「…先ずは御疲れ様とだけ言っておこう、まぁ、あれだけの事をして退けたんだ、御前の代表選手入りは確定だろう…というかあの
ショッピングモールでの件以来訪れていなかった理事長室での対話、先程の試合の一件で御咎めを受けつつも一応の賛辞を述べられている。何故か一輝とステラも一緒に。
無論、俺自身に非がないとは言わないが…流石に二人は関係無いだろうという思いから口調が荒くなってしまう
「…あンたにしてはかなり遠回しだな…はっきり言ったら如何だ?手に負えなくなったから契約を
先程の試合で使いこなせないと判断されたのだろうと先に先制を掛ける
…俺は、まだ一輝とステラ…皆の側に居たいから。
「…?御前は何を言っている?契約は此の儘だ、だが…正直な話、戦闘面で私や寧々から教える事はもう少ないだろうな。
御前とは今後の報酬の件で提案を、黒鉄とヴァーミリオンにも其れとは関係無いが…いや、黒之と"関係がある縁者"という点では関係があるから御前達3人に来て貰ったんだ。」
…早合点してしまった様だ、兎に角、此処を出て行かなくて良いのは一番の報酬だが…関係がある縁者?
報酬の増減は正直な話、今の儘で良い、
まぁ、唯一我儘を言うとしたら
「良かった…ユウキは学校から居なくならなくて良いんですよね?」
部屋で待ってるであろうエーデと、俺の身を案じてくれるステラ、二人に思う存分食事を振舞いたい位か。デートのプラン等俺には良く分からないからな。
——…うん、そうなると矢張り月の報酬が増えるのはまんざら悪い話でも無いが…。
「くく…そんなに心配か?私は黒之より黒鉄とくっ付くと思ったが…いや、《悪魔》も人の子だった訳だなァ?」
「っ!べ、別にそう言う訳じゃ…ユ、ユウキも何か言いなさいよ…もぅ…」
不意ににやにやと笑みを浮かべ俺とステラを交互に見遣る新宮寺…一輝も居る場だ、此の際はっきりさせてしまおう。
「——あァ、俺は人間だ。嘘も誤魔化しもする…矮小な
新宮寺…あンたは俺達一族に…否、"俺達"について何故か深く知っている様だが…俺は、ステラと付き合っている。
結果的に中途半端な選択しか出来なかったが、彼女達に対する向き合い方は…せめて真摯でありたいと思っているよ。」
「っ…ユ、ユウキ……恥ずかしい…」
神の一族等関係ない、その一族の生まれだから二股三股を掛けて良い理由にはならない。
日本以外では一夫多妻制を取る国もあるが矢張り周囲の物差しで見たらヒトとしてやっている事は最低だ、此れも認めよう。
——だが、彼女達を愛し抜く気持ちと愛情は変わらないとステラの指に指を絡ませ繋ぐ。
彼女達を護る為なら…何も成せぬ儘死ぬのは恐ろしいが
——命すら投げ捨てよう、その覚悟はある…否、その覚悟無くして二人を愛するなど到底あり得ない
「……
——…だが…馬鹿みたいに真っ直ぐだ、亜季先輩とあの人を足して二で割ったら御前"達"の様に成る訳か…」
新宮寺が溜息を吐く、どうやらエーデの事を知っていた上で黙っていた様だ
赤面しつつ申し訳なさそうに一輝に視線を向けるステラと痛々しく微笑む一輝
此の場面でしか、否…此の状況だから一輝に俺の覚悟を示せなかったとはいえ罪悪感を覚えるが
「…やっと、君の口からステラに対する想いを聞けた、理事長先生が言ってた様に真っ直ぐな気持ちが…。」
一輝の
罪悪感は強まる、覚悟はしていた…彼の此の
でも、と一輝は続ける…厳しくも、優しい
「—君が死ぬって事は、ステラ達を悲しませるって事だよ…?
