「ふぅ…ふぅ…ッ…」
「穢されても可愛いですよ、悠騎…」
ぴくンっと跳ねる身体、というか水着姿の彼に指先を這わせるエーデ、ステラは一輝の身体と悠騎の身体をある意味堪能した訳だが…
「…やっぱり…男の人の身体ってしゅごぃ…ッ」
悦に浸る淫ピ…
「問題ありません、寧ろ起きられると逆
——さて、そろそろお遊びは抜きにして…真面目な話をしましょうか?」
…左様ですか。
身なりを整え優しく自分の最愛の
「…ユウキの中の《クロノス》…ね、
「…彼は言わば
「!…まさか…《アダマス》?
あり得ないと首を振る、だが…思えば霊装の変化も彼の変化の原因でもあると頭を抱えるステラ
エーデもこの辺りは俄かには信じられなかったが、否、難しく考え過ぎたのだ、二人とも
「
そして宗我は言いました『儂等と起源を同じくする者は《アダマス》の名を冠する武具を顕現出来る』…と、恐らく…いえ、十中八九覚醒を
言い切って先日の戦いを思い出す、来ると解っていても其の剣速と全身の力を使って振り抜かれる一撃は唯の唐竹の風圧でさえ山を潰す…然も、あれで未だ本調子では無い、といった物理で殴るを馬鹿の様に体現した剣技に《悪魔》として培った技術が合わされば自分にすら手に負えない。
そう言うエーデは悠騎の髪を慈しむ様に弄りながらも何かを決意した様な瞳で彼を見つめている。
「…私と似たタイプの剣士かと思ったけど、違うの?」
「確かに似てはいますが規模が違います、其れに加えて彼は未だ"能力の真価"を見せていない。
星が定めた運命からしたら私達魔人よりも厄介且つ最強のジョーカーでしょうね、何せ自らが定めた能力・概念・運命すら捩伏せる生きた"力"の具現体…故に、彼等は現人神と呼ばれるのですから。
いえ、寧ろ限定的とはいえ小さな"願望機"というべきでしょうか…本人に自覚はありませんが。」
少しだけ未来のステラ、彼女は己が能力に気付き"ドラゴン"として骨を溶接する事が出来るが悠騎は自らの傷を"繋ぐ"等生温い事はしないだろう
——何故なら彼の場合、在り得た
遣ろうと思えば人類抹殺等椅子から動く事も無く出来る…謂わば彼の能力は時空間を司り其れを操る事で幾つかある未来の可能性から"結果"を導き出す事が出来る"小規模な願望機"なのだ。
其れも、生きて自ら其れを為せる事が出来るという厄介極まりない存在である。
何せ魔人ですら"外側"に至る前の、其れこそ存在する過去を潰されるだけで消滅するのだから。
尤も、ヒトとしての
仮にしたとしても無辜の人々の祈りを聞き届けた上でヒトの手助けをするだけ、おんぶに抱っこ等ヒトを衰退させるだけだと自らの経験則から弁えているから。
——だが、其れはあくまで"悠騎"として。
彼の内に
本来の力を取り戻した上で尚且つ必要に迫られれば何をするか解らない面も大いにあるのだ。
「…
無論私は彼も悠騎の一部と見た上で接していますが…未来でのあんな姿を見た手前、最早原因の先送り等出来ません」
「エーデ……其れで良いの?」
悠騎を想う気持ちは強い、だからこそ自ら"嫌われ役"を買おうとしているエーデを哀しげに見詰めるステラ
だが、今この瞬間を有効活用しない手は無い…それに
「…私だって、彼を救いたいんですよ?
