
今回も少数で攻めこむのか大人数で行くのか。
その辺りも兼ねての話はこじれると思ったのだが……。
妖夢「ここは私に行かせてもらえますか?」
妖夢「そもそもの発端は私です……責任を取らせて欲しいんです」
そんな彼女の強い願いにより、結局俺と妖夢のペアで行くことになった。
しかも今回に関しても別勢力の危険告知が出ていた。
そっちは霊夢達が行ってくれるらしいから心配ないだろう。
霊夢「今までの借りかえさせてもらうわ」
霊夢「目が覚めちゃうくらい強烈に、ね」
そうつぶやいた霊夢の顔は修羅のそれだった。
周りも若干怯え気味だったし、霊夢を怒らせるのはやめておこう。
そう思う今日このごろである。
妖夢「佐伯さん? さっきからどこに話しかけているのですか?」
優希「ん、気のせい気のせい」
優希「それよりもここが……?」
妖夢「はい、閻魔様のおわす場所への通り道……三途の川です」
眼前に広がるのは殺風景な川と積まれた石。
そして、その石を積もうとする幽霊たちの姿だった。
周囲には一応、ちゃんとした道もあるみたいだけど。
なるほど、本当にイメージしたとおりの風景なんだな。
俺はそんなことを考えながら、魂の居場所を確かめる。
場所からすれば、川からは多少離れた側道の先らしい。
優希「どうやらコッチみたいだ」
妖夢「では行きましょう」
妖夢「霧が深くて足元が見えづらいので気をつけてくださいね?」
優希「あいよ!」
俺に合わせて走りだす妖夢に、俺も少し遅れて走りだす。
冥界にいた時と似た感じの感想になるが、ここも肌寒い。
だけどそれは、体感的なものだけでもなく、背筋が冷たくなるといったほうが正しい。
むしろ気温の低さであれば竹林にいた頃のほうがずっと寒い。
いわゆる、生者として感じる死の空気というやつなんだろう。
優希「……なあ、妖夢」
妖夢「? なんですか?」
優希「なんかおかしくないか?」
妖夢「えっ?」
僅かに感じた違和感を尋ねてみたんだけど……気づいてないみたいだ。
いや、そもそも俺の気のせいの可能性もあるんだけど。
足を止めて二人で辺りに気を配ってみる。
優希「なんか、こう……空気が張り詰めているようなきがするんだ」
妖夢「そうでしょうか?」
優希「うーん、もしかしたら気のせいかもしれないけどさ」
優希「それに……ん?」
妖夢「? 何かあったんですか?」
優希「……ほら、これ」
妖夢「……これは、足あと!?」
そう、俺が見つけたのは足あとだ。
しかも、俺達がつけたものだけではない。
それでいて注意深く見てみると、周囲にもかなりの数。
おかしいな……あの機械によればまだ極限状態ではなかったはず……。
妖夢「もしかすると、状況は良くないかもしれませんね。
優希「ああ……気を引き締めていこう」
優希「妖夢、飴は?」
妖夢「持ってきています」
優希「よし、改めていこう」
妖夢が口に飴を放り込んだのを見て、互いに頷き合う。
何事もなければ良いのだけど……そんなことを考えながら霧の中を駆け抜けた。
「ふう、手こずらせやがって……」
「全くだ……俺様の一張羅まで台無しにしやがって!」
小町「うっ!?」
映姫「小町っ!?」
映姫「あなた達、無抵抗な相手になんてことをするのですか!!」
「うるせえ!!」
映姫「あぐっ!?」
小町「映姫様っ!!」
うぐっ……派手にやってくれるものです……。
心配げに顔を寄せてくれる小町に大丈夫とうなずいておく。
このようなことをして……無事に帰れた暁にはきっちり裁いてあげましょう。
とはいえ、今の私はただの幼子のようなもの。
まさに赤子の手を捻るがのごとく捕まってしまった。
まさか生身の人間がこの地に足を踏み入れられるとは……。
油断していたとはいえ、情けないものです。
小町「あたいらを捕まえてどうするつもりだい……?」
「さあねえ? 俺らは奴隷でも手に入ればなーと思ってるが」
小町「奴隷? 寝言は寝てからいいな」
「威勢が良いね……と!!」
小町「きゃんっ!?」
映姫「こま……!?」
映姫「あなた達……いい加減に!!」
「うるせえって言ってんだろうが、ええ!?」
映姫「うぐっ……」
髪を掴まれて引き寄せられる。
不快な男の顔が眼前に広がり、嫌悪感と痛みに眉をひそめた。
なんとも耐え難い屈辱……。
暫くの間、睨み合っていましたがすぐに叩きつけるように放された。
その際にいくらか髪の毛が引き抜かれ、あまりの痛みにうめき声を上げる。
小さく舌打ちと、何かを持ち上げるような音に目を向けた。
あれは……小町が普段抱えている大鎌!?