僕は、"親友"として悠騎に生きていて欲しい、其れと同時にステラ達を悲しませる様なら僕は悠騎…君を絶対に赦さない、其れだけは…理解しておいてくれ。」
「っ……解っ、た…一輝…」
『ありがとう…』と、掠れた声で礼を言う、本当に辛いのは一輝の筈なのに…憎んでも良い筈なのに
——其れでも、ステラを想い…こんな俺を親友と言ってくれる一輝の優しさに…涙が溢れ出る
それは…ステラも同じ様だ、彼女の涙を拭ってやりたい…抱き締めてやりたい…その感情から彼女を抱き寄せる。
「イッキ……ごめんなさい…っ…あり、がと…!」
「……ステラ、大変な道になるし味方は少ないかもしれないけど…少なくとも僕は、二人の味方だから」
優しく微笑み泣き笑う一輝…此れが、俺が選んだ道の答え。
大切な存在を傷付けて得る幸せ、価値が無いと言う者も居るだろう…少し前の俺も同じだ
だけど…人間は理性の生き物であると同時に感情の生き物だ、一輝が好きなステラ、そんな彼女が一輝を選ばずに俺を選んでくれたのなら…俺は…俺は、覚悟を決めよう…!
「俺は…ステラ達を護る者で在り続ける、否…輪廻転生を幾度繰り返そうが彼女達を愛し続ける、ヒトとしての暖かみを思い出させてくれた彼女達を全身全霊をかけて…!」
新たな、俺の
—中途半端なら中途半端なりに全力を尽くす…!
——其れでも足りないなら
…一輝は怒るかもしれないが、其れが俺の愛し方だから…!!!
「全く…悠騎は真面目なんだか不真面目なんだか解らないよ…でも、少なくとも僕にとっては君の言葉は何時も嘘だけは無かった。
—だから信じるよ…君の想いを。」
そんな俺の誓いを聞き意図を読み取った上で『頑固なんだから…』と言わんばかりに笑う一輝、でも其の言葉が嬉しい…純粋に。
そんな俺達の遣り取りを見守っていた新宮寺が咳払い、本題に入るぞという一言に二人の代わりに頷く
「…全く、目の前で青春を繰り広げられて一瞬場違いなのは私かと疑ったが…若いとは良いものだな。
さて、そんな御前達に提案だ。——編入生が一人入るんだが其奴もヴァーミリオンや黒之と同じAランク騎士でな、本来なら黒之と同室にさせるつもりだったんだが、御前達が望むなら部屋替えを特別に許可してやっても良いが…如何だ?」
編入生…変わった時期という事も考慮して恐らくはあの爺の差し金だろうか…俺と組ませるというなら確かにエーデの事を考えるとステラと一緒に成った方が良い、というか其れが最善手ではある
「…若しかして、ドアの外で待っている子ですか?理事長先生」
だが、其の場合一輝に迷惑を掛ける事に……?
……ッ!?
「……う、そ………だろ…?」
一輝の声に視線を向ける
身長や髪の色、その他細かい体型こそ昔とは違う…が…見間違える筈がない…!
「ふふ…お兄様、成長した
ダークピンクの髪を揺らし入室してきた俺の
ずっと逢いたかった、触れたかった指先…感じたかった温もりに涙が溢れてくる。
「…お兄様は私を愛して下さってるんですね…今も、じゃなきゃ泣いてなんてくれないですものね〜?
—処で、そんな可愛い妹をそっちのけで抱き締めてる其処の人は誰ですか?お兄様?」
「っ……」
ステラが息を呑むのが聞こえた、そうだ…ちゃんと紹介しなければ
「当たり前だろ…ッ!…紹介するよ、彼女はステラ、ステラ・ヴァーミリオン…ぼく…俺が付き合っている
はるの雰囲気が一瞬変わったのを感じる、だがクスクスと笑うはるはまるで"識っている"とばかりに表情を変える事無く笑っている
「そうなんですか〜、少し前から聞いていたのでそうなのかなー…とは思いましたが……こんにちは、ステラさん♪
私は
「こ、こんにちは…ち、ちょっとユウキ!何時まで抱き着いてるの?!私は大丈夫だから…ね?」
「え?私は別に困ってませんよー?寧ろずぅーっと此の儘でも…なんて☆」
怒鳴られて身体を離そうとするが何故か怒鳴った本人であるステラに抱き留められる…ステラ?
(ステラ…?怯えて…いるのか…?)