——大丈夫です、
「…そっか…なら、私次第、ね…今更、恥ずかしいけど…」
強い
「…美味しい処は譲ってあげるんですから我慢して下さい。それに、こうでもしないと悠騎は"捕まえられませんから"」
「うぅ…わ、解ってるわよ……後で茶化すなんて無しだからね!」
「さぁ?それは如何でしょう?——何はともあれ、計画開始です。」
二人の乙女が動く、愛する
—————
———
「…ふぅ…良い湯だな…」
気が付いたら夕方を過ぎていた、何故か身体中がひりひりするが恐らく日焼けでもしたのだろう…如何やら介抱してくれていた二人の了承を得て汗を流すべくコンタクトを外し洗面台に置いて一人湯船に浸かる俺は銀色の瞳を水面に映しながら
——余は記憶にある
「——若しくは…
海の
「はッ、今更過ぎた事を言うつもりは無いがな、オケアノスよ…仮に今代、目の前に其方やテティス、メティスが現れたなら破壊の概念しかない亜空間へと閉じ込めてくれよう…永劫の苦しみを…。
——積年に渡る
俺の中の
それ自体に同情も弁解もしない、事実は事実だ…言い訳はしない。
—だが、長兄の癖に兄弟を纏めず
此の大地そのものを"星"と仮定するのならば、今現在
親の間違いは子が糾すのが道理であるにも関わらず…何もせず…否、
「一輝…御前と俺が兄弟なら…俺は此処迄悩んだのだろうか…」
あり得ない…もしもの話で場を濁す、だが、もし
「…さて、そろそろ出るかな…っ!?」
ふと、浴槽から出ようとした矢先、先程プールで見た水着を着たエーデとステラのシルエットが見え慌てて浴槽に戻ろうとするが…
「——長い独り言は済んだかしら?
「な…ッ!?」
ガシッと腕を掴まれ引き戻される、振り解くのは造作も無い、造作も無い…が…っ
「…私達に怪我をさせまいとして思い切った行動が取れない…その甘さが貴方の美点であり欠点ですよ、悠騎…」
「エーデ…!?何で…ッ」
何で…!ステラが《クロノス》の事を知っている!?…そう問い質す前にステラが妖しく笑う
「…知らないのはユウキよ、私がどれだけ…!」
貴方を好きでいるか…無理矢理抱き寄せられながら耳許で囁かれた、意味を理解するのは簡単なのに…数秒だけ思考が停止する…
…!?
「……私が…ステラ・ヴァーミリオンが好きなのは黒之悠騎、あんたよ……大好きなの…貴方が…!」
ちょ…待って欲しい…!
「ダメだッ!俺は…俺だけ、は…絶対ダメだ!俺は…エーデと約束したし何よりその約束を果たしたいッ、それに…君は一輝と結ばれなければならない…!それがッ『"正しい未来"…だから?』っ……君は…一体何処ま…んン…ッ!」
片腕を掴まれ顎を強引に向けられ無理矢理唇を重ねられる、エーデの時の様に舌こそ
「こん…ひゃの…らめ……ッ!」
「…何がいけないんですか?いい加減気付くべきでしょう、悠騎も、
——貴方の真の強さは戦闘力ではありません、
が、貴方の弱さは…いえ、罪は…"自分と同じ強さ"をヒト全体に求める事。
ヒトは…
な、にを…?
舌が
(戻れなく…なる…っ…一輝とステラ……未来…ッ)
「……ステラは…全てを知っていますよ…
(!?)
貴方の出自も
(やめろ…)
貴方の過去も
(やめろ…っ)
貴方の苦しみも
(やめて…くれ…ッ)
そして…——
(やめ…ッ!)」
…最愛の女は哀しげに語る…俺に…俺自身が気付かない事を突き付ける様に。
「……っ…っ…」
此処迄聞いて悟れない程俺は馬鹿では無いつもりだ…哀しげに俯き力が抜けたステラから身を離し振り返り俯いた侭必死に笑顔を作ろうとする…否…笑えているのかすらワカラナイ…ッ
「……裏切った…のか…?…余を…あの
(余は…また…裏切られたのか?!)
(違う…!裏切ったのは…ッ!)
