落第騎士の英雄譚–力の求道者–   作:黒乃 柳

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今回から初めてルビを振ってみます、回としては普通ですがジジイキャラ、前回より2000文字少ないのが苦手な方は注意して下さいm(_ _)m


デート前日–暴かれる願い–

『…起きよ…』

 

 

…誰だ…?

 

 

『……我は想厳…其方の対存在…表裏一体(光と影)にある存在…』

 

 

………そうか、前に逢ったな…?

 

 

『…うむ…、我は我が見定める世界のある特殊な場所で其方の事も見ていた…』

 

 

…悪趣味な奴め、…俺の対存在という事は御前も…

 

 

『……そうだ、我もまた其方と同じ力を求め解脱を果たした身…此の世成らざる存在。』

 

 

……俺は…

 

 

『だが…其方は我と違い"友"を得た、故に今…其方は苦しんでいる。』

 

………

 

『…我には巫女である妻が…其方には白き騎士が……我が対存在よ、先人として忠告してやろう、今一度原点に還るが佳い…。

力があるからでは無い、其方の心を見失うな……でなければ…我の様に成るぞ、奪われ続けた結果…妻が居なければ世界の"全て"を破壊する権化にな。

あァ…我以外にも精霊達が居る世界ではもう一人産まれようとしているがな…無邪気で其れ故に手に負えない破壊者が。』

 

 

ッ…俺は……そんな事…!

 

 

『………愛する者達の為に劔を振るい、我が得られなかった存在…信頼し合う友とやらと共に歩め…討つべき存在は……—————。』

 

 

待て…何処に行く…!

 

 

『……あまり…干渉…し…ら…———。』

 

 

く…ッ!

 

 

「ッ…待てッ!」

 

 

「…………」

 

 

ふにゅんッ!…と掴むは彼が愛する存在の胸ではなく昨晩部屋に止めたステラ・ヴァーミリオンの胸だった

 

 

「い…ぃ…イッ!」

 

 

「ま、待て…不可抗力だ…!」

 

慌てて手を離し無実を訴える悠騎、然し慌てて引っ込めた腕…正確には指が朝シャンをしたばかりの彼女を覆う唯一の聖域(タオル)に引っ掛かり聖域を引っぺがす…!

 

 

「…………ステラ…殴ってくれ」

 

 

指の間から垣間見るは友人の裸体、弁解はするが言い訳はしない…見てしまったものは見てしまったのだから

 

 

「イッ!イヤアアアァァァッッ!?」

 

 

ぱぁンッ!

 

 

(…一輝の痛みを体験するとは……)

 

頬に痛みを感じ久方ぶりに日常に戻ってきた気がする悠騎、だが…

 

 

「……………悠騎…少しお話があります…」

 

ステラの背後に何処か冷たい…否、冷たさの中に全てを焦す様な焔を秘めた番、エーデルワイスが悠騎を見降ろし手招きしている、あぁ…死ぬな、と絶対的な死を感じながら

 

 

「…否、せめてステラが着替える迄は…な?」

 

せめてもの時間稼ぎ、御仕置きされるにしても友人の裸体が見えない時が良いと懇願するが笑顔のエーデルワイスと羞恥に顔を染めたステラの両名に片腕ずつ引き摺られ奥の部屋へと連れて行かれる様は某宇宙人確保の絵面を連想させる…。

 

「「……問答無用…ッ!」」

 

ぱしィン!

 

ばちンッ!

 

両サイドからのダブルビンタ、此の二人…一ヶ月の間に息の合った師弟となったなと、薄れいく意識の中思考は彼にしては下らない事を思っていた

 

—————

———

 

 

「……今朝はすまない、故意では無い事は理解して欲しい…」

 

「………ふん、ユウキのエッチ…!」

 

午前の授業が終わり故意では無いと謝罪するもステラは未だ立腹中、恐らくエーデルワイスに至ってはにこにこと微笑みながら手薬煉を引き悠騎を御仕置き…基、監禁する準備を進めているだろう

 

 

「あはは……ま、まぁステラもさ、悠騎君もこうして謝罪してる訳だ「イッキは黙ってて。」…はい。」

 

御免、と口パクしてくる一輝に感謝の念を込め軽く頭を下げる悠騎、元々は自分が引き受けた彼女の願い事だ…気になる相手というのが誰かは気になるが依頼はきっちりと熟すのがプロの第一条件…まぁ、無理だと判断したら誠意を持って辞退するのも条件の一つだが。