震えているステラを抱き締め宥め、此処である疑問を漸く抱く。
遺骨だの何だのと言っていたがあれはデマだったのだろうか、若しくは…
「んー…何方かと言えば後者ですかね〜…蘇生させてくれたのはシオンさんですが御祖父様の能力ですくすく大きくなりましたー、お兄様も似た事が出来ますよね?」
「…昔から、心を読むなと言っている。まァ手っ取り早い面もあるが…成る程、あの爺に其れをするメリットがあるとすれば…」
「てへ、ごめんなさーい♪
んー…罪滅ぼし、ですかね〜…私としてはまたお兄様と一緒に居られる事が出来るだけでベリーグッドなので構いませんけど!」
…爺は兎も角。シオンには今度彼女が望む事で恩返しをしなくては、脱線していたが漸く部屋割りを決める話へと戻る
「取り敢えず、部屋割りの件だが俺としては「…私は、ユウキと一緒が良いわ」…まぁ、俺も…だから良いが…一輝とはるは其れで良いか?」
「僕はどっちでも良いよ、寧ろ春姫さんは如何したいのかな?」
「私はお兄様と一緒が良いですけど…寮生活は憧れなんです〜♪だから沢山悩んで決めましょ?
あ、この場合大きく分けて3パターンの組み合わせがありますね〜…BL、有りです♪」
「……ふむ…」
正直な話、BL?は兎も角、はるが言うように俺が一輝と組むというのも割と良い案ではある、男は男同士、女は女同士、モラルに反しない理想的な組み合わせだ。
尤も此の場合はるとステラの間柄が問題となる、はるは昔は割と泣き虫だし良くものを壊すし…いびきは煩いし寝相は悪いし泣き虫だし。
何より…。
『えへへー、間違えてナンパしてきた男の子の
『良いのよ、身の程を弁えない此奴等が悪いんだし』
——うん、無いな、割と友人としては良い関係は築けそうだが心配の種が多くなる、というか怖過ぎる。
「お兄様ひどぉい!お兄様だって歯軋りはするしおこりんぼーです〜!其れに言う程泣いてないもんっ!」
「…困った、ね…?」
(…何気に酷い事を思われたような…うん、後でお仕置きね)
よし、取り敢えずアミダで決めよう、こんな困った時の安定のアミダだ。
「おいおい…此処まで引き摺ってアミダか?割と餓鬼だな、御前は。」
…煩い、ジャンケンよりマシだ。
—————
———
「…それで、此の時間迄遅れてしまった、と?」
玄関先でエーデに正座させられながら頷く悠騎、結局アミダで決まった相手はステラだ
彼女の私物は後日全て部屋に運び込まれる事となるがステラも悠騎同様正座させられている
「しょ、しょうがないじゃない…ハルキが中々引きたがらないんだから…。」
一番目にも拘らず『お兄様のアミダ好きは変わらないですね〜』等と言い渋り、中々引きたがらない春姫に業を煮やし仕方がなく彼女の番を飛ばして一番目に引いた悠騎とその後に引いたステラ、三番目に引いた一輝で部屋割りは決まった
「…言い訳はしない、だが…今日は春姫に学園を案内していたから遅れたのもある、悪いのは全て俺だからステラはもう休ませてやってくれないか?」
叱責を受けている悠騎はせめてステラは休ませてやって欲しいと懇願するがエーデは珍しく其れを拒む、何故かかなり怒っているというか…機嫌が悪いというのは確かだ。
「……悠騎、私は言った筈ですよ?貴方はもう魔人であり其の力の一端とはいえ衆目の眼に晒すべきではない、と。
今日の試合、私も途中からですが身を潜めながら観させて頂きました。
明らかにやり過ぎです。もう少し自重してですね…」
何時もは悠騎を膝に乗せるか自分が乗るかで過ごす時間をも使い説教するエーデに悠騎は素直に聞き入れる、今となってはこうして叱ってくれる人物はステラかエーデ位だからでもあるが
…此処でステラがハッとした様な顔をする
「…成る程ね、試合を観ていたという事は…ふぅん…そういう事ね〜…」
不意ににやにやと笑うステラ、エーデはじろりと見遣るが悠騎は何の事だか解らないとばかりに首を傾げる
「すまない…何故ステラは笑っているんだ?エーデが何時もより機嫌が悪い事と何か関係があるのか?」
「…何時もよりとは如何いう事ですか、悠騎?」
な、何でもない…と俯く悠騎と、何でもない事はないでしょう?と顎を掴み顔を無理矢理向けさせ詰め寄るエーデの遣り取りを見るステラ
仕方がないと肩を竦め"ヒント"を与えるが彼女も何故か頬を膨らませている
「つまりヤキモチよ、まぁ私もあの時は…し…したんだからね?