片腕を翻す…《絶掌》の気配を感じた俺は片腕を掴み制するが…ッ…邪魔をするなッ!余を…余を裏切る者は妻であれ子であれ…親兄弟でさえ赦さぬッ!!
「ユウキ…ッ!」
翳した腕に
(ぽろぽろと眼から水が出る…余の身に何が起きている…?——だが、今は…このうらぎりものを…ッ…!)
(止めろッ!裏切ったのは…っ!俺だ…ッ!!昔の様に…今度は彼女達を傷付けるというのであれば俺は
「貴方を…いえ、"貴方も引っ括めた黒之悠騎"の全てを愛する者の務めです。
——《クロノス》…悠騎、貴方達を愛しています…喩え血に染まろうと…私は…私達が貴方達を愛し続けますッ!」
ぎゅぅ…っと下半身をタオルで覆い隠しただけの俺を…
…余達を優しく抱き締める…愛しい温もり……あぁ……
(…誰かに…心の底から愛されたかっただけなんだ…な…
—————
———
精神世界とでも言うのだろうか…壊れた砂時計が何十…何百と転がる世界で同じ顔をした男が向き合う、先程迄裸に極めて近い彼等は鎧を纏い対峙していた
まるで…合わせ鏡の様に。
(…母に言われるがまま父を王座から引き摺り下ろし…愛情を与えられる筈の父から呪詛の言葉を贈られ…恐慌に陥りながら子を呑み込み続けた結果
男の一人…銀髪と銀の瞳をした男は嘆く、こんな筈では無かった…自分は精一杯護ろうとした…兄妹を、母を…そして地上の民を、確かに黄金期と呼ばれる時代を創り上げたのだ、彼の尽力は並々ならぬものだろう
だが、結果は…子を呑み込む狂王として
全知全能?笑わせるな、武器の扱いと女癖の悪さだけは一丁前な愚息が…ッ
女の嫉妬で地上に
(あァ…そうだな、…その苦痛も…嘆きも……無念も…想いも…未来の人間に嘘偽り無く識って欲しいから
最初は…嫌だった、途方も無い力に振り回されていたが…蓋を開けてみれば唯のお節介で…思い遣りのある存在、だが…その涙を見て確信した。
彼はただ…
(余は…本当は……愛されたかった…!愛されたかったのだ…余は…ッ!)
確かな愛情が欲しかった、エリュシオンで幽閉などされずに…ただ、家族として酒を飲み交わす事を望んだのだ
だが…果たしてそれは皆が理解できたのだろうか?
呪詛を掛けられた者にしか解らぬ苦しみがある様に…掛けられなかった者の苦悩もある…掛け違えただけだとしても、最早過ぎ去ってしまった時間は元には戻せない。
だから、黒い瞳、射干玉の髪をした男は毅然と…真っ直ぐにもう一人の自分に…胸の奥から溢れる
(
この手は…この力は、愛しい
この手は…今度こそ大切な者達を護る手でなければならないんだよ…勿論、例外はあるけどな。)
この力は…手は、血に穢れて尚…誰かに差し伸べる事が出来る、否…昨日言われたでは無いか?『自分の心を…見捨てるな』と
ならば…俺は見捨てない、力を求め掴もうとしたこの手は力と心を得た。
なら…護るんだ、何があっても…と静かに微笑む男に神の王と呼ばれた存在は首を振る
(…護る?そんな事出来るものか…ヒトと神は違う…何より余達は巨神…ヒト等何れ程科学が進化しようが蟻に等しい…意図せずして踏み潰すやもしれぬぞ…?)