それを不敵な笑みを持って持つ男に寒気がした。
「お前ら生意気だからもういいや……死んじまえ」
小町「っ!?」
小町「映姫様っ!!」
映姫「うぐっ!?」
映姫「こ、小町いぃぃぃ―――!!」
私をかばうようにして覆いかぶさった小町。
彼女に数瞬後に訪れる光景に、私は思わず叫んでしまう。
あまりにも残酷な光景を想像してしまい、思わず目まで閉じてしまう。
何かに激しくぶつかるような音と一緒に、頬に生暖かい感触。
それを血であると、否応なく認識してしまい余計に目を開けられずにいた。
だけど――。
妖夢「外道が……人符『現世斬』!!」
映姫「えっ……?」
小町「なっ……?」
優希「大丈夫か?」
間一髪ってところか……。
俺は実力者と思われる女の子たちの前に割り込んでいた。
その手に、彼女たちを傷つけようとした大鎌を受け止めながら。
衝撃はなるべく殺したつもりだったけど、手のひらは切れてしまったらしい。
ジクジクとした痛みを感じながらも、彼女たちが無事でホッとした。
妖夢「外道が……人符『現世斬』!!」
映姫「えっ……?」
小町「なっ……?」
優希「大丈夫か?」
鎌を振った奴も含めて、相手は妖夢の素早い一撃で力なく倒れこんだ。
それを見届けて、俺は掴んでいた大鎌を放し、改めて向き直る。
ああ、やっぱりというかなんというか訝しげな目をむけられてるな。
妖夢「佐伯さん! あなたって人は……いきなり飛び出すなんて無茶ですよ!?」
小町「おや……白玉楼のとこの庭師じゃないか……」
小町「こりゃ、助かったというところかね?」
優希「妖夢……まずは手当だ。お小言は落ち着いてから聞くから」
妖夢「……強情なんですから」
チンッ、と刀を納めると同時に飛び出す悪態。
まあ、それは甘んじて受けておこう。
それはそれとして、彼女たちの傷を癒やす霧を出す。
案の定少し身を固くしたようだったけどそれも一瞬だ。
自身の傷が治っていく感じに、驚きの目を向けていた。
小町「これは……どうして人間の男が私たちを?」
映姫「何が目的ですか……?」
優希「誤解しないでくれ。俺は二人を助けに来た」
映姫「助けに……ですか? その言葉に――」
妖夢「偽りは無いですよ、閻魔様」
映姫「むっ?」
彼女たちを拘束していた縄を断ち切る妖夢。
そんな彼女の言葉に、まだ警戒しているものの言葉はとどめてくれた。
しかし……閻魔様とか言ってたけど、もしかしてこっちの子がそうなのか?