…気持ちは解るからこれ以上のヒントはあげないわ、というか自分で考えなさい。
—私達をずっと護ってくれるんでしょ?」
理事長室での科白を思い出し頬を膨らませながらも僅かに赤らめる
互いに苦しんだ末の答え…その純粋且つ強烈な迄の愛情
——其れ故の誓いであり約束に身を焦がす様な感覚を今でも忘れられないステラはエーデの味方をしながらも悠騎の行動に期待するステラだが
「…ふむ、そういう事か…解った、確かにそういう話をしたしな?」
「!な、何をするつもりですか悠騎…!」
すくッと立ち上がったと思えば
「…?東堂みたいに空を飛びたいのだろう?後でヤキモチなんぞ焼けない位愛するとはして…確かに不平等ではあるからな…
——今宵は満月、満点の星空を間近で観るのも風情がある、少し待っていてくれ」
(…そうじゃないんだけど…ま、まぁ…悠騎だし、ね?)
ベランダから飛び降りる悠騎に内心苦笑しながらも追い掛けるステラ、悠騎は己が翼を以て宙に浮いている。
「五芒星?否、六……ステラの名が冠する様に此処は十芒星で良いか…星空のデートだしな。」
「ユウキ?何ぶつぶつ言ってるの?」
「…も、もう解りましたから…離して下さい…私にも羞恥心位はあります…」
まぁ当たり前の質問だ、十のビットを操り何かの陣を描き終えた悠騎はくすりと微笑み結界の上に立つ、無論、ヤキモチ焼きのエーデを抱えたまま。
「—俺が今張った陣は十芒星、大いなる十の惑星を配置する様にえがかれ昔から護符としても扱われている…まぁ、五芒星や六芒星に比べたら少しマイナーだがな。
足場に出来る程強力な結界、彼がその気なら学園全体を囲い己が能力で行った事がある場所なら何処にでも行ける位大規模な特殊結界。
先程あれだけの試合をしたばかりだというのに其れを行える魔力量の差に愕然としながらも言われた通りベランダから結界の上に立つステラ
「…本当…凄いわね、魔導騎士としては軽く嫉妬する位…。」
「当たり前です、私の夫ですよ?ありと凡ゆる呪法や口に出すも憚られる邪法すら彼の知識に蓄えられているのですから。」
私の未来の夫でもあるんだけど?というのはステラの言。
二人を愛すると誓った身としては嬉しいし誇るべきなのだろうが、自分から能力を明かす事も況してや誇張する事も無い悠騎は恥ずかしくて何も言えない代わりに高度を上げゆっくりと飛行する
「…まぁ、この様に図式に込められた力を引き出すのが俺の魔法の一つだ、元々時空間能力とは空間や時間に干渉する力だからな。
魔力の余力次第だが、俺がやろうと思えば全ての星座が持つ力すら扱える…その場合真の力を解放したトリシューラを用いた技を除いた中では俺の遠距離系最強魔法に成るだろう…絶技を超え、禁技すら超えた技だ。」
雲を突き抜け星々を眺める、夜叉姫の様に宇宙の塵でも落とすのだろうか
否、星座の力を扱うという事は概念系の技だろう、彼の生まれ月である星座や射手座なんぞ厄介極まりない技になるが…デートの時まで戦いの話とは流石は
「悠騎…こういう場面でそういう話は一般的に憚れます、貴方らしいとは思いますがもう少しロマンがあれば…」
「でも…私はこういうのも素敵なデートだとは思うけど?」
最早諦めたのか彼の首に腕を回し昼間の分とばかりに甘えるエーデ、普段気高い分その仕草は愛らしい
昼間は側に居れる分、僅かだがエーデに譲る形で傍に寄り添うステラは飛行機等に頼らない魔導騎士として異能の力で空を飛ぶ逢引もオツなものだと笑うステラ