力ある者は力無き者の真の痛みは解らない、と首を振る
確かにそうだろう、誰しも誰かの痛みの全貌等とても把握しきれない、況してや自分達は人智を超えた超常の身…何れは意図せずして傷付けてしまうかもしれないと…嘗ての記憶から来る経験則から語るが
——其れを認めた上で、今代の己が子孫は其の
(かもな?でも、逆に言えばそうじゃないかもしれない…赤の他人を信じるなんて根拠の無い事は言わない…それでも。)
満面の笑み、其れが出来るのは…彼女達が与えてくれた
(俺達の事を識っても…其れでも…愛してくれるエーデも
こんな俺を好きだと言ってくれたステラも
何より友達だと言ってくれた一輝達は…信じたいよ……なにより…僕は
——君を信じたい…ずっと僕を護ってくれた…
心からの笑顔、偽り無き言葉…彼本来の一人称が出て来る程の…己に向けられた感謝と…深い愛…
(……心底、大馬鹿者だな…
(…言わなくても解る…その時迄は…否、その先もずっと…)
(…馬鹿者め、だが……あァ……其方の愛と
そうか…まぁ、——
幻聴等ではなく彼に触れていたステラとエーデは確かに聞こえていた。
(…愛し続けます…貴方達を…)
(…神様も…使える力が…
其れは…二人の女と其の名…悠久なる騎士と書き悠騎と読む者が彼女等を護ろうとして起こした奇跡が織り成した奇蹟…意識を失いながらも微笑む
彼の未来は、神の力等ではなく
—————
———
「…すまない…」
あれから、再び気を失った悠騎をエーデが担ぎバスローブを羽織らせ寝かせ付けていたが暫く経ち眼を覚ました彼が頭を下げている、二人ともアレは荒療治ではあったが上手く行った事に内心胸を撫で下ろしているもエーデは何故か不満げだ
「…キス…」
「ぇ…?」
ずィッ!と顔を近付けてくるエーデに戸惑いながらも「速く…」と急かされ唇を重ねる、その様子に今度はステラが不満げだが大人しく見守ってる。
「は…っ……エーデ…?」
「…おかえりなさい…悠騎…良かった…ッ!」
先程よりも強い抱擁、あれはエーデにとっても賭けでもあった…自分達と悠騎と…彼の血に流れる《クロノス》の魂が確かな絆を持っていなければ今頃悠騎の自我は失せていただろう、だが…上手く行った。
つまり、悠騎は自分達を心から愛して…信頼していたという証でもある。
ぽろぽろと涙を流し抱き着く愛しい女性に「…ただいま…」と囁くが先程の口付けを思い出し気まずそうにステラへと視線を向ける
「……ありがとう…」
「べ、別に?ただ……知らない処で護られてるなんて癪だし…好き…って言ったのはじ、事実だし?」
先程の口付けを思い出していたのだろう、顔が紅い、衝動的に悠騎は彼女の手を引きステラも
「っ…危ないじゃない…さ、さっきのキスの時のお返し?」
泣きそうな
ならば…エーデにああは言ったが此の想いを胸に仕舞うつもりであった
だが、悠騎の中では既に答えは出ていた…散々煽ったのだ、彼女には答えを聞く義務と義理と——権利がある。
「……今更、かもしれないが…俺にはエーデが居る…」
「…うん…知ってるわ…うぅん、痛い程識ってる。」
そんな事は百も承知だ…と悲しげに微笑む、其れでも…ステラは彼を好きになってしまったのだから
「…此の際、未来の事も、俺達一族の事も識っているという前提で話を進めるが…俺は、一輝とステラの幸せを願っていた、だが…ステラは…ステラの意見を聞きたい」
銀と黒の瞳がステラを見詰める、ただ真っ直ぐに…そして真摯に。
(…残酷ね…ユウキは…)
「…私は…——
私の未来は私自身が決めるわっ、それはイッキも同じ事を言う筈よッ!」
堰を切ったように紡がれるは悠騎に対する不満、離れようとする?其れで幸せになっても自分達は心の底からは笑えない…!