てっきり、こっちの赤い髪の子かと思ってたけど……。
そう思えちゃうくらい、二人の間にはそれなりに身長差があった。
優希「……あ、そうだ」
優希「とりあえずこいつらは縛っておこう」
今は気を失ってはいるが、いつ目を覚ますかわかったもんじゃない。
俺は素早く男たちの自由を奪っておく。
何もないところから縄を出しては縛り付ける。
そんな光景が物珍しいのか、二人は目を丸くしていた。
よし、これをこうして……むっ……。
優希「ごめん、妖夢。結んでくれる?」
妖夢「あっ! はい、もちろんです」
優希「ごめんな」
妖夢「いえ、もともとは私のせいですから」
小町「……随分と仲が良いんだね」
優希「うん?」
小町「どうやらあんたは他の連中とは違うみたいだね」
小町「アタイは小野塚小町、死神だよ」
映姫「こほんっ……」
映姫「私は四季映姫です。ひとまずは感謝いたします」
優希「ああ、無事でよかった」
優希「俺は佐伯優希……外来人だ」
小町「外来人っ?」
映姫「なるほど……それであなたはどことなく落ち着いているのですね」
妖夢「佐伯さんはすごく優しい方ですよ」
妖夢「私や幽々子様も助けてもらいましたし……他の人も同じだったそうです」
映姫「ふむ……佐伯さん」
優希「うん?」
映姫「此度はありがとうございます……正直、助かりました」
小町「アタイからも礼を言うよ」
優希「「い、良いって別に……」
改まってお礼を言われるとこっちとしても困る。
別に人として当たり前のことをしただけなんだ。
優希「それより、早くここから移動しよう」
優希「まだ奴らがいるとも限らんし」
映姫「ええ、そうですね」
映姫がうなずいてくれたのを確認して、俺達はその場を急いで離れた。
小町「宛はあるのかい?」
妖夢「あるにはあるんですが、その前に別件を一つ片付けないといけないんです」
小町「はあ、この状況でかい?」
妖夢「えっと、実は私も最初は彼について勘違いしちゃいまして……」
妖夢「成仏させちゃった彼の魂の一部を回収しないといけないんです」
小町「魂の一部……んん?」
映姫「どうしたのですか? 小町」
小町「坊や……もしかして、片腕が動かないんじゃないのかい?」
映姫「えっ?」
優希「……死神さんにはお見通しか」
苦笑いを浮かべると『はぁん?』と納得がいったようにうなずいた。
映姫に関してはまだわかってはいないみたいで、首を傾げている。
その様子がなんとも、言葉使いと違って見た目相応で可愛らしい。
優希「実は、ちょっといろいろあって左腕だけ成仏させられてさ」
映姫「……もしかして、あなたが?」
妖夢「お恥ずかしながら……」
優希「いやいや、恥じることなんてないって」
優希「妖夢は主を守ろうと必死だったんだ、むしろ褒められるべきさ」
実際に危機に瀕した時、自分以外を護れる人がどれだけいるだろう。
それでも迷わず向かっていける強さは大したものだ。
小町「なるほどねえ……面白い坊やじゃないか」
優希「面白いって……なんか癪な評価だな」
映姫「……いいえ、あなたはもっと胸を張っていいと思います」
優希「えっ?」
映姫「先ほど妖夢さんに恥じることはないとおっしゃいましたね?」
映姫「それは佐伯さんにも言えることです」
映姫「この非常時に無関係の相手にこれだけ体を張れる人はそういませんよ?」
妖夢「まあ……そのせいで怪我をしすぎるのが心配の種なんですけどね」
小町「そういやあんた、さっきアタイらをかばって大鎌を受けてなかったかい!?」
優希「あ、うん……そういえば、顔汚しちゃってごめん」
優希「はい、ウェットティッシュ。これで拭いてくれ」
映姫「えっ? そ、それよりもあなたの手の傷を……」
優希「ああ、うん。ちゃんと治療はするよ」
小町「アタイらを治してくれたみたいに治せないの?」
優希「……俺の能力、実は自分に影響しなくてさ」
優希「良くも悪くも、効果を全く得られないんだ」
これもまた何度目になるんだろうな……。
なんとなく苦笑いを浮かべてしまいながら説明。
それに対して小町の方は呆れたようなため息をつかれてしまった。
小町「……呆れた」
小町「そんじゃあ、あんたはそれを承知でかばったのかい?」
優希「当たり前だろ? 目の前で危ない目にあってる奴がいるんだし」
優希「それに、俺にとっては男は女を守るのが普通だからな」