 

「……その…俺に出来る事なら何でも言う事を聞くから…機嫌を直して欲しい、ステラだって嫌だろ?明日は君が望んだデートなんだ…」

 

あくまで加害者である自分が悪いと誠心誠意を以て謝罪する悠騎…だが、"何でもする"と言ったら彼女が何を言い出すかは一輝が痛い程解っていた

 

 

「……何でも?今何でもって言ったわね?」

 

 

「……あァ、俺に出来る事なら…と、言った後にな?」

 

本能的に地雷を踏んだ、と思った矢先笑みを浮かべるステラ…然も、何かを企んでいる笑みだ

 

「……——なら、ユウキ…貴方が抱えてる事を教えて?エーデから貴方の事を聞いても関係無いって言われるだけだもの……イッキも、知りたいわよね?」

 

突然話を振られるが一輝は「そうだね…何でかな?」と悠騎を見詰めてくる、4つの瞳に見詰められ悠騎は少しだけ間を置く……

 

 

(……如何する?…少なくとも彼等には知る権利がある……だが……)

 

 

知ったとして、其れが災厄の火種にならないとは言えない…寧ろ彼等にとっては知らない方が良い知識である可能性がある…。

 

4つの瞳には自分を心配している眼だ、其れが解らない程悠騎は絆を軽視してはいない

 

—だからこそ、…護りたいと願うからこそ悠騎は微笑む

 

 

「……まぁ、何だ…ちょっと仕事が行き詰まっていてな…ストレスでも抱えていたのだろう。でも、もうそろそろで片付くとは思うから心配しなくて良い…すまないな?」

 

 

…明らかな嘘だ、本当は…何時解決するのかさえ解らない…否、解決出来る問題かすら定かでは無い…少なくとも一輝が七星剣王に君臨する迄彼は定められた未来を歩む腹積りでいた

 

 

(………誰かは解らない、が…ステラが結ばれるのは一輝だ……彼等の未来は…俺が…ッ!)

 

 

「……そう……。(…貴方は…またそうやって…)」

 

定められた未来、多少の違いはあれど大まかな流れは変わらない…一輝とステラの幸せ…其れが自分が初めて友人に出来る祝福…其れを成す為なら此の身を嘘吐きと貶められても構わない、と悲しい覚悟を以て…更に自分を戒め表面では微笑む、そんな彼に内心歯痒く思いながら…同時にこれ以上踏み込めないでいる自分に苛立つステラ

 

然し、一輝は核心を突いて問い質す

 

 

「そっか、でも此の間の剣はストレスなんかじゃないよね?——まるで、君の身体に君と誰かが同居してる様な…君は君である筈なのは確かなのにその誰かが介在して剣に君の感情が薄れている様な…不可思議な感じだよ。」

 

完全掌握…桐原戦で使った対象の思考すら読み取る技を用い後日見た映像の感想を述べる、つまり一つの身体に二つの存在が居ると言っているのだ、此れにはさしもの悠騎も慌てた

 

 

(……凄い奴だよ、御前は……でも…ダメなんだ…)

 

 

教える訳には行かない、傷付けたくないから……喩え、其れが星に定められた事であっても…二人の幸せを願うのは彼が"彼"で居られる間の唯一の願いだから…。

 

 

「……まぁ…それはな、元々二種類の霊装を使う等前代未聞なんだ、そういう事もあるさ」

 

二人とも苦しい言い訳だと思いながら彼が此処迄して押し隠そうとしている悠騎にこれ以上は何も言えずに予鈴が鳴る…

 

 

(……本当に…すまない…)

 

折木講師の授業を受ける悠騎、謝罪するは二人の友人……否、隠し事をしている時点で彼等にとって自分はもう友人では無いだろうと悠騎は思い始めていた…

 

其れでも、唯一残った(きぼう)である彼等を悠騎は己が意識が無くなる迄護るだろう、…ヒトを愛する喜びを教えてくれたのは番以外にも…あの日、自分を止めようと奮起した4人…彼等の為なら自分は…ヒトとしての死はとうの昔に覚悟出来ているのだから。

 

—————

———

 

放課後

 

 

「……やれやれ…学級委員も大変なんだな、代理等二度と御免蒙る」

 

 

「まぁ、折木先生が倒れた時の迅速さを買われた結果だからね…よし、終わった」

 