何より…そんな
「…そうだな、でも…俺は君達4人…否、エーデを入れて5人に救われた…、君達5人の為なら俺は最も幸せであろう未来を君達に…」
言い掛けて指先を充てがわれ止められる、エーデもまた…ステラと同じ気持ちだから
「ふざけないで…っ!私の未来は私が作るの!第一、
言われて気付く……自分が…傲慢であった事を
彼女の涙を見て悟る…もう二度と…誰にも、星が定める因果や…自分自身にも…ッ…彼女達を泣かさせやしない…と
(…あァ……我ながら…何て……)
罪深い、と…自分自身の心の在り方に気付いた人間…黒之悠騎は…
「っ…!」
抱き締められ身を震わせているステラ…己が心に気付いた悠騎は…もう大丈夫だ。
神であり連綿と引き継がれた血に宿る
「…ッ…」
「…不誠実だと罵ってくれて良い、最低だと詰ってくれても良い…だが俺は…ッ——俺も…ステラ…、君が好き、だ…っ」
「…ッ……ばか…ッ……離れ…られなくな、るじゃない…ッ…!」
すまない…と謝る、こんな筈では無かった…と、悠騎とステラは彼女と一輝が結ばれるという本来の大筋を根本から覆す道を選ぼうとしている…二人を抱き締める悠騎は…大切な友人を最も酷い形で裏切った事になる。
「…其れでも…俺は……ッ…」
「ステラとエーデが好きで…大好きで…ッ!…二人を…此の手で護り抜きたい…ッ…其れが…
あまりにも厚顔無恥、我儘な願い、常人からしたらあり得ない思考、忌むべき想い、道徳に反している。
何より…此の願いは当初の"力無い無辜の人々を救う"という願いから半ば逸脱している。
簡単に見て優先順位が二人に増えただけだと思われるかもしれないが…その実、"大切な友人"を事実上救う処か踏み躙ったも同義だ。其れは何れ彼自身の心を苛む事態を引き起こすだろう。
——だが、其処には不純物が一切ない二人の女性に対する
誰にも祝福はされないだろう。
今迄の環境が変わるなんて当たり前だ。
一輝に怨まれても文句は言えない。
其れでも…!
「…俺は……二人を愛している…ッ!だから…ッ!皆も…いや…俺を愛してくれた二人を…本当の意味で護れる様になるからッ!!」
確かな…力強く紡がれた言葉、嘘も隠し事もするその身。
されど、一度口にした言葉を唯の一度も変えようとはせず己が身を…否、魂すら削って護ろうとしていた覚悟を持つ今の
そのいい加減さが…曖昧さが……不器用で優しいヒトという種そのものを表しているとも言える。
「…我儘な旦那様ですね…でも……隠れて浮気をされるよりは全然男らしいです…」
「本当よ…っ、こんな最低な男……私達位しか貰い手居ないんだから…バカユウキ…ッ!」
気付けば二人…否、三人は泣笑い、本当の意味で通じ合えた心…今は唯…祝福する様に浮かぶ満点の星空と月明かりが静かに三人を見守っていた
—————
———
そして、互いの気持ちが通じ合った翌日
「忘れ物はないか?ハンカチは?ティッシュは?あ、窓開けっ放しじゃなかったか?」
「…ユウキ…何だかジャパニーズオカンみたい…ハルキも、ああなるのが解ったわ…」
「まぁ、私は慣れましたよ?元々そういう面はありましたから…ステラの御蔭で其れが明確に表層化された訳です、責任は取って下さいね?」
「ぅ…ま、まぁ…ね?ユウキの中では私達二人に優先順位なんて無いみたいだし…処でエーデ…?」
「はい、何ですか?悠騎が好きなキスの仕方なら御自分で模索した方が愉しみが増えますよ?受けに見えて激しいですからね」
「ち!違うわよッ!…いや…興味は…ある…けど、…その…丸3日…シた…って話…結局嘘…なの…?」