「気に入ってくれて良かった…俺は戦う事しか知らない人間だがエーデやステラの笑顔を見れるなら——
心底幸せそうに笑う
黒之悠騎としても、
新宮寺や一輝、春姫には事情は話した
後は珠雫とアリス…最近忙しなかったがゆっくり、時間を掛けて話していけば良いだろう
——
—————
———
「…ふふ、悲しいんですか?窓から月なんて見上げて」
彼女…僕の親友の妹である春姫さんがクスクスと笑う、可笑しそうに
そして、妖艶に。
「悲しい…のかな、確かにステラの事は悔しくもあるけど…覚悟を決めた悠騎ならきっと大丈夫だと思うから」
今の僕の素直な気持ちを伝える
確かに、痛みはある
…だけど…ステラは彼を選んだし、僕も…悠騎が好きだから。
「——良い人なんですね、私としてもお兄様に一輝さんみたいなお友達が出来て嬉しいですが…"良い人過ぎ"ですよ?昨日の約束通り私とは初対面の様に接してくれた辺り…少し、心配になる位。」
細長い指が僕の首筋に這う、さっき迄の雰囲気ではなくまるで別人の様な雰囲気に呑まれそうになる
「約束、だからね…彼が抱える事を全て聞く代わりに出逢わなかった事にする、って。
—神様なんて居ないと思っていたけど、君に"大地の記憶"とやらを見せられた以上信用せざるを得ないしさ?」
代わりに笑い返す
——悠騎が経験した壮絶な過去
——彼を取り巻く環境
——彼とエーデルワイスさんとステラの変化
——そして、彼女達
「うふふ…良い子ですね。
——私は…大地の女神レア、お兄様…いえ…クロノスの妻であり嘗て彼の痛みに気付けず最終的に裏切った者。
私の望みは私と彼の子等が侵した過ちを糺し在るべき世に戻す事。
彼等は…ゼウス達は増長し過ぎました、貴方達ヒトの世に争いを広めるに留まらず全知全能と宣う傲慢さ。
そして…其の皺寄せを受けたヒトもまた、傲慢に育ってしまった」
緋色の瞳は哀しげに揺らぐ、彼女の考えは知らないし未だに神様とか生まれ変わりとか良く解らないけど…此れだけは言える
「…其れも
下腹部に走る痛みに蹲る、人間の筋力とは思えない掌底を叩き込まれ咳込む僕の胸倉を掴み彼女…
—けど、その笑顔は…泣顔にも見えた
「…確かに、私は彼の痛みを真に知らずにただ母として生きました…きっと今でも彼は私達を怨んでいるでしょう。
当然です、彼には怨んで良い"権利"がある…!私達を罰する資格があるッ!!
——けれどっ!けれど私は…私は…ッ!」
其れでも…母として、妻としての痛みを識って欲しい。
そして…叶うなら、再び…と呟く声を僕は聞き逃さなかった。
「っ……レアさん、其れはあまりにも酷過ぎるよ、彼は…悠騎は確かにクロノスっていう神様達の王様の血を引き継いだのかもしれない。
でも、彼自身が本当に其れを望んだのかな…?
更に言うなら貴女のその
——傷付けたと思って後悔しているならっ!彼を愛しているなら今は…ッ!」
胸倉を掴む腕を掴み説得を試みる、正直…神様とかは如何でも良い。
悠騎は悠騎であり、僕の親友だ…!
だから、彼がステラ達を幸せにする時間だけは邪魔させない!
—喩え、此の身が射抜かれ様とも…ッ!!
神様にとってはちっぽけかもしれない僕の意思を汲んだのか彼女は胸倉から手を離し耳許で囁く様に言葉を続ける…僕にとっては最悪の予想を想起させる言葉と吐息を織り交ぜながら。
「…勿論、愛していますよ?