 

「……すまないな…助かる…」

 

 

体調不良で倒れた学級委員の代わりに機材を片付けるべく一輝と二人きりになった、「良いよ」と微笑む一輝に罪悪感を覚えせめて自分の本心だけでも…と口を開く悠騎、だがそれは意図せずしてかなり核心に迫った言葉

 

「……一輝…もし、もしも決して抗えないものに押し潰されそうになっても…今の御前を貫け、…ステラは少し怒りっぽいし何だか…受け?みたいな処もあるが凄く良い娘だ…だから……彼女「…《悪魔》…黒之悠騎さん、ですね?」……後にして欲しいのだがな…《雷切》…藤堂刀華。」

 

 

最後まで言い切る前に話を区切られる形で背後から声を掛けられ振り向いた視線の先には現生徒会長にして最強の学内騎士、藤堂刀華だ。

隣には副会長の御祓泡沫も同伴している

 

 

「御免なさい、少しお話をしたかったものですから…」

 

「………今は彼、黒鉄一輝との話が俺にとっての最優先事項だ…その後であれば…」

 

 

頭を下げる刀華に申し訳なさそうに頭を下げ返し其れでも一輝との話が大事だという悠騎、だが彼女の幼馴染である御祓は誠意は感じれど面白くはないだろう…何より一輝も週明けに試合を控えていた、一輝の方から申し訳なさそうに頭を下げる形になる

 

 

「御免、悠騎君…話の続きはまた今度でも良いかな?…きっと君の様子がおかしい事に関係はあるんだろうけど今は少しでも対戦相手の事に心血を注ぎたいから……」

 

 

「……そうか、いや、俺こそすまなかった、あまり無理はするなよ?」

 

 

ありがと、と微笑む友人を見送り溜息を漏らす…くすくすと笑う声が聞こえるが気にする事も無く振り向く

 

 

 

「…待たせたな、で…話とやらは此処で良いのか?」

 

 

「んー取り敢えず生徒会室に行こうよ?僕脚が怠くなっちゃったし」

 

笑い声の主、御祓は早く早くと無邪気な体を装い悠騎に対して己が伐刀絶技、絶対的不確定(フィフティ/フィフティ)を発動させ彼を転ばせようとするが…

 

 

《…我が主や其の友に危害を加えるとあらば…——其の身、煉獄の焔で焼き尽くされる覚悟はあろうな?》

 

 

『やれやれ…ヒトには未だ因果干渉は速過ぎる玩具(オモチャ)かもしれぬ、——冥界への船出…余自らが其方の為に出してやろうか?』

 

 

「ッ!?」

 

能力を無効化された気配を感じ其れと同時に脳に直接響く不気味な声と強制的に鮮烈な迄に焼き付いた黒い鎧を纏った翼の生えた巨人の老人、手には大きな鎌と何故か三叉の槍を構えており其れ等を一言で現すなら絶望以上の化物(ナニカ)…関わったら死ぬ、恐らく目の前の男自身に悪意は無いにしろ巨像が蟻を踏み潰しても意にも介さないのと同じ様に……ましてや、"敵"と判断されたら確実に。

 

 

そんな絶望を抱き華奢な身体を震わせる御祓に悠騎は微笑む……最大限の警告(おどし)を以て。

 

 

「……俺は別に構わない…其れこそバケツ一杯に入れられた水をトイレでぶっかけられようが画鋲の山を靴に仕込まれようが……自分が可愛がっていた生き物の死骸を机に忍ばせられようが……其れら思い付く限りの仕打ちはとうの昔に体験した事だ。笑っていてやるさ。

 

だが…俺の愛する人達に今した事と同じ事をしてみろ、——貴様を冥界の果て迄追い掛けてでも"確実に消す"…尤も、彼等には御守りとして俺が持たせたあるものがある…数回程度なら問題無く無効化(破壊)するだろうがな。」

 

 

「…わ、解ったよ……もうしないってば。」

 

 

微笑みと言葉の端々から感じる威圧感、彼としてはほんの悪戯程度だが藪蛇というか何というか…だが、此の遣り取りに無言だった刀華はくすりと微笑む

 

「…矢っ張り、想像通りのヒトですね、夜空に浮かぶ月の様に…太陽みたいに終始苛烈では無いけれど静かに…見えない処で皆を照らす月明かりの様なヒト……」

 