「あァ、その話ですか……彼、割と嫉妬深いんです、だから彼の能力の応用でちょっとした御守りを作って貰ったのですが…ついでに他の男性では最早満足出来ない位
「〜ッ!?」
つまり、3日間ぶっ続けというのは嘘だがその代わり更に高次元のナニカをやらかしていたと照れながら白状するエーデにステラはぶち切れる…まぁ…恋人同士だ、大事にしてるから手を出さないと青くさい事を言う程悠騎は甘っちょろい少年期は過ごしていない
寧ろ、喪う苦しみを識っているからこそ求め過ぎてしまう帰来がある
ぷるぷると震え無自覚だろうか…
「ゆ、ゆゆゆ…ッ!ユウキのバカァァァッ?!なら昨日にでも襲いなさいよォッ!!」
「な…ッ!ステラ!どうした!?俺が何を襲うと!?」
「うっさい!もーッ!帰ったらイッキに土下座しなさいよねッバカユウキッ!!」
「いや!土下座はするし殴られても仕方が無いが取り敢えず剣は納めろッ!ホテルが火事になる!?」
剣の達人も見切れるか、という剣筋を的確に見切りながら先へと走り出す悠騎とそれを追い掛けるステラ、そんな二人を見守るエーデ
そして…
「——両手に花とは流石儂の孫じゃのぅ?」
「——…そういうあンたも、其処の女は誰だ?まさか愛人とは言わないだろうな…
バス乗り場への道をステラに追い掛けられながら全てのはじまりである英雄との邂逅を果たす、ステラ、エーデの両名は…恐らく直感的に感じ取っていたのだろう。
此のタイミングで
「ほっほっ、儂は幾つになってもモテるからのォ?じゃが…流石に御主自身が"救った"存在を忘れるのは如何なもんかのぅ?」
「…矢張り、あの時の…」
エーデは彼女の顔に見覚えがあった、何故なら…彼女もあの白髪の少女に"逢っているから"
「…?あンたは…否、其方は…成る程、其方も覚醒を果たし"到った"者か。余としてはケイローンを…もう一人の息子を今世で愛してやりたいのだがな、…彼奴にはすまぬ事をした…。」
「…流石の御慧眼、そしてお久しぶりで御座います。
私は…2年前に悠騎様に救われました…親兄妹を殺され、貞操さえ奪われ…此の力の所為で異国へと売られる為だけに生き延びらされ…死ぬに死ねずに…ただただ絶望していた私に生きる目的を与えてくれた貴方様に…せめて御恩返しさせて下さい
「ユウキの事を知ってる…?誰なの、あなた!」
隣で警戒していたステラが女の正体を問う、女はくすりと微笑みながら一礼をして
「私はシオン《
悠騎に向け2枚の紙切れ…否、写真を放るシオンと名乗る女、指で挟み写真を見ると確かに2年前と現在の時間が刻まれた写真を見て《クロノス》から主導権を譲渡された悠騎は驚愕の
「——…あんた…俺がエーデと初めて逢った時の…そうか、だが…恩返しとはどういうつもりだ?あんたは…否、あんた達は何を言いたい?」
「神話の時代、貴方様《クロノス》は我が
—何より、私はヒトとしても貴方様に一生の敬愛と私が此の2年で…いえ、"覚醒"を果たし身に付けた医療技術を、此の身を、魂すら捧げる所存。
貴方様が野望の為に死ねと言えば私は喜んで死にます、その為に…もう一人の《クロノス》様の呼び掛けに応じ参上仕りました、さぁ…私に命じて下さい、貴方様の望みを…!」
理解が及ばないというよりは…長年求めた存在が目の前に居るという歓喜、だが同時に…一輝達との出逢いで…エーデとステラが灯してくれたヒトとしての心が其れを行い果たして良いのか、という葛藤が入り乱れる
——故に、宗我はとても厭らしい顔で悠騎に囁く