——だからこそ…彼には今一度壊れて貰う必要があります。
——やり直すんです、全てを…彼を追って魂の一部を転生させた結果双子の妹…黒之春姫になっていた。
此れは…良しとしましょう、何の道今世でまともに添い遂げる事は無理だと判断したからこそ、あの晩に"楔"を穿つつもりだったのだから。
ですが、彼は…お兄様は…あの女達に現を抜かすあまり堕落した、ヒトと神が永劫の愛を誓い合うなど…辛過ぎるだけです。」
身体を離す彼女の背を僕は見詰める事しか出来ない
…ある意味で彼女と悠騎は珠雫と僕の間柄に似ているのかもしれない
—けど、
「…ですが、同時に貴方にも興味はあるんですよ?私…と、いうよりは春姫が。」
「…出逢ったばかりの娘に好かれて「…覚えていないのですね、無理もありません」…?」
彼女は何を言っているのだろう?僕には悠騎や春姫さんと小さい頃に逢った記憶など…いや…待てよ…?
「あれは…お兄様と春姫の7歳の誕生日でしたね、貴方と珠雫、…王馬と初めて出逢った時でもあります。
—尤も、貴方は当時から周囲に疎外されていましたが」
「!…僕は兄さんの名前迄言った覚えは…違う、思い出したよ…何で忘れてたんだ…僕は…っ」
そう、僕は…既に悠騎や春姫さんと出逢っていた。
たった2日の出来事だけど、確かに、僕達は出逢っていたんだ…!
—————
———
「今日は夜風が涼しく感じるますね、悠騎…そろそろ降りましょうか?」
「さんせい、私もうお腹空いちゃったわ…」
時計を見ると既に時刻は20時をきっていた、身体を冷やすのは良くないと忠告を受ける、ステラも空腹を訴えている…確かに今日の昼は3杯しか食べていなかったからな、
「…随分と長い間飛んでいた様だ、…!」
高度を下げ様とした矢先、不意に気流の変化を感じ身構える
無論此の結界も防御力は昼に見せた『四神の陣』に比べても遜色ないが不測の事態という事もある、左右長さの異なる剣を構える俺に二人の目付きが騎士の其れに変わる
「悠騎、私達も出ますか?」
「…問題無い、向こうも挨拶代わりに仕掛けてきただけの様だ…寧ろ過剰反応すれば向こうも引くに引けないだろう」
「あれで挨拶代わり?冗談じゃないわ!
徐々に高度を落とし俺だけで地上に降り立つ、校庭の中心には抜き身の野太刀型の
「——矢張り、
感に触る…?
「…俺は御前なんぞ知らん、人違いならさっさと帰れ」
開口一番に御挨拶な此の男に見覚えは無い、だが…エーデや西京程では無いにしろ学生騎士にしては相当強い魔力に自然と笑みが浮かぶ
「…
「…俺が言えた義理では無いが存外危ない奴だな、今のは校舎が損壊するレベルでは済まんぞ?
——《風の剣帝》が俺に何の用だ?」
風使いの基本技である真空波を斬撃で相殺、俺と奴の間に生じる強烈な迄の空気の断層が木々をざわめかせるが構わず言葉を続ける
「…矢張り、貴様は良い…ッ!其の圧倒的な迄の力ッ!風使いでも無い癖に真空波を自在に扱う技量ッ!俺はあの日から貴様を追い求めていた…ッ!!」
さァ、闘え!黒之悠騎ッ!!
鋒を向け激昂する《風の剣帝》…黒鉄王馬、一輝や珠雫の兄である目の前の侵入者の気迫に俺の中の闘争心が疼いてしまう
(…すまない、二人とも…如何やら少し遣り合う事に成りそうだ)
「——御前が如何いう理由で此処に現れたかは知らん。
——が、俺が目的というのであれば…場所を変えるぞッッ!!」
「ッッ!!——良いぞッ、まさかあの一瞬で俺ごと何処ぞの山中に転移するとはな…ッ!!」
此の相手に加減して勝つには少々骨が折れると判断した結果学園から遠く離れた地へと空間転移した後、互いの剣を以て斬り結び火花を散らしながら歯牙を剥き出しにして笑う
此の時、俺は未だ知らなかった…俺達以外の"4つの視線"が静かに、其れでいて鋭く此方を見ている事を
次回は暁側から二人出すのと同時にアニメ5話辺りを導入しようかと思います、戦闘は…結構やらかすかと(苦笑)