「……買い被り過ぎだ、俺はあんた達の同胞を一度は殺した。第一…「昔から悪振るのが巧いですわね、黒之さん?」…御前迄来るとは如何いう風の吹き回しだ?《紅の淑女》…否、昔の馴染みで貴徳原…とでも呼ぼうか?」

 

 

微笑む刀華に自分はそんなに良い人間ではないと首を振った矢先、一輝が去っていった方から嫌な記憶を思い出させる女に腕を組み視線だけ寄越す

 

「お任せ致しますわ、其れにしても死んだと思われていた貴方が生きて帰って来るとは思いませんでした。……昔の事、未だに根に持っていらっしゃるのですか?」

 

くすくすと笑う貴徳原に「別に、御前は無関係だっただろう?」と返す……此の二人、実は家(但し祖父の)ぐるみで交流のあった仲で彼が虐められていた事を知っている今となっては貴重な人物だ…尤も悠騎はこの人物は昔から好まない

 

「ふふ…可愛かったですわね、昔の貴方は…同い年だというのにまるで女の子の様に小さくて愛ら「………黙れ、蹴り飛ばすぞ」…ふふふ…本当に懐かしい」

 

 

昔から悪戯好きなこの人物に何れだけ汚泥を味合わされた事か…、何より昔から誕生日等気にしない悠騎と違い子供らしく無邪気に楽しみにしていた春姫の誕生日に毎年来ていた友人の一人なのだ、如何しても嫌な記憶が蘇る

 

貴徳原と悠騎の遣り取りに険悪な空気を感じた刀華はこほん、と咳払いをし

 

 

「……取り敢えず、一度生徒会室迄一緒に来てくれますか?」

 

…気付けば囲まれる形になっていた、否、全くの偶然だし本人は気にはしていないらしく「…解った」と同行する形で生徒会室に向かう事になる

 

—————

———

 

 

「……で、何の用だ?まさか昔みたいに御遊戯でもしよう、何て訳ではないのだろう?」

 

 

何やら用があるという事で刀華は途中で別れ貴徳原、御祓の2名と生徒会室で身体を鍛えていた兎丸、そしてもう1人…先日自分が斬り捨てて命を落とし掛けた…

 

 

「…相変わらず、不遜な物言いだな。」

 

 

砕城の4名と同じ空間にいる

 

 

「…気に障ったというなら俺も同じだ、呼び付けておいて待たせるというのであれば最初から其処に居る猫っぽい奴か貴徳原を寄越せば良い…呼び出しに応じる応じないは内容次第だがな。」

 

 

「ちょッ!猫っぽい奴って誰の事さ!」

 

 

「貴女の事じゃないかしら?まぁ…彼の言い分にも一理ありますわね、ですが生憎昨日は貴方が見付からず仕方なく今日になってしまったんですの。」

 

ゴムチューブを引っ張り身体を鍛えていた兎丸に視線を向ける、次いで貴徳原の説明に一応の納得をして砕城へと視線を向け

 

 

「…………身体、大丈夫か…?」

 

 

「な、何を言っている?」

 

 

「…その後、指や関節はちゃんと動くのか?と聞いている」

 

意表を突かれ目を丸くする砕城、無理も無かろう、自分を斬った相手に心配されているのだから……然し、彼に敵意や殺意、まして下に見る様な様子は感じない…憤慨する前に困惑しながらも頷く

 

 

「……大丈夫だ、寧ろ前より調子が良い……何かしたのか?」

 

「………そうか、…時間は凡ゆるものを退化させると同時に成長させる…あんたや其処の猫は常日頃身体を虐めている様に見受けられたからな、再生させる時に筋肉の疲労を無くし代わりに成長させた……要は筋肉が必要な休眠と成長を同時に行わせただけだ、動きが良いと言うのであれば其れは俺ではなくあんたの努力の賜物さ」

 

「だから猫って言うなーッ!」と唸る兎丸にくすくすと笑う貴徳原、本を読みながら興味深そうに悠騎を見る御祓…砕城は呆気に取られながらも黒之悠騎という人間を再評価する、自分を打ち負かした冷酷な面ではなく、"ヒト"としての彼を

 

 

(……プライドが高く他人の命を何とも思えない傲慢な奴かと思ったが…成る程、他者の努力を見る観察力、其れを認める器量……内に秘めた優しさ……会長が選ぶ訳だ…)

 

 

「……また、戦ってくれるか?今度は…最初から剣士として」

 