何度目かになる持論を述べて、再びレーダーを出す。
うーん……多分この辺りだろうけど……。
と、ふと顔を上げると妙に親近感のある人魂が漂っていた。
優希「……あれか!?」
俺は急いでその人魂に駆け寄って捕まえてみる。
すると、その魂がスルッと俺の左腕に入り込んでいった。
そして――。
優希「おお! 動く、左腕が動くぞぉ!?」
久方ぶりに左腕に力が入り、腕を動かすことができた。
たった数日なんだが、それでも不安がなかったわけじゃない。
俺は軽く飛び跳ねながら左腕の無事を喜んだ。
……そこでようやく、ほか三人の反応がないことに気づく。
視線を向けると、呆けたようにこちらを見ているのが視界に入った。
優希「なんだよ、そんなびっくりしたみたいな顔して」
妖夢「……話には聞いてましたけど、やっぱり面白い方ですね」
優希「えっ、何さいきなり」
小町「いやいや、別に気にしなくていいさ」
優希「えー……なんかそう言われる時になるけど……」
優希「それじゃあ、かえろっか」
映姫「え、ええ」
優希「あっ! もう……まだ顔拭いてなかったのか?」
優希「よいしょ」
映姫「わぷっ!?」
映姫「だ、大丈夫ですっ! 自分で拭けますから!」
優希「そ、そう? ならいいんだけど」
真っ赤になりながら顔を拭く映姫。
ちょっとぶしつけに近寄りすぎたかな……。
そんな軽い後悔を残しながら、無線機を取り出した。
紫『佐伯くん?』
優希「ええ……どうかしましたか?」
紫『いいえ、あなたの事だからまた無茶したんじゃないかと思っただけよ』
優希「信用ないなあ……」
優希「今回はかすり傷だよ」
紫『かすり傷はあるのね』
紫『まあ、良いわ。今開けるわね』
しょうがないわね、て感じに会話が切られる。
それと同時にスキマが開き、それを見た小町たちは目を丸くしていた。
ああ、そうか……二人にはまだ説明してなかったっけ。
小町「さすがに賢者と言われるだけはあるねえ」
映姫「ええ、まだ能力を扱えるだけの力を残していたとは」
妖夢「いえ、これは佐伯さんの力ですよ」
小町「坊やの?」
優希「ああ、うん。その辺は帰ったら説明するよ」
そう言って先を促すと、妖夢を筆頭にスキマをくぐり抜けていった。
それを確認した後、俺もいつもどおりスキマをくぐる。
優希「よっと……」
霊夢「あら、おかえりなさい」
優希「お、霊夢の方も終わったんだな」
優希「おつかれさん」
『楽勝だったわよ』、と不敵な笑みを浮かべる。
そんな霊夢の後ろにはなぜか怯えた様子の新顔が。
霊夢のやつ、一体どんな戦い方したんだ?
……それにしても多いな。
椛「佐伯さん、怪我は?」
優希「ちょっとだけ」
優希「悪いけど止血と消毒を頼めるかな」
うどんげ「これくらいなら私だけで十分ね」
うどんげ「いつもこの程度なら助かるんだけど……」
文「全くですね」
優希「そう言わないでくれって……」
悪態をつかれるのにはもうなれたけど、苦笑いは浮かぶ。
永遠亭を出るたびにこんなやり取りになるんだろうな。
と、とりとめもない会話をしているうちに手当が済んだ。
おお、相変わらず手際がいいな。
優希「ありがとな、うどんげ」
うどんげ「べ、別にこれくらいは普通よ」
優希「さて、それじゃあ落ち着いたところで……」
俺は小町たちと新顔連中のほうを見る。
幾分ましなのもいるけど、さっぱりしたいだろう。
優希「とりあえず、風呂でも入ってきたらどうだ?」
小町「あちゃ、結構汚れちまってるね」
映姫「申し訳ありません……床を汚してしまい」
輝夜「不要な心配よ」
輝夜「うちには便利屋さんがいるし、今は紅魔館のメイドもいるもの」
咲夜「私はあなたの従者になったつもりはないのだけど?」
優希「便利屋さんとはなんだ、便利屋さんとは」
輝夜「あら、つれないわね」
優希「まあまあ、とりあえず皆は風呂に行ってきてくれ」
一同『はーい』
一人だけ生真面目な返事も聞こえたが、間延びした返事と共に移動。
うーん、性格が出るもんだね。
ふー、今日はそれほど動かなかったけど、やっぱ気疲れはするもんだな。
霊夢の淹れてくれていたお茶を飲みながら和む。
幽々子「どうやら無事魂を取り戻したみたいね」
優希「あ、幽々子さん」
優希「おかげ様でね」
動くようになった左腕を元気に回す。
それを見た皆も、ホッとした顔をしてくれた。