「…のう?儂は春姫と御主だけは生かすつもりだと幼い御主に言ったんじゃが昨日…漸く見つけたんじゃよ。
——春姫を生き返らせる事が出来る者を、の?」
「…ッ!」
「尤も、ただでさえ苦労して見付けたんじゃ、簡単には春姫の遺骨は渡せんのぅ…?」
思わず眼を見開く、察するに春姫が生き返るには遺骨が必要で其の遺骨は目の前の仇、否…宿命に抗わず従う事を佳しとした男が預かっているという事になる。
シオンと名乗る少女も遺骨が無ければ蘇生は出来ないのだろう。
其れでも遥々日本に…宗我の呼び掛けに応えたのは純粋に悠騎の力に成りたいから…其の気持ちはエーデとステラ、何より悠騎が理解した。
だが、此の老人の遣り方は許容出来ないと悠騎は二人が
「外道め…ッ!どうすれば…春姫を返す!?また…また彼奴を…俺達を…ッ…!」
「…御主は今の自分が消えても春姫が生き返れば…否、"春姫が生きている未来"を望み幾度となく御主等を巡る歴史を改変しようとしたが…其れでは何の解決にもならんと気付いたのじゃろう?其処でじゃ」
『御主…儂の跡目に成らぬか?』
波のせせらぎの音に老人の…袂を分かッた筈の祖父の声が静かに、その場に居る者の…悠騎の耳を衝いた。
「な……何を言ってやがるッ!誰が貴様な「七星剣武祭、今年から個人戦以外に勝ち抜き形式の団体戦もやるからのぅ、儂の匙加減一つで御主の友人…如何なる事かの?」ッ!?貴様ァァッ!」
「ちょ…ッ!そんなの私聞いてないわよっ!?」
「…財閥の権力を使った実力行使、ですか。表向きには観衆は楽しみが増えますが…彼が…悠騎が
殴り掛かる拳を受け止めただけで激しい暴風が吹き荒れ上空の雲を霧散させ、深さ10メートルに及ぶクレーターが生じる、だがそんな事よりも宗我により齎された情報に皆が浮き立つ
「如何したのかのぅ?儂は老婆心で龍馬の曽孫が七星剣王に成れる可能性を増やしてやったんじゃが?」
涼い
エーデとステラは宗我の本心を知っているが悠騎は俄かには信じられずにいた、そして今の煽り、完全に心象を悪くした…大事な友人をコケにされたのだ。
——尤も、此れさえも宗我の企ての一つなのだが。
「少しは見直そうと思っていた自分が情けない…ッ!
俺が…俺とステラがッ!全力で戦いたいと惹かれた漢を愚弄するなァァッッ!!」
「——…吠えよるわ、其の漢を…友を裏切った身での。」
「ッ!?」
完全に虚を突かれた一言、其れは…罪悪感が強ければ強い程効く名刀よりも鋭く…心を斬り裂く凶器。
己が力を完全に利用され悠騎は宙を舞う、合気道。
最近急激に増大した力を未だ扱い切れていない悠騎には最も鬼門となる武術の一つだ
ズダアァァンッ!
「ユウキッ!?」
「…手を出してはいけません、私も…我慢しているんです…ッ」
「《クロノス》様の邪魔はさせません、私は…
背中を強く打ち付け地に減り込む様に飛び出そうとするステラ、其れを制するエーデだが正体不明の威圧感を発するシオンが杖…恐らく《アスクレピオスの杖》と呼ばれるソレを構えているのを見て手出しが出来ないでいる
「がは…ッ…!」
「…確かに強うなった、
「こ、の…ッ…」
「動けぬ様じゃな…まさに"非力"…あァ、丁度良い。
——彼の娘っ子共を殺そう、さすれば御主は更に力を増すじゃろう?」
二人を…悠騎が愛した
(!?ふざ…けるな…)
ドクン…
(ふざけるな…ッ)
ドクン…ッ
(二人は…ッ!)
ドクンッ!
(余の力を貸そうッ!全力でいけッ悠騎…ッッ!!)
「二人だけは…ッ!俺の命を掛けてでも…護るッッ!!!」
ドゴオォォッッ!!