 

無意識に出た科白、あの様な無様な戦いではなく喩え一合でも良い……此の強者(怪物)と戦いたいと強く思う

 

 

「……あァ、やろう。あんたや其処の猫…一輝の様な奴は個人的に好きだ、自らを高める事に余念の無い奴は高く評価する」

 

 

「コロス…ッ!て、す、好き!?」霊装(デバイス)を出すも慌てふためく兎丸の頭を傘で叩き嗜める貴徳原、戦わない主義の自分には良く分からないけど…嫌いな雰囲気ではないやと本のページを捲る御祓…戦場以外なら仲良くやれそうだと笑う砕城等と友好を深める皆の様子をドアの隙間から覗く刀華は微笑みを浮かべる

 

 

(思った通り、普段の黒之さん()は良い人みたい……正しい強さを持った騎士、後は私が彼との試合で見極めて大丈夫なら…私の後任を任せられるかも)

 

 

生徒手帳に来たメールで確認した画面を観て刀華は畏れと同時に期待に打ち震える…待ち焦がれた二人の内一人(悠騎)との一戦が来週、遂にやってくる、と。

 

 

—————

———

 

「……遅いですね」

 

愛しい彼…悠騎を彼の部屋で待ち侘びる、行ったり来たりを繰り返すのは面倒だろうという事で彼が人為的に作り出した空間の歪みを通り宗我に与えられた家の居間と彼の部屋、かなり便利な能力だと思う反面最近更に力に磨きを掛けた悠騎をほんの少しだけ心配する

 

 

(……過ぎた力は周りを傷付ける…貴方は既に…此方(魔人)側なんですよ?悠騎…。)

 

 

愛おしい彼が傷付く姿は見たくない…此の儘では七星剣舞祭迄彼の精神が保つか如何か…

 

 

「何やら悩んでおる様じゃのぉ?」

 

「………私が言うのも可笑しい気がしますが…犯罪ですよ?不法侵入は。」

 

 

突如現れた銀髪の青年…否、青年期で刻が止まった老人、黒之宗我に視線を向け肩を竦めてしまう…悠騎もこうなるのかと思うと少しだけ嫌な気持ちが胸に渦巻く

 

 

「ほっほ、堅いことを言うでないわ…然し、見事に何も無い部屋じゃのう…——して、彼奴の様子は如何じゃ?」

 

 

ソファーに座る宗我は曲がりなりにも悠騎の祖父、黒鉄一輝の曽祖父と同じ時代を生きた男とは思えぬ若々しさ…否…此れも彼等の血が成せる呪いか。

 

「……最近は私ですら負ける程自分自身の力を扱える様には成りました、ですが…彼の精神が《クロノス》を抑え込むのか如何か迄は……其れに、彼の中の《クロノス》と会話をして気付いた事があります………貴方は気付いているのでしょう?」

 

「……まぁ、今代に二人の《クロノス》が居る等本来はあり得ぬ話だからのう…早急に跡目を継がす必要があるが……ある意味、アレが口にした事は事実じゃろうよ、間違いがあるとすれば彼奴の…「お邪魔しまーす…あれ、その人誰?」…何じゃ?この別嬪(べっぴん)なお嬢ちゃんは?」

 

ドアを開けて入って来たのはステラ、昨日から彼女が抱く問題を解決する迄は此の部屋に寝泊りするエーデにとっては邪魔な存在

 

 

()けたんですか?…彼女はステラ・ヴァーミリオン皇女です、貴方も一度位は御逢いしているのでは?」

 

 

「おーおー、ヴァーミリオン皇国のちんまい娘っ子()の方か!いや〜大きくなったもんじゃのぅ?」

 

 

得心を得たと頷く宗我、その様子に当のステラは困惑気味だ

 

 

「えっと、貴方誰?如何して私を知ってるの?」

 

納得の一言だ、何処となく悠騎に似た雰囲気だが…何処か得体の知れない存在感に警戒する

 

「うむ…儂は黒之宗我、一応悠騎の祖父じゃ。《時空の翁》と呼ばれておるが、そーちゃんでもガッちゃんでも好きな様に呼んどくれ?昔は縁あって御主の父君とも逢っておる故知っておるんじゃよ」

 

「《時空の翁》って…大戦時は翼の生えた鎧を着て戦いに不向きな大鎌を持って何千何万もの軍勢を一振りで斃したっていうあの…!?」

 