心配かけたのは悪いけど、こういう顔見るとちょっと嬉しい。
なんていうか、気にかけてはもらえてるんだなってわかるし。
中でも一番安堵した顔をしているのは妖夢だった。
ま、彼女は今回の件でかなり気にしてたからな。
優希「……それにしても、この異変っていつまで続くんだろうな」
文「どうしたんですか? 突然」
優希「突然ってこともないと思うが……」
優希「そもそもな話、この異変って人為的なもんなのか?」
これは前々から思っていたこと。
どうにも彼女たちの言う異変というのは人為的なものが多いそうだ。
たまーに、自然と封印が解けたとかで起こったこともあるそうだけど。
それを聞くと、これも人為的なものかと思っていた。
だけど、どうにもそういう感じがしないんだよな。
アリス「元凶どころか、どこから発生したのかもあやふやですもの」
霊夢「その辺どうなのよ、紫」
霊夢「いち早く異変を察知したのはあんたでしょ?」
紫「……それが、私にもまだ掴みきれていないのよ」
困ったようにため息をつく紫さんに、皆驚いているようだ。
まあ、なんというかこの人はなんでも知ってるような空気がある。
皆も似たようなイメージを持っていたんだろうな。
諏訪子「だけど、あんたは私たちに警告して回っていたよね?」
紫「ええ、そうね」
神奈子「なら、それほどの危険を感じる予兆はあったはずだろう?」
紫「……正直なところ、それもとある存在からの伝言なの」
紫「あまりにも深刻な様子で嘆願されたものだから受けたのだけど……」
レミリア「では、あなたですらこの度の異変の予兆すら感じなかったと?」
紫「癪に障る言い方をどうも」
紫「……その通りよ」
魔理沙「珍しいこともあるもんだが……」
魔理沙「霊夢や紫が気づかないんじゃ、誰もきづけなくて当然だな」
そんな魔理沙の言葉に、皆『確かに』と頷いていた。
まあ、霊夢はよくわからんけど紫さんは監視者とかいってたもんな。
しかも万全なら幻想郷各地を飛び回れる程の能力だ。
そんな彼女たちでも気付けない異変。
どうやらそれはかなり異常なものらしい。
霊夢「ちなみに、そのとある存在っていうのは?」
紫「姿は全く見えなかったわね」
紫「ただ、存在感というのかしら……そこにいるというのは分かったわ」
慧音「阿求殿、あなたの幻想郷縁起にこのような事は?」
阿求「申し訳ありません……能力の関係か記憶に靄がかかったようで……」
阿求「ですが、幻想郷縁起に何か記されているかもしれません」
霊夢「頼んだわよ、阿求」
阿求「はい」
優希「えっと、その幻想郷縁起ってのは一体?」
阿求「言ってみれば、幻想郷で起こった事や人物などについて記した書物です」
阿求「私は代々、それを書き綴っているのです」
優希「へえ、いわゆる歴史の本みたいなもんか」
阿求「そうなりますね」
優希「そういや、阿求の能力って?」
阿求「一度見たものを忘れない程度の能力です」
優希「お~……勉強にはすごく羨ましい能力だな」
間違いなく外の世界なら神童と呼ばれるだろう。
そんな能力だが、幻想郷においては知識のみで弱い扱いだそうだ。
なんとも不思議なもんである。
とはいえ、望んだものを具現化する俺のほうがとんでもないか。
優希「俺の飴とか霧でも無理そうか?」
阿求「試す価値はあると思いますが……」
阿求「時間はかかっても、実際書かれた書物を紐解くほうが確実だと思います」
優希「そりゃそうか……うん、悪いけど頼むな」
阿求「ええ」
小町「いやーいい風呂だったねえ」
映姫「小町……あなたはもう少し慎みを覚えなさい」
映姫「私たちは居候の身なのですよ」
優希「っと、帰ってきたみたいだな」
思ったより長い間話していたらしい。
廊下の方から聞こえる話し声に一度話を打ち切っておく。
ちょっとしてから、小町や映姫と共に新顔も顔を出した。
映姫「ありがとうございます……すっきりしました」
小町「ひとんちの風呂もたまにはいいもんだね」
輝夜「お気に召したようで何よりね」
優希「えーっと、ちょっといいか?」
一同『?』
優希「皆は顔見知りなんだと思うんだが……一部しらんのがいてさ」
優希「自己紹介してもいいか?」
新顔は……ざっと数えても20くらいはいるな。
これはいろいろと骨が折れそうだな……。
そんなことを考えながら、その日の夜は更けていくのだった。