「ぐ…ゥッ…!やるのぅ、迷いを抱いていた拳より余程強い…その覚悟に及第点をやろう。綺麗な翼じゃのう、まるで…天使じゃ。」
舞い落ちる純白の羽…否、羽の様な魔力の残滓…宙を舞うは嘗て《悪魔》と呼ばれた男…全身を覆う金属で要らぬ部分だけ取り除いた様な軽鎧に身を包み12の菱形のビットを円環状にした其の姿は…
「霊装が…変化した…ッ!?」
「…
大切な存在を護る為に自らの意思で限界を突き破った姿はまさに神、此れ程の力を解放して意識があるか如何か等解らない、だが…彼は片腕を翻し己が
「い、け…ッッ!!!」
12のビットが無軌道に動く、先端から
然し…
「…強き覚悟よ、因果を書き換えてでも御嬢さん等を護ろうとするとはの。
—じゃが、御主が死ねばあの御嬢さん等が哀しむ事に気付けよ…?」
メキャアァッッ!!
「ぐ…はッッ!!」
油断していた訳では無い、初めて防御の上からその顔に一発当てた孫の成長と新たな霊装の進化、そして…己が命を燃やして迄二人を愛し抜くという覚悟に満足気な笑みを浮かべる宗我
然し、其れでは…命を捨てるつもりでは結局二人を本当の意味で救えないとした上で"魔力と気を練り合わせたエネルギー"を込めた拳で其れ等を殴り飛ばした上でボディブローを食らわせ昏倒させる
「…強くなりたかったら、何時でも稽古をつけてやる、御主は儂の孫であり…《クロノス》の永い因習を終わらせる事が出来る存在じゃからな。シオン殿、御主は今暫く儂の元に留まって下され。」
「…解りました、ですが治療だけは…」
倒れた悠騎の腹部に杖を翳す、彼女の霊装だろう、杖の先で衣類を捲り腫れ上がった患部はみるみる赤みと腫れが治る。
シオンが動いた事により漸く二人も動ける、気を失った悠騎の頭を膝に乗せるステラ、空間を捻じ曲げその場を離れ様とする宗我を睨むエーデ…そんな二人に宗我は踵を返し深々と頭を下げる
「ユウキッ!!」
「宗我…ッ…」
「…孫の事、深く願い奉る…昔から不器用で言葉足らずな面もあるが…一端の漢の面をする様になったわい…御主等の御蔭じゃの。
——時間と同じ様に…打算の無い愛はヒトを成長させる、そして愛とは様々な形がある……儂に其れを気付かせてくれたのは…ステラ嬢、其方と起源を同じとする妻じゃ…尤もかなり遠い親戚じゃがの、其方と悠騎は」
「ぇ…!?」
「まぁ、結婚したら其奴をヴァーミリオン家に帰依させるなりなんなり好きにすれば良い…ちゅーことじゃ、是が非でも黒之家は継いで貰うがの?」
先を見通したかの様に笑う宗我にステラは赤面する、エーデは悠騎個人を愛しているし其れはステラも変わらないが…小国に強い騎士の血が入ればヴァーミリオン皇国も安泰だという考えなのだろう
「じゃあの!来週の試合、其奴にとってはある意味試練じゃろう…気張る様に伝えといてくれィ!」
年甲斐も無くピースで別れを告げる宗我、だが…二人は見た
(…
(…非力、って言ったけど……)
肌は焼け爛れ、防御に使っていた指はあり得ぬ方向に曲がっている…かなりの痛みであるにも拘らず孫の身を案じる不器用で…
一輝が辿る筈であった未来とは大きく異なる邂逅が幕を開けるのを彼等は未だ知らずに。
次回は一輝君との修羅場回にするか《雷切》との試合にするか悩み中です、恐らく何方の要素も取り入れると思いますが(苦笑)
14日18時30分頃の追記
!気付けば色が…感激ですッ!もっと頑張りますッ!