二つ名を聞き驚愕を隠せないステラ、仮に話の通りならかなりの高齢の筈…にも関わらず目の前の生けし英雄(宗我)は若々し過ぎる

 

お?儂って有名人かのぅ?と調子に乗る宗我は「仕方ないのう〜、お嬢ちゃんは可愛いからサービスじゃ」と、己が霊装(クロノスの聖衣と大鎌)を顕現させ本人たる証を立てる

 

 

「……調子に乗り過ぎです、…全く、仮にも"私の"義理の祖父になるのですからもう少し落ち着きを持って欲しいものです。

——ステラも、そう思いますよね?」

 

 

ずきッ!

 

 

「………そうね、…ソウガさん…聞きたい事があるんです」

 

 

「ほほぅ…何かの?彼奴の娘じゃ、この老ぼれに答えられるなら教えるぞい?」

 

 

嫌な感じがした…ステラは胸の中の痛みを堪える様に胸に手を当て彼女を物珍しげに見詰める宗我を見詰め返す

 

 

「……ユウキは……うぅん、ユウキと貴方は一体何なんですか…?神とか現人神とか…一体何なんですか…!?」

 

「……ステラ、貴女が知る事は無いと昨日「——佳い、聴かせてやるのが此の女子(おなご)の為じゃろう…彼奴は自らの命を落としてでも聴かせんじゃろうがな。」……………貴方方血族がそう言うのであれば。」

 

一瞬殺気立つエーデを制するは飄々としたおとぼけ老人(じじい)ではなく英雄として名を馳せた(おとこ)の顔でステラを真摯に見詰める

 

 

「…お嬢ちゃん、一つ確認じゃ……今から話す事、此れは龍馬や海斗にしか教えんかった事なんじゃが……

——御主は真実を識る覚悟があるかの?彼奴の…否、世界の(ことわり)を含め…彼奴が何故…御主等に真実を語らず壁を張っておるのかを」

 

 

厳かな空気…否、英雄、黒之宗我が持つ本来の雰囲気に呑まれまいと彼女は確りと見詰め返す、其れは…失いたくないからだ、現在(いま)という大切な時間を。

 

—何より、一発殴ってやらないと気が収まらないと此の時は思っていたから。

 

 

「……はい、私も…イッキも、皆も…彼を救いたいから…だから…教えて下さい。大好きな彼(悠騎)の事を。」

 

 

「……ッ!」

 

 

エーデとステラの間に何かが弾けた様な視線が飛び交う、好きの意味合いにも幅広いものがあるが女としてのソレだとエーデは感じ取り凄まじい迄の敵対心…否、憎悪を向ける

 

 

「……今更彼奴の祖父面をするつもりは無いが…愛されておるな、力があるからと一族の習わしを押し付けた身では今更祝えぬが…、佳かろう、御主の識りたい事…其の全てを……彼奴の望みを観せてやろう…!」

 

 

生活必需品以外一切無い簡素な部屋にある写し鏡、其れに手を翳し垣間見せるは事の始まり。

 

 

——遥か昔、全宇宙を"最初"に統べ原初の神々の王たる存在、身体に無数の銀河を纏いし天空神ウラノスの行いを嘆いた母なる存在に"命じられ"王位から引き摺り下ろした(クロノス)

 

そして…自分や悠騎こそがその(クロノス)の末裔であり日本は疎か世界にも名が通っている大財閥の家の出である事。

精神や魂の内側に神を発露させた者を神性覚醒者(クロノス)と呼ぶ事、更に…悠騎の場合彼が育った地で破壊を司る神、《シヴァ》の力も継承した謂わば二重神性覚醒者(デュアル)である事……事の発端、其の全てを刻観(ときみ)の力で鏡に映し出す。

 

そして…彼が、一輝やステラ、珠雫、アリスの4人を心から愛し…其れ故に一輝が七星剣王に成りステラと添い遂げる未来…自身が垣間見た未来(結末)を見届けた後

 

——自らの…自分(悠騎)としての存在を消滅させ、自分が受けた様な苦しみを後世のヒトに味合わせぬ為に《デュアル》として全ての善なる存在を救い新たな名前を持つ神として歩まんとしている未来(神話)も。

 

 

 

 




初ルビなので修正の可能性は大です、次回は皆様の想像通りで予定調和な話…になるかは解りません、書いてる時は結構面白がりながら書く質なので(笑